なぞの涙

最近、年齢のせいか
疲れのせいか
何なのか
全く分からないけれども

すぐに涙が出てくる

今だって、泣けと言われたら
今の子役ばりに涙を流せる自信がある

通勤途中、15分程度駅まで歩いている道中
ふとこれから始まる一日を考えると
目じりに涙がにじんでしまう

帰宅途中、電車に揺られながら
今日のことを振り返り、
仕事の失敗や、情けなさや
なかなかうまく人とのコミュニケーションができずに
涙が出てくる

日曜日の夜、布団の中で
また月曜日からのことを考えると
朝がくるなと思って
涙が出る

自分の頭の中を整理する

仕事が辛いのか
働くことが辛いのか
人間関係が辛いのか

私はいったい何が辛いのか

これが考えても考えても
わからないのだ

職場でいじめられているわけでもない

仕事も少しずつできることが増えてきた

それでも、頭の中では
これが永遠に続いてしまうのではないかと
思うと
頭がずっしり重くなり
頭痛でめまいがする

体のどこから芽生えてきたのか
わからない恥ずかしさがある
情けなさがある

人からバカにされている気がする

オフィスカジュアルを着なくてはならぬので
ジャケットをいつも手に持って出勤している
ジャケットは妹のものだ

妹の体格がでかいせいか
ジャケットもわたしに合っていない

ちぐはぐなジャケットは
余計、わたしの身なりを滑稽にする

オフィスタワー18階まで登りながら
果てしなく高いビルにエレベーターで
上がりながら耳鳴りがする

「おはようございます」
いかにも仕事ができそうな、営業の男の人に声をかける

無視される

その瞬間、頭皮の皮がめくれて
その部分が熱くなる

脂汗をかく

かかってきた電話はワンコールで取らなければいけない
わたしは震えながら電話をとる
「折り返しご連絡いたししししまっしょうかか?」
噛み噛みだ

オフィスのルールというのは難しい

報告
連絡
相談
のほうれんそうが何より大事なのだ

そんなのわかっているけど
なんというか


なんというか



なんというか

変な気持ちだ



いつか慣れるだろう

きっとこの、変な感じのオフィスの仕事にも
電話も、オフィスカジュアルも、名刺も
取引先も、言葉遣いも、ビジネス文書も

くそくらえだけど
働かないと食べていけないのだから

ここをやめて
わたしにはいったい何ができるのだろう

何も持っていない

何かできるわけでもない


涙が出るのは
辛いからではなく
自分があまりにちっぽけで
無力なことを体中で痛感しているのかもしれない

悲しいけれど
夜は明ける

今はただ、週末を
体一つ、全身で感じることしかできない

いつか、きっと慣れるだろう

左穴からは
乾いた鼻くそが顔を出している

なぞの涙

なぞの涙

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-22

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