君のために 僕は何ができるのだろう
…寒い。
なんだかよくわからないけどすごく寒い。
せっかくの心地よい眠りも寒さのせいで台無しだ。
朝からご機嫌斜め、イライラしながら、僕―アレンは起きた。
「・・・雪だ」
よだれを垂らしながら爆睡しているくぼじいの横を通って、高架下から顔を出すと、そこは辺り一面真っ白。雪景色だった。
通りで寒いワケだ。お腹を出している分もっと寒くなる。
寒さを和らげるために拾ってきた枝を何本か抜き取り、焚き火をしようと座った瞬間
「アレーーーーン!!あーそーぼーーー!!」
背中に大きな衝撃がきた。しかもすごく冷たい。
「ちょっと!!何やってるのお兄ちゃん!」
「アレンに体当たりしたんだよ!」
「いや、そうじゃなくて・・・アレンさん、大丈夫ですか?」
双子の片割れが心配そうに覗いてくる。優しいなぁ。
「・・・大丈夫だよ。ありがとうウィクティ。」
そう言ってやると安心したのか、双子ピエロの下の方―ウィクティは柔らかくはにかんで笑った。
「アレン!!雪だよ!!あそぼうよ!!!他のみんなも集まってるよ!!」
「・・・でも僕、寒いの苦手なんだけど」
「きっと寒がるだろうからってのっちゃんさんがコレも一緒に持っていってあげてって言ってました。」
ウィクティの説明の後、双子ピエロのもう片方―ラフティから受け取ったのは、薄い水色のコートだった。ほんの少しだけ、のっちゃんのパンの匂いがする。
「・・・のっちゃん、優しいなぁ」
「のっちゃんもみんなといっしょにいるよ。ほら、早く行こうよアレン!!」
ラフティの言葉にうなずき、僕はコートを着て白い世界へ飛び出した。
*
「あ、アレンだー!!」
「アレンおはよう♪」
「やっと起きたのか、そんなゴロゴロしているとお腹の部分にバグがたまっていくぞ」
「普通に太るって言えばいいのに・・・。あ、アレン、あの人はどう?反省してる?」
みんなにある程度挨拶をかえしてから、僕は一番求めていた人のことを聞いた。
「みんな、のっちゃんは?」
「あぁ、マドモアゼルなら噴水の縁に座って何か考え事をしているようだよ。」
「あそこだよーほら。」
噴水に軽く腰掛け、雪をじっと見つめているその人は、確かに僕の最愛の人―佐々木望さんだった。
みんなは雪合戦をはじめて、どうしても僕は参加する気にはならなかったので、のっちゃんの横に腰掛け、みんなを見ていることにした。
「・・・ねぇ、アレン」
のっちゃんが言った。
「アレンは、楽しい?」
「・・・どういうこと?」
「アレンは、今、商店街のみんなと一緒にいるの楽しいのかなって」
「・・・?楽しいよ?のっちゃんは違うの?」
「まさか!楽しいわよ。だけど・・・いつまでもこのままみんなでいれるわけじゃないわ。」
のっちゃんはみんなを見ながら、消え入りそうな声でつぶやいた。
「私が本当に魔法使いだったなら、よかったのになぁ・・・。」
そして俯いて黙ってしまった。
どうすればいいんだろう。
僕に何ができる?
君を笑顔にするために、今の僕に何ができるんだ?
教えて、双子のピエロ。
僕は、彼女を笑わせてあげたい。
俯いて顔をあげない彼女の手を僕は強く握りしめて、何ができるかを考え続けた。
おまけ
「みんなぁ・・・・どこだよぉ・・・ヘッキシッ・・・おいてかないでくれよぉ・・・」
置いて行かれたくぼじいが、のっちゃんにパンをねだるのは別のお話。
君のために 僕は何ができるのだろう