【ちいさな物語7】ちぃちゃんのビー玉

【ちいさな物語7】ちぃちゃんのビー玉

【登場人物】

ちぃ
おばあちゃん
 赤=太陽
 橙=夕陽
 黄=向日葵
 緑=大きな樹
 青=噴水
 藍=夜空
 紫=紫陽花
 鳥



【STORY】

大切な7つのビー玉を探しに ちぃちゃんの大冒険が始まります。


ちぃちゃんの宝物は キレイなキレイなガラスのビー玉。
去年亡くなった、大好きだったおばあちゃんからのプレゼントです。
大切で大切で、いつも肌身離さず持ち歩いては、眺めています。

  ちぃ「うふふ、キレイだなぁ~、うふふ」



ある日、いつものようにビー玉を取り出そうとすると・・・
あるはずのビー玉が見当たりません。

  ちぃ「あれ?・・・ないっ!おばあちゃんのビー玉がないよぉぉぉぉ」

必死に思いつくところを探しましたがみつかりません。

  ちぃ「ない、、、ない・・・どこにもなぁぁぁぁぃ」

ちぃちゃんはビー玉探しの旅に出ることにしました。

  ちぃ「どこかに落としたのかな・・・よしっ!ビー玉探しにいこっ」



ちぃちゃんは始めに、いつも遊んでいる公園に行ってみました。

  ちぃ「昨日ここで遊んでぇ・・・ゆぅくんにビー玉見せたんだよねっ。
     そんでぇ・・う~ん・・・あ、鳥さんだ!鳥さんに聞いてみよう。
     鳥さぁぁぁん」

  鳥 「おや、ちぃちゃん。ひとりでどうしたんだい?」

  ちぃ「あのね、ちぃの大切なビー玉がなくなっちゃったの。鳥さん知らない?」

  鳥 「ビー玉かぁ。何色だい?」

  ちぃ「んとね、赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫、藍色」

  鳥 「緑色なら・・・そうだ、公園の真ん中にある大きな樹の精ならわかるかもしれないよ」

  ちぃ「そっか!わかった。聞いてみるね、ありがとう、鳥さん」

  鳥 「見つかるといいね、ちぃちゃんがんばれ!」

鳥に背中を押され、ちぃちゃんは公園の真ん中にある大きな樹に聞いてみることにしました。

  ちぃ「大きな樹さん、こんにちは!教えてもらいたいことがあるの」
 
  樹 「やぁ、ちぃちゃんじゃないか。何を教えてほしいのかな?」

  ちぃ「あのね、大切なビー玉をなくしちゃったの。大きな樹さん、知らない?」

  樹 「なんだ、そんなことか。知ってるよ、わしは何でも知ってるからね」

  ちぃ「ほんと!?どこにあるの?」

  樹 「ほぅら、緑のビー玉だよ。これだろう?」

  ちぃ「わぁ!緑のビー玉あったあああああ。ありがとう、大きな樹さん」

ちぃちゃんはとてもうれしそうにはしゃぎまわります。

  樹 「他には何色があったんだっけ?」

  ちぃ「んとね、赤、オレンジ、黄色、青、紫、藍色」

  樹 「青色なら・・・あっちの噴水さんが知ってるかもしれないよ、行ってごらん」
 
  ちぃ「うんっ!行ってみるね、ありがとう、大きな樹さん」

  樹 「きっと、見つかるよ。ちぃちゃんがんばれ!」
 
大きな樹の精に緑のビー玉をもらったちぃちゃんは、教えてもらった噴水のところに向かいました。

  
  ちぃ「噴水さん、こんにちは!聞いてもいいかな?」

  噴水「こんにちは、ちぃちゃん。何が聞きたいの?」
 
  ちぃ「あのね、大切なビー玉をなくしちゃったの。噴水さん、知らない?」
 
  噴水「ビー玉?ちぃちゃんがいつも持っているやつだね。
     ちょっと待ってて、探してあげる。」
 
  ちぃ「あるといいなぁ・・・」

  噴水「おっ、これかな?」

噴水は水の中から青色のビー玉を出してくれました。
 
  ちぃ「そう!これだよ!!よかったぁぁぁ、青いビー玉見つかった!」
 
ちぃちゃんはうれしそうに、青いビー玉を握りしめました。

  噴水「見つかってよかったね。他には何色があるの?」
  
  ちぃ「んとね、赤、オレンジ、黄色、紫、藍色」

  噴水「そうだなぁ、黄色なら・・・花壇の向日葵さんがきっと知ってるよ」
 
  ちぃ「ほんと?行ってみる!どうもありがとう、噴水さん」

  噴水「見つかるように祈ってるよ。ちぃちゃんがんばれ!」

そういうと噴水は小さな水柱をいくつも踊らせてくれました。

黄色のビー玉を探しに、今度は花壇の向日葵のところに向かいます。

  ちぃ「こんにちは!向日葵さん。ごきげんいかが?」
 
 向日葵「あら、こんにちは、ちぃちゃん。素敵な挨拶をありがとう。」

  ちぃ「あのね、向日葵さん。ちぃのビー玉知らない?なくしちゃったの」
 
 向日葵「まぁ、かわいそうに。どれどれ・・・ビー玉、ビー玉・・・。
      あっこれかしら?」

  ちぃ「うわぁ!黄色のビー玉だぁぁ。見つかってよかったぁぁ」
 
 向日葵「うふふ、よかったわ。もうなくしちゃダメよ?」

  ちぃ「うん!絶対絶対なくさない!!」
 
 向日葵「大切なビー玉だものね。他には何色があったかしら?」

  ちぃ「んとね、赤、オレンジ、紫、藍色」

 向日葵「そうね・・・紫なら・・・あちらの紫陽花さんならご存知かもよ?」

  ちぃ「紫陽花さんだね、教えてくれてありがとう、向日葵さん」
 
 向日葵「きっと見つかるわ、ちぃちゃんがんばって!」

ちぃちゃんはうれしくてうれしくて、思いっきり走って紫陽花のところへ向かいました。
 
  ちぃ「はぁはぁ・・・こんにちはっ、紫陽花さん」
 
 紫陽花「はい、こんにちは。おやおや、そんなに息を切らせてどうしたんだい?」

  ちぃ「あのね、大切なビー玉を探してるの。紫陽花さん知らない?」

 紫陽花「おばあちゃんのビー玉だね、なくしたのかい?」

  ちぃ「うん・・・でもね!もう3つも見つかったの!!ほら♪」
 
 紫陽花「ふふふ、じゃあもうひとつ増えたね。ほぅら、きれいな色だこと」

  ちぃ「あ!紫色のビー玉!!わーぃ、わーぃビー玉増えた~」 
 
 紫陽花「あと足りないのは何色だい?急がないともう陽が暮れてしまうよ」
 
  ちぃ「んとね、赤、オレンジ、藍色」

 紫陽花「じゃあ急いでお行き。夕陽さんのところだよ。あぁ、でも走って転ばないようにね」
 
  ちぃ「はぁぃ。ありがとう、紫陽花さん。行ってくるねっ」

 紫陽花「気をつけるんだよ、ちぃちゃんがんばるんだよ!」

  ちぃ「急がなきゃ」

ちぃちゃんは沈んでいく夕陽目がけて、精一杯走ります。
 
  ちぃ「はぁはぁ・・・ゆ・・・夕陽さん、まってくださ~い」

  夕陽「ん~・・・誰かと思ったら、ちぃちゃんか。そんなに走ってどうした?」

  ちぃ「あのねっ、夕陽さんがちぃのビー玉知らないかなぁって思って」

  夕陽「ビー玉・・・あのキレイなやつかい?」

  ちぃ「そう、夕陽さんと同じ色のキレイなガラスのビー玉なの、知らない?」

  夕陽「そういえば・・・どこにやったかな・・・ん~と・・・あったあった。ほぅら」

  ちぃ「夕陽さん、持っててくれたんだね!!よかったぁぁぁぁ」

  夕陽「うん、私の色に染まってたからね。よかった、よかった。これで全部見つかった?」

  ちぃ「ううん、あとね、赤と藍色がまだなの、どうしよう」

  夕陽「あと2つもあるのか・・・私が沈むのを遅らせてあげるから、早く探して」

  ちぃ「わかった!急いで探すね、ありがとう、夕陽のおじさん」

  夕陽「転ぶなよ~・・・ちぃちゃん、がんばれっ!!むむぅ・・」

夕陽は走っていくちぃちゃんを見送りながら、精一杯の力を振りしぼり、沈むのを遅らせてくれました。

  ちぃ「赤と藍色・・・どこを探せばいいのかな・・・わかんないよぅ」

だんだん辺りは暗くなっていきます。

やみくもに探して走っていたちぃちゃんは、疲れてしまいました。

  ちぃ「足が痛いよぅ。疲れたよぅ・・・暗くてこわいよぅ」

とうとう泣き出してしまいます。

そんなちぃちゃんに優しい声が降り注ぎます。

  夜空「こんばんわ、ちぃちゃん。どうして泣いているのかしら?」

  ちぃ「よ・・・夜空さん。だって・・・大切なビー玉が見つからなくて。
     もうどこを探せばいいかわかんないよぅ・・・うわぁぁぁん」

  夜空「そうだったの。それじゃぁ・・・これで涙は止まる?」

そう言って夜空がそぅっと差し出したのは、藍色のビー玉でした。

  ちぃ「あっ!うん、そう!み・・・見つかったぁぁ・・・うわぁぁぁん」

今度はうれしくて涙が止まらないちぃちゃん。

そんなちぃちゃんを夜空は抱きしめ、優しく歌うのでした。

  夜空「よしよし・・・あら、眠ってしまったの?

     ・・・おやすみ。明日またがんばろうね、ちぃちゃん」

優しい子守唄に泣き疲れて眠ってしまったちぃちゃん。

一晩中、抱っこしては愛しそうに見守る夜空でした。

  ちぃ「ん・・・ふぁぁ・・・あれ?夜空さんがいない」
 
目が覚めると、辺りはまぶしい太陽が照らしていました。

  ちぃ「夜空さんに・・・お礼言えなかった。ごめんなさい・・・ありがとうぅぅ、夜空さぁぁぁん」

夜空に届くように、大きな声で叫びます。

その声を聞きつけ、さらに元気な声が返ってきました。

  太陽「おはよ~~~~ぅ!!早起きだね、ちぃちゃん。今日も元気か~ぃ?」

  ちぃ「おっおはよう~~太陽さん。元気だけど・・・元気ない・・・」

  太陽「なんだってぇぇぇ?どうしたっ?何があった??」

  ちぃ「あとひとつ・・・赤いビー玉が見つからないの」

  太陽「な~~んだよ!そんなことか!はっはっは!しっかり受け取れよっ、それっ」

太陽がちぃちゃんに向かって投げたもの。

それは最後の赤いビー玉でした。

  ちぃ「やったぁぁぁぁぁ!!全部揃ったぁぁぁぁ!!おばあちゃん、見つかったよぉぉぉ!」

ちぃちゃんは天国のおばあちゃんに届くように、大きな大きな声で叫びました。

そのときです・・・

  太陽「おっ!なんだ??」

  ちぃ「んっ・・・まぶしっ!」

ちぃちゃんの手のひらに並んでいた7つのビー玉が、一瞬まぶしい光を放ちました。

そして、7つのビー玉は空高く吸い込まれていき、ゆっくり色を広げ、大きな虹ができました。

そのときちぃちゃんは思い出したのです。

おばあちゃんが亡くなった日、大きな虹が架かったことを。

  ちぃ「おばあちゃんだね!そうでしょ?会いに来てくれたんだね!おばあちゃん」

ちぃちゃんがそう言って、虹に手を振りかざしたとき、
それに答えるかのように、再びまぶしい光が辺り一面を照らします。

  ちぃ「うわぁ!」

あまりのまぶしさに目を開けていられないちぃちゃん。

しばらくして、そぉっと目を開けると・・・

握りしめられたちぃちゃんの手のひらには 7つの色に光るひとつのビー玉がありました。

  ちぃ「あっ!虹だ。虹色のビー玉だ」

7つのビー玉はひとつになり、虹色のビー玉になってちぃちゃんの元に返ってきたのでした。

 おばあちゃん『これでもうなくさないだろう?ちぃちゃん』

おばあちゃんの優しい声が聴こえた気がしました。

  太陽「これでいつもおばあちゃんと一緒だなっ」

  ちぃ「うんっ♪」

ちぃちゃんは虹色のビー玉を大切に握りしめ、それから二度となくすことはありませんでした。
 
おばあちゃんがかけた魔法は、ちぃちゃんをいつまでもいつまでも見守っていくのでした。


              



                     おしまい。

【ちいさな物語7】ちぃちゃんのビー玉

【ちいさな物語7】ちぃちゃんのビー玉

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-03

Copyrighted
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