僕の憧れた一人暮らしは怪物によって壊されました。 1
初投稿です。
ファンタジーっぽい日常風景を書いてみたかったので頑張りました。
あまり吸血鬼っぽくないのがでてきますが、れっきとした吸血鬼です。
どうかご愛嬌を。
僕、山神胡桃は憧れた一人暮らしを始めた。が、初日に居候が乱入した!しかも居候は吸血鬼!?
みなさんは『一人暮らし』をしたいだろうか。
うるさい親などから解放され、完全に一人というプライベートな空間。
なにをしようと自由。怒られることもないフリーダムな空間。
まさに自分の王国!
そんな生活に憧れたりしないだろうか。
僕、山神胡桃もそうだった。
二か月前。僕は一人暮らしを始めるべくこのボロいアパート『崩れ荘』に引越してきた。
名前はすごい不安なのだが、下見に来た時はすごくいいところだった。大家さんは優しいし、アパートの住人は気さくな方が多く、「困った時はいつでも言ってくれ」と言っていた。日当たりは抜群。駅からもそう離れておらず、高校生で電車通学の僕にはありがたかった。
部屋は二階で結構きれい。さらには家賃も安い。
ここまで好条件が揃っていて住まないバカはいないと思い、速攻入居を決定した。
そして一日目の夜に事件は起きた。
その日、僕は
「胡桃さん胡桃さん!見てくださいよコレ!Sレアでましたよ!」
「うるせぇ!今これまでの経緯を読んでくださっている読者さんに説明してんだ」
「だってほらほら!ノーマルガチャでSレアですよ!?いやっほーーい!」
「こら!スカートで跳ねまわるな!」
あぁ~・・・・・・。ここまでくれば分かるが今僕は一人暮らしではない。
この今ハイテンションになっている少女と暮らしている。
もうなんかグダグダになったしまったから簡単に言うと、
こいつが初日の晩飯の時に窓から飛び込んできた。
いやいや二階の窓から飛び込んでくるなんてそんなバカな。と思う人もいるかもしれない。だがまぎれもない事実だ。どうやったかというとコイツは
「胡桃さーん。興奮しすぎてクラクラしてきました・・・」
「だからこっちは取り込み中だ!」
話の腰を折るのがうまいなコイツ!
「血ィ飲ませてください」
「冷蔵庫にあるレバーでも食ってろ」
「いやいや・・・・・・。もう何日レバーなんですか。たまには飲ませてくださいよ」
「駅前の肉屋のやつだ」
「あの小川屋の!?いただきまーす!」
そのまま猛スピードで飛んでいった。
またこの会話を聞けばわかると思うが。
こいつはヴァンパイヤ。つまり吸血鬼だ。
まぁ吸血鬼といってもそんなに害はない。吸血衝動は鉄分のあるものを食べれば抑えられるし、コイツは性格が温和なので襲ったりはしない。
「胡桃さんありがとうございますー!小川屋のレバーはやっぱうまいですね!」
もっさもっさ食いながら戻ってきた。
「なぁ・・・。こっちは取り込み中なんだよ。状況を説明してんの」
「なるほどなるほどぉ~。じゃあ黙ってたほうがいいですね」
「そ。黙ってあっちでゲームでもしてな。Sレア出たんだろ」
「そーでした!レベル上げをしなくては!」
また走って居間に戻っていった。
よし。
これでやっと静かにな
ピーンポーン。
・・・・・・はぁ。
ピーンポーン。
「はぁーい」
なんかもうわざとらしいな。ここまで妨害が続くと。
ガチャ
「どちらさまで・・・・・・て大家さん」
「やほー」
この人は大家の大田ルミさん。家賃収入で生活している現在独身婚活中の三十●歳だ。
あれ?なにかモザイク的なものが・・・。
「それ以上言うと家賃三倍」
「すませんした」
声に出してないのになんでわかるんだよ。テレパシー?
ていうか最初に会った時の優しさはどこにいったんだろう。今は暴君にしか思えない。
「で、なんの用ですか?」
「今晩に私の部屋で『ルミさんを慰める会』やるから。会費千円と何か鍋に入れる食材もってこい。できれば高いやつ」
「慰める会って・・・・・・。また振られ」
「フンッ」
ゴスッ
「ぎいやあああぁぁぁぁぁ」
女の人がグーで殴るなよ!
「わざわざ口に出すな!」
「すみませんでしたすみませんでした!」
だから二発目はやめて!その手を下げて!ね!?
「まったく・・・。お前は会費二千円な」
「えー・・・・・・」
高校生にたかるってどんな大人っすか。
「そいやぁチロルはどうだ?」
「あぁあっちでゲームしてますよ」
「ヤッたか?」
「するわけないでしょうが!」
ホントに最低の大人だな。
絶対こんな大人にはならねぇ。
「いやーあいつが帰ってくるのも久々だったからなぁ」
「いや、もともと吸血鬼が住んでるなら貸し部屋にしちゃいかんでしょ」
「だってろくに家賃も払わんでどっか行くやつならいいだろ」
ルミさんの言うにはもともと僕の部屋はあの吸血鬼、チロルが借りているらしかった。でも長く家を空けたりすることが多かったそうだ。そして何年も帰って来なくなり、貸し部屋にしたらしい。
だからもともとルミさんとチロルは知り合いである。なのであの日の晩飯食ってるときにチロルが窓から突っ込んできてパニックになった時、僕の叫び声を聞いてきたルミさんは僕を無視して久々の再会を楽しんでいた。
「ま、最後に見たの私が小学生の頃だったからな。そっからずっとどこかに行ってたな」
小学生って今からだと・・・にじゅ
ゴスッ
「ぎいいいいいいいやああああ」
「計算すんな」
目が、目がァァァァァ!
「ああもう!なんか腹が立ってきた。お前、鍋の肉担当な。たくさん買ってこい」
「えぇ!?僕まだバイト代入ってなくて今月ピンチなんすけど」
「知るか。嫌なら家賃十倍だ」
これ訴えてもいいレベルだろ。
「じゃ、七時からだから」
そう言い残し、暴君は帰って行った。
そのまま僕は居間まで重い足取りで戻る。
ちなみに部屋は2LDKで結構広い。なのにあの家賃は良心的だ。
「あ、胡桃さん。どーかしました?」
「特になんにもないよ。だけどしばらく小川屋のレバーは無しな」
「えぇーーーッ!なんでですか!?」
「文句ならルミさんに言ってくれ」
「ルミちゃんにだね!分かった言ってくる!」
なるほど。友達だったというチロルから言ってもらえれば妥協するかもしれない。
「あ!今何時ですか?」
「えーと・・・。六時半だな」
「あー・・・。じゃあまだ太陽出てますねぇ」
「あ、やっぱ吸血鬼って太陽の光とか浴びると死ぬのか?」
「いえ肌が荒れます」
大丈夫なんかい。しかも肌超デリケートだな。
「肌ぐらいはいいだろ」
「な・・・、胡桃さん!それは乙女に言ってはいけないことですよ!?」
「お前何歳?」
「198歳ですが」
「それは乙女とは言わん」
この不老不死め。
「見た目は美少女でしょーが」
「自分で言うな」
まぁ確かにチロルは美少女と言えるだろう。
少し幼さが残る顔立ちにすらっとした鼻筋。あきらかに西洋風の顔だろう。
そしてその顔立ちにはピッタリなロングの金髪。
初めて見た時はドキッとしたものだ。
「まぁ諦めるしかないか」
「うぅ・・・」
「チロルはまだゲームしてるだろ?ちょっと寝たいから7時前になったら起こしてくれない?」
「了解しましたぁ!」
立ち直るの早ッ!
そして・・・
午後七時十五分。
階段を駆け降りる少年少女二人。内少女は198歳。
二人とも必死になり、汗をかきながらも降りていく。
なぜここまで慌ててるかというと・・・。
五分前。その時はまだ胡桃の部屋に居たのだった。
「胡桃さーん。起きてくださーい」
「あと五分・・・」
「七時過ぎてますよー」
「知らんよそんなの・・・って、はあぁッ!?」
飛び起きて時計を見ると七時十分。七時に来いとルミさんに言われてたので十分の遅刻だ。
「おまっ・・・チロル!七時って言ったじゃん!」
「いやーすっかり忘れてまして・・・」
「あんな快く承諾していたのにか」
「実はですね胡桃さん。あの後レアガチャをしましたらSSRが出ましてね。その興奮によりすっかり忘れてました」
「知るか!お前今日よく当たり引くよな!」
「ですよね~。今日は運が付いてるんでしょうね~。ウフフフフ」
幸せそうな吸血鬼だ。
そんなことはほっといて急いで仕度する。一応着替えた方がいいだろう。ルミさんあんな性格のくせに身だしなみにうるさいし。
「そんなに急いで今日何かあるんですか?」
「ルミさんが『ルミさんを慰める会』を開くから来いって」
「・・・・・・もしかしてそれが七時の予定でしたか?」
「あぁそうだよ。そうだ、チロルも来いよ。多分ルミさん喜ぶ・・・・・・ってチロル?」
振り返るとチロルは顔面蒼白になりながら震えていた。
「ごめんなさいごめんなさいそうとは知らなかったんですだから許してください」
なんかブツブツ呟き始めた。
「お、おいチロル。どうした?」
「何で早くルミちゃんに呼ばれたって言わなかったんですか!?」
「な・・・なんで怒るんだよ」
「あぁ~~もう!あのガチャで当たりをたくさん引いたのはこの不運の清算ですか!」
「おい落ち着けって。遅刻だったら謝ればいい話で・・・」
「あなたはルミちゃんの怖さが分かってないからそんなこと言えるんです!」
チロルはキッと僕を睨んだ。
その顔はまだ青ざめている。
「昔の話です・・・。ルミちゃんが小学生の時にルミちゃんのお誕生日会を開いたんです。ですがその時に私は少し遅刻しちゃったんですよ」
ふむ。やはり仲は良かったみたいだな。
「でもほんの五分なので普通に入って行ったんです。そしたら・・・・・・」
『ルミちゃーん。遅れてごめ』
ヒュンッ
サクッ
『ぎいいやあああああ!!包丁が、包丁がおでこに刺さったぁ!』
『キューケツキだからいいでしょっ!それよりチロル!あんたなんであたしのお誕生日会おくれてるの?』
『あのね、ルミちゃん。ちょっと用事があったんだけど五分だけでしょ!だから落ち着い』
『フンッ』
ブスッ
『ああああああああッ!目がッ!目がァ!!』
『いいわけなんてきいてない!』
『聞いたのルミちゃんじゃ・・・』
『口答えしない!』
『待った!その可愛らしい小さな手に似合わない包丁おろして!吸血鬼のお姉ちゃんでも痛いものは痛いから!』
『もんどうむよ―――ッ!』
『ぎいいやああああああああああああああああああああ』
「ということになりまして・・・」
「どこの殺人鬼だそれェ!?」
完璧なスプラタじゃねーか!
ていうかよくお前生きてられたな!
「魔法でバリアを張っても無効化させるんです!あんなの上級のエクソシストしか・・・」
「エクソシストでもできねーよ!ていうかお前魔法なんて使えるのかよ!!」
「もうそんなことより行きますよ!ほらお肉は冷蔵庫のレバー持ってっていいですから!」
鍋にレバーは入れれるのだろうか?でも今はそんなこと考えてる場合じゃない。一刻も早く行かなければ確実に殺られる。
というわけで現在に戻る。
二人は大家さんの部屋、つまりルミさんの部屋の前に立っていた。
扉にはかわいらしい字で『大家の部屋?』と書かれているが、今は死の呪文のように見える。
「・・・・・・入らないんですか?」
「・・・・・・お前が入れよ」
「なんでですか!あなたが招待されたんですから!」
「うるせー!起こさなかったのはお前だろうが!責任もってお前から入れ!」
ここでまた言い合いが始まる。
「待ってください!こんなことしても時間の無駄です。一緒に入りましょう!」
「・・・・・・分かった。でもなんかあった時はチロルが盾になれ。再生するだろ」
「分かりました・・・・・・」
ガチャリと重々しい扉を開け、覚悟を決めて真っ暗な中に入る。
まず開けた時には何も飛んで来なかった。いや、普通はそれが当たり前なんだが。
だが問題はリビングに入る時の扉だ。チロルの話だとそこでトラップがある可能性があるという。ここはホントにアパートですか?
そしてそこまでの廊下をゆっくりと歩く。
「・・・・・・胡桃さん。まず入ったら、飛んできたものを避けて土下座です」
「分かった。でも飛んでくること前提なんだな」
「当たり前です。多分何かしらの刃物なので気をつけてくd」
カチッ
ドォ―――――――――――ン!!
「ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええ」
目の前にいたチロルが吹っ飛んだ?!ナニコレ!!地雷!?
カチャリ・・・
上からそんな音が聞こえた。・・・・・・恐る恐る見上げてみる。
そこにはとても人間とはおもえない形相をしたルミさん(?)がいた。
「ぎゃああああああああああああああ!!」
ルミさんが天井にへばりついてる!どうやってんだ!?ていうかホントにあれはルミさんか?!
「おのれらぁ・・・・・・おのれらなぜ遅れたぁぁぁぁぁああああああああああああ」
そう言い放ちこちらに落ちてくる。
「何故遅れたああああああああああああああああああああああああ」
「ああああああああああああああああああああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そこで僕の意識は途切れた。
あれ?ここはどこだろう。なんかきれいな花畑だ。空はどこまでも続く青さ。花畑の奥には澄んだ川がある。
いつのまに僕はこんな所に来たんだろう。見渡すと人が立っているのが見えた。
「すみませーん!あの、ここってどこですか?」
近づいて話しかける。するとその人は振り向き、
「何故遅れたああああああああああああああああああああああああ」
「ぎいやあああああああああああああああああああああああああああ」
「はッ」
目が覚めた。なんだったんだ今の。怖すぎる夢だ。
「起きましたか胡桃さん!」
チロルが飛び込んできた。そうか、僕は気絶していたのか。
見渡すとそこはルミさんの部屋だった。リビングの真ん中にはテーブルが置かれていてその上に鍋がある。そしてそのテーブルを囲むようにこの『崩れ荘』の住人、僕とチロルとルミさん合わせて六人がいた。
・・・・・・・・・ルミさん?
「ぎゃあああああああああああああああああああああ」
「人の顔見るなり失礼だな!」
「ごめんなさいもう遅れませんから許してくださいいいぃぃぃぃぃぃ」
必死に懇願する僕。はたから見ると情けないかもしれないが、本能的に恐怖を感じる。
「ほらほら~大家さんやりすぎだってぇ」
「完璧トラウマになっているな」
「なっはははははははは!そりゃあの化け物を間近で見りゃそうなるわな!」
『崩れ荘』の他の住民は他人事のように言ってるがなぁ、マジであれ怖かったんだからな!
続く。
僕の憧れた一人暮らしは怪物によって壊されました。 1
どうもジョルノです。
前書きにもありましたが初投稿です。
小説を書くことが少ないので、おかしいところがあるかもしれないですが温かい目でお願いいたします。
次回も書いてみたいのでよろしくお願いします。
以上、ジョルノでした。