四つ灯火

登場人物
井ノ宮 衛(いのみや まもる)
国坂 凛(くにさか りん)
小野 鈴(おの すず)
結城 春(ゆうき はる)

四つ灯火

小学一年、親の意向で法人主催での夏の山岳合宿に参加することになった。合

宿は自然と触れあうと自主性を身につけようとのことで子供だけでの参加だっ

た。そのころの僕は一人で1週間も泊まりに行くなんてこわくてしかたなかっ

た。
「ほら衛、泣いてないで挨拶しなさい。」
母親はうっとしそうに足にしがみついて後ろに隠れてる僕を前に押し出そうと

した。
「うぐっ、いや、だ、家に帰、るっ、ひっぐぅ」
「まったく……はいはい、じゃあちょっとそうして待っててね。お母さん職員

さんと話さないといけないから。」
母の足元で会話を見ていると参加者と思われる母子連れがきた。
その親子をなんとなくじっと見ていると同年代の女の子らしい子が僕に近づい

てきた。
「ママがお話しててつまらないの。私とお話しましょ。」
少女はちょっとお嬢様みたいな話し方だった。
「私は小野鈴って言うの。あなたは?」
「……ま、まもる……」
「まもるね。あんたなんで泣いてんの?もしかしてこわいのぉ?」
鈴がにやにやしながらからかってきた。
「ち、ちがっこわくなんかなひっうっうっ」
「じゃあ向こうにいこう。ほらあっちに暇そうなのたくさんいるし。」
鈴が指を指した方向には同じ年くらいの子がたくさんいた。

それが鈴との最初の出会いだった。
ちょっとわがままで自分勝手で強気な印象だったけど僕が内気すぎたのかもし

れない。


合宿一日目、鈴のおかげでいつの間にか泣き止んでほかの子と遊んでいた。最

初に職員から集合がかかったのはお昼ご飯前、まずは班分けをすることになっ

た。四人一班の四班、計十六人の参加者がいた。

班はAからD班、僕は鈴と一緒にD班になった。
他の二人はこのとき初めて自己紹介することになった。
にこにこしながら
「春って言うんだ、よろしくねぇ。」
無愛想に表情変えずに
「国坂凛、よろしく。」
凛はとても冷たい雰囲気の表情のない女の子で、春はのほほんとしているふん

わりとした男の子。対照的な雰囲気だ。
どこか偉そうに腕くみしながら
「鈴よ、よろしくね。ほら衛も。」
僕はオドオドしながら
「衛です、よろしくおねがいし……。」
「ほら衛、オドオドしないの。最後なに言ったのかわからないわよ。」
背中を鈴にバンバン叩かれて痛くて泣きそうだった。

お昼ごはんにカレーを食べたあと。昼から山登りをすることになった。
「今からコースに沿って歩きます。途中で休憩を挟んで二時間程で帰ってきま

す。皆さんは班ごとに二列に並んでついてきてください。」
いろいろと注意することを説明されたあと僕たちは整列して出発することにな

った。A班が先頭で僕たちD班は最後尾だった。僕と鈴が前で春と凛が後ろだっ

た。僕たちの後ろにもう一人職員の人がついていた。
平坦の簡単に舗装された山道は歩きやすかった。うっそうと生い茂った木は太

陽の光をさえぎり夏でも涼しかった。
途中で鈴が大きい虫をみつけてはぎゃーぎゃーと悲鳴をあげていたけど、それ

以外は特になにごともなく休憩地点にたどり着いた。
休憩中は職員がみんなを座らせて途中でみた木や草花、虫の種類や名前を教え

てくれた。興味はあまりなかったけど職員の実体験の笑い話や葉や花でいろい

ろ作って見せてくれるので、どこかに勝手に走っていくような勝手な子はいな

かった。
休憩も終わりに近づいてきたころ、急に空が暗くなった。
「雨が降りそうなので休憩は終わりにします。みなさんは雨合羽を着てくださ

い。」
出発するころには雨が降り始めた。最初はパラパラと降っていた雨も次第に強

くなり大きな声で喋らないと聞こえなくなってきた。
まだ昼三時ごろなのに周りはどんどん暗くなり怖くなって泣きながら歩いてる

子もいた。
「凛、大丈夫?」
後ろから春の声が聞こえた。
振り返ると凛が倒れそうになっているのを春が支えていた。
「大丈夫、歩けるから。」
そういって歩こうとするがフラフラと頭を揺らし歩けていなかった。
後ろを歩いていた職員が気づいて声をかけてきた。
「具合悪そうね。あそこの木陰は雨避けに使えそうだからあそこに行こう。み

んなついてきてね。」
職員は凛をおぶって僕たちの先頭にたって木陰まで連れて行った。
「君たちはちょっとここで待っててね。前の人呼び止めてくるから。あと車で

迎えにくるように連絡もするように頼むからね。」
そういって自分の鞄から懐中電灯とお菓子と水を渡してくれた。
「懐中電灯はずっとつけててね。目印になるから。お菓子と水はみんなで分け

て食べていいからね。」
職員はそう告げると木の上の方に何かを巻きつけて早足で先に行った人たちを

追いかけていった。

凛は苦しそうに息をしていた。
「凛、水飲む?」
凛は軽く頷いた。春はさっき貰った水を凛に飲ませた。まだ苦しそうだ。
それから僕たちは貰ったお菓子を分けて食べた。凛の分は残して僕のバックの

中に押し込んだ。

チョコレート、パサパサのビスケット、干し葡萄、あめ玉、あの人いろいろく

れたけどお菓子好きなのかな。

 どのくらい時間が経ったのだろう。時計は全員持っていたけどバラバラの時

間で止まっていた。僕の持っていた電波時計も動かなくなっていた。
時間もわからないままずっと雨をみていると歩いてないのにいつのまにか迷子

になったような気がしてきた。
雨で流されて景色がだんだんと変わっていくような・・・
「あれ……?」
本当に景色が変わってる?
「どうしたの衛。」
「あのさ、なんか景色がかわってない?」
僕は前のほうを指差した。
「あの木なかったし、ほらあそこもっと大きい木があったよ。」
「歩いてないんだから動いてるわけないでしょ。いい加減なこと言わないでよ

衛。」
鈴にバシンと背中を叩かれた。
「でも、もしかしたら雨で流されてるのかもしれないよ僕たち!」
「そんなことない!ほら、あそこに職員さんが巻きつけていったやつが……な

い。」
僕たちは四人一緒にいつの間にか別の場所にいたらしい。


 ぼくらは完全に迷子になっていた。まっても結局職員は迎えに来なかった。
しょうがないから僕と凛、春で二人ずつ交代で周りを探索してみた。懐中電灯

を目印にしてなるべく遠くに行かないようにした。
近くにあるはずの歩いてきた道を見つけることもできなかった。

 雨足は強くなる一方で雨具を着ているといっても水が中まで染み込んでくる

のがわかった。
 夏でも土砂降りの山はとても寒かった。
 探索するのをやめて雨の少ない木陰で身を寄せあうことにした。
 誰も声を発さずただ深い恐怖に怯えるだけだった。

「こんなところで何をしている?」
後ろから声がした。
振り向くと30前後の男の人が立っていた。
「おじさんだれ?救助の人?」
おじさんはしばらく黙っていた。虚空をしばらく見つめた後
「いや、ちがう、この山の、持ち主だ。散歩をしてた。」

「合宿中にはぐれちゃって……」 鈴が言った。
「合宿?・・・ああ、そういうことか。それは大変だな。はぐれた、つまり遭

難か。」
 おじさんはどこか目線があさっての方向を向いて喋っていた。
「あの、近くに休めるところはありませんか?この雨で寒くて、凛が、この子

が体調わるくて……」
「雨……そうだな、寒い。ああ、寒いから雨宿りしたいな……」  
 おじさんはそういうと目をつむりなにかブツブツと呟いた。瞼の奥が点滅し

たように見えた。
 目をあけ後ろを向き指さした。
「あそこに私の家がある。いや小屋がある。そこで休もう。」 そう言って歩き

だした。
「どうする?ちょっと気味が悪いんだけど。」 鈴がみんなに小さな声で訊ねた


「ついていこう。凛が苦しそうなんだ。ついていかなくても危ないことには変

わりないよ。」
春はそう言って凛を支えて立たせていた。
「なにかされるなら、もうされててもおかしくないものね。」
凛がそう言って歩き出したから僕も支えて歩くことにした。

 おじさんのあとに鈴、そのあとに僕たちが歩くことになった。

 山小屋は思ったより近くにあった。というよりほとんど歩かずについた。 そ

のときはみんな疲れきっていてそのことを口にすることはなかった。
「たどり着いた。ドアを開けるから中に入るといい。」
僕たちはその妙な喋り方に違和感をいだきながらも中に入っていった。
 中は広かった。
外見よりも間違いなく広かったけど暗くてよく見えなかっただけだろうという

ことにした。小屋の中は土足で移動するキッチンと中心に囲炉裏のある居間が

あった。
「おじさん、ここ寒いから火を起こせないかな?」 春がおじさんに訊ねた。
「寒い、そうか火か。わかった。」
そういうと何もなかった囲炉裏にいつの間にか薪が置いてあり火がつけられた

。 「えっ?」
僕は木に火がつく瞬間をたまたま見た。何もないところからパキッと音が聞こえ

て燃えだした。
「これで大丈夫か。暖かいな。」
「まだ寒いけどしばらくすれば暖まるね。」
おじさんは首を傾げて
「まだ寒いか。なら・・・」 とブツブツなにか呟いていた。すると火が大きく

なりさっきまで寒かった部屋の中が一気に暖かくなった。
「これでいい、な。」
「おじさん、これどうやって温度あげたの?」
鈴がみんなの疑問を口にした。
「何もしてないのに火が起きたりして不思議なんだけど。」
「火は・・・火は元々火種が残ってたんだ。問題ない。そして、火が大きくな

れば暖かくなるのも早い。だからだ。」
おじさんは無表情に慌てる訳でもなく当たり前だろと言わんばかりの受け答え

だった。
「そうだけど・・・まぁいいわ。」
「今はそんなことより凛だ。」
春は凛のバックの中から着替えを取り出した。
「鈴、服が濡れてるから着替えさせて。僕たちはあっち向いてる着替えるから

。鈴も着替えて。ここで乾かそう。」
鈴はちょっとめんどくさそうな顔をしたけど頷いた。
「見たら殴るからね!」
着替えはシャツとズボンだけしかもってこなかった。パンツが濡れていたけど

履かないことで解決した。
少しスースーするけど濡れているよりマシだ。

 着替えが終わり僕らは囲炉裏の周りに集まって暖をとった。
 ほとんど食べなかったけど凛に食べれるだけお菓子を食べさせて残りをみん

なでわけた。
 山小屋にあった水道で喉を潤し、気がついたらみんな寝ていた。


 僕は目を覚ました。そこは病院だった。
 体中が熱かった。特に頭が焼けるようだった。
 
ピントが合わずによく見えなかったけど目の前の誰かに話しかけられた。
「き……ま…え…」
何を言ってるのかまったくわからなかい。
「あ……あ…」
声もうまく出せない。
なにかまっすぐ伝わらないというか歪んでいる。曲がっているというかどこかがほんのだけ少しズレていてうまく伝わらないというか……

熱と異常な感覚に包まれて僕の意識は遠くなっていった。

四つ灯火

登場人物の四人が出会う小学生編です。
とりあえず書いてみました。

四つ灯火

小学一年の衛 凛 鈴 春の四人が山岳合宿で出会う。 合宿の散策で迷ってしまい……

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-06-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted