短編集「ギャクテン」

短編集「ギャクテン」

ハードルを果てしなく上げていくスタイル! 小浦です。7月上旬に短編をいくつかあげようと思っとります。今回はその予告編として、短編をザッピングしながら載せてあります。とりあえず期待だけ高めておきますね。落差にご注意ください。

予告編「回始」

クレノヤ・カロムはほくそ笑んだ。誰も越えることは叶わないとされる寮の壁をよじ登り、暗い土の地面を踏みしめた。月夜の風は背中を押すように強く吹き、勢いよく回る風車の音は心を奮い立たせる。

「やあ。見ない顔だね。どっから来たんだい? へえ、そんなとこから。まあゆっくりしていきな。ちょうど俺も仕事が終わって帰るところだ。なんなら案内するよ」

 男は何かを持った手で拳を作り振り上げた。途端、握りこぶしの間から黒い何かが、岩から漏れ出す水のように腕を伝いはじめる。

「気を付けろ、バンデはヤれれば人間じゃなくてもヤっちまうからな」

身を押しつぶすほどの無力感。何の役にも立つことのできない私が、砦の安全な場所でのうのうと暮らしていることが許せなかった。

「だいたいそんな小さい子が! 一介の兵士をあんな無残に殺せるわけがないだろう!」

風車を指先で逆に回しながら口笛を吹く。


「随分と手の込んだやり方だな。どれだけ待たせれば気が済むのだ?」
「しかも私たちに手伝いまでさせるなんて。いい度胸してるじゃない」
「あら、手伝っているのはこっちの方よ? 年寄りと引きこもりの運動をね。さて、泣くフリももうお終い。今度はアイツが泣く番よ」

それでは始めましょう? 私たちのギャクテンを――

短編集「ギャクテン」

短編集「ギャクテン」

こことはおそらく違う世界。帝国の魔女が世界を牛耳る中で、三人の魔女が結託して世界を総べるべく「ギャクテン」の儀式を行った。時が逆行し走馬灯をさかのぼる中で、運命の風車はどこで回り始めたのか、どこを逆に回すべきか。それを魔女たちとあなたは探すことになる。しかしあなたはそれを見つけても手出しは出来ない。なぜならあなたは儀式の生贄に過ぎないのだから。 (このバックストーリーに各短編作品との直接的な関係はないです。あしからず。)

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-21

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