ユウグレメモリー
桜木美緒はある日、事故にまきこまれ記憶喪失に。
ただ、それは普通の記憶喪失ではなかった。
友人、友奈と志優たちが必死に記憶を取り戻そうとしている中、不思議な少女に会う。
誰も知らないその少女は美緒の記憶喪失の理由を知っていた。
夕暮れの中、その一つの記憶によって起こったまか不思議なストーリー。
Dream
夢をみた。
とても面白くない夢。
退屈で退屈で、あまりにも退屈だったから
自分のほっぺたをつねった。
これで夢から目覚められる。
いったん目をつぶろう。
次に開けたときは、きっとあのベッドの上にちがいない。
目を開けよう。
なんで…?
なぜ夢からでられないの?
おかしいな。
あれ?
みんなは?
どこ?どこに行ったの?
…いかないで。
1人はやだよ。
あれ?
退屈なんかじゃないかも。
もう、
こんな世界、
やだよ。
Memory loss
今私、美緒は焦っている。
目の前に立ちはだかる横断歩道は赤になりかけていて、周りの人たちの何人かは走り始めている。
私もこの横断歩道にはどうしても渡り切りたかったので、息を切らしながらやっと横断歩道のスタートラインを踏み切ろうとしていた。
「美緒っ、信号点滅してるよ!って、そんなに焦んなくていいからっ。」
向こうで親友の友奈のはつらつな声が聞こえる。
まって…
置いてかないで、
少しだけ横断歩道を待つだけなのに、なぜかこんな気持ちが頭をよぎる。
もちろん友奈は少しも思ってないだろう。
横断歩道を少し進んだとき、周りの人たちは諦めたのか、後ろで背中を丸くして困ったような顔をしていた。
ふと状況を確認してみると、横断歩道に飛びついたのは美緒たった一人だけだった。
「はぁ…はぁ…」
美緒の声がまじった息切れが、横断歩道の真ん中エンジン音とともに聞こえる。
「あっ、美緒っ!」
「…えっ?」
その瞬間、美緒は向こうにいる2人と目が合ってつい立ち止まってしまった。
一気に恐怖と不安に襲われた。
なに…?
なんで2人ともそんな顔するの?
その理由はこの2秒後に分かった。
左側から大きい気配が不安な風とともに迫る。
やだ…。
やめて…。
焦りなから、美緒はぎゅっと目をつぶった。
そして、友達の悲鳴が聞こえたのはその3秒後だった。
ユウグレメモリー