ラバすと!8

「じゃあ説明するわよ。」
ユリ達は現在ベノムに囚われた仲間「ハル」を助けるための作戦会議中だ
「それよりユリ?私たちお前のらばスト知らないんだが…」
「そうよね…じゃあ説明するわ。」
ベノム達の根城「虚離宮」に侵入できる唯一の手段、ユリのらばストである。
「私のらばストの名前は「ヒューマン」よ。具体的に言うと人間にできることなら何でも、普通のそれ以上できる。
ある意味ではベノムのそれと同じよ。」
「そんな単純なのを…どうして渋ってるんだよ?」
「それは…人よりできるに含まれているんだけど……傷の治癒速度が、治せる範囲が…不死身の能力なのよ。」
「腕が無くなっても、治るのか?」
「ええ。すぐに治るわ。他に頭が吹き飛んでも治った…」
「わかった!その再生能力で強引に侵入するんだね?」
「そうよ。そして侵入した後に私が転門を開く。」
「で、それからハルを助けだし逃げると…で良いんだよな?」
「そうよ。リン」
「ならさっさと準備に取り掛かろう。」

虚離宮内部にて…
『なにお姉ちゃん?呼び出しなんて珍しいじゃん?』
呼び出した少女…隻腕になったベノム人形「ムク」
隻腕のムクは他の個体のプロトタイプになったムクである
このムクは現在、虚離宮の全権を委任され修理までの待ち時間に同じ機械人形のツバメを呼び出した
ツバメもベノムに開発されていて見た目はベノムより長髪の金髪、白いYシャツの上に黒いワンピースといった感じだ
ベノムはムクとツバメを量産化し私兵として使うつもりだったのだが、性能やコストを顧みてムクだけの量産に踏み切った
『先ほど廃棄物と面会したみたいだったけど?』
『あぁ、私が吸収しやすいようにしてきたんだよ』
『ほんとに止めを刺したの?』
『え?だって脈は無かったし…』
『あなたが呼び出したムクは既に機能不全よ。』
『くそっ!待ってて!今から――』
『もう放っておきなさい』

翌日
「じゃあ開いてちょうだい。」
「…わかったわ。」
転門が開く

同時に激しい電磁波が巻き起こる
「エル!閉じて!」
既に転門をくぐりぬけたユリが叫ぶ
転門の付近では生身の生物では焦げてしまう出力であった。
「ユリ…」

虚離宮内部
薄暗い空間にぼうっと転門が現れた
「ふうっ…思ったより楽だったわね。」
激しい電磁波の嵐の中、ユリの皮膚を焼いてはいたがユリは焼けたところから再生を繰り返し
虚離宮に辿り着いた時でもほぼ無傷であった
「これが簡易転門の術式か…」
数分後…
「みんないるわね?」
「おうよ!」
「リン?あんまりさわがないで」
「ああ、すまない!」
「リンだけ単独行動にすれば…」
「んだと!ナツ!おまえなぁ…!」
そこで全員息を飲む事態が起きた
「やばいな…」

「おいムク?主人がいなくてだらけてないか?」
『これはヨル殿、おっしゃってる意味がわかりません』
「私の目には侵入者が大勢いるぞ?見間違いかな?」
ベノム勢の幹部の一人、ヨル
身長は高く、細身なのも相まって美しくみえる。一際目をひくのが腰まで届く黒髪である
服装はTシャツにダメージジーンズといったラフな格好である
ヨルのらばストは「蠅漏斗」
ハエを自在に操れるそうだが実際にはハエと感覚をリンクしていて虚離宮にはヨルのハエが300匹一組
それが5組、常に虚離宮を巡回している
ユリ達が見たのもこの一つの集団だった。
『だが、ベノム様からは幹部未満の雑魚は戦わせるなと…』
「なら私が行ってくる」

ラバすと!8

ラバすと!8

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-11

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