practice(108)


百八




 遠くの先にある,あれは石の作られたもの。家かもしれないと思うけれど,小さくてそうじゃないとだって言い切れる。それ以外の風景,ゆったりとした動きで引き伸ばされる,空の隙間の高さの色には雨がまだ混じっている,拭われることを嫌うこのこのように。皺を伸ばせない頬を叩いて,教えようとしている。急ぎ足のヤドカリのために,気付かれないほどに歩くのを遅くしたこととは関係のないことと,力を入れて,ずり落ちないようにしたことは身体に残って,なかなか消えないのは,また,嬉しいことなのだ。吐く息と,何も言わずに入ってくる,温められた空気の新しい間隔とに,速い鼓動がとくとくと聞こえる。あーだと,覚えたての合図を存分に使って,背後に何を見つけたのかがもう少し,時間をかけて,一息をついて,あちらを眺めれば,白い音と,翻るヨットの動きが小さくても帆で分かる。
 とりのまね。小さい指。上手と褒めれば,きょとんとしたものが行き場を探して,襟足を掴んでいる。
 足の指に挟まった。腰掛けるところ,水平線,っていうところの,正面に位置している履き替えたところの階段には,やっと来た,細かいセッティングの三脚が立っている。
 身体をくっ付けて,見える位置を少し直した。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-08

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