花と嵐
花に嵐
〜こんなあたしでも、
受け止めてくれますか?〜
津田愛
水沼海斗
あたしは、どうして素直になれないんだろうか。
それは、この前のこと。
「お待たせ。君に何かプレゼントをと思って。はい、どうぞ。」
そういって渡されたのは、手づくりの花束だった。走っていたからだろうな、少し花がしおれている。だからあたしは
「いらないよ、そんなもの。」
そういって突き返したのだった。
君は
「ごめん、でも、受け取ってよ」
そういった。
あたしは仕方なくうけとる。そして、無造作にそれをカバンへ入れた。
「今日は、話があるんだ。」
君は、そう言う。
「ここだと話しづらいから、喫茶店にでも行こうか」
君は、歩き出した。あたしもそれについて行く。
「あのさ、明日から、旅に出ようと思う。」
君からの急かつ意外なセリフ。
「なんで?」
すかさずあたしは言い返す。
「ずっとアーティストになりたいって言ってたでしょ。だから、旅に出て、みたことの無いようなものを見て。それを活かしていこうと思ってる。」
理由がちゃんとある。君らしい。
「いつ戻るの?」
あたしは何故か聞いてしまった。
あたし自身、なんでこう聞いてしまったのかわからないだから
「あまり長くないと思う。
たぶんね。」
嬉しいはずなのに
「当分帰ってこなくてもいいよ。」
なんて、言ってしまったんだ。
よくあさ、君をバス停まで見送りに行った。意味はない。
「じゃあ、またね。」
君は、笑ってそう言うんだ。
あたしは
「帰ってこなくても、どっかで女見つけても構わない。」
そんな事、ついつい口からもれてしまう。
バスはもう発車してしまった。
君がここに現れるのは、そんなに早くない。いつもはいる君が今は、いない。近くに、いないんだ。
伝えたいことがあまりにもたくさんあった。今、そう気付いてしまった。
なんでだろう。
涙が溢れて、止まらなくて。君に会いたくて、会えなくて。今更この感情を伝えられないや。余計に涙が溢れてくる。
やっぱり、君が大好きだ。
あたしは、君が帰って来るのをこのバス停で待つことにした。
何日も待った。
嵐が来ても。雨に濡れて、ぐしゃぐしゃになった。でも少しでも早く君に会いたいからあたしはここを動かない。
あの花は、今のあたしみたいだな。
なんて、呟いてみる。
雨は、どんどん強くなっていく。
バスが走れるはずもない位だけど。ひたすらに君を待つ。
翌朝。
頭がぼーっとする。
眠い。でも、バスから降りてくる君に、あの花のことを伝えなきゃいけないから。寝ちゃダメなんだ。
そこに、一台のバスが到着した。
あの日から、何日経っただろう。
そんなこと思いながら、目の前のバスを見つめる。
大きな荷物を背負った君が、バスから降りてくる。あたしを見つけて、
ボロボロなあたしを見て、
とても驚いているようだった。
「ただいま。」
君はそう言って、昨日の嵐で風邪がを引いたあたしを、重い荷物と一緒に持ち上げた。
そこで、あたしの記憶は、途絶えたのだ。
目を覚ますと、君のベッドの上にいた。君がいないと思い、立ち上がろうとする。が、体が重くて動けない
君を待つ。
すると、部屋に君が入って来た。
「愛。ずっとあそこにいたの?」
優しそうな、そんなきみ。
あたしに問いかけてくる。
「うん。」
あたしは、素直にそう答える。
「ありがとう」
君は、笑ってそう言った。
「こちらこそ。ありがとう」
あたしも言う。君が、あたしの頭をそっとなでる。
なれてないから、どうして良いのかもわからない。
「愛、僕はきづいたんだ。」
君は、そう呟く。
「僕には、愛がいないとダメなんだって。」
なんでそんなことを言い出すのかとおもったが、あたしが君に伝えたいこと、伝えないといけないことと同じだから、なにも言わず、
「あたしも、き、君のことが大好きなんだ。」
そう言った。恥ずかしいけど、伝えなきゃいけないことだから。
「愛がそんなこと言うなんて、何かあったの?」
なんて、君は余計に恥ずかしくさせるから、
「見りゃわかるでしょ?風邪引いたの、君のせいで。」
憎まれ口を叩いてみる。
「そうだね。」
君はまた、微笑んだ。
「もう一つ、決めたことがあるんだ。」
君は、嬉しそうにそういう。
「僕は、愛を幸せにする自信がある。だから、結婚してください」
急になにを言い出すのだろう。冗談かとも思ったが、真剣な眼差しが、そうで無いこと、本気であると言うことをわからせてくれる。
だからあたしは、
「あたしも、君とじゃないと幸せになれないって、気づいたんだ。」
遠回しなOKをする。
「愛。じゃあ、これからもよろしくね。」
改まられても、返答に困るんだよなんて考えながら、
「花、くれただろ。あれ、ありがとう。」
そう言って、眠りについた。
花と嵐