憂鬱


死のふちへ下りてみろ

どうせ 悩みはちっちゃな箱舟

浮き世にゆられ 手まねく影法師

声に出して問うてみろ

おめえの生命は誰のもんかと

血潮がむくり むくり 隆起して

また生きたがってくるだろうよ

ただ 憂鬱である



……

そうか

大抵 世はくだらないのか

所詮は甘えん坊なのか

おまえをみれば

散漫に 知らん顔して

退屈な曇天と時刻表へやり場をうつす

そうして 大ぜいの人間が路肩へしゃがみ

ぼんやり物想いに耽るのである

煙草をふかし

切り売りした輪郭をさする



ぽつり ぽつり

考えれば雨粒も増しまして

仕方なく あの気だるさを懐かしむのである

憂鬱