ラバすと!11
「カイぃ?」
ヨルが首を傾げる
「確か…昔…聞いたような…?」
「覚えてないならもう一回覚えさせてやる!」
「すこし待ちな。いまコイツを――」
瞬間、ヨルの右耳の耳朶をカイのライフルの弾が擦過した。
「今すぐお前とやりたいんだ。」
「ふふっ。卑猥に聞こえるぞ青年?ならばお前がこの箸の贄になれ!」
菜箸を構えたヨルの背後の空間に亀裂が入り、獲物を狙う肉食獣のような艶めかしさを持つ口が現れた
「なんだ!?ソイツは!?」
「この菜箸のらばストさ。じゃあ食わせてもらうよ!」
「だれがっ!」
「ホントにココはくらいわね……ん?」
ヴァルデューゴを倒し捜索を続けていたユリは人影を見た
「ちょっとー!あなた!」
「その声…ユリ?」
「ハル!良かった無事で…」
ユリはハルを抱きしめた
「ユリ…苦しいよ…」
「ごめんごめん!でも嬉しくて…」
「ありがとう。一人で来たの?」
「ううん。みんな来てるよ。」
「そっか!じゃあ早く帰ろうよ。」
「言われなくたって――」
「帰ろう…と言わせないのがこの私、ベノムよ。」
刺すような声色が空気を切り裂いた
「ベノム!?」
「そうでありますけど?疑う?」
「さっき言ったのはどういう意味?」
「鈍い頭だね?君たちの使った転門は封鎖したんだよ。まあ、厳密には少し違うんだけどね。」
「なら、アンタを倒す!」
「できるモノならやってみな!」
「ユリ…ハル…どこにいるのかな?」
エナは一人さまよっていた。
「おーい!エナ!」
声が響き、声のする方に顔を向けるとリンとトウキがいた
「リン!トウキ!」
「エナ!さっきから続いてる音って何かわかる?」
「わかんないけど…てか今気付いた」
「そっか爆発音みたいだけど…そういえばエナ、敵と出会った?」
「リンも出会った?」
「やっぱり!」
「じゃあ今誰か闘ってるのかな?」
「加勢に行きましょうリンさん!」
「ほらほら!どうしたのかな?青年?捕まえるぞ?」
「くっ!」
「ちょっ…カイ!」
「くらえ!」
カイの放った銃弾は当たる寸前でヨルの菜箸の摘ままれた
しかし何度も繰り替えされた光景に驚く者は誰もいなかった
「そぉら!」
「しまった!?」
そしてカイはとうとう菜箸に首を摘ままれた
「じゃあ、頂きます。」
「まだだぁぁ!」
直後カイの全身、正確にはカイの表面が爆ぜた。
「銃って暴発することもあるんだぜ?」
「ふふっ!おもしろいなぁ!青年?」
「俺は何にも面白くな――」
言いきる前にカイの両脚に何かが刺さった
「私は面白かったぞ?」
「言ってろ!」
「まだ喋れるのか?大した生命力だな?」
「ハルちゃんは後ろに下がって!」
「私も戦うよ!」
「いいよ!私は負けないから!」
するとベノムがユリの眼前に現れた
「ふんっ!」
ベノムが殴りかかる
が
殴ると見せかけ左脚でユリの顔面を蹴り上げた
「このっ!」
ユリが蹴られた勢いで回し蹴りを繰り出しかけたが跳んだベノムが腹に両ひざを落としてきた
「がはぁ!」
「壊れるなよ?」
「なぁ―?」
直後、物凄い数の拳がとんできた
「あははははははははははははははははははははははははははは!」
地獄のような殴打がユリの顔面にめり込む
「ん?壊れたか?」
動かなくなったユリをみてベノムは考えた。
しかし結論は死んだと判断し、立ち上がりかけたところで
「どこ行くの?」
「なっ!?」
こちらを見直したベノムの顔にユリの頭突きがめり込んだ
バキッ
骨の砕ける感触が伝わる
「ようやく当たったわね。」
吹き飛んだベノムが身を起こした
そのバランスの取れた顔は盛大に鼻血を出し顔を赤く染めている
「どういう事?…それは?」
赤くなった鼻をさすりながらベノムが立ちあがる
「これが私のらばスト…それだけよ」
「そっか…イマイチ説明不足ね!」
ラバすと!11