SS17 親切な小人たち

ふと目覚めると、小人が部屋に溢れていた。

「うわっ! なんだ、おまえらは!」
 ふと目を覚ますと、掌サイズのかわいい奴らが部屋中に溢れ返っていた。
「ヤバいぞ」
「起きちまった」
「もう手遅れだ。ここは一つ自己紹介と行こうじゃないか」
「でも人間に姿を晒していいのかな?」
 そんな喧々諤々の話し合いが続いたあとで、彼らのリーダーらしき人物がぺこりと頭を下げて挨拶をした。
「私たちは小人です。私らのこと、一度くらい耳にしたことがあるでしょう?」
「ああ、そういえば……。でもあんなのは皆ホラだとばかり思ってたよ」
「そうでしょうね。でも本当に実在するんです。実はこうしてあなたの仕事や家事をちょっとばかりお手伝いしていたんですよ」
「ははぁ……。よくよく考えてみれば思い当たる節があるような……。
 もしかして先週資料をまとめてくれたのも君たちかい? どうも途中で寝ちまった気がするんだよ」
「アプリ全体の進捗状況の報告ですね」的確に答えたリーダーの言葉がこれが夢じゃないと教えてくれた。
「そうそう、昨日捨て忘れた資源ゴミも隣町の回収ボックスに放り込んでおきましたから」
「そうだったのか。悪かったなぁ」と頭を掻いたところでふと思う。「ところで君たちはなんで僕を助けてくれるんだい?」
「そうですねぇ。言ってみればこれが仕事なんです。いえ、だからと言って見返りは求めませんから安心してくださいね」

 彼らはこれまで通り見て見ぬ振りをしてほしいとだけ言い残し、その日はさっさと姿を消した。

 ***

「結局こうなっちゃうんだなぁ」小さな紙片を手渡しながらリーダーは天を仰いだ。「姿を見せるタイミングがよくなかったのかな?」
「いいや、こいつは元々こういう人間だったのさ」
 ベッドの上ではぶくぶくと太った彼が大きな鼾をかいて爆睡中。
「俺にはやっと彼女の真意が分かったよ」
「同感だね……」リーダーは一回りして戻ってきたメモ紙を細かく千切って投げ捨てた。

 彼は変わった。いや、変わってしまったというべきか。
 初めの内こそ約束通り素知らぬ振りで日常生活を送っていた彼はしかし、じきに何でもやってくれる小人たちに依存するようになる。
 依存? それは少し違うな。要するに彼は味を占めたのだ。 
 家事全般から始まった要求は次第にエスカレートして、今では食事の世話から在宅勤務に変更した仕事の実務まで、そのすべてを小人に押し付けるようになっていた。
 インターネットさえ繋がっていれば大抵のことは熟せてしまう今の世の中が、彼を堕落の道へと誘い込んだという一面はあるにせよ、すべては彼自身が選んだこと。
 それは誰の責任でもなかった。

「悪いけど、あなたとは今日でお別れだ」
 リーダーは全員に撤収の指示を出す。
 仕事の締め切りも迫ってるけど、残りは自分で何とかしてもらおう。
「こんな姿を見せられたら、彼女も一緒になりたいとは思わないだろうねぇ」荷物をまとめながら誰かがぼそりと呟いた。
「きっと薄々気付いていたんだろ」
「だからわざわざこいつのところへ行くよう仕向けのかもしれないね」
「でも婚約する前でよかったじゃない。彼氏の正体が分かってさ」
「さあ帰ろう。僕らは彼女の為に動いているんだから」

SS17 親切な小人たち

SS17 親切な小人たち

ふと目覚めると、小人が部屋に溢れていた。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-11

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