僕の憧れた一人暮らしは怪物によって壊されました。3

ジョルノです。
今回はおつかいに行きます。
ただのおつかいのはずなのにやはりカオスになるのはなぜでしょう。

日曜というのは特にやることの無い日だが、チロルといるとそうはいかず・・・。

 日曜の午前。
 外では家族連れやカップルなどで賑わっている。そりゃ休日だから出かけたいだろう。
 でも僕は出ない。なぜか。面倒だからだ。
 別に外に出なくても死ぬなんてことはないし買い物に行く予定もない。
 予定もないのに外に出ると疲れるだけでバカのすることだと僕は思う。
 でもそのバカが目の前にいる。
「胡桃さぁ~ん。どっか行きましょーよ―」
「嫌だ」
「えぇー」
 僕は読んでいる本から目を離さず答える。三十分ぐらいこのやり取りが続いてる。
 諦めればいいのに。
「こんなにいい天気に出かけないなんてなにやってるんですかヒキコモリ」
「ひきこもってはいない。外に出る必要がないだけ」
「なんでですか~。暇ですよー」
「ゲームすればいいじゃん。一昨日のルミさんの会の日にSレアでたんだろ」
「飽きました」
 こんの三日坊主がぁ。
「第一、吸血鬼なら吸血鬼らしく昼間は寝てろよ」
「私みたいにアクティブで美少女な吸血鬼もいるんです!」
「美少女は関係ないな」
 そういえば前に『日光にあたっても肌が荒れるだけ』とか言ってたな。
 吸血鬼全員そうなのだろうか。
「それなら一人で行ってこいよ」
「胡桃さん。私を一人であるかせていいんですか?」
「・・・・・・あ」
 そうであった。
 言ってなかったかもしれないがコイツはクソ方向音痴だ。
 どのくらいかというと、三軒隣の豆腐屋におつかいを頼んだら四時間帰って来ず、探したら隣町の公園で泣いていた。
 どうやったら迷うんだ。
「だから行きましょーよ―。どっかにぃー」
「そうかー。チロルはそんなに外に行きたいのかー」
「はいっ!」
「確かになー。いい天気だし、外に出ることは健康にもいいしねー」
「でしょう!でしょう!」
「なによりお前を一人で外を歩かせるわけにもいかんしなー」
「でしょう!?なら今すぐお出かけに行き」
「だが断る」
「あァァァんまりだァァァァ」
 HEEEEYYYYと泣きだすチロル。柱の男か。
 あと僕のベッドの上で泣かないでいただきたい。ベッドがグショグショだ。
 
 ピーンポーン
 
 誰か来たようだ。
 玄関に行き、扉を開けるとお隣のサヤカさんがいた。
「大丈夫?なにかエシディシみたいな声が聞こえたけど」
「サヤカさんジョジョ詳しいっすね」
「サヤカなんのことだかわかんなーい」
 最近気づいたのだがサヤカさんかなりのブリっ娘だ。
「で?なにかあったの?」
「ちょっとチロルが外に連れてけってうるさくて」
「胡桃さんが意地悪して連れてってくれないんですよーッ!」
 部屋の方でチロルの声が聞こえた。誤解されるだろうが。
「連れてってあげればいいじゃない。暇なんでしょ?」
「でも特に行くとこないし・・・」
「あっ!そうだ!良い行き先知ってるよ!」
 そう言ってサヤカさんは部屋に戻る。
 数分して出てきた。その手には何か鞄のようなものがある。
「ほら、これ持って。この紙に行き先が書いてあるから」
 紙にはこう書かれていた。
『豆腐・・・3丁
 じゃがいも・・・5個
 酒・・・一升瓶8本
 トイレットペーパー・・・3ロール
 買ってきたら大家の部屋まで持ってくること』
「これお使いじゃないすか!」
 しかもルミさんの!なに人に押し付けようとしてんだ!
「お返しします!・・・ってあれ?サヤカさん?」
 いつの間にかいない。
 強引に押し付けて逃げやがった。
 このままほっとくわけにもいかんか・・・。ルミさん怖いし。
「おーいチロルー。出かけるぞー」
「その言葉を待ってましたァァァーーーッ!」
 部屋からロケットの如く飛んできた。
 しかもしっかり日光対策として帽子やら長袖やら着こんでいる。
「で?で?どこにいくんですか?遊園地?水族館?」
「ルミさんのおつかい」
「いってらっしゃい胡桃さん。帰りにアイス買ってきてください」
「ちょっと待てコラ」
 ヒョイヒョイ帰ろうとしてんじゃねーよ。
 僕だって面倒なんだから。
「ほら行くぞ」
「やだやだやだ―――――ッ!遊園地行きたい―――ッ!」
 子供みたいに駄々をこねるチロルを引きずって買い物へと向かう胡桃であった。



「あーつーいー」
「うるさいなー。そんな長袖着てくるからだ」
「お肌焼けちゃうじゃないですか!」
「え?それって日光対策じゃないの?」
 今二人は崩れ荘近くの商店街へ来ている。
 この商店街は結構大きく、多種多様な店がある。例えば野菜から装甲車の車輪部分に使われているネジ専門店まで。誰が来るんだこんな店。
「あ!あそこのネジ専門店行きたいです!」
「お前かよ」
 意外と近くにいたわ。
「買ってください胡桃さぁーん」
「自分の金で買えよ。いくら持ってきた?」
「全財産の38円です」
「毎月お小遣いで8000円渡してるよな」
 どこでそんな使ってるんだ。いつも室内でひきこもってるくせに。
「今度来た時だ。いまはお使い中!」
「ぶぅー」
 あぁもう。面倒だからちゃっちゃと済ませて帰ろう。最初は豆腐屋が近いな。
「胡桃さん、お豆腐屋さんあっちですよ」
「ん。分かった」
 向かうのはいつも行く豆腐屋。おばあさん一人で切り盛りしている。売られているのは全ておばあさんの手作りで超うまい。それでいてリーズナブルなのである。
「・・・あれ?胡桃さん、なにか人だかりができてますよ」
「ホントだ。なにかあったのかな」
 豆腐屋の前にたくさんの人が集まっていた。
 集まっている人たちは時折、「おぉー」という感嘆のような声をあげている。
 その人たちの内の一人に聞いてみる。
「なんかあったんですか?」
「いや~今ね、豆腐の早食いのキャンペーンをやってるらしくてね。豆腐200丁を30分で食べきれば1万円だとさ。それでなんかゴリラみたいな兄ちゃんが挑戦しててな、その兄ちゃんがすごいんだよ」
「豆腐の早食いっすか・・・」
 なんか妙にキツそうなことしてるな。
 でもそんなことしてたら豆腐が買えないな・・・。
 まぁ特に急ぐわけでもないし見てるか。
「おばちゃーん!豆腐おかわりぃーッ!」
 挑戦してるらしい人がおかわりを頼んだ。確かにハイペースのようだ。
 でもこの声聞いたことがあるような・・・。
 人混みをかき分けて挑戦している人を見てみる。とその人と目があった。
「お!胡桃じゃねーか!」
「トラオさん!?」
 何やってんだあの人!ダメだよあんた早食いなんてやったら!店潰れちゃう!
「おばちゃんおかわり!」
 僕と話しながらもモゴモゴ食べるトラオさん。
「はい、これラストねぇ」
「すごいぞあの兄ちゃん!まだ5分しか経ってない!」「何者だ!」
 いや、いくらなんでも早すぎるだろ。豆腐飲んでるんじゃねーの。
「ッあぁー!うまかったーー!」
「早ッ」
「おかわり」
「それラストでしょうが!」
 200丁食ってまだいくか。底なしだな。
「ごちそうさまっしたー」
「ちょっとちょっとお兄さん。賞金の1万円は・・・」
 豆腐屋のおばさんが引き留める。
「あぁ?いいよ。こっちはただ飯食ってたんだし」
「でも・・・」
「いいっていいって。うまい豆腐食べさせてもらって金払いたいぐらいだ。それじゃ!」
 そのままトラオさんは走ってきた。
「よう!どうしたんだお前ら」
「いや、ちょっとお使いで・・・ていうかいいんですか賞金」
「大丈夫だよそんぐらい。飯食っただけで金もらうなんておかしいだろ」
 トラオさんマジカッケー。
「ところでお使いと言ったな。暇だしつきあうぜ」
「え、いいんすか」
「おう。やることないしな」
「じゃあトラオさん!あそこの店のネジ買ってください!」
「いいぞチロルちゃん!なんでも買ってやろう!」
「トラオさん、甘やかさないでください」
 なんか人数増えちゃったな・・・。
 無事に買い物終わるかな?

 続く

僕の憧れた一人暮らしは怪物によって壊されました。3

ただのおつかいのくせに続きます。すみません。
最近、自分がおつかいに行く機会があったので書いてみました。
次回でおつかい編は終わります。
次回はどうなるのでしょうか。僕にもわかりません。
以上、ジョルノでした。

僕の憧れた一人暮らしは怪物によって壊されました。3

日曜日は特にやることのない人も多いと思う。 僕だってそうだ。まず家の中でゴロゴロしていたい。 でもチロルは吸血鬼のくせに外に出たいと喚き、さらにひょんなことからおつかいへ・・・。 普通におつかいすらできない僕らの日常、お楽しみください。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-19

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