美容整形した女子高生の物語(仮題)
16歳の女子高生、栗色雨音はイジメを苦に校舎の屋上から飛び降りた。
1ヶ月後、クラスメイトの前に現れた雨音の容姿に、全校生徒が驚愕する。
自称、顔面偏差値25の雨音の美貌は、とても整形手術によるものとは思えないうつくしさ、輝きを放っていた。
美容整形外科医にして精神科医でもあるDr.キリシマがもたらした奇跡の手法。
彼との出会いによって生まれ変わった雨音の、バラ色の人生。
すべてのいじめられっ子に贈る、極上エンターテインメント&ドキュメンタリー自虐小説。
イタい内容ですけど、炎上させないでください汗。
@この前書きは、大幅に加筆訂正することがあります。
栗色雨音(くりいろあまね)が屋上から飛び降りて死んだ。
本来ならそんなニュースが駆け巡ってるはずの桜ヶ丘高校で、全校生徒集会が開催されたのは、秋。
あ~やだやだ。
ご丁寧にあたしをイジメてた連中のネーム入り遺書まで書いて飛び降りたっていうのに、ドジなあたしはアスファルトに叩きのめされるどころか、地面にすら到着できず木の枝にぶら下がっていたらしい。
そんな姿を地元新聞記者が写真入りで記事にしたもんだから、すっかりあたしは有名人。
生きた心地もしないっつーの。
え?なんであたしがイジメられてたかって?
そりゃ、あたしのアダナが『くりちゃん』だからに決まってんでしょ!
言わせんな、恥ずかしい。
それでもあたしが宮﨑あおい似だとか、佐々木希似だとかなら、まぁイジメっ子連中もためらう余地はあったんでしょうけど、お世辞にもあたしの顔は人並み以下。
教師にすら顔面偏差値25って言われたわよ。はぁ~。
で、担任教師を筆頭に、総勢7名のイジメっ子軍団の名を似顔絵つきで遺書にしたため、お作法というか、伝統行事というか、例によって左右の靴のつま先をきちんと揃え、小春日和の10月1日、栗色雨音16歳はセーラー服をたなびかせ、眼下の花壇めがけ一気に飛び降りたってわけ。
@この小説は書きかけです。すでに投稿されている文章も、のちに修正されることがあります。
あたしが死んでないことに気づいたのは、桜ヶ丘高校体育祭真っ盛り…となる予定だった日の次の次の月曜日。
全身包帯ぐるぐる巻きにされ、『こんなんじゃあ死んでも死に切れない!』ってお母さんに泣きついた時点ではたと気づいた。
そんなお母さんは肝っ玉かあさんで、自分の姓が栗色であることに何ら抵抗感を示さない。
『だって、栗色だよ?!』とうら若き愛娘のいじけ声にも、「嫌なら早くお嫁に行きなさい」とつっけんどん。
「それまで待てないよ。てか、あたしを嫁にもらう男なんていないわ。お母さん、早く離婚してぇ~」
「離婚しても、雨音はお父さんに預けちゃる(笑)」
「お母さんがいい~。お母さんの旧姓なんだっけ?」
「うちかい?うちのはひどいもんだよ。栗原」
「へ?」
「ク・リ・ハ・ラ!」
病院のベッドはどこも重症患者で満員御礼。
あたしのような自力で病院屋上から飛び降りる余力が残された患者なんかいやしなかった。
いっそこのまま顔面包帯女として生きてゆこうかな、と思う。
これなら偏差値25だか65だかわかんないしね。
あ~ぁ、なんで顔面は学力みたいに見えない偏差値じゃなかったんだろう。
あたしもうつくしくなりたい。
病室の窓の外、あの紅葉のように真っ赤に燃え上がる恋愛をカズ君としてみたい。
カズ君とはご想像のとおり、クラスいちのイケメン君である。
「人間は、16歳のときに幸せな恋愛ができるかできないかで、その後の人格形成に大きな影響を及ぼす」
と言ったのは、未来の文豪、栗色雨音である。
ふうっとため息をつくあたしの顔が、病室の窓に映る。
ダメだ。カズ君との恋愛なんて100年早いわ。。。(苦)
そんな悲観主義者のあたしに、奇妙な取引きを持ちかけてきたのはDr.キリシマだった。
この病院の非常勤精神科医で、心の歪みを矯正する整体師、とかなんとかつまらんキャッチフレーズを口ずさむ怪しい医者だ。
「お!クリちゃん、今日もかっわいいねぇ~!」
「うるさい、ヤブ医者め。あたしの包帯ぐるぐる巻きの顔の、どこが可愛いんぢゃ!」
「なに言ってんだよ、雰囲気が可愛いんだよ。 包帯の隙間から漏れ漂う若いフェロモンのせいかなぁ(笑)」
「なんだと、この、変態医者め!不覚にも思わず喜んじゃったじゃないか(照)」
「クリちゃんは正直だねぇ」
「ヤメロ、その言い方。言葉とは裏腹に、身体は正直だねぇ、と聞こえるわ、エロ医者が」
「ん?なに?クリちゃん。どういう意味?クリちゃん」
まったくもってデリカシーのカケラもない医者である。
こやつが精神科医を標榜するとは、世も末だわい。
「ところでクリちゃん、学校の屋上から飛び降りたときに、その低い鼻を折っちゃったみたいなんだけど、器用なことするねぇ」
と言ってキリシマはあたしのぐるぐる巻きの真ん中あたりを指でぷにぷにと突っつく。
「やめろ、キリシマ。マジでやめれ」
思わずクシャミが出そうになり、必死にもがいた。
「あはは~(笑)クリちゃん、つつかれると感じるんだ」
「お、おまえはバカか」
これ以上はヤバいやろ~。
思わず鼻水が垂れてくる。
ぐるぐる巻きがびしょびしょだ。
「ところでクリちゃんに、ひとつ提案があるんだけど」
「セクハラの次は援交の誘いか?おまえには指一本触れさせぬぞ」
「なに言ってんだ、オペ台の上で身体のすみずみまで縫合したっつーのに」
生き恥を晒してもうた。。。
キリシマの提案とは、あたしに美容整形術を受けれ、というものだった。
ヤツの専門は美容整形外科。
それも何やら怪しい横文字の形成術という。
もちろんあたしはこれまでに何度か美容整形を考えた。
ボーイズラブを読む際に、裏表紙のプチ整形クリニックの広告を見逃がすはずもあるまい。
だが、顔面偏差値25の女が、目をいじり、鼻をいじり、顎をいじってウンジュウ万円。
せいぜい偏差値45が関の山。
それも不釣り合いな目と鼻と顎を福笑いのように貼り付けて、クラスメイトからは「整形女」と嘲笑われ、さらなるイジメの対象に。
あな、恐ろしや。
絶対ムリ!
だが、変態のキリシマはいつになく執拗だ。
絶対整形と分からない整形術、などと寝言をほざく。
そんなもん、あるかいっ。
それじゃあ偏差値変わらんやんけ。
「そんなことはないんだ、クリちゃん。人の表情は千差万別、無数に変わる。なのにそのすべてが同一人物と判別できる。数ある表情のなかの奇跡の一枚が、プリクラで撮れたとしよう。それももちろん、その人の顔さ」
そりゃ、そうだ。
あたしにだって、超偶然に可愛く撮れた奇跡の一枚がある。
14歳のときのプリクラ。
まるで、安室チャン。
ブログのトップページに貼りつけといたら、ソッコー男子にバレて晒しモノだったけど。
それでもあれは、あたしのなかのタカラモノ。
携帯の奥の奥に秘められているうつくしいあたしの写真。
あたしが死んだら、この写真を記事に使って欲しかった。
あんなてるてる坊主みたいな、木の小枝に引っ掛かったスクープ写真じゃなくて。
あたしは携帯をギュっと胸元で握り締め、それからおもむろに電源を入れた。
………。
携帯は死んでいた。。。
ぐはっ!
「キミの厚いくちびるを細くする必要はない。キミの可愛い鼻を無理に高くする必要もない。あるがままのキミのパーツを使って、誰にもどこをいじったか悟られぬままに、キミはキミ自身のほんとうの可愛さを手に入れることができる。断言しよう、キミのご主人にすら、キミが整形したこととは分からぬだろう、と」
ビデオのなかのキリシマがそう語りかけているのは、およそ顔面偏差値でいうところの35。
3匹の子ブタを丸呑みしたような、この中年太りの35は、歯の浮くようなキリシマのクサいセリフにもうメロメロだ。
つくづくキリシマの怪しさが身に染みて、もはや35に憐憫の念すら禁じ得ない。
それでもおばさんはご主人と結婚できたのだから幸せじゃないですか。
それに引き換えあたしってば、25。
齢16にして25よ。
こんな顔のカマキリが道端を歩いてたら、あたしだって踏みつけちゃうわ。
「うるさいなぁ」
キリシマがこれみよがしにブツクサ言う。
あら、聞こえちゃってたのね。
てへぺろ。
どうだ、可愛くないだろ、いい気味だ。
ひとりツッコミを入れるあたしを無視して、キリシマはビデオは早送りした。
ふいに画面のなかが明るくなり、そこに現れたひとりの女神、75。。。
そう。あたしの世界観が引っ繰り返った、瞬間だった。
美容整形した女子高生の物語(仮題)