趣味と興味の点から

ストーカー男と淡白娘って言うので書こうとしたんだけどストーカー男じゃなくてただの不憫な男の子だった。
そんなお話

ある放課後の出来事


「大江さん!」
 この人は、同じクラスで出席番号一番の青木慎。恐らく私に好意を持っている。信じられない。
「きょ、今日、誕生日だって、聞いたから……。その、これ、迷惑でなければ……!」
 誰に聞いたのだろうか。彼はそんなことを言って小さな包みを私に突き出してきた。校内で、私の誕生日を知っている人と言えば、部員と数少ない友人……。友人なら同級生だし話していてもおかしくはないか。あんにゃろう。
「ありがとう」
 仮定の犯人に悪態をついているのがばれないように、笑顔を浮かべながら返事をする。
「その、大江さん、熊が好きだって聞いたから……。気に入ってもらえると良いんだけど」
「あ、開けても良い?」
 だから、誰に聞いたのだろうか。まったく……。そう思いつつ、彼の了承を得てから、受け取った包みを開ける。
「わ、かわいい……」
 出てきたのは可愛らしい熊のキーホルダー。キャラ化された熊かー。
「あ、その、て、手紙もあるので、あと、あとで読んでください!」
 彼はそう言って、逃げるように帰って行ってしまう。ちゃうねん、そんな嬉しそうにされても困る。
 さっきのかわいいは、かわいすぎるぞおいッちゅー意味じゃ。ん、んん失礼。
「利子ちゃん何しとるん?」
 今度は後ろからかわいい女子の声。この声は、私の愛する昔馴染み、美海だ。
「ん、これあげる」
「えっ、わ、かわいい! え、でもこれって……」
 先程のかわいすぎる熊を美海に押し付ける。
「さっき青木君にもらったんじゃないの?」
 ん? さては、見ていたな? 助けてくれても良いじゃない。
「かわいすぎてだめ。美海の方が似合うわ」
「そうじゃないでしょ!」
 おお、怒った。
「もらったものは、粗雑にしちゃダメ! 趣味に合わないからって、折角くれたのに、そんな風にしちゃダメなの。いいね?」
 諭された……。まあ、美海の言うことも分からなくもない。
「うー。わかったよ」
「うん。よしよし。さ、利子ちゃん」
 私は大人しく鞄に熊のキーホルダーを付けると、今度は美海がリュックから何かを探し出す。
「じゃーん! 誕生日おめでとお!」
「うへ? えっ、わ、え!」
 渡されたモノは、少し重量がある。
「開けて開けてー」
 美海に促されて私は少し大きな包みを開ける。
「額縁?」
「そうそう。あとねーもう一つ、入ってるよ。そっちがメイン」
 額縁をよけて、底の方に手を入れると、何かに触れる。それを取り出して見れば……。
「うおー! かっこいい!」
 鮭を川から取り上げた瞬間の熊の写真が、パッケージに印刷されたパズルだった。
「うお何これかっこいい!」
「父さんが昔撮ったって言っていたから、頼んでそれをパズルにしたのー」
 美海のお父さんはプロのカメラマンだ。超かっこいい。
「有難う! 美海大好き! 絶対に完成させて飾るわ!」
 ここ最近で一番テンションが上がったと言っても過言ではない。
「リアルテディベアも探したんだけどねぇ。なかなか見つからなくって。来年またチャレンジする」
「うはー。やっぱり私の趣味を理解してくれてる友がいて良かった。めっちゃ嬉しい!」
 思わず美海に抱きつく。
「リアル熊好きすぎて、別人のテンションになってる」
 美海は笑いながら冗談のように言うが、廊下を通る同級生達の中には、不思議そうな顔をする人もいる。でもさ、好きなものを好きな人からもらえたら誰だってテンションあがるでしょう?
「いやはや、いやはや。ほんとありがとう」
 少し落ち着いた。大切にプレゼントを鞄にしまい、額縁はスクールバックには入らないので袋のまま手で持って帰る。
 もはや、青木くんのかわいすぎる熊のキーホルダーなんて忘れていた。正直にいえば、彼からの手紙を呼んだのはこの日から一ヶ月後の事である。

おわれ('ω')

趣味と興味の点から

Twitterでお題募集して、後輩ちゃんからもらった「テディベア」の消化作品。
久しぶりに新しくキャラを作れて楽しかったです。
この子たちでしばらく書けたらいいなあなんて思っていたりいなかったり?
そういえばテディベアってあまり消化できていないなって気づいてしまった。申し訳ない。熊ってことで許してください。

趣味と興味の点から

誕生日プレゼントの選び方って大事だなぁって思いますね。 一口に好きなものがあると言ってもそれは細かく考えると、まったく違ってしまうのかなぁとか。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-02

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