苛め。
俺の口癖は『苛めじゃない、悪戯だ―――』。
この言葉は何て残酷で非道なんだろうと、今ではそう思う。
俺は加害者であり被害者であり―――傍観者だ。
※「友」と言う表現が出てくるが、主に二人。中学友と高校友を表現する。
尚、この物語はフェクションの中に自身の経験に関するノンフェクションを織り交ぜたリアル感を醸し出そうとした小説である。
ノンフェクション部分はきちんと当人の許可を戴いて書いている。これを機に真剣にいじめ問題について考えてみてくれ…。
警告編
俺は加害者の時、こう思っていた――。
「これは苛めの内には入らない。」
だって手を出して居る分けじゃない。出したとしても後ろから軽く叩く程度だ。
否、もっと酷い事をしていただろうか…。俺の苛めは主に言葉だったと思う。
何を言ったかは…思い出せない。まぁ、それはそうだろう。
加害者にとっては被害者の気持ちなんて如何でも良い事。考えもしない事なのだから。
でも、加害者でも被害者でも俺はずっと疑問に思っていた。
何故、苛められて死ねるんだろうと。死ぬ方が余程恐ろしいじゃないか。
俺が被害者だった時はこう思っていた―――。
「俺は死にたいとは想わない。」
今は辛くても未来永劫それが続くわけではない。
何時かは楽しい日々が訪れるかもしれない…。
俺はそう信じて耐え続けてきた。耐え続けるしかなかった。
仕返す勇気なんてなかった。悔しかった。
――こんな奴らに負けたくなんかない。
死んだらそれこそ負けじゃねぇか。
何時か訪れるかもしれない楽しい時間。可能性はゼロではないだろう。
――違うッ。これは言い訳だ…、俺はただ臆病だから死ぬ勇気すら抱けなかったんだ。
心の内ではずっと助けを求めてきた。
助けてッ―――。
声にならない想い。声にする資格を俺は持っていない――。
大人は当てにならない。本当にウザったい。
俺の気持ちなんてわからないくせにッ。理解しようとさえしないくせにッ。
俺に構うなッ―――!!
ホント、反吐が出る。俺って馬鹿すぎるだろう。
全て自業自得なのにさ――。
お前ら、絶対に覚えておけよ。
――――加害者は何時か被害者になるのだと…。
輪廻は巡り続ける。終わりのない濁流のように―――。
そう、これは俺であり俺ではない者の〝苛め〟を三視点から見た物語だ。
被害者編
俺の中学時の友は苛めにあっていると言ってきた。
俺は当時「苛めなんてベタな…。」と思っていたが話を聞くだけなら別に害はねぇし、友が満足するならと、話を聞いていた。
内容は、
トイレに連れ込まれ悪口を言われている。
お昼をはみ子にされる。
上履きに画鋲を刺されていた。
等々だった。
その友は俺のいた中学とは別の中学に通っていたのでその話が本当かは知らないが、まぁ、疑うつもりはないんで信じていた。
だが、正直俺の通っていた中学はその比じゃなかったんだよなぁ。
運動部の苛めは勿論文化部でも苛めはあったし、一番酷かったのは吹奏楽部だろうか…。えげつなかった。
授業中は煩いし、校内の窓は割れまくるし、校内で自転車に乗って居る馬鹿やタバコを吸って窓に押し当てて溶かして穴を開けている馬鹿も居た。
授業中は先生と生徒の追いかけっこ。(先生→真剣、生徒→遊び半分)ホント邪魔だった。―――授業しろよ授業ッ。
ああ、そういえば階段に呼び出されている生徒も居たなぁ。あ、あと二階の窓から落とされかけていた生徒も居たっけ…。
先生目茶苦茶慌ててたな。そいつ上半身全て外に出てたしな…。気の毒だった。
何時も騒いでんのは今時古い〝不良〟と呼ばれる御三方。
俺は関わらないようにしてたけど、修学旅行で兄貴への土産に木刀買ってたのを見られてたらしく、
「あの時木刀買ってたよな」
と声を掛けられた。
「それが?」
と、そっけなく返した俺は相手にはどの様に見えていたのだろうか…。
とまぁ、友の苛めも本人的には深刻なんだろうが、俺の居る環境が環境なだけに、
「へー、大変だね」
としか言いようがない…。何て冷たいんだ俺…。
因みにその翌年、俺は人間関係による精神的苦痛で学校を一日ズル休み。
マジでもう嫌だ…。ってくらいになったが、まぁ上記の通りの学校なので、休んでる間に机に落書きされたくないって理由で翌日から一度も休むことなく登校したぞッ!
それが被害者だった俺の中学時代―――。
加害者編
高校生になってからは比較的楽しく過ごした。
俺は他の男子が大っ嫌いで話しかけるな、俺の物に触れるなと、言った感じだったため凄く怖がられていた。―――男子嫌いの理由は精神年齢餓鬼過ぎッ。因みに女子は普通。
何かある度に、すみませんでしたッ。と謝られる。―――そこまで怖がらなくとも…。そう思った事もある。
高校の友は俺と同じように男子が嫌いな奴が居た。そいつとは気が合った。―――そいつも理由は俺と同じ。
苛められるでもなく、苛めるでもなく。平穏に過ごしていたが、最後の一年、部活で後輩が出来た。そいつらを苛めた。
元々部員の少ない部活だったため廃部寸前だったが、そいつらが入ってくれて何とか保って居た。
入ってくれた当時は感謝した。これでこの部活がなくならずに済むと…。
だが、俺は既に三年。受験勉強の為部活に殆ど出られない。最後の大会も後輩が入ってくる前に終わってしまっていたため、部活動に顔を出すことは少なかった。
それでも、何だか気になって居たため顧問に様子は聞いていた。
そして、驚く事実発覚―――。
それは夏休み明けの事。
久しぶりに部活に行くと後輩たちが居ない。―――??何故だ。
誰でもそう思うだろう。そして顧問に聞いた。
「あいつら練習如何してんですか?」
顧問は呆れ顔で答えた。
「あいつら夏の大会、練習一度もせずに出てボロ負け。まぁ、当たり前だがお前らより酷いぞ」
おい、酷い言われようだな。俺らは練習ちゃんとしてたし、それなりに……。うん、此処触れんなよ?
「はぁっ?!練習せずに試合出たのかよッ!!あいつら馬鹿じゃねぇの?!―――え、で辞めたのか?」
流石にそこまでやる気がないんだったら既に辞めていると思うだろう。
「まだ辞めてないんだ」
ぁ゛ー、完全に俺らの事嘗めてやがる。
そう感じた瞬間、何かが切れた。この時点であいつらが部活を辞めていればよかったものを…。廃部になろうともッ。
あ、だからって直ぐに苛めなんてしねぇぞ。会う事ねぇし。とか思ってたら―――会ったんだよなぁ。
顧問から衝撃の事実を知らされて数か月。
ちょくちょく辞めたのかを聞いていた俺。―――性格悪いだろ。←(ほっとけッ)
数か月経っても部活は辞めておらず、勿論練習は出ない。だが、試合は出る。―――ふっざけんなぁああッ!!!
そんなイライラしている中、そいつら発見。部活せず文化部に交じって土遊び。
「其処ふざけんじゃぁねぇぞッ!!あ゛ぁ゛!?さっさと今直ぐ即退部届出しやがれッ!!てめぇらに部活する権利なんてねぇんだよッ!!」
まぁ、オブラートに包んで…。え?包みきれてない?さらけ出してるって…。そんな事ないさ。
そんなこんなで高校時代は加害者側――…。手は出してないからセーフ…。
あ、でもって三年で男子嫌いは多少克服できたぜッ!!
傍観者編
それから俺は専門学校を目指した。
中学の友は今では苛めにあう事もなく楽しく夢を追いかけている。
それとはうって変わって高校の友は夢を追いかける中、苦痛な日々を過ごしている。
原因は不明だが彼の男子嫌いは関係していない。―――彼も男子嫌いは徐々に克服できている。
彼は専門学校を目指して居たが一年間留年しバイトを一生懸命頑張っていた。
彼の家庭の事情は厄介であまり口を出して聞けるような雰囲気ではない。―――元々他者への深入りは好きではない。
彼はバイトを頑張りながら予備校に通い念願の専門学校へ行けるようになった。
しかし、そこは家から遠く彼に待ち受けていたのは寮生活だった。
俺は親と離れて暮らした経験がないから一度は味わってみたいと思っているが、そうも言ってはいられない状況になった。
初めは先に記入した通り、彼は家庭の事情が複雑なので寮生活することで落ち着けるのではと考えていた。だが、その考えは甘かった。
俺は携帯でも電話は嫌いだわ、メールは面倒だわで彼と連絡を暫く取っていなかった。
ラインと言う便利なものが出てきたこのご時世でも、俺は機械音痴なため利用方法が解らず一年間使用しなかった。
漸く周りから助力してもらう事によりラインを行う事が出来た。
そしてタイムラインと言うものの存在を知った!!
其処には高校の友からの不安になるような内容の書き込み…。―――ポエムとかあったぞ?!
そんなこんなで一抹の不安に駆られ久方ぶりに連絡すると精神状態超不安定。―――今にも自殺するんじゃないかッ!?
学校でも寮でも家庭でも居場所がないと嘆く彼…。
―――俺が出来る事は何もないのかっ。
初めて無力感に苛まれた。
励ましてもソレは逆効果になるだろう。故に、かける言葉が浮かばねぇ…ッ。
今の俺は凄く彼の気持ちを理解できる。
俺も入学当初は人間関係で苦悩した。
社会人も居るのにそいつ等は見っとも無く年下と絡んで人を見下しやがる。
大学、専門学校に入れば社会人と言う枠は関係なくなる。幾ら年上だろうが年下だろうがそんなこと関係ない。
全員が〝学生〟に戻るのだから…。
だが俺らは人間だ。その環境に対応する事が出来る。―――要は慣れと順応性だ。
俺の場合は考え方を変えた。
他者は利用せよ。
己がのし上がる為の踏み台にするんだ。
常に笑顔を張り付けよ。
接客だと思えば苦だとは思わない。
そうだろう?
それから暫くして友は少しずつ環境に順応していき逞しくなった。今では沢山の友に囲まれている。
それがいい結果だとは言えないが、今のままの関係が続けばいいと思った。
これが傍観者だった俺の専門学生時代…―――。
訴え編
現在は夢を叶え一生懸命働いているが、やはり世間は厳しい。
俺の周りから苛めは消えない。
これは規模にもよるが、比較的大学より専門学校の方が苛めが多い。
大学は人数が多い分、幾らでもグループが出来る。
だが、専門学校は限られた人数であるが故にはみ出し者が現れる。
医療関係を目指す者、保育士を目指す者、芸能の世界でもそうだ。
社会に出てからも、苛めは常に俺たちの周りを取り巻いている。
だから、俺は願う。
如何か負けないでくれ。挫けないでくれ。
苛める奴の人間性が知れているだけなのだ。
本当は周りに支えてくれる人は居るんだ。居場所がない事はない。
己を受け入れてくれる者が一人でもいるなら、それがどんなに離れていようともそこが己の居場所になるんだ。帰る場所になるんだ。
如何か、刹那に願う。
命を無駄にはしないでくれと―――。
苛め。
此処まで読んでくれてありがとう。
初投稿で重っ苦しい内容でごめんね~。
ずーっと後悔していたことだったんだ。
やっと言葉にできた。って言っても殆どフェクションだよぉ!!あはは。
俺に関することは本当の事が多いけどさ…。
後悔って残したくないよね。