天使の慟哭
──────さあ、嘆く聲に耳を澄ませ。
発現
これまで人類は増え続けた。どんな政策を施そうとも、どの国でも人口は増すばかりだった。
大地は緑とコンクリート、それらを地に踏む人間で覆われ、海岸は埋め立てと浸水を繰り返しながら徐々に地面を拡げている。
人類を除くすべての生命が、圧迫されていた。生態系が悲鳴を上げている。
人はそれらに気づきながらも、未だに増える新たな命へ惜しみない歓迎の拍手を送った。
その音が、自らに地獄を招き寄せているとも知らないで。
♯1 ―孵化―
とても暑い夏の日だった。
コンクリートに照り返された熱は肌をチリチリと焼き、流れていく汗すら蒸発させてしまいそうだ。木陰を作ってくれるはずの街路樹も、この茹だるようなな暑さに参ってしまったかのように萎れて元気が無い。
天使の慟哭