赤司君の好きなもの。9
続きです。読んでいただければ、
幸いです。
出口
季節は春だと言うのに、まだまだ肌寒い朝が続いている。
寒い…眠い…
まだ寝ていたいところだけど、もう起きなきゃ。
眠たい目をこすりながら、しかたなくベッドから体を起こす。
顔洗って、歯磨きして…
なんてぼんやり考えながら、ベッドから腰を上げた時ー
視界がぐらりとゆれた。
なにが起きているか分からなくて、ただ目を見開くことしか出来なかった。
ぐいっと何かに腕を引かれ、逆再生するように、もといたベッドへ引き込まれる。
ぼふんっ!と、ベッドに落ちる私の体。
やわい振動が背中から伝わって来た。
なにがおこったの?
怖くてつむってしまっていた目を恐る恐る開く。
「おはよ、日向」
耳元で聞こえて来た声。
なんて、当たり前の様にそう言いながら
透き通るような赤い瞳が、私を見下ろしていた。
私の頭は、彼の膝の上で。
自分でも顔が熱くなったのが分かった。
「おはようのキス、しようか」
「へっ!?!?」
慌てる私なんてお構いなし。
追い打ちをかける様に
赤司くんの怖いくらいに綺麗な顔が迫って来て…
「赤司くんっ、だめ…!私っ…!」
「おきろバカっ!」
数秒後、素晴らしい痛みが頭を襲ったのは言うまでもない。
「い、いたい…!」
なにではたかれたのかは、彼女が右手にもつ教科書を見ればわかる。
「寝てるあんたをわざわざ起こしてあげたのよ?感謝しなさい」
そんな爽子ちゃんは、私見て呆れ顔で言った。
「今いいとこだったのに!」
爽子ちゃんに殴られた頭を、手で押さえながら彼女へ唇をとがらせてみせるも効果はナシ。
「すねるのはいいけど。アンタさ、なんで学校早めに来たのか覚えてる?」
「…へ?」
なんで学校早めに来たのかって…。
時刻は、7時半。
ちなみに、学校が始まるのは8時40分。
1時間以上も前に学校に来た理由。
…
……
………
そうだ、そうだ…!
「部活、決めるためだったーーー!」
「覚えてたんじゃないの」
そうだった、そうだった…!
1人で決められないから、爽子ちゃんにも来てもらって、そして
寝てしまった。
「私、バカだ…!」
「うん、知ってる」
ばかばかばかばかーーーーっ!!
私の大馬鹿ーーーっ!!!
爽子ちゃんにも付き合わせといてなに寝てんだぁーーっ!涙
「ごめん!爽子ちゃん!今から考えるね!」
「はいはい」
こんな私にも付き合ってくれる彼女。
なんだかんだいって、爽子ちゃんは優しいんだ。
「部活、部活、部活…」
部活登録用紙を眺めてみるけど、入りたい部活なんて
特にない。
…やりたいことを見つけたい。
それが、私の高校生活においての目標。
しかし、なかなか見つけることが出来ず、特にやりがいのない生活を送っている様な気もする。
「はぁ…、今日までに提出しなきゃなのに」
決めることなんて、とてもじゃないけど出来なそう。
部活かぁ…。
そういえば。
昨日の放課後も悩んでたんだっけ。
そしたらそこにー
「…、放課後、体育館」
「え?」
ぼそっ、と呟いたのを爽子ちゃんは聞き逃さなかった。
「私、体育館へいけばなんかわかる気がする…!」
放課後
顔をしかめながらも、彼女は私を体育館へ送り出してくれた。
爽子ちゃんに
「ありがとう」
そうお礼を言って体育館へ走った。
時刻は、4時過ぎ。
私の運命が変わるのはあと少し。
赤司君の好きなもの。9