革命

Kentaro Morita

 ある国に、最下層の貧民から王の位にまで成り上がった男がいた。彼は革命を起こしたのだった。
 革命によって、その国を支配する価値の全ては逆転した。それまで王の位にあって、富と権力の全てを握っていた者達は、その持ち物の全てを奪われ、ほとんどの者は殺され、ほんのわずかな数だけが、かつて自分たちが唾を吐いて見下した路地裏の狭く汚い場所でどうにか生き延びることとなった。そうして逆に、それまでやっとのこと露命をつないでいた貧民であった者達が、その国の全てを握ることとなった。最も貧しかったその男は、最も富める者となった。そして、彼に逆らえる者も、彼に抗する力のある者も、誰一人としていなくなった。
 しかしやがて、彼の王位は揺るぎだした。革命が起こったことが周囲の国々に受け入れられず、彼の国はいつしか他の国々との間に摩擦を起こし、ついには激しい戦争にまで至った。彼は、この苦しい状況を脱するために、何か策がないものかと考えた。そして、愚かにも彼は、再び革命が起こることを望んだのだった。いつか、彼を貧民の身から王の位にまで転じたあの偉大なる革命がもう一度起きれば、今度こそ彼は神にも等しき存在にまで上り詰めることができるだろうと、考えたのだ。彼は、革命を起こすためにあらゆる手を講じた。そうして、ついに革命は再び起こったのだった。今度は、彼が貶めたかつての富者である貧民たちの手によって、彼は王位から引きずり落とされ、全てを失った。
 彼は今、貧民として生きること、王として生きること、そのどちらにも、飽き飽きしていた。ならばどのように生きようか。

革命

革命

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-11

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