ともやん と ぼく

ともやん と ぼく

掃除の時間が終わって、待ちにまった昼休み。

ほかの男子はみんなサッカーに行った。
教室の前では、女子が何人かでゴム跳びをしている。

ぼくは、ともやんの机で、ともやんが作った洞窟を探検中だ。
「それでね。洞窟の奥に鉄の壁があるの。」
「鉄の壁? そんなの、ぶっこわす!」
「でも、まだレベルが低いから、壊せないよ。でも、壁の横に謎の石版がある。」
「じゃ、魔法でぶっとばす! ドーン!!」
ぼくは、ともやんが作った洞窟と、鉄の壁を鉛筆でぐりぐりと塗りつぶした。
「ああ! そんな事しちゃだめ、だめ! そんなんじゃ、鉄の壁は崩れない!」
「じゃ、最強の魔法を使う! ウィーン、ドカン、ドカーン!」
ぼくはともやんの手を払いどけて、最強の魔法を二発くらわせてやった。すると、鉄の壁が洞窟ごとビリっと一直線に裂けた。
「あー、もー破けたあ!」
「ドカン、ドカーン!」
ぼくは、かまわずに最強の魔法を連発した! ビリ、ビリリ! ともやんの洞窟は大崩壊! 洞窟を払いどけると、その奥にはカッコいい剣が刺さっていた。
「やった、伝説の剣! 手に入れた!」
「だめ! それは宝箱に入っているから、鍵がないと取れない!」
「もう取った! これでボスも倒す!」
ぼくは、ともやんが止めるのも聞かず、ともやんが作った敵、お城、町をどんどんと一刀両断にして、一気に最終ステージ。そして、ボスを見つけるなり問答無用。八つ裂き、いやいや、それどころかもう、原型がわからなくなるほどに、ミンチ斬りにした。ボスはぼくの伝説の剣に散々斬り刻まれて真っ黒だ。
「やったー! クリア! エンディング!」

「ちょっと、男子! うるさい! 外に行って!」
教室の前でゴム跳びをしていた女子が、ぼくのエンディングに割り込んできた。

ちくしょー! せっかくのいいところなのに!
ぼくはさっきボスを切り倒した伝説の剣を持って席を立った。
「なに?! 女子の方がうるさい! そっちがどっかいけ!」
ゴム跳びをしていた女子たちは、ぼくが歩み寄る歩調にあわせるようにゆっくりと集結すると、無言のまま互いに目くばせをして、陣形を攻撃タイプに変更した。

しまった! うちのクラスの女子は集団魔法の使い手だ。ひとりひとりのパワーはたいしたことないが、みんなのマジックポイントが集まると魔法の威力が100倍にアップするんだった!

女子の連続魔法! ぼくは女子の魔法の津波に押し流されて、近づくことすらできない。慌ててともやんに助けを呼んだが、ともやんは机に座って、なにやら必死にノートに消しゴムを走らせていて気づかない。消す手に力が入りすぎているのか、時折ノートが、ぐしゃ、ぐしゃ、と音をたてていた。
「ともやん、何やってんの! はやく! 全滅するから!」
ぼくはともやんの机に行って、ともやんの手をひいて、また戦闘に戻った。これでぼくのパーティーは二人。女子の魔法の威力も半減だ!

ぼくはともやんを傍らにおいて女子に魔法で応戦した。と、突然、女子の集団魔法が止まった。 やった! 絶好のチャンス到来!
ぼくが伝説の剣を振り上げて女子を切り伏せようとした瞬間、教室の外の廊下から電撃一閃! 雷系の最強の魔法がぼくに直撃! 

「こら!! 教室であばれないの!! それから、あ、そこの男子二人。 ちょっと一緒に職員室に来てくれる?」

ぼくはたちまち電撃の魔法の効果で体が痺れてしまって、動けなくなった。
「…ともやん、隠しボスの登場だ。裏ステージに突入だよ。」
ともやんは、洞窟のかけらをぎゅっと握りしめたまま、ぼくのとなりで、ひっく、ひっくと肩をゆすっていた。

ともやん と ぼく

ともやん と ぼく

子どもの頃、よく自由帳にゲームを作って友達と遊んでいました。そのころを思い出して書きました。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-28

CC BY-NC
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