逍遥

逍遥

ただひたすら夜毎に歩き続けるだけが私を救う道であった。
護国寺から講談社の前を通り椿山荘に上り、目白台運動場を超え、旧角栄邸を過ぎ、鬼子母神へ出て、Uターンして戻ってくるのを
2セットすると大体10キロ位歩くことになる。
それが毎夜の日課であった。
大体2時間くらい歩くことになる。
それを3セットすると、全身打撲的な疲れを感じて更に良いが
なかなか時間がかかるので毎回というわけにはいかない。
一日中座って仕事をしているので、動かないとやっていけない。
ネットも音源もいらない、ただひたすら歩くだけだ。無心で。
勢い余って明治通りをずっと池袋から新宿まで歩いてしまう日もある。
なぜか西新宿の京王プラザとヒルトンの建物が好きで
そのあたりをぶらぶらしてから西口のバス乗り場からバスで椿山荘まで戻って、また歩いて帰るのだ。
そういうことをしないとやっていけない。
この暮らしを保てない。
いろいろと考えることが多くて、でも考えても仕方ないのはわかっている。
だから歩くのだった。
最近はジョギングよりも歩くほうが楽しい。
歩くのは哲学的である。
無心と言っても、いろいろとやはり思うことはある。
木をみると、とても不思議な想いに襲われる。特に目白台運動場の木々は私には生き生き見える。
ああこの木々は生きているな、という実感を持って見える。長い間にはいろいろなことが
彼らにもあったのだろなと思う。戦争とか関東大震災とか、伊勢湾台風とか・・・
いろいろあって生きながらえているんだなと思う。
立派に思う。尊敬に値する。
敬意を表する。
それに比べ自分は未熟だと思ったりする。
しかし木々の青々とした緑に救われる。
それらは私を和ませる。
夜の木々たちは昼間とどこか違うのだ。ひっそりとしている。



そして私の想いは決して変わらない。
わたしは私が歩くと決めた道をあるくだけだ。
私が選んだ道をだた信じて、確信をもって、信念を貫くだけだ。
いつもいつも、くじけそうになったり、不安になったりするけれど
だけどいつも信じようと心に誓って今日まで来たのだ。
そしてこれからも信じ続けて歩き続ける。

逍遥

逍遥

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-10

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