seasons...第三章、秋・cosmos

seasons...第三章、秋・cosmos

物語上で起こった一部一部の出来事には、ノンフィクションが含まれております。
が、全ての固有名詞は、実在の物とは一切関係はありません。
基本的にフィクションな青春物語です。

話の量にバラツキはあるものの、日付毎にチャプター分けをしていますので、
読んでいく際の目安にお使いください。

それでは、お時間のゆるす限り、お楽しみください。

11月 1日 火曜日。


 天気は快晴。

 僕は快晴な日が大好き。

この、雲ひとつさえない、真っ…っ青な空が…―。

―大学迄の道のりの途中、今回の主人公・宇野雅美がいた―

―瞼を閉じて、鼻からこの清々しい空気を吸い込む。

体中に行き届いた感覚を感じたら、

「はぁ〜っ」

と、

口からはいた―

「ん〜…あぁっ えぇ〜気持ちやなー…」

―今度は“のび”をしながら、

そう、呟いた―

 瞳に映る、この青い空。

毎日、空を見上げとぉ。

だって、大好きやねんもん。

毎日見たくて当然やん?

ってか、寧ろ…

見上げれば、“そこ”にいてくれてる。

だから、

見上げとるんかなぁ…

 昔から空は大好きやった。

特に、秋の空は冬にむけて変わりだす。

空気が澄み始め、より、空の色が鮮明に見える気がする…だから、

気づけば、秋の空が特に好きやった。

―雅美は、まだ空を眺めていた。

いつの間にか生まれていた雲が、気持ち良さそうに空を泳いでいる。

そんな様を、只々、眺めていた―

 えぇなぁ〜雲は。

―心の中で呟いた―

 気持ち良さそうやなぁ…

果てしなく続くこの空を、何処迄旅していくんやろ?

時間も何にも気にせんでええもんな、

僕も そう なら、最高やのに…

秋の空は、いつだって僕を そういう 気持ちにさせる…

瞼を閉じて、深く深呼吸をした。

吸い込んだ“空”を身体(からだ)の中から感じたら、

このまま、少しずつこの“あお”に溶けていける気がする。

―いつの間にか広げていた両手を、ゆっくりと天にかざす―

「手ぇーの平をぉ太陽に〜透かしてみーれーばぁ〜…」

 静かやなぁ…

―力なく、両手を下げ、

そっと、

「 」

呟く様に詩を歌った―

 僕が想ったのは、

キミっていうのは、

他でもない、

誰でもない、

只、

広い

この“あお”

この 空 だ…。

 いつからか、空への想いは募っていた…

溶けてしまいたい程に。

まるで、永遠の片想いの様な…、

純愛の様な…。

それ程迄に愛おしく想えてならない、この空。

僕が死ぬ時は、この“あお”に溶けて消えたい。

いつから、そんな感情が生まれていたんやろう…?

こんな想い、こんな感情、

未だかつて、誰にも語った事のない気持ち。

親友のたかぴーにも、語った事のない気持ち…。

…ま、

語る必要もないけどね。

だって、照れるやん。

「はあ〜あ…」

 よし、ガッコ行こー

せやけど、最近いっつもこんな調子やなぁ…

―清々しい気持ちで雅美は、ようやく大学へと歩き出した―
 
 
 

11月 2日 水曜日。


 天候快晴。

―雅美は今日も、大学迄の道のりの途中にいた―

 今日も清々しい位の天気や。

僕の心は、昨日以上にキレイに洗われていた。

瞼を閉じると、このまま空に吸い込まれていく様な感覚にさえ陥る…

自分でも、ここ 二・三日の精神状態に不安を感じていた。

秋が深まるにつれ、何故か恋しくなる空…。

世間一般には人恋しくなる季節なんやろうけど、僕はそうじゃないらしい。

まぁ、恋しくなる相手がおらんから好きな空に心が奪われるんか……

自己分析は絶えない………。
 
 
 

11月 5日 土曜日。

 天候 快晴。

 二日振りに雲ひとつさえない空に会えた。

どうも力が入らなかった二日間とは比べ物にならない位、今日は心も身体(からだ)も調子がいい。

今日こそ…

今日こそは出逢ってやる…

「カモーンUFO」

 …などど叫んでみる……

おかしいなぁ…雲ひとつさえない、すかっぱれの空にUFOは現れる! …筈やのに?

やっぱり単なる自分の思い込みだけやったらアカンのかなぁ

「おい、雅美」

雅美「はっ、たかぴー。どないしたん?」

尚広「それはオレの台詞や…さっきから何独り言いってんの。どないしたん? お前…」

雅美「あは、は」

 たかぴーの目が呆れている。

いつの間にか興奮し過ぎて全て声に出てたんや…

尚広「ほら、行くで〜」

雅美「あ うん、」

 今日は、たかぴーとららぽーと甲子園にて買いもんです。

尚広「ひさしぶりやわー買いもん」

雅美「もう冬服? 早ない?」

尚広「アホやなぁ〜雅美! もうすぐ何があると思っとん?

それに今から用意しとくもんなの! 秋は早いねんで」

雅美「ふぅ〜ん…」

 秋は早いんかぁ…ちょっと淋しいなぁ…

尚広「で! 聞いとぉ?」

雅美「ん〜何かあったー」

尚広「えーちゃんと聞いとる? ちゃんとガッコ行事は参加しようぜ?」

雅美「えー… うん…。あぁ、学祭? やっけー」

尚広「そうやで! んも〜なんで忘れるかなぁ?」

雅美「ん〜…ってか、たかぴーはなんでそんなに燃えとるん?」

尚広「おいおい〜学祭と言えば! 来年うちの大学に来ようかな〜

思てる子らが期待に胸膨らまして遊びに来るかもしれへんやろ?

なんてったって、出逢いやん? 出逢い〜」ふふっ

雅美「ふう―――ん・・・」

尚広「相変わらず興味ないのな、お前って…」

雅美「僕は特にね…たかぴーはいい加減、彼女つくらへんの?」

尚広「今はね〜自分ひとりが楽っていうか、皆とバカやんのってホンマに楽しいし、

グループ交際とかもええんやろうけど、いろんな子とフランクに付き合うのが

今のオレには合ってる。っていうか、今しか出来ん事ってたくさんあるし。

…まぁそんな感じ?」

雅美「ふぅ―――ん・・・。たかぴーって、案外ちゃんと考えてるねんねぇ」

尚広「雅美…お前オレの事どう思っとったん?」

雅美「只単に面倒くさいんかなぁーって」

尚広「それ、雅美やろ?」

雅美「うん。多分」

尚広「まぁ〜好きな子に尽くしたりしたいケド、

フリーじゃないといろんな子と気軽にデート出来へんやん? やっぱ」

雅美(「やっぱりたかぴーはたかぴーやね…」)

尚広「ん?」

雅美「ううん。

あ、僕このパーカー好きかもー」

尚広「紫…」

定員「お客様お似合いですよー」

雅美「うん、僕もそう思う」

尚広「あっそう〜

お、このベルトとかいいなぁー」
 
 
 

 昼食はたかぴーの希望により、チキンの美味しいお店で食べた。

尚広「雅美が好きそうな店やな〜」

雅美「うん。結構お気に入りかも」

尚広「天然石の指輪か…」

雅美「数珠(ブレスレット)は持ってるけど、なんかいいねぇ〜」

尚広「うん。オレこのラピスラズリにしよっかな。星が散らばってる感じ」

雅美「(魔除け…)ええと思うよ。僕とお揃いになるね〜」

―左腕に着けているラピスラズリのブレスレットを見せる―

尚広「…うーん、忘れとった。いや、別に嫌ちゃうんやけど。なぁ?」

雅美「そやね〜

あ、たかぴーピンク好きやん? コレは?」

尚広「ん? ローズクォーツ? へぇ〜淡くて優しい色やな」

雅美「(恋愛運アップ…)

あぁ!」

尚広「ど、どないしてん? いきなり…」

雅美「空色〜? 僕コレ買うわぁ」ほぅ〜っ

尚広「深い色やん?」

雅美「夏の濃い空色! 秋の薄〜い空色も好きやけど、この色えぇなぁ〜〜

なんか、いつも空を身近に感じるっていうか…」うっとりー

尚広「(あーぁ、自分の世界に入っちゃったよ)

わかったわかった、Love songはその内聞くから☆ 買(こ)うたら? オレも買うし」

雅美「待って、コレがいいから合う指…」

尚広「ぁオレも。適当に選んでたわ。どの色がいいかなー」

 …結局、たかぴーは左手小指。僕は左手中指にそれぞれしっくりきた。

※色の濃さや大きさが異なる為、各自お気に入りを探した結果。

尚広「ふんふん〜燃えるなぁ〜学祭っ」

雅美「…萌え?」
 
 
 

11月 7日 月曜日。

 天候、晴天。

―相も変わらず、空に心奪われっぱなしの雅美がいた。

足元ではなく、殆ど空を見上げて歩いている―

雅美「っああー!」
 
 
 

―大学―

雅美「たったかぴぃー!」

尚広「おー雅美。どないしてーん?
ってか、なぜオレよりいつも家を先に出てんのに、いつもオレより遅いのよ?」

雅美「ま、お、ぼく…っ!」

尚広「は? 魔王?」

雅美「ちがっぼっぼくっ!」

尚広「おちつけー」

雅美「    」口ぱくぱく

尚広「はい、吸ってー」

雅美「すー」

尚広「はいてー」

雅美「はー」

尚広「はい、どーぞ☆」

雅美「〜…僕! ついに見てん!」

尚広「何おう?」

雅美「U・F・O!」

尚広「…へ?」

雅美「あー! うたごうてる!※(疑ってる)

ほんまやってー見てんから―…」

尚広「落ち着け雅美!」雅美の両肩に手をおく。

尚広「で、宇宙人は乗っとったんか?」

雅美「いや、そんなん見れてへんよ。空の彼方におったんやから」

尚広「いいか、

宇宙人はお前やんか!

今更何言――てんねん」

雅美「はぁ…! た…たかぴー。いつから気づいとったん?

僕、びっくりやわー」

誠「本マばびっくり!」

宜之「お――い。誰がつっこむねん。このボケにボケ返し。」

尚広「おや宜之くん。に、誠」

誠「え、何々? ふたりでエムワン目指してんの〜? あっは〜笑い飯〜?」

宜之「ハイハイ。マコは黙っとこうなぁ」

誠「えー」ぶーぶー

尚広「いやぁー誰がつっこんでくれるかなぁ〜と☆ 堀一かと思っとったら。」

宜之「学祭で忙しいねん。確か」

誠「楽しみやなぁー? もう、今週やもんなっ」

雅美「ま、まじ?」

誠「んがーゼット!」

雅美&誠「…」無言で硬く握手

宜之「こーらーしようもない事で団結しとらんと」

尚広「あはは、ほんまやー」

雅美「で、さっきの話やねんけどー」

尚広&宜之「いきなりかいっ」

雅美「ほんまに見てんて〜雲ひとつない空に魚の骨の形した物体がぁ!」

誠「えぇ? そんな大ーきな魚のホネ? くーさん?」

尚広「それ魚ちゃうやーん」

宜之「話進まんわっ」

尚広「sorry〜」

雅美「骨ってゆうかぁ〜棒っていうかーキラキラ光っててー…う゛ーん」

誠「ゲッソー?」

雅美「近いかもしれへん」

尚広「嘘ん」

宜之「マコ〜〜話を脱線させんといてくれ」

誠「えーん」

尚広「よしよし」頭なでなで

宜之「甘やかさんといて」

雅美「カメラで証拠撮ろうかとしてんけど、間に合わんくてー

キラッ! って光った瞬間目ぇ閉じちゃって、その間に消えててん!」

尚広&宜之&誠「えぇ――??」

雅美「信じられへん話やろうけどほんまやねん。

今ニュースとかで何にもしてないんようやったら、間違いなくUFOやわ!」

尚広「携帯ニュースでは何もいうてへんしなぁ〜100%うたぐってはないケドなぁ〜

なんなんやろな? ソレ」

宜之「普通〜に飛行機なんちゃうん?」

誠「え〜タカ夢ないよ〜

でっかいくーさんのホネが天に昇ってる最中に猫の形した雲に食べられちゃったんやって〜あはは」

雅美「マコっちゃん…」

誠「ねぇ?」

雅美「それはいくらなんでもあらしまへんわ」

尚広&宜之「うんうん」

誠「ガーンっっ宇野っちならノってくれると思ったのにぃーっ、わぁーん」

―走って教室を出て行く誠―

尚広「ほぉっといてえーの? あの子」

宜之「うーん。今は寧ろほおっておこう。」

雅美(「ごめんねぇ誠くん、」)

尚広&宜之(「アイツ…本マに同い年か?」)

宜之「桃香ちゃんの影響かねぇ」

堀田「おーい、そこらへんでこんな子拾ったけど?」

誠「えーん、なんで元おった場所に戻すねんホリイチのバカ〜」

堀田「すねない、すねない」

雅美(「“ふりだしに戻る”やね、誠くん…」)きらりん☆

原「おい、一郎なにしとんねん―…お前らは?」

尚広「あ、いやぁ…ははは。怒っちゃいやん☆」

原「無駄口たたいてないで暇やったら忙しいヤツを手伝ったらんかいっ!」

宜之(「あ〜ぁ怒らせた」)

尚広「きゃーデビル俊介〜★☆ おお恐っ! 逃げるぞ雅美〜」

雅美「ぁ、うんー(どっちかっていうと、サタン原くん…)」

―あっという間に尚広に連れてかれる雅美―

原「あ、こぉら! 鈴木〜っっ」

堀田「まぁあいつ等は俺と一緒やし、心配すんな」

原「甘いぞ。」

堀田「大丈夫。鈴木にぴったりな仕事めっちゃあるから」にっこり

原「え、それならえぇけど(微笑みの裏が恐い…。てか宇野はお咎(トガ)めなしなんか?)」

宜之&誠「・・・」

原「で。お前らコンビは何してんねんな?」

宜之「ちょっと話しとっただけやん、怒んなよ〜」

誠「ホンマ―…」

宜之「それにオレは真面目や」きっぱり

誠「えぇ?」

堀田「そやなぁ〜こういう時、日頃の行いが勝つな」

誠「ホリイチまで!」

原「しゃーないなぁ、ここで喋ってんのも時間の無駄やし。じゃあさっさと仕上げに行くで」

誠「えー」

堀田「あぁそうか、誠くんは他のとこも手伝いたいわけやな? よし、じゃあ一緒に行こうか」

誠「へ?」

原「最後は戻ってこいよ〜」

宜之「邪魔したらアカンで」

誠「…タカぁ…俊介ぇ〜」くすん

堀田「泣きそうな顔するね〜 俺が悪者みたいに」

誠「違うよ〜だって、二人とも冷たいねんもん。

原はいつも以上に怒りんぼやし。タカはなんかボケにノってくれへんし。」

堀田「(色んな意味で天然やからなぁ〜誠くんは。)あんまり気にしない方が。

からかってるだけやって。あいつ等なりの愛情表現かなんかとちゃうんかな」

誠「そっかぁ〜? そうなんかな〜」

堀田「それに、これは俺なりに気を遣ったんやで?

“なぁなぁ”になるのっていくら友達でもアカンやろ? たまにはちょっと距離置いてみたら」

誠「…うん。有難う! ホリイチ! 僕の為にっ」

堀田「少しは元気でたか?」

誠「うん! お腹減った!」

堀田「…試作のたこ焼きでも食うか?」

誠「わぁい」

堀田「食べたら働こな?」

誠「はぁい」

堀田(「…なんか喧嘩したカップルの仲介役みたいやね、俺」)
 
 
 

11月 8日 火曜日。

原「オィ〜ッス〜」ブロロ…

尚広「おっす! 原〜。ってめずらしいね? バイクなんて。

ってか徐行やめて★ ケホッ…」

原「あ、すまん。まぁ〜たまにゃーなー。何や? 寝不足か?」

尚広「〜そやねん〜昨日、雅美の話途中で切ってもたから、家に帰ってから延々とやで…」

原「こういう時一緒に住んでたら結構ヘヴィな、」

尚広「しまいにゃ〜UFOの存在を他国は利用してなんたらかんたら…。

空想家なんか現実的なんか、ようわからんわ」

原「ソレでよく一緒に住んどーなぁ? 感心するわ」

尚広「まぁーねー腐れ縁。てヤツかな? なんか憎めないキャラなんだよな、うん。オレと同じで」

原「ふーん。ソレはどうか知らんけどな、

ん? 何?」

―バイクに付けてあったメットをかぶり、後ろに乗り込む尚広―

尚広「乗っけて」

原「へーへー」

尚広「…昨日は、すまん。」

原「…飛ばすぞ。」

尚広「きゃーかっくいー」
 
 
 

―走る事数分―

原「(ん?)オイ、あれ宇野ちゃうんか?」

尚広「…えー? あ〜もう、また空ばっかり見て歩いて〜あの子は」

原「(止まるか…)」

―スピードを落とそうとした矢先―

雅美「あっ…」

―雅美はよろけ、原達の前に倒れ込んでしまった―

原「げっ!」

尚広「ちょっ」

―キキーッ! ガッガガー…―

原「っ!…」

尚広「ま、雅美ーっっ!」

―バイクを降りて駆け寄る―

尚広「大丈夫か?! しっかりー」

雅美「…あー? たかぴーどないしたん? ちょっとよろけてしもただけやで」

尚広「あー…

もぉ…心臓止まるかと思たぁ…」

雅美「へ?」

原「どけ! 鈴木。ソレは俺の台詞や…」

雅美「あ、原くん」

原「お前なぁ! 俺等を殺す気かっ?!! 俺を人殺しにさすつもりかっっ?!! あぁん?!」

―雅美の胸ぐらをつかむ―

尚広「お、原! 落ち着け!! コブシはっっ」

原「殴らせろ…

気がすまん…」

尚広「雅美! お前も、ちったぁしっかりしろ!! アホー」

―パーン! と、泣きながら雅美の頬を叩いた―

雅美「…

ごめん、なさい…」

原「…ったく」

―スピードを落としてはいたが、バイクは軽傷。原は足を少し擦り剥いてしまっていた―

誠「俊介! 遅かったやん〜」

宜之「どないしてん? …大丈夫か?」

原「…ほっとけ。」ガタンッ

誠「あ、荒れてる…」

宜之「…」

雅美「…どぉしよ たかぴー…

僕、本気で原くん怒らせてしまった…。」

尚広「…うーん、そうやな、オレは後ろやったし、幸い無傷ですんだけど…

原はバイクにも自分にもケガおってもたからなぁ…」

雅美「どないしよう…」

尚広「ちょ、おい雅美?」

雅美「たかぴー…ほんまにごめんなぁ…ごめんなさい! 僕のせいで」

尚広「雅美…」

雅美「僕…

うっ…

ひとりで考えてみるわ。

うぅっ…うっ…」

尚広「雅美…。

泣きながらどっかいってもたけど…大丈夫かなぁ…」

オレ、なんもしてやれへんのかな…―
 
 
 

堀田「あー…原がね、」

宜之「そ、何かあったんかな、と思ってさ。

意味なく怒る奴じゃないから。」

堀田「ん〜…まぁ…怒るんも無理はないかな」

宜之「?」

堀田「鈴木の話によると…」
 
 
 

宜之「ほい、一息」

原「お、さんきゅ」

宜之「たいした事なくて良かったな」

原「聞いたんか?」

宜之「尚広発・一郎経由で」

原「そっか、

…マジ、びびったし、

焦った。

他人でも、ダチでも、あんなん…マジで落ちるわ」

宜之「…うん、そうやな

バイクは…?」

原「俺の相方やからな、きっちり宇野に請求したった」ふっ、

宜之「ま…な、」

原「…俺はまだよーわからん。

宇野とは特に接点ないし、昔から性格知ってるわけやないし。

でも…

俺が殴ろうとした時、鈴木が宇野の頬を叩いとった。

俺の勢いよりも、アイツからの方が、気持ちは堪えたやろなって思う。

ホンマ。…あれだけですんで…ホンマに良かった…」

宜之「…俊介が無事で良かったよ」

原「なんやねん?(いつもは呼ばんくせに)」

宜之「少し怪我してもたけどな?」

原「こんなんたいしたケガちゃう

ジーンズが破れたことの方が直らんから大変や」

宜之「なんやそれ」

原「わざととか思われたら嫌やろ?」

宜之「はいはい」

原「なん」

―原の頭にガシッと手をおくと、ポンポン。と、優しく叩いた―

宜之「じゃーなー」

原「…なんやねんな…」

堀田「泣いてんの?」

原「うぉおっっ〜?!

いきなりくんなよっっ!」

堀田「いやー宜之に先越されたから、出番伺っててん」

原「俺モテモテやな」

堀田「宇野なぁ、まぁー九割方ボーッとしてるけど、

でもなぁーんも考えんと生きてる訳やないからな」

原「そんな奴おらへんやろ〜〜」

堀田「何? もう慰めんでも平気なん? つまんないなぁ」

原「…焦ったところでどーよ?」

堀田「まぁね、あの子は…ちょっと人と距離を縮めるのが苦手って言うか、時間かかるみたい。

独特な世界持ってるし」

原「よぉわかっとるやん」

堀田「原よりは、ほんの少しだけは知ってると思うよ。

俺、どっちかって言うと観察魔やからね」

原「あー」

堀田「納得された」

原「俺…ガキっすから」

堀田「人それぞれっすから」

原「慰めに来たんちゃうん?」

堀田「もう慰めいらんやろ?

そんだけ言えて、わかってたら…心配もそこそこでええかなーって。兄さん安心やな」

原「ふはっアニキッッ」

―立ち去ろうとする堀田―

堀田「あ、宇野なぁー今迄に無い落ち込み様やったわ」

原「…」
 
 
 

雅美「う――ん…」

―コンコンッ。ドアをノックする音がした―

雅美「うぅ〜ん…」

尚広「雅美?」ガチャ

雅美「…」

尚広「おーい」

雅美「…ぁ…何ー」

尚広「夕飯! 返事しろよ〜焦ったやん。何やっとん?」

雅美「あ…写真部の」

尚広「え? 明後日やろ? 間に合うの?」

雅美「大丈夫。貼るだけ〜」

尚広「へぇ〜しっかし、えらい壮大やなぁ〜

めっちゃええ感じやん! オレ、好きやなぁ〜

なんか、雅美らしいよ」

雅美「ほんま? 嬉しいー」

尚広「どーせやったらラインストーンとか貼ったら?

ほら、ってあーこんなんしたら、せっかくの写真がな〜」

雅美「…

…たかぴー」

尚広「ん?」

雅美「ありがとう」

尚広「え?」

雅美「ふふ」

尚広「ほらほら〜飯冷めてまう」

雅美「はぁーい」

尚広「ん? …コレ」

―床に乱雑に散らばっていた写真の中から一枚拾った―

雅美「あっ…」

―パシッッ

 尚広からその写真を素早く奪う―

尚広「え?」

雅美「…見た?」

尚広「それ…」

雅美「…なんでもないねん」

尚広「でも、それっ――」

雅美「なんでもないってー こんなん――」

尚広「アホ! 何してんねん」

―写真を破こうとした雅美から写真を取り上げた―

雅美「…」

尚広「…なぁ?

ん〜…こう考えてみぃひん?

この、ジグソーパズルみたいなたくさんの空の写真の下に、ポツリと置くねん。

なーんか、いろんな空、旅してるみたいでカッコイイやん」

雅美「…何言うとん
 
それは…」

尚広「原。…やろ?」

雅美「…」

尚広「お前の態度見たらわかるよ〜それに、これは原のバイクや。

乗ってる本人はフルメットやから顔はわからんけど」

雅美「…僕は知らへんかってん。

空の写真撮ってて…振り向いたらすごいええ感じに見えたから

一枚。」

尚広「全然知らんかった。原は?」

雅美「多分、気付いてへん。フラッシュたかんかったし

その直後に…

せやから、こんなん…載せられへんよー…」

尚広「でも、よぉ撮れてる。…オレは、前後の事情なんて知らん。

単純にこの写真が好きや」

雅美「たかぴー」

尚広「原がどう思うか…雅美は充分に考えて、この写真はぶいてたんやろ?」

雅美「…うん」

尚広「原やったらって、そんなん原自身にしかわからん。

でも、これが事故のきっかけになったんやとしたら、これがふたりの仲直りのきっかけになるんちゃうかな?

お前の不器用な、生き方。…でも、ええ生き方やと、オレは思う。
 
雅美も、ホントは悩んでたんやろ? だから、ほかさんとサイズを引き伸ばしてでもおいてたんちゃうん?」

雅美「…

すごいなぁ…たかぴーは。

なんで、そんなに僕の事。

わかってくれてんの?」

尚広「ほらほら。何泣いとんねんな〜男やろ! 泣き虫やなぁ」

雅美「…ありがとう」

尚広「この写真、このままのせよ」

雅美「ぇ、でもシワが…」

尚広「ええねん、ええねん。これがいいの! キレイなもん載せたら、アイツには逆効果やで、きっとな

で、…これをベースに…

ほら?

な? って、勝手なことしてんな、オレ」

雅美「ううん。

これー、…僕のしたかった事やよ。」

尚広「お前の気持ちは、伝わるよ。大丈夫!」

雅美「ありがとう。ホンマ有難う。

  たかぴー…大好きやー」

尚広「ん、ヨシヨシ。

ほな、飯食べんぞ〜」
 
 
 

11月12日 土曜日。

 天気・晴れ。

誠「そんなこんなで、学祭の日がやってきた!」

宜之「お――い、マコ。誰に何を言うとんねん。行くぞ〜」

誠「あっは! まって〜」

原「くはっ」

誠「寝不足? あくび…」

原「ま」

誠「そおいや、仲直りしたん?」

宜之「でた! マコの直球ーストレート」

原「ん〜…どないやろなぁ。あれから変に会わへんし」

誠「避けてんの?」

宜之「避けられとるんか…」

原「どないやろ?

どーするかなぁ」

―指ポキポキ…―

誠「え〜アカンで! ちゅんちゅけ!」

原「なんやねんなぁー誠くん」にやにや

誠「わ〜原が変やぁ〜〜」

原「おらおら」

宜之「朝から元気やなーお前ら…」

誠「きゃータカ助けてぇ〜」

?「誠さんっっ!」

宜之「ん?」

誠「ほえ?」

?「誠さぁ〜ん! 会いたかったぁっっ!!」ぐわしぃ~っ

―宜之から誠をはがしてハグ―

原「あ…」

宜之「ん?」

誠「ぃいたい…

ん? …てら?」

寺原「はい! オレっす!

こんな人ゴミでも、すぐにわかりました!」

原「…」 キラキラが見える…

誠「あっは! てら〜久しぶり〜! 元気しとったぁ?」

寺原「もうっ誠さんに会えない日々が続いて…めちゃめちゃ寂しかったです!!

また顔見せに来てくださいよ〜どっか行きましょうよ〜」

誠「うん。原と行くよ〜」

原「そやな」

寺原「あ! いらしたんですか原さん!」

原「どーも〜」

宜之「誰? 後輩?」

誠「うん、高校ん時の野球部の〜寺原隼人くん」

宜之「へー」

寺原「あなた…が、斉藤宜之さん…?」

宜之「え」

誠「てら、よくわかったね〜」

寺原「そりゃあもう…散々、いえ! よく誠さんから話は聞いてましたから。

すごく仲がいいそうで!」

宜之「まぁ」

寺原「誠さんが、あなたと同じ大学に行く為に猛勉強したぐらい…だとも」

原「見てたんかい」

誠「うん、そー」

寺原「きっ!」

―宜之を睨む―

宜之「え?」

寺原「誠さん!

オレ、来年ここの大学受けますから!!」

誠「そーなん? わぁ〜楽しみ〜

てらなら頭いいから全然大丈夫やで! それよか他の大学も…」

寺原「いいえ! オレはここがいいんです!

誠さんと一緒の大学がいいです!」

誠「そっかぁーありがとう、てら〜待ってんで」あは

寺原「はい!」

原「…(別のアホが増えそうだ)…」

宜之「(なんだコイツ)…」

原「…俺、ちょっと…」

宜之「何処行くん?」

原「探さないで下さい」

宜之「ぉぃぉぃ…(コイツ等どないせーっちゅうねん)」
 
 
 
 
 
 

“空パズル”

見上げた空…

どこまでも 澄みきった青が

胸の奥まで染めていく…

雲が道を知らせ

風が背中をおした

あなたまでへの道程

このまま走っていくよ
 
 
 
 
 
 

―沢山の空の写真が、パズルのように組み合わせて貼られていた。

 その、大きな作品に載せられた、宇野の詩的メッセージ―

雅美「…」

尚広「えー感じやなぁ〜また、一段と違う仕上がり具合になったな」

雅美「…うん」

尚広「この部屋も…一色SKYブルーやし!」

雅美「頑張ってんー」

―満面の微笑を浮かべながら言った―

尚広「おお、そかそか(いつになくハイ↑テンションやな)」

女子A「鈴木くぅーん」

尚広「ん? 何ー?」

女子B「えーここめっちゃキレイやーん」

尚広「でしょでしょ〜ポスカとかも販売してんねん、買(こ)うてってよ〜」

女子C「私これ買おっかな」

女子B「うちこれがええなぁ」

尚広「お! わかってんね〜まいど〜」

女子A「それでな、ちょっと話が」

尚広「ん? 何々〜?」

―尚広、女子と入り口付近に移動―

雅美「…」

?「吹き出しに「…」が出てるで」

雅美「え」

?「やほ」

雅美「あー…やえ先輩。

お久しぶりですー。」

やえ「元気しとったぁ? 宇野くん! 夏以来やね」

雅美「夏休みはお世話になりました」

やえ「も〜そんなんええって!

これ! めっっちゃいいやん! あたし好きやわぁ

宇野くん、ちょっと見ぃへん間に個性の出し方変わってきたね」

雅美「え? そう、ですか」

やえ「うん。なんか…これ…

君の空への偉大な愛と、葛藤をしっかり感じれる!

すごい…うん、ええ作品や。

って、高だかサークルのOBってだけでなんや偉そうやんね? ごめーん」

雅美「そんな事ないです。やえ先輩にそんなに褒められると嬉しいです。

たかぴーも…あ、えとあっちで話してる子」

やえ「友達?」

雅美「はい。

僕のー…大切な、人です」

やえ「ええ親友ってとこかな?」

雅美「…」

やえ「あはは、照れと〜」

雅美「ゆっくりしていってください」

やえ「うん」

雅美「ぁ…」

やえ「?」

原「…よぉ」

雅美「…おはよー…」

原「…」

やえ「友達?」

雅美「はい。あ、えと部の先輩の――」

やえ「どうも〜OBです」

―にこやかに手を差し出す やえ―

原「…どうも」

―軽く会釈だけで返す原―

雅美「…」

やえ「…(何? なんや愛想悪いオトコマエやなぁ〜何故にご機嫌ナナメ?)

あ! 写真〜! 撮ったげるわぁ」

雅美「え」

原「いや、」

やえ「いーからいーから。今日の記念に(たかぴーとやらもフレームに入れといてあげよう(笑))

はーい! 笑って〜」カシャ

やえ「ガッコ宛てに送るね」

雅美「はい」

原「(へんな人)」

尚広「もぉ〜ちょ聞いてよぉ〜いい感じに誘われた思たらさ〜只の勧誘やってん!

しかも目当てオレやないんやと〜どう思う〜?」

―雅美にからむ―

原「からむな、からむな」

尚広「…なーんでこんなんがええんかねぇ〜オレの方が乙女心わかってんのに」

原「は? 俺がなにしてん?」

雅美「(たかぴーに乙女心ねぇー…)」

やえ「モテんのね〜ふたりとも」

尚広「ん? どなた?」

やえ「あ、ここのOBです〜」

尚広「鈴木尚広でっす! 気軽にたかぴーって呼んでくださぁい」

―握手―

尚広「いやぁ〜」にこにこにこ…

やえ「あはは」ニコニコニコ…

原「いや、もうええやろ」

尚広「そ?」

やえ「あ、あたし、そろそろ行くわぁ友達と来てるし。

今日来てホンマに良かった。宇野くんの作品見て、ちょっとシゲキ受けたし、

またね!」

雅美「あ、ありがとうございます〜はい。またー」

尚広「可愛らしい人やなぁ〜」

原「ふぅ〜ん」

雅美「たかぴー」

尚広「ん?」

雅美「いくら、たかぴーでも、やえ先輩に手ぇ出したらアカンでー」

原「宇野?」

尚広「まさか」

雅美「…原くん、」

原「え? はい(なんで俺?)」

雅美「…本当に、ごめんなさい」

原「宇野…」

尚広「雅美…」

雅美「…

まだ、僕を許さんといて」

原「は?」

雅美「僕は…

沢山考えた結果、

僕は…僕の罪を許されへん。

だから、まだまだ反省するから

だから、まだ許さんといて…」

―頭を下げる雅美から離れ、宇野の作品を改めて見直す原―

原「…

お前の事は、よぉわからん。

でも、悪くはないな、お前みたいな奴。めずらしいし、
 
それに、俺の周りには既におるし、な。」

雅美「…原くん…」

原「俺は…

許すとは、言っとらん。

だから安心しろ」

尚広「ぷ、変な会話ー」

雅美「有難う」

原「宇野、お前結構侮(あなど)れんな?

これ、」

―自分が写っていた写真に指差す―

雅美「ぁ…へへ…」

―笑顔な雅美を見て―

原「なんか鈴木の言ってた事、わかるかも…

ええキャラしとんな、」


雅美「?」

尚広「えー出来やろ、作品」

原「お前が言うなよ、」

雅美「ううん、たかぴーのおかげでもあんねーん」

原「ふぅーん…ほうか、ありがとうな、鈴木」

尚広「良かった…

仲直りできて…」

雅美「たかぴー…泣いてんのー」

尚広「泣いてねぇよ!」

原「お前ら…そうとうええコンビやな」

―宇野は笑顔でピースした―
 
 
 
 
 
 

―にぎやかな祭のあと、静けさが佇(たたず)む屋上に雅美はひとりでいた。

 空色のシーツを下に敷き、上には自分の作品を寝かせて…―

「空パズル…」

 なんか、ええ響き…。

「ふふ、

見上げた空…

どこまでも 澄みきった青が

胸の奥まで染めていく…

雲が道を知らせ

風が背中をおした

あなたまでへの道程

このまま走っていくよ
 
 
 

空パズルのピースを集めながら…

完成したら、

あなたへ続く道程に、

きっと、かわる…」
 
 
 

―寝っ転がったまま、深く深呼吸をした―

 空はどこまでも

 深く、青く、

 そして、清々しく、澄んでいる…

 瞼を閉じたら、

 このまま

 この空に溶けていけそうな気がしていた…

 いつまでも…
 
 
 

「アカン…なんか、ちょっと泣けてきた…」
 
 
 
 
 
 

完。
 
 
 

天汰PresentS・
seasons...第三章、秋・cosmos
since...2oo5/2o14
 
 
 

seasons...第三章、秋・cosmos

いかがでしたか?
拙い文章で、もう、本当に手の施しようがないので、手直しなしで載せています。
10年以上前の作品ですが、未だに深く気に入っている作品のひとつです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

seasons...第三章、秋・cosmos

季節は、秋。 物想いに耽(ふけ)る雅美。その手は何を掴み、その目は何を見つめるのか…? 秋を、にわか神戸弁でおくる長編物語の第三章です。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-15

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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  1. 11月 1日 火曜日。
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