夜空

月明かりが、ただまぶしかった。
静まり返った夜の道、私はなんとなく外の空気が吸いたくなってぶらぶらと散歩に出かけていた。いつだったか、遠い昔の記憶がよみがえる。そのときのわたしはまだ小さくて、誰だったのか、私より大きな、そしてとても大切な人の手をぎゅっと握っていた。
「ねえ、なんでお月様は毎日違う形をしているの?」
私は確か、こんなありきたりな質問をした。
「そうだね、不思議だよね。きっと大きくなったら分かるさ」
そう相手はニコニコと笑いながら言った。
「大きくなったときって、いつ?」
「さあね、きっとそのときにはもう忘れちゃっているだろうなぁ」

「忘れてないじゃん」私はふとつぶやいて、笑った。でも…あれ?誰だったのだろう。私より大きな人なんて、お父さんくらいじゃん…でも、お父さんじゃなかっ…
「あ、もうすぐ流れ星が見えるはずだよ、ほら、目をしっかり開けて!」
背後から声が聞こえてきたので振り返ると、パジャマをきた兄妹が玄関先で空を見上げていた。
私の吐いた息が、白く変わる。あんなんじゃ、風邪ひいちゃう…

昔、私も必死に星を眺めていたころがあったなぁ。
「夢は、宇宙飛行士になることです。」
何故か女の子なのに、そんな夢を掲げていた時期があった。周りの友達にからかわれたっけ…

宇宙飛行士…
あぁ…いつか家の大掃除のときに見つけたビデオテープで、私のお兄ちゃんがカメラに向かっていってこういっていた…
「ここの窓からは、星がよく見えるんだよ。寝れない夜は、ベッドから空を見上げるんだ。僕はね、いつか宇宙飛行士になってあの星のどこかに行くんだ。」

そうか、あの男の人はおにいちゃんなんだ。
私には、お兄ちゃんの記憶は、ほとんどない。お兄ちゃんは私が小学校に上がる前に、病気でなくなったんだ。

「願い事できた?」
「お兄ちゃんは?」
「いつか、どこかの星から、ゆうちゃんを見てみたいってお願いしたんだ。ゆうちゃんは?」
「ゆうのは…内緒!」
「ゆうちゃんのケチ!」

お母さんが「早く中に入りなさい」と声をかけた。

「まって!まだ流れ星、みてないよ!」
さっきの少年がダダをこねる声が後ろから聞こえてきた。

空を見上げると、満点の星のなか、ひときわ明るい星が見えた。
あぁ、あの流れ星は、お兄ちゃんの夢をかなえてくれたんだね。
私の夢は…今、叶ったよ。

「あの日のことを、いつかまた、思い出せますように」

夜空

初投稿で少し緊張です…
なにせ、何か書こうと思って、30分で書いたものですから、批判も多いことかと覚悟しております…
短編ですが、気に入ってくれる人がいたら、うれしい限りです!

夜空

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-21

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