リサイクル勇者~プロローグ~

ジョルノです。
新しいシリーズ書いてみました。
異世界転生ファンタジーコメディです。
よければ読んでください。

持って生まれたこの魔法に気付かず捨ててしまったこの命。リサイクルして異世界助けます!

 よし。場所はオッケー。
 見晴らしの良い高さ。そりゃ30階建てだもんな。
 少し強い風の吹いている中、転落防止用の柵を越え、淵へ立つ。
 下を見てみると人が豆粒みたいに見える。
 ふむ、ここからだと完璧に死ねるな。
 そして飛び降りるイメージトレーニング。といっても一歩前に出るだけだが。
 どうして僕がこんなことをするのか。
 よくある話だ。受験に失敗し、働く当てもない。高学歴だった両親からは蔑まれ、 友達からは笑われる。
 そんなことで死を選ぶな。という人もいるかもしれない。
 でも、想像してみてほしい。朝起きると親からは嫌味を言われる。一日中いると気まずいので外に出ると近所の人たちのあの目線。出くわす友人には笑われ、職を探しに行っても特に長所のない僕は当てはまる職は少なく、日給ばかり。部屋に戻ってひきこもる。そしてまた親に蔑まれ、何もせずに一日が終わる。
 限界なのだ。
 ・・・・・・こんな話をすると暗い気分になってくる。人生の最後くらいは明るく終わりたい。
 そろそろいくか。なんか決心が鈍りそうだ。
 深く深呼吸。さて。
「イッツ、フライアウェェェェイ!」
 人生最高の声を叫びだし、思いっきり飛んだ。どうせ誰かが聞いても最後だから恥ずかしくない。
 
 
 全身をゴウッという風が包み、奇妙な浮遊感が訪れる。ナニコレちょっと面白い。
 そういえば僕って死んだらどうなるかな。天国とかあるかな。でも自殺だから地獄か。
 だんだん地面が迫ってくる。下の人たちも落下してくる僕に気づいたようだ。
 
 だが。
 
 人というのは一時のテンションに任せて行動すると冷静になった時に後悔する。
 だんだん頭が冷えてきた僕は怖くなってきた。
 地面が来る。すごいスピードで来る。なんでこんなことしたんだ僕は。
 いやだ。やっぱりやめておけばよかった。いやだいやだいやだいやだいやだ。
 動きがスローモーションで見える。地面が当たる。ゆっくり来る。
 ぶつかる。もうぶつかる。やっぱりやめとけば――
 
「あああああああああああああ――――――――――――・・・・・・・・・・・・・」
 
 
 
 
 目の前が暗い。目を開けても真っ暗闇だ。
 どこだここは。ていうよりなんか感覚がおかしい。妙にフワフワしてるっていうか・・・。
「そりゃ落ちてるからね」
 突如後ろで声が聞こえた。振り返ってみると妙な格好をした少年がいる。
 なんというか、未来人みたいな格好だ。
「なんで落ちてるんだ?僕は」
「君、駿河龍馬で間違いないね?」
「え?そうだけど」
「えーと愛知県在住で高校卒業後、浪人。働き手も見つからず、親や友達から蔑まれ絶望し、自殺、だっけ」
「・・・そうですが」
 なんで落下しながら自殺の原因を聞かれるのだろう。
「ていうか死んだのにここはどこ?天国?地獄?」
「プッ、君ってそんなの信じてるのかい?十八にもなって?」
 ケラケラケラと笑いだす少年。なんかすごい腹が立ってきた。
「質問に答えろ!ここはどこで君は誰だ!なんで今僕は落ちてるんだ!死んだんだろ?」
「ちょっとちょっと!質問は一つずつにしてよ」
 お前がイライラさせるからだろうが。
 少年はコホンッと咳ばらいをし、話し始める。
「最初の質問は『ここはどこだ』だったよね。ここは死んだ人が通る道だよ。霊界に繋がっている」
「じゃあ僕は死んだってことか・・・」
 今になってからやりたいことがたくさんできた。
 もっと美味しいものが食べたかった。いろんなところに行きたかった。一度でいいから恋人が欲しかった・・・。

「いや、死んではないよ」

「は?」
「死んでないよ。ちゃんと生きてる」
「なんでだよ。あそこから飛び下りれば確実に死ぬし、霊界向かってるんだろ?」
「確かに霊界に通じるけど君はそこには行かないよ。第一激突していない」
 そういうと少年はズボンのポケットから四角い紙のようなものを出した。その紙をヒョイッと投げると、紙はその場に留まり大きく広がっていく。
「なにこれ」
「これは浄瑠璃鏡さ。現世を映すねテレビのようなものだ」
「それって地獄での審判の罪人を見極める時に使われるものだろ?」
「現世だとそうなっているみたいだけどね」
 そういうとその浄瑠璃鏡は明るくなり始め、やがて何かを映しだした。
 それはビルの屋上にいる僕だった。
『イッツ、フライアウェェェェイ!』
 そう叫び、思いっきり飛びだしている。
「恥ずかしくないの?」
「あの時は誰も見ていないと思ったの!」
 あー恥ずかしい。
 そしてそのまま現世での僕は地面へ迫っていく。ここらへんで後悔し始めたんだな。
 なんか自分が地面に激突するところみたくない。飛び降りだから死体も・・・ねぇ?
 そんなことを考えているともう地面激突寸前だった。もう僕は白目を剥いて気絶しているようだ。
 あぁもう激突。大惨事、になるかと思ったら。
 
 ちょうど落下地点に穴が開いた。

 その落下地点にできた穴の中に僕は入っていき、閉じた。
 そこで浄瑠璃鏡は映すのをやめた。
「分かった?君は死なずここにいるわけ」
「それは何となく分かったけど・・・。なんであんな穴ができたんだ」
「ボクが作った」
「はぁ?ていうかさっきから思ってたんだけど君誰?」

「ボクは神だよ」

「あーあの字とか絵とか書く・・・」
「それは紙」
「じゃあ頭に生えてる・・・」
「それは髪」
「それじゃあ味を加える・・・」
「それ加味。ていうかなにその古臭いギャグ。なに?信じられないの?」
「当たり前だろーが!こんなチンチクリンな神はいねーだろ」
「天国地獄は信じるのに神は信じないんだね」
 そりゃそうだ。
 神だったら僕の人生をあんな暗黒にはしないだろう。
 何度も神頼みに行ったのに無視しやがって。
「そんなこと言われてもねぇ。君一人だけを贔屓するわけにもいけないから」
「それでもあんな状況だったら助けてくれても・・・」
 ちょっと待て。
 今コイツ思考を読まなかったか?
「うん。読んだよ。それくらいできないと神様やってけないでしょ」
「すみませんでしたさっきは生意気な口きいてホントいやマジですみませんでした」
「驚くほどの平謝りだね」
 マジか。思考読むなんてかっこよすぎるだろ。
 ホントに神っぽいな。
「ずいぶん簡単に信じるんだね」
「まずこの状況を体験してるからね」
 この永遠と続く不思議空間を。
「それで?なんで僕を助けたの?」
「神って知ってもの敬語にならないんだ」
「見た目が子供だから使う気になれなくて」
 なんか・・・すごい情けなく思えてくる。
「すごい失礼だな・・・。まぁいいや」
 するとこの落下している中、神は器用に胡坐を掻いた。
 なんか神って呼びにくいな。
「じゃあミルでいいよ」
「あ、ども」
 読心術って便利だな。
「君を助けたのはね・・・ある重要なものを保護するためなんだ」
「保護?」
 まさかなにか僕の体に秘密があるとか?
 神話の神々のすべての知恵やエデンの秘密とかはたまた神が使用する武器とか。
 こうやって神が助けるぐらいだからすごい重要なはず。
「一階のお肉屋さんの目の前に落下してしまうからね」
「人の命より肉屋かよ!」
「だって人間なんて掃いて捨てるほどいるけどあのお肉屋さんのコロッケは全世界探してもここしかないからね」
 確かに生肉とかと取り扱う店の前に飛び降りの死体があったら・・・潰れるわな。
「まぁ三割冗談なんだけど」
「七割本気かよ」
 半分以上肉屋のためか。
「じゃあホントの理由を言おうか」
 最初から言えよ。
 ていうこの声も聞いてるんだろうな。
 ていうこの声も聞いてるんだろうな。
 ていうこの声も聞いてるんだろうな。ていうこの声も聞いてるんだろうな。ていうこの声も聞いてるんだろうな。ていうこ
「うっとおしい」
「すんません」
 ゲシュタルト崩壊しそうだった。
「理由は、ホントに君には重要なものがあるからだよ」
「え、マジで」
「マジマジ。しかもそれは世界を救えるヒーローの能力だよ」
「またまた~。そんなからかわないでよミル」
「ホントだって。試しに手のひら出して力込めてみて」
 言われた通り半信半疑で手のしらを出して力を込めてみる。

 手のひらからバスケットボール大の火の玉が出てきた。

「なんじゃこりゃアアアアアアアアアアアアアアア」
 ナニコレナニコレェェッ!僕の体はエシディシしか!?
「エシディシは火の玉出さないよ。熱血なだけ」
 そうでした。じゃなくて!
 なんか出たんだけど!ナニコレ髪焦げたんだけど!

「魔法だよ」

「へ?」
 パニックで震えながら聞き返す。
「ま・ほ・う。魔法だよ。今君が使ったのは炎の魔法の『ブレンネン』。他にもあるよ。全部で五つ。『風』『火』『地』『水』『空』・・・仏教とかの五大要素だね」
「いやいやいや。なんでそんなの僕が使えるんだよ」
「いい質問だ」
 ミルはニコリと笑い、こちらを向く。
 忘れているかもしれないが、落下中だ。
「まぁ簡単に言うとスーパーマンだね。現世は悪いものばっかだ。しかもその悪はどんどん増えて神罰では手が足りない。というわけで手助けとして君にこの力をあげたわけ」
 ほー、スーパーマンか。
 かっこいいな。悪を倒して正義を愛する、みたいな。そんな力が僕にはあったのかー。気付かなかったなー。
 ・・・ちょっと待て!
「この魔法?とやらはいつから持ってたんだ?」
「生まれた時から」
「ということは今まで僕は気付かず生活してこんな真っ暗な人生送ったわけ?」
「うん。そだね」
「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
 なんだそりゃぁ・・・。この魔法に気づいていたら確実に人生に変わっていただろ。 なんてもったいないことをしたんだ僕はぁ。チクショ―。
「ホントにそうだよ。せっかく苦労して魔法を授けたってのに自殺なんてしちゃってさ」
「すみませんでした・・・」
 心からそう思います・・・・・・。
「だからその捨てた命をリサイクルさせてもらうよ」
「もうなんでもしま・・・え?リサイクル?」
 リサイクルって再利用って意味だよな。
 じゃあ生きかえれるのか?
「生きかえるのとは違うね。正確にいえば転生だね」
「転生ってのはよくアニメとかである異世界転生か?」
「そ。話が早くて楽だね」
 またニコリと笑ってミルは話す。
「簡潔に説明するよ。まず君は『シュトロゲイル』という世界に転生する。その世界を救う。以上!」
「え?いやもうちょっと・・・」
「じゃあいってらっしゃーい」
 というとミルは手から光の球を出した。
 それを僕が落下していく先に落とす。するとその球は大きくなった。
「その球に入ればシュトロゲイムに行けるよ。あ、そうだ。到着したら『空』の魔法、『フリーゲン』を使わなきゃ死ぬから。じゃあ頑張ってねー」
「ちょっと待ってもうちょっと説明をおおおおおおおおお」
 そのまま僕は光の球へ落ちていった。

 続く

リサイクル勇者~プロローグ~

新しいシリーズです。
「プロローグのくせに4800文字もあるんじゃねぇ」とお思いも方もいらっしゃると思います。
その通りです。なんでこんなに長くなってしまったのやら。
もし気に入っていただければまた読んでください。
『僕の憧れた一人暮らしは怪物によって壊されました』も暇でしたら読んでみてください。
以上、ジョルノでした。

リサイクル勇者~プロローグ~

人生に絶望し自ら命を絶ってしまった僕、駿河龍馬。 でも僕には気付かなかったある力があった! チンチクリンな神様からそのことを聞き、今度こそ有効活用するため、異世界助けちゃいます!

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-22

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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