雨の日
梅雨の時期に思いついたただそれだけのものです。読んでいただけたらな幸いです。
雨
雨…今日も雨…
昨日もおとといも雨…
多分…明日もきっと…
梅雨だから仕方が無いけど……
「今日も雨だね…」
「毎日、良く降るよねえ…」
放課後、私は優子と外を見ていた。
教室には、私と優子の二人だけ…
「雨って良いことないね~」
優子が気だるそうに言う。
「髪の毛まとまんなくなるし~…制服、湿っぽくなるし~…」
頬杖をついたまま、ウンザリした顔…
「泥も跳ねるし…」
私はそんなダルそうな、優子に話をあわせる。
「部屋も、湿っぽくなっちゃうしね」
「そうそう~なんかベタ~って感じに、なっちゃうんだよねぇ」
シトシト…そんな音が似合いそうな雨。
「お菓子とかも、置いておいたらカビちゃうもんね」
「そうそう…」
そこで優子が『あっ!』って顔をした。
何か思い出したみたい…
(本当に、お菓子とか取っておいたのかな…?)
そんな事を思ったけど…
「昨日。青いカビのチ-ズ食べたんだけど…あんまり美味しくないんだねぇ」
全然違うことを言うものだから、私は思わず笑いだしそうになるのを堪えた。
「そうなんだ?なんていう、チ-ズだったの?」
「…覚えてな~い」
本当に美味しくなかったのか、ちょっと拗ねたみたいな顔をした。
「ん~でも、ゴルゴンゾ-ラだっけ?あれは美味しいと思うよ。」
この前、どこかのレストランで食べたパスタを思い出してみる。
たしか、ゴルゴンゾ-ラも青いカビのチ-ズだったはず…
「どんな味だった~?」
「んっとね…」
ちょっと天井を見上げながら、思い出してみる…
(美味しかったのは覚えてるけど……苦くはなかったね…
あ、ちょっとピリッってしてたかも…)
曖昧な記憶から、それっぽい記憶を選んでみる。
「多分だけど…ちょっと…辛かったかな…?」
「へ~~」
「パスタにしちゃうと、苦くなくなるのかも」
「由美は大人だねえ…私、辛いのも嫌い~」
「優子がお子様なんだよ。」
そう言って、ぷっ!と笑いあった。
シトシト…雨は降ったまま…
「でも、本当に良く降るね」
「梅雨、嫌い~」
そうやってまた外を見る。
「でも、降らないと夏に水なくなっちゃうよ」
「あ~~そっかあ………」
「去年はそれで、プ-ルなかったんだぁ」
机にグデ~ッっと伸びる優子…『嫌!』って感じが全身から溢れてる。
「今年はプ-ル大丈夫じゃないかな。これだけ降ってるし」
慰めるように言ったけど…優子は、
「プ-ルは男子が嫌~」
また違う方向へ…
「なんで?」
「み~んな、眼がヤラしいんだもん。」
(『みんなって……どんだけ自信過剰!』)
思わず私は、そんな突っ込みを入れたくなった…
「優子は見られたって、いいじゃない。痩せてるんだし…」
そう言ってから…つい自分の太腿に目が行っちゃう…
(私は、ちょっと太ったかな…)
「え~…やだよ~~」
優子の、本当に嫌そうな声。
「なんで?」
「だってえ……胸……成長してないんだもん…」
(何か、今、秘密をカミングアウトされた気がするよ…)
「あ…あははは…そ……そうなんだ?」
(でも……それって……太った…よりも重大だよ…ね…)
引きつりそうな笑いで、私は答えた。
シトシト…雨は降ったまま…
ちょっと弱くなったみたいだけど…
「嫌っていえば…あの二人も嫌~~」
コロコロと変わっていく話。
(優子の嫌いなモノ話になっちゃったね…)
ちょっとそんなことを思った。
「あの二人?」
「ほら…麻紀ちゃんと~」
(あの二人なの?)
意外すぎる名前が出てきて、私は、びっくりしながら
「椎名君?」
多分、次に出てくる男の子の方の名前を言う。
「そうそう」
「え~~!なんで嫌いなの?」
すでにクラス公認のカップルになってる二人。
私なんか、応援したくなっちゃうくらい…
それに私と優子だって、麻紀ちゃんとは仲良くしてるのに…
「っていうか、『がんばれ~~っ』て感じの二人じゃない」
「う~~…」
ぷぅっと、ほっぺたを膨らませてる優子。
(もしかして…羨ましいから……?)
「だってぇ…なんか、いっつもラブラブなんだもん…」
「羨ましすぎるよ~~…」
(やっぱり…)
私はそんな事で『嫌』って言われちゃった二人に、同情しちゃう…
「ふぅ…」
思わず溜息…
「う~~~っ…羨ましいよぉ~~」
そう言って机にグデ~っとしたまま、手と足をバタバタ…子供みたい…
「はぁ…そういうので『嫌』とか言わないの!」
ペシ!って感じで、私は優子の頭にチョップをいれた。
「う~~由美がぶったあ~~」
「優子がそんな事言うからだよ!」
私はちょっと怒るみたいにして言った。優子に怒るの半分。同意が半分……私だって……羨ましいって思うんだよ……
シトシト…雨は降ったまま…
だけど、雲は少し無くなったみたい…
「あ、もう5時だよ~!」
優子が時計を見て、びっくりしたように言った。
「もう5時なんだ?」
「いっぱい、話したもんね~」
すごく楽しそうな優子。
反対に、はぁ…と息を吐く私…
(優子の嫌いなモノ大会だったけどね…)
口に出してしまうと、また優子のスイッチが入りそうだから…私は胸の中で、そっと呟くだけ。
「そろそろ帰ろっか?」
「そだね~」
「雨も、ちょっと弱くなってきたしね」
鞄を持って教室を出る。
「♪~~」
なんだか、ごきげんな優子。
私は、ちょっと笑いながら隣を歩いてく。
「なんだか、お腹空いてきちゃったね。どっかで、ハンバ-ガ-食べて帰ろうか?」
「あ!それなら、私ク-ポン持ってるから駅前のにしようよ~」
「私の分もある?」
「あるよ~チ-ズバ-ガ-ので良い??」
「え~~、照り焼きとかのは無いの?」
「照り焼きのは、私の~~」
そんな風に話しながら玄関へ。
「やっぱり、まだ降ってる~」
「でも、もしかしたら、止みそうかも」
雨はまだシトシト…
でも、なんだか止みそうな雰囲気。
ポンッ
ポンッ
お気に入りの傘を広げて、二人とも雨の中へ。
「さてと…帰ろっ」
「うん。帰ろ!帰ろ~!」
優子は淡いピンクの傘。私は明るい青の傘。
「なんだか楽しいね~」
優子は上機嫌で歩いて行く。
「雨の日に楽しいなんて、優子くらいだよ~」
私は優子の後をゆっくりと……
(「絶対跳ねるんだから……優子らしいけどね」)
「ほら!優子!!そんなに跳ねて歩かないの!スカ-ト泥だらけになっちゃうよ!!」
「大丈夫~~跳ねたら洗ってもらうから~~」
「洗うのおばさんでしょう~」
水溜りを見つけては跳ねる優子。そういえば昔っから、こうだっけ……
パシャン!
多分…明日もまた雨…
シトシト……そんな音が似合いそうな雨。
梅雨だから仕方が無いけど……
「こら~!!ちょっと~優子~泥はねた~~!」
「ごめ~ん」
「許さないんだから~~!優子~~!!」
「わ~♪由美が怒った~~♪」
雨はまだシトシト…
でも、雲は明るく晴れそうな予感。
雨はシトシト……だって6月梅雨だから……
「まて~!!優子~~~!」
「またな~い♪」
空は重くて、空気も重いけど……
そんな日だけど、普通の日。
ちょっと気だるい、普通の日。
雨の日
いかがでしたでしょうか?雨の日に雰囲気だけで読んで頂けたなら幸いです。
最後まで読んでくださった方が居れば感謝感謝です。