さかな


あの子は何処に行ってしまったんだろう

不確かな記憶巡らし 君の姿を作り出す
それはいつも後ろ姿ばかりで
制服のスカートを揺らして僕から遠ざかっていく
短く綺麗な黒髪を耳にかけて
少し華奢でいて凛とした背中を僕に見せながら
駆けていく、何処までも
遠いところに 僕の見えないところに ずっと

きみが笑うなら宇宙にも行けるだろ

大人びた仕草 涼やかな瞳
その目の奥にはなにがあったのか
それはまるで雲のように
高く遠く 掴めない
悲しみと厳しさを纏う視線が僕をつらぬく
息ができない この水の中
君の使う言葉どれも僕の心に染みていく
知りたいんだ、君のこと

冷たいみずの中游いでいく さかな

一度だけあなたは僕に言ったんだ
かえろう、と
その言葉だけで何処までも深く落ちていけるきがした
あなたの導く世界の果て
答えを気泡にして飲み込もう
不思議だった僕の夏休みの夜

あの子は何処に行ってしまったんだろう
はじめて愛した 僕のさかな

さかな

さかな

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-06

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