【性転換ⅩⅢ】

人気シリーズ性転換の13作目

一話~

【性転換ⅩⅢ】




【一話】




 200X年、度重なる周辺諸国からの嫌がらせに業を煮やした日本国政府は遂に軍備増強に乗り出し国民の99%もの世論に押され開戦已む無しと決断を下した。

 これに乗じて米国もまた開戦の準備をしつつも日本政府に思いとどまるよう幾度もの事務レベル協議をかさねてきたが、一部の嫌がらせに業を煮やしたのは日本ばかりではなかったことで、日本を主軸とする連合軍が発足した。

 これに対し嫌がらせを周辺諸国に繰り返してきたあの大国は、まさか及び腰の日本がと仰天したが最早、周辺国は態度を明確にすべく日本側の宣戦布告を待ち望んでいた。

 宣戦布告。 そして早期和平が日本を含む連合軍側だったが敵国は長期戦を視野に入れていたことで、事情は刻々と変化し始めた。

 そして最初は弾道ミサイルの打ち合いだったがらちが明かないと悟った大国側は遂に核弾頭を持ち出したがこれを米国に阻まれ続けた。

 そしてあの大国は四方八方からの攻撃に逃げ場を失い、遂に中央部へとその逃げ場を求めたがその反撃もまた凄まじいものであった。

 長期戦… それは日本を含む連合軍にもダメージであった。 そしてそんな中、過去に世界中から疑心の目で見られた日本軍の軍策の一つが今、まさに復活されようとしていた。

 当初は開戦そして早期和平が願いだったが長期戦となった今、壮絶な戦いを余儀なくされている状態で慰安婦ならぬ慰安夫構想が持ち上がった。 慰安夫とは読んで字のごとく戦地の兵士の労を労う目的の性的立場の人間達だった。

 そしてその数ヵ月後に送り込まれたのが任意希望による性同一障害者及び性転換希望者だった。

 性転換希望者には相応の働きと共に相応の対価(転換手術費用を含む)が支払われ慰安夫として兵士達の性の捌け口としての任務が与えられた。

 激戦地で戦う兵士及び士官達はまさか自分が抱いている女性(おんな)達が、男からの性転換者だとは知らされずに慰安券と引き換えに、愛を語りそして男女の関係を続けていたが、溜まったモノを吐き出した兵士達は次々に成果を上げていった。

 そして慰安婦ならぬ慰安夫達は自らの素性を明かすことを固く禁じられ、性行為で得る慰安券を本国に送り相当の報酬を銀行預金に積み立てていった。

 慰安夫たちは兵士・士官・将校用と区別され、ある一定の慰安券の確保と同時に自由の身になることを時の政府と約束されていた。

 突然こと慰安券の溜まり具合の激しい兵士相手が人気だったが、中には少数から大切に扱われつつ慰安券を溜める士官相手、そして一人の男性とだけ過ごす将校相手の三通りに区別された。

 その区別の仕方はあくまで慰安夫に任せられ一度、区別の適用を受けると慰安券が満たされるまで続くモノだった。 そして同時に兵士用・士官用・将校用に区分けされた慰安夫たちは身に着ける服装でその身分を一定線確保された。

 だが時には好みの慰安夫が兵士用に居らず士官用に手出ししてしまう愚かな兵士も存在し、度々憲兵隊に連行され婦女暴行の罪で処罰された。

 そんな中で慰安夫たちは政府との約束を着実に果たし慰安券を溜めては本国へ郵送をしていた。

 そしてその頃の日本での性転換の技術は二千十四年頃とは比較にならないほどに進歩し、性転換を受けたモノたちは生理は勿論のこと子供すら身篭ることも可能なほど、そしてその技術たるや本物の女性同様に濡れる身体であって快楽は勿論のことエクスタシーさえも感じられる身体であった。

 元々はスパイ活動のために進歩した性転換技術であったが、この時は慰安目的での仕様となっていた。

 だがそんな中で慰安夫達は政府筋に依って男だった頃の記憶を奪うべく知らぬ間に薬を盛られていた。

 そして大多数が男時代の記憶を女の記憶に書き換えられたが、一人の女だけが何故か記憶を消されず政府筋はこの女の存在に気付くことは無かった。

 

【二話】


 白衣を着た複数の医師達は真っ白い部屋の中央部にある全裸の人間の入ったカプセルを腕を後ろに眺めていた。

 丸みを帯びた上部は透明なガラスで出来ていて、その半分ほどある下部を金属のようなモノが覆っていた。

 そして複数の白衣を着た医師達に混じって一人だけスーツに金縁メガネをかけた冷酷そうな感じの男が腕を前に組んで興味深そうにカプセルの中を覗き込んでいた。


「これが今回の患者のこの数日間の映像です… 早回しで見て貰えれば解かりやすいので…」
 六十代少し前くらいの白衣の医師は興味深そうにカプセルの中の女性を見入る政府筋の男に、壁に取り付けられた大画面のモニターを指差した。

「身長百八十五センチの大男でさえ三日でその性別を根本的に転換していることが解かると思いますが、これは細胞反転術と言う技術… ああ、それは以前はなしましたね~ 申し訳ありません。 この技術は女を男に変えることも簡単なので兵士不足に備えることも可能です…」
 医師は政府筋の男に資料を見せながら大画面の中の大男が身長百六十センチに萎縮する瞬間を指差した。

「理屈は簡単なんですがね… この技術を作るのに膨大な国家予算を投じていますから、まあ~ 元は取れるとおもいます♪ 次はこちらへどうぞ♪」
 医師は他の医師達を残し別の部屋へと政府筋の男共々に移動した。

「こちらに眠る男性… 実は身長百五十五センチの女性でしてね… 男性への性転換の希望者では二千人目ほどでしょうか、現在の身長は百九十五センチとかなり大柄ですが骨格を拡張した所為で骨粗しょう症傾向でしてね、現在骨材を注入しているところです♪ こちらが最初の彼女でそして… こちらが現在の彼です♪」
 医師は政府筋の男に先ほどの部屋と同じつくりの壁に設置されている大画面を指差した。

 政府筋の男は百五十五センチほどの全裸のプリプリした女性が見る見る間にその小柄な身体を大きくし、乳房は跡形も無く消え同時に割れていた股間の部分の内側から逞しい男の性器が飛び出し定着していくのを目の当たりにした。

「この男性もあと数日で退院できそうですし、勿論のこと生殖能力もありますから、兵士不足に陥る前に兵士(しそん)反映にも役立つことは保障致します♪ 男と女が交われば当然のこと妊娠そして出産と兵士(しそん)の反映は永遠に続けられるでしょうな♪ 全く性同一障害などと、もっともらしい病名を作った過去の愚かな国々の政策もここにきて役立つとはおもいませんでしたよ~♪」
 医師はモニターの中で女から男へ変化し続けるモノを指差して終始、ご満悦だった。

 そして金縁メガネの冷酷そうな長身の男が小声を発した。

「性転換した者同士で妊娠を即したとして、出産までの時間の短縮は難しいのかな…」
 金縁メガネの縁を直しつつ、カプセルの中の大男を見入る冷酷そうな政府筋真男。

「そう言われると思いまして既に研究に入っております♪ でから研究費用の割り増しをお願いします♪ 官房長官!」
 医師はニヤリと笑みを浮かべてカプセル内に向けた視線をそのまま移動して政府筋の男を見た。

「肩書きはここでは使って欲しくないものだな…」
 表情を変え医師を睨み付けた政府筋の官房長官に一瞬「ギクッ!」と、顔色を変えた医師。

「も! 申し訳ありません! 以後、慎みます!!」
 官房長官の前に頭を何度も下げてわびる医師をプイッとかわして部屋を出ようと歩き出した官房長官。 それを慌てて追う医師。

 そして数分後。

 官房長官と医師は豪華な応接間にその身を置いていた。

「しかし何ですな~ 男が女になりたいだの女が男になりたいだの、まあ~興味深い題材ですが、過去の世界各国も妙な病名をつけて変質者たちを納得させ支持率を会得したことは、今の戦乱の世に大いに利用価値が見出されたことは我が日本としてはある意味、救いでしたな♪」
 金のテーブルの上に置かれた紅茶を前に白衣姿の医師は腕組みしてチラリと長官を見た。

「まあ、過去の世界中の閣僚たちに感謝と言うところだな。 性同一障害などとありもしない病気を作ることでガス抜きに成功したのだから… だがまさか戦争(ここ)で役に立つとはな。 あっははははは♪」
 冷酷そうな目付きをした長官は出された高級な紅茶を一口飲むと俄かに笑みを見せた。

「そうです♪ 患者達の夢は適う… 同時に兵士不足も解消される… あの共産国のような大国に勝つためには兵士(にんげん)は欠かせませんからなあ~♪」
 嬉しそうに長官に一本、数万円はしそうな葉巻を勧める医師。

「新たに研究費として五百億… 取敢えず提供することにするが、相応の成果は見せてもらうからな。 成功すれば勲章モノだな。 博士も…」
 足組して葉巻を口に、医師は火を点けて持て成した。

「ご勘弁下さい♪ ここでは普通の医師ですので… あっはははははははは♪」
 長官に博士呼ばわりされ表情をニンマリさせ照れる医師はヘコヘコと頭を何度も下げた。

「だが今回の戦地への慰安夫の派遣も大成功だったと各戦地の軍部から絶賛の報告が相次いでいる… 性転換の技術は施設(ここ)の者以外の国家機密だが、例の件も出来るだけ早急に頼むぞ… 万一漏れたら国家転覆にもなりかねんからな…」
 美味そうに葉巻を吹かす長官が出した煙は部屋の中を漂った。

「はい心得ています… この技術は決して漏れては困りますからなあ~♪」
 深々と頭を下げた医師。

 そしてその三十分後、内閣官房長官は施設の地下に設けられた極秘の通路を通って外へと姿を消した。


【三話】

 
 戦地では慰安婦と言う政府の計らいに気勢をあげた兵士達が、一斉に群集化し慰安所へと突っ走った。 それを横目に嬉しそうに通り過ぎる将校達もまた、自分達専用の慰安婦(おんな)を求め集合場所へと移動して行った。

 兵士と下士官である伍長や軍曹達は慰安所に入るなり早速、女漁りを始め女将たちを前に女達と金銭交渉を始めた。 女達は全員が処女(オボコ)とあって男達は先を争って性転換者であることを知らずに財布の紐を緩めた。

 そんな中、士官や将校達は専用の集合所へと出向き女達を奪い合うことなくクジ引きで女を一人ずつ割り当てた。 取替えの出来ないことを前提にクジ引き通りの女の肩を抱いて夫々は個々に個室に姿を消した。

 そんな中で待合所に大きく書かれた規約書には「引き当てられし女達の交換及び変更を固く禁ずる」の文字通り、士官と将校達は処女(おぼこ)であることに内心歓喜しつつも顔にそして表情に出さずにベッドの腰掛ける女達を覗き込んだ。

 兵士と下士官たちの慰安所は大声援と歓喜の後、一斉に静まり返りアチコチから処女喪失の女の鳴き声が放たれていたが、士官や将校達の慰安所もまた例外ではなく久々の柔肌と純潔に顔を埋める男達は只管、無心になって甘い香りの肉に舌を滑らせていた。

 だがそんな中、無人と化した待合所の中において自分に当てられた女の顔を見入り、伸ばした手で女のアゴを持ち上げる一人の将校が居た。

「名前はなんと言う…」
 女の顔を左手で持ち上げた将校の目に視線を重ねる女は黙ってその視線を左に反らした。

「気に入った! お前をワシの専属にする…」
 将校は割り当てられた女の手を引き受付案内の窓口に立って口を開いた。

「田所中将である! この女を今からワシの私物とする! 将校用に行儀見習いは実習済みか!」
 田所の声に女は一瞬、ピクッとしている間に受付の奥から担当将校が顔を出した。

「ハッ!! 確かに承りました!! 田所中将閣下!!」
 窓口の将校は田所に所定の書類への署名を求めると、田所は軍剣を少しだけ抜いて親指の腹を切って血を流しそれを書類に血判した。

 そして咄嗟に、女は自らのハンカチを取り出すとそれを田所の右手の親指に巻いた。

「これで手続きは完了であります! 田所閣下に敬礼!!」
 窓口の中に居た数人の部下将校たちは一斉に不動の姿勢をとって田所に敬礼をした。

 黒いストッキングに下半身を包んだミニドレス姿の女は黙って慰安所から出ようと歩き出した田所の後をゆっくりと追った。

 そして専属の運転手がドアを開くと田所は、先に女を乗せその後に自らも車に乗り込んだ。

「ワシの屋敷へ頼む…」
 田所は女の右手に自らの左手を重ねて女の反応を見たが、女は黙ったままだった。

「もう一度聞く。 名前はなんと言う…」
 田所の落ち着いた声が女に届くと、女は顔を上げ右側に居る田所にそのまま顔を向けた。

「立花美香穂と申します… 閣下にはお選び頂いて光栄でございます…」
 美香穂は視線を反らすことなく田所の目に映る自分の姿を見据えた。


 三十分後、車は二階建て洋風の屋敷の前に到着すると、運転手は速やかに田所のドアを外側から開いた。

「さあ、遠慮せずに入りなさい。 ここが今日からお前の家でもある…」
 大きな屋敷前で躊躇する立花美香穂の腰に手をかけた田所は、落ち着いた口調で彼女を屋敷の中へと導いた。

 民家には無い広めの玄関と厚みのある大きな玄関ドアに美香穂は緊張を隠せなかった。

「心配するな! 今すぐお前を味見することはせぬ。 まずはこの屋敷を自由に歩き回って何処に何があってどの廊下が何処へ通じているのか我が身で確かめよ…」
 大柄でありながらもスリムな田所は出迎えた執事と家政婦に美香穂を紹介すると、その身をリビングに移し執事に紅茶を二つ頼んだ。

「屋敷の探検は跡にするとしてまずは紅茶で喉を潤すとよかろう♪」
 大きなソファーにどっしりと腰を下ろした軍服姿の田所は足組して葉巻に火を灯し、それを見つつ美香穂はテーブルを挟んで向かい側にゆっくりと腰を下ろした。

「あの… 中将閣下様…」
 何かを聞きたそうに小さな声を発した美香穂。

「田所でよい! 帰宅してからも閣下とは呼ばれたくないんでな!」
 腕組して家政婦がテーブルに置いた紅茶を取ろうとした田所は溜息をつくように放った。

「美香穂様。 旦那様と呼ばれるがよろしいかと…」
 執事の宮坂は美香穂の耳元で自らの口元を手で覆い隠して伝えると美香穂は黙って頷き執事の宮坂と家政婦はそのまま立ち去った。

 すると足組していた田所は美香穂の思いもよらないことを言い出した。

「その場で立ってドレスだけを脱いで見せてくれないか… 女の身体が見たい」
 美香穂は目を丸くして広いリビングの辺りを見回すと黙って頷いてドレスをスルスルッと滑らせて下着姿を田所に見せた。

 メリハリの強い美香穂の身体を覆う黒いスリーインワンとソコから伸びるガーター紐と、吊られる美脚を包む黒いストッキングが悩ましく、その下に黒いレースのフリル付きスキャンティーがエロチシズムを最大限に引き出していた。

 田所は美香穂の見事なまでのブロポーションに喉をゴクリと鳴らし、今にもムシャブリ付きそうな表情をしつつ両手に拳を握ってとどまった。

「ワシがお前の主になった以上、お前を煮て食おうと焼いて食おうとワシの勝手… 心してその時を待て! お前には部屋を一つ用意してやるがその時が来るまで己に磨きをかけておけ!」
 田所は美香穂に重々しい口調を発すると、呼び鈴で執事を呼び美香穂の部屋を準備するよう命じた。

 そして遠くから聞こえて来る大砲の音に俄かに怯える美香穂の傍に来ると無言で美香穂を抱きしめた。

 そして時、同じくして大勢の兵士の相手をする慰安婦たちは処女幕喪失の痛みに涙を零し震える肩を夫々に兵士達に抱きしめられ、初めて渡された慰安券を握り締めた。


  
【四話】

 
  

 
 生まれて初めて男の硬いモノを体内に挿入された慰安婦達は、個々にそして夫々に複雑な思いをして最初の慰安券を机の引き出しに仕舞った。

 兵士相手の慰安生活であれば女日照りの男達によって、一日でも早く日本(ほんど)に帰国できると信じていた慰安婦たちはカレンダーの横に漢字の一の字を記した。

 数をこなして満了を目指す慰安婦たちと一線を引く将校組の慰安婦は、自分を壊さぬように年数をかけてじっくりと満了を目指した。

 そして休日を取りつつマイペースで満了を目指す士官組の三つに慰安婦(おんな)達は分かれていた。

 日本国は既に憲法の九条を破棄し新憲法の下で、軍隊も戦前同様に様変わりしていた。

 上から、陸・海・空の各大臣の下で大将、中将、少将、准将に始まり大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉、准尉、そして下士官の軍曹、伍長と上等兵、一等兵、二等兵と続いた。

 相手をする男の身分が高くなればなるほど、慰安券の溜まり具合も少ないものの、身体的なストレスは少ないが同時に満了期間も長くなると言うデメリットがあった。

 元々、将校相手の慰安婦は兵相手とは違いそれなりの礼儀作法等の訓練を受けていることでそれなりの厚遇を受けることになっていた。

 それにしても兵達は政府の特別の計らいに非番の者き、朝となく昼となくそして夜となく女の柔肌に恋心を抱いては股間をズキズキさせて慰安所に通った。

 であるから慰安所は昼夜関係なく、男女の歓喜する声が盛り上がりそして静まり返ると同時に女達の恥ずかしい鳴き声がアチラコチラの部屋かせ天井へと伝った。

 処女(おぼこ)も回を重ねるごとに痛みへの声を、色っぽい鳴き声へとその都度変化させ男達に味見される喜びに全身をプルプルと震わせた。

 だが、流石に将校クラスは兵達とは一線を引くようにガッツイては居らず自らの任務を全うしつつ日が暮れるのを待った。

 そしてそんな中で数日が経過したある日、流行風邪の予防として政府から慰安婦達に注射を受ける義務が下ったが、実際にそれは予防薬ではなく記憶を捻じ曲げる特殊な薬物であった。

 慰安婦達は何の疑いもなく注射を受け入れたことで翌朝には男からの性転換者であると言う秘密の記憶が消去された。 秘密が漏れては混乱に結びつくと言う政府の方針であった。

 慰安夫は本物の慰安婦として自らの任を全うすべく男だった頃の記憶を全て女に変えさせられた。 それでも中々薬が効かない慰安夫も居たがそれらは極秘裏に召集され催眠療法と併用で記憶を変えさせられた。

 慰安夫から慰安婦へと変化をさせられた女達は個々の男時代の記憶を女として生きてきたことに変化させられたが、その殆どがゴチャゴチャになった記憶にある種の恐怖を感じてもいたが、次から次にやって来る男達の相手で考えている間もなく、舐められる吸われる快感に溺れて行った。

 そして兵達もまた心身共にリフレッシュしたのだろうか、次々に戦場へ向かっては手柄を立てて行った。 男達だけの軍隊は慰安婦の登場で張り詰めた緊張感を緩めるという政府の意図に着実に嵌まっていった。 戦争には女が必要であると言う証拠と根拠が成立した。

 そして立花美香穂もまた例外なく風邪予防と言う名目で注射を受けたものの免疫力の影響か殆ど記憶を変えることは無かった。 ただ美香穂自身、流行風邪の予防と言う注射に不思議な違和感をも覚えていた。 それは美香穂の身体が未だ処女(おぼこ)だったからかも知れない。 

 殆どの将校達は貰い受けた慰安婦をその日の内に味見し処女(おぼこ)を奪ったものの、美香穂の主である田所中将は仕事の多忙さによって未だ美香穂を味見してはいなかった。

「良いか! 女は男に味見されるために生まれて来るのだ!! 然るに女になった以上はお前達もまたその言葉に従い自ら任務を全うするのだ!! 良いな!!」
 戦地に送り届けられる前の訓練を思い出していた美香穂はその任務(やくわり)を果たす時を今か今かと中将の屋敷で待っていた。

 中将の屋敷に身を置いて数日経過しても身体を求めてこない田所に美香穂はヤキモキしていた。

 そしてそんな折、二階の自室に居た美香穂を執事の宮坂が尋ねて来ていた。

「旦那様は長官としての多忙な任務を遂行しておられますが、本土には御家族… 奥様や子供達も降りますれば、お堅い旦那様のこと、場合によっては美香穂様に指一本触れないことも考えられますが、女子の役目は夜伽(よとぎ)だけではございません心配いなさらずに時をお待ち下さい… これは数日間の慰安券です。 お受け取り下さい…」
 執事の宮坂は美香穂を案じつつ、田所から手渡された慰安券を丁重に美香穂に手渡した。

 美香穂は手渡された慰安券を受け取れないと押し戻したが執事の宮坂の笑顔に負けそれを懐に収めた。

 そしてそれから更に数日が経過しても田所は美香穂を抱く気配を見せぬまま時は過ぎた。
 



 

【五話】


 
 流行風邪の予防と称して注射された慰安夫たちは兵士相手の慰安施設で次々に薄れ行く記憶と新たに作り出された女としての記憶に不安を覚えた。 生まれて性同一障害と認定され一定期を過ぎ軍隊の募集に応募し性転換手術を受けたはずの男たちは、そのことすら記憶から抹消され中には自分が誰なのか解からなくなるモノも一時的に居たようだ。

 そしてその記憶障害は兵士相手の慰安夫のみならず下士官や士官相手の更には将校相手の者にまで広がっていった。 性転換で完璧な女の身体を手に入れたのだから男の身体だった頃の記憶が全て女に摩り替わったとしても問題なさそうに思えるが、当人達にしてみればそれは大きな不安要素でしかなく個々に苦しみ個々に記憶を彷徨っていた。

 そんな中、他の慰安夫たちと交流を持たない処女(おぼこ)のままの美香穂には注射の効力は及ばす、派遣された数百人の慰安夫の中で男時代の記憶を持つ者は美香穂だけだったことに美香穂本人も気付いてはいなかった。 早く田所に処女を捧げて一人前の女になりたいと一人願う美香穂は自分だけが取り残されたような気持ちのまま苛立ちさえも持ち始めた。

 下着姿を見られただけの美香穂は執事の宮坂に旦那様からだと伝えられ渡された小遣いを持って執事の宮坂と屋敷を出ると、商店街へ服を買いに出かけた。 すると執事の宮坂から首にかけるペンダントを渡されかけられた。

「美香穂様。 これを首からかけて下さい。 これは身分保障の証ですから…」
 首にかけられた直径三センチの将校ペンダントはその金色で美香穂が将校のモノであることを照明した。

 故に行き交う人たちは皆、将校ペンダントを首からかける美香穂と執事を避けるように通り過ぎていったが、中将より下の階級の軍人達は皆、そのペンダントに立ち止まって一礼してから立ち去った。

「良いですか。 ここでは田所中将(だんなさま)より上の階級の方とは滅多に会うことはありませんが、稀にそのペンダントより一回り大きい金色を紫で囲ったモノを下げている方にも出会いますから、その時は立ち止まって一礼して下さい。 美香穂様は軍人ではありませんが稀に大将が視察に来る場合があります。 まあ、年に何度もあませんが…」
 執事の宮坂は美香穂の首にかけられたペンダントをもって階級の見方を教えた。

 そして美香穂と執事の宮坂を避けるように行き交う人々の間に、入って見たい衣料品店を見つけた美香穂は宮坂に店を指差した。

「ああ。 あそこには我々は入れません。 私達が入れるのは将校専門の店だけなんです… そこで買い物をするのですが欲しい物がない場合はオーダーすれば取り寄せて貰えますから… では将校用ののお店に御案内致します」
 美香穂の指差した兵士や下士官用の店に入れないことを諭した執事の宮坂は、笑みを浮かべて再び美香穂を導きつつ足を進めた。

 そして将校用の店の前に来た美香穂はその豪華な作りの店に東京を思い出した。

「この店と言うよりショッピングモールは、准将・少将・中将・大将が御利用できるこの街で唯一の場所… お買い物には金銭やカードは必要ありません。 ペンダントを見せるだけで結構ですからね♪」
 頭部の薄く左右を白髪で飾る執事の宮坂は笑みを浮かべつつ自動ドアで中に足を踏み入れた。

 総面積千坪ほどのモールは三階建てで衣料品のみならず全てが揃っていて、買い求めた商品は自動的に屋敷に運ばれる仕組みだった。

「それでは私めはここで一休みしておりますので、お買い物をお楽しみ下さい。 流石に婦人用品売り場には私でも入れませんからね♪ あははははは♪」
 執事の宮坂は待合室のベンチに腰を下ろすと婦人服コーナーを指差して照れ笑いして見せた。

 半袖ミニドレスを纏っている美香穂はそんな宮坂に深々とお辞儀すると服のコーナーへと足を進めたが、モールの広さの割りに中はガラガラで冷房が効くも空気も澄んでいた。

 そして婦人コーナーに足を踏み入れた美香穂は辺りに飾られ陳列された高価そうな服を見て唖然として足を止めた。 そして息を飲んで見入る衣類に値札が付いてない事を知ると胸元のペンダントを右手に持って見据え握り締めた。

 店内にはこのモールに相応しい店員が客の数より多く配置され、誰一人として将校の慰安夫である美香穂に視線を重ねる者はいなかったが、一人のスーツ姿の女性だけが真っ直ぐに美香穂に視線を重ねて数十メートル離れた場所から近づいてきた。

「中将閣下の御屋敷の方ですね♪ この売り場の責任者で須崎と申します。 宜しくお願いします。 着きましては全身のサイズをチェックさせて頂きたいのですが… サイズ登録することで今後、利便性があがりますので御協力下さい♪」
 責任者の須崎は美香穂を別室へ案内すると、下着だけになるよう頼んだ。

「ステキなプロポーションですねぇ~♪ 初めてですよこんなプロポーションは~♪ ここまで調和のとれたプロポーションは♪」
 須崎は下着姿になった美香穂を見るなり目を爛々と輝かせ前から横から後ろからメジャーを当てては歓喜して見せ、美香穂は余りのほめ言葉に赤面して俯いた。

 そして身体の寸法を取り終えた須崎はその部屋にあるパソコンを使って知りえた情報を打ち込み、更に細々した身体の特徴をチェックし始めたるとその都度パソコンに打ち込んだ。

 その頃、婦人服売り場の傍の休憩所のベンチでタバコを吸う宮坂は、同じ将校である少将の屋敷の執事と久々の雑談を楽しんでいた。

「いやぁ~ うちの少将閣下(だんなさま)は、もう毎晩、毎晩、将校用の慰安所に通って毎日のように朝帰り♪ 今日も仕事だろうに身体が持つかどうか家政婦達も心配のし通しなんだよ♪」
 少将閣下の屋敷の執事は呆れ果てたように笑みしてうな垂れて見せると宮坂は小さな溜息を放った。

 そしてそんな昼間の時間も兵士相手の慰安所は休暇の出た兵士達で押すな押すなの盛り上がりを見せていて、男に抱かれることを夢見て性転換したものの、兵士の腕の中で男時代の記憶をフラッシュさせつつ押し付けられる腰に「あああん! 気持ちいい!! 気持ちいいぃぃー!!」と、嫌らしい鳴き声を上げていた。

 男として兄や妹と遊んでいた幼少期をフラッシュさせつつ、女として兄や妹と遊んでいた記憶に摩り替えられていることに気付くことないままに激しい肉棒の擦れる快感の中に違和感を重ねていた。 そして繰り返されるフラッシュから逃げるように自らも腰を振ってモガイた。

 だが兵士相手の女達は処女喪失後の後、一日平均で二十人以上の兵士(きゃく)を取って慰安券を溜め込みつつ、男であった過去の記憶を無くして行った。



【六話】




 美香穂は苛立っていた…

 朝、田所を見送りながら「いつになったら抱いて貰えるのだろう」そして「いつになったら処女を喪失出来るのだろう」と、表情に出さぬまま内心焦っていた。

 一緒に戦地(ここ)へ来た仲間達は自分達が元、男であったことを忘れたかのような色っぽさを醸し出しつつ街を歩く姿を横目に、美香穂は自分だけが取り残されているような沈んだ気持ちになっていた。

 だが、まさか男だったことを忘れているようではなく、流行風邪予防として注射された薬物によって過去を本当に忘れているなど思いもしなかった。 処女幕喪失をした後に注射された者だけが過去を塗り替えられたことを。

 そしてそんな折、美香穂は屋敷の中で唯一の話し相手である執事の宮坂に心の苦しさを訴えると、宮坂は無表情で突き放すように即答した。

「女子(おなご)からそのような事を言うてはなりません! 主である旦那様が美香穂様を欲しいと思われた時に所望なされるのです。 それまでは貞操を守り磨きをかけておいて下さい… 待つことも美香穂様の仕事なのですから…」
 美香穂は自分がはしたないことを言ったことを恥つつ宮坂の言葉に小さく頷いた。

 だが美香穂は自分の素性を田所が知っているのでは無いかと疑念をも抱いていた。 

 日本政府の役人達から軍部の者は例え最高責任者であっても皆の素性を知る者はいないから安心して勤めに励めと言われていたが本当なのだろうかとも悩んでいた。

 もし田所が美香穂(じぶん)の素性を知っていてそれで何もしないのなら自分は何のためにここへ連れて来られたのか悔しさを滲ませた。

 他の慰安夫達は慰安婦てしての勤めを全うし早期に日本に帰るために励んでいる時に自分は何をしてるのだろうと悩んだ。

 そしてそんな折、街中に立てられた慰安所では一戦を終え腰をふら付かせた軍人達(おとこたち)が声を弾ませていた。


 低俗な兵士達は…
「ガッハハハ♪ 俺の相手の女なんぞ露だくで露だくで中の味なんぞ解かりゃしねえしよ♪」
「お前もかあ~♪ 俺の方も露だく。 しかも鳴き声がデカくて悶えが激しいから膝で腹衝かれておう~♪」
「俺は全員! 制覇すっぞおぅ!! ガハハハハハ♪」

 少し上品な下士官は…
「いやあー中々の女揃いでしたなあ~♪ あれならいつ死んでも兵達も満足でしょう♪」
「本当だな~ いや、実にいい身体だった♪」
 
 更に上質な士官は…
「美人揃いで驚きましたよ♪ 皆、そこそこの教養を身に着けていて会話の方が弾みましたね♪」
「貴公もそですか♪ 私も彼女達の教養の高さに驚いてばかりでした♪」

 更に高貴な将校は…

「気にいった女性(ひと)がおりましてな♪ 受け付けて見受けを申請したところなんですが、ラスバルが多すぎて♪」
「貴殿もですか♪ ワシも欲しくて仕方の無い女性(ひと)がおれましてな♪ お互いライバルでないと良いのですが♪」
「田所中将(ちょうかん)のように欲張らずに最初から見受けしておけばと後悔しております♪」

 身分が違えば言葉や仕草まで違う軍隊の世界において、男達は目をギラギラさせて異性をそれなりに楽しんだ。

 だが当の田所中将は見事なプロポーションで美人の美香穂を抱くことをせず、賓客のような扱いで屋敷内に留めておくだけだったことを誰も知らなかった。

 そして噂の美香穂はと言えば、朝の見送りと夜の出迎えそして夕食を共にする程度あって、特に何をするともなく田所が触れてくるのを心待ちにしているだけだった。

 そんなある日の夜のこと。 夕食で大きな縦長のテーブルの中央に身を置く田所が真逆の席に居る美香穂を俄かに見つめワインで喉を湿らせると、執事の宮坂を呼び美香穂に後で部屋へくるように命じた。

 宮坂は「遂に来た」と、ばかりに笑みを浮かべると「かしこまりました」と、一礼してそのまま足を美香穂へと進めた。

「お食事の後で部屋へ来るようにとのことです… 良かったですね♪」
 美香穂の右耳に静に伝えると美香穂は恥ずかしさに赤面して遠くにいる田所を見て俯き、執事の宮坂の耳元に手のひらを近づけた。

「準備… 用意して来ても宜しいですか?」
 赤面しつつ美香穂の言葉に、二度頷いた執事の宮坂は美香穂の座る椅子を真後ろから後ろに引き、美香穂は田所に深々と一礼してからその場を立ち去った。


 これでようやっと女性(ほんもの)になれる…


 ダイニングを出た美香穂は心の中で湧き上がる嬉しさと同時に田所に抱かれ悶える自分を想像し再び自室への階段途中でで赤面した。



【七話】




 室内に備え付けられたシャワーで身の清潔を保った美香穂は田所の部屋の前に立ちノックしようと腕を伸ばした。

「入りなさい。 来ているのだろう?」
 ノックする寸前にドアの向こうから突然掛けられた声に美香穂は一瞬、ドキッとしてその手の行く先を迷わせた。

「失礼します…」
 越えの震えを抑えつつ震える右手でノブを回した美香穂は、俯き加減で部屋の中へと我が身を投じた。

「顔を上げてこっちに来なさい」
 普段と変わりない田所の声に、一呼吸置いてから視界に入る左右の絵画や大きな鉢植えに気付きつつ白い壁と天井で回る天井扇の下、椅子に腰掛けてコチラを見る田所の一メール傍まで近づいた。

 身体をスッポリ包むレザー張りの椅子に深く腰掛ける田所の両腕は、前側にあって足は組まれていた。

「これから一杯やろうと思ってね… 服を脱いでそこのソファーでくつろいで貰おうか…」
 溜息を吐き出しながら放たれた声に思わず脳裏を真っ白にした美香穂は、一瞬戸惑いつつもその言葉通りに服とスカートを脱いで右斜めにある白いソファーに腰を下ろした。

 その瞬間、田所は突然立ち上がって美香穂の前に来ると、美香穂を右側に倒して両腕を後ろに縛り上げた。

「キャッ!」
 美香穂は思わず小さな悲鳴をあげ自分に何が起きたのか知ろう首を左右に振って辺りを見回した。

 そしてソファーの上で両腕を後ろに縛られた美香穂を見据えつつ、田所は後ずさりして自分の椅子に戻るとテーブルからブランデーの入ったグラスを右手に持ち混乱している美香穂を見入った。

 黒いスリーインワンが胸を覆い、腰から伸びた紐に吊られたガターストッキングがプルプルと女の柔らかさを蛍光灯の光に光沢を放った。 そして恥ずかしげに左脚で黒いレースのスキャンティーを隠した。

 少しだけセットの振り乱れた美香穂の視線は田所へ向けられ、同時に田所の視線は美香穂の全身を舐めるように見滑らせられた。

「下着から溢れて零れそうな乳房… はち切れんばすーかりの太もも… そして息をしただけで溶けてしまいそうな尻… 何と言う美しさだ……」
 ブランデーを一口転がしたた田所はソファーの上で両手を縛られて恥らう美香穂に嫌らしさのない小声を放った。

「しばらくそうしていてくれないか… 今少しお前の美しさを見ていたい…」
 ブランデーグラスを回しつつ香りを楽しむ田所の視線は美香穂の全身を余すところ無く見流し、美香穂は唖然とそんな田所の視線を目で追った。

「一流のブランデーには一流の絵画が必要だ……」
 田所はグラスを置くと、両手で四角を作ってそれを美香穂に照準させ口元を微かに緩めた。

「あの! あの旦那様!」
 意味不明な行動をとる田所に声を震わせた美香穂。

「シッ! 絵画は喋らないモノだ…」
 美香穂を黙らせた田所は再びブランデーグラスを回して香りを楽しむと一口含んで口中で転がし美香穂を見続けた。

 そして数分が経過した頃、田所は突然立ち上がって美香穂に近づくと、美香穂の両肩から肩紐をゆっくりと外し再び後ずさりして椅子に戻った。

 豊満な乳房を覆っているカップが微かに剥がれると美香穂は縛られた両腕をキュッと閉めて、カップの剥がれを止めその辱めに顔を少し強張らせた。

「何と言う美しさだ……」
 大きく吸い込んだ呼吸(いき)を吐き出しつつ田所の視線は剥がれ掛かった胸を見て、口元に微かな笑みを浮かべ再び近づいた。

 そして美香穂の足の爪先からストッキングに触れるか触れぬかのギリギリを鼻先を滑らせて美香穂の香りを胸元楽しむと、右手に持ったブランデーグラスを横目に囁いた。

「このブランデーにも勝るとも劣らない女子(おなご)の香りだ……」
 田所は立ち上がってブランデーを一気に飲み干すと、テーブルにグラスを置いて美香穂の両腕を自由にした。

「今夜はこのくらいにしておこう… 触れると散ってしまいそうだからね。 服を着て下がりなさい……」
 田所は美香穂に背中を向けると今度は机に向かって文庫本開いて読み始めた。

 美香穂はそんな田所に異様さを感じ苦慮しつつ服を着て一礼すると部屋を出たが、その唇の端を自ら噛んだままだった。

 今夜こそ抱いて貰えると思っていた美香穂は女として始めて受けた屈辱に自室に入るなりベッドに顔を押し付け大声で喚き散らし、田所は自室で久しぶりの女体鑑賞に満足していた。

 本国に愛する家族を残し戦地に出向いている真面目一本槍の田所にとって妻以外の女体を「見る」と、言うことに罪を感じていた。

 そしてそんな折、兵士相手の慰安所では次から次へと休む間もなく男達に抱かれ続ける女達は、貯まっていく慰安券を横目に太ももを舐める兵士に「喘ぎ声」と「身悶え」で応えていた。

 早く任期を満了して日本に帰る目的で一般慰安所を選択したはずの女達は過去の記憶を消されたことで、何故自分達が慰安所(ここ)に居るのかさえ解からなくなってもいた。

 自分達が抱いている女達が性転換前は男だったと言う事実が兵士達に拡散することを未然に防ぐ政府の策略だったが、男時代の記憶を無くした女達にとって自分達が慰安所(ここ)に居る理由を個々に探し始めてもいた。

 だがそんな中においても男だった頃の記憶が突如蘇る女たちも複数居て、記憶の曖昧さに有る意味、苦しさを覚えていた。
 
 そして同じ注射を受けつつも個々にその差は違っていたことに政府は気付いていなかったが、兵士の中には女を縄で縛って楽しむ輩もいて、苦痛に堪りかねた女が突然、無意識に男言葉を発して男の金玉を蹴り上げる事態も勃発していた。

 

 
【八話】



 
 美香穂の苛立ちは募る一方だった。

 部屋に呼ばれて行っても田所は美香穂に指一本触れることなく、ポーズをとらせそれを肴にブランデーを飲む。

 そんな暮らしが続いていたが、慰安所では女達に無理難題を迫る兵士もいて、ソレに対して男言葉を無意識に発する女達が多発していた。

 慰安所の管理者も知らぬ女達の真実(すじょう)に疑問を抱く兵士(きゃく)も居たが、それが感じるとワザと女達を怒らせる兵士(きゃく)も少数居たことで、管理者は兵士(きゃく)に出入り禁止の措置も講じた。

 女達を荒縄で縛り蝋燭を尻に垂らした兵士は憲兵によって排除され投獄されたが、変態プレイをした兵士達の殆どは前線へと送られ折角の命を無駄に落とした。 そしてそれが噂になり上官たちの耳に入るようにもなった。

 兵士達の士気を高めるために設置された慰安所は出入りする兵士(きゃく)の持ち物検査をしたり対応を迫られ徐々に変態はその数を急激に減少させた。 だが変態は兵士のみならず下士官や士官にも見られ将校達は憲兵に強く排除を要請した。

 結果、慰安所からいわゆる変質者は排除され平穏な慰安所運営がなされていたが、愛らしい顔した優れたプロポーションを持つ女達の怒れる男言葉と態度も同時に噂になっていた。

 そんな中、見られるだけで一向に本物(おんな)にしてくれない田所に、身体は女のまま心は男の美香穂の爆発もいよいよ近づいていたが、エロチックなポーズだけを楽しむ田所はそんな美香穂の変化気付くことはなかった。

 この時、兵士慰安のために国内から性転換を受け戦地に派遣された女は既に1千人を越えていたが、その殆どが処女幕を喪失して注射を打たれたものの、最初に来て以来、依然として処女幕の喪失をしていないのは美香穂、ただ一人だけであった。

 そしてそんな折、怒りと同時に男化する女達の噂が政府の耳にも入り、政府は二度目の注射を1千人の慰安夫たちに摂取して効果を検証していた。 それでも処女喪失をしていない美香穂には何の効果もなかった。


「旦那様! 私は早く自分の務めを全うしとうございます!」
 呼ばれていないにも関わらず業を煮やした美香穂は遂に田所に直談判とばかりに部屋を訪ねた。

「そうだな… 確かにお前の話しはもっともだ。 だがお前を見受けしたからには以前も言ったが、煮て食おうと焼いて食おうとワシの勝手! だから食わぬも勝手! どう楽しもうとワシの自由! お前には毎日、慰安券を執事から渡させている… それともそんなに女の操を奪われたいのか!? 操を奪われずに本国へ帰省出来ればそれに越したことはなかろう!」
 突然部屋に押し入った美香穂は椅子に腰掛る田所に説教をされ返す言葉も見つからなかった。

「でも! 私も御国のために… いえ… 旦那様のためにお役に立ちたいのでございます! お情けを頂戴させて頂けませんか!」
 美香穂は慰安婦の鏡とばかりに涙ながらに田所へ自ら情を求めた。

 そんな美香穂の信念に負けたとばかりに田所は椅子から立ち上がって美香穂をベッドへと導いて腰掛けると足組して美香穂に視線を重ねた。

「実はな… ワシがお前を選んだのは偶然ではないのだ… 美香穂… そう、ワシの娘と同じ名前だったがなんだ… 流石に娘と同じ名前の女は抱けんだろ! だがワシも美しいお前を見ているうちに徐々に男女の仲になっても良いと思えるようになっては来ている… もう少しワシに時間を貰えまいか?」
 田所は右側に座る美香穂の肩を抱いて俯く美香穂の顔を覗き込んだ。

「お前は美しいしプロポーションも絶品… ワシとて男だからな… これでも我慢しとるんだ… もう少しだけ時間をくれ!」
 美香穂の両手を右手で握り締めた田所は優しく美香穂を部屋のドアへと導いた。

 美香穂は開かれたドアの向こう側へ俯いたまま移動すると直ぐに田所に身体を向けた。

「旦那様!!」
 美香穂は田所に抱きつくとグイグイと乳房をドレスの上から押し付けた。

 田所はそんな美香穂を抱きしめると股間を硬くして美香穂に気付かれまいと腰を軽く引いた。

 だが美香穂は確かに田所の股間にある硬いモノを察知し目を閉じて顔を上げ唇を突き出した。

「チュッ♪」
 田所は美香穂の頬に小さなキスをするとそのままドアを閉じ中から鍵を掛けた。

 せめて口付けだけでもと思っていた美香穂はボロボロと涙を頬に伝えて階段へと足を進めつつ大きな溜息を何度もついた。

 そして自室へ戻った美香穂は涙をぬぐいながら投げ捨てるようにドレスと下着を脱ぐとそのまま風呂場へと足を急がせた。

 そしてシャワーを浴びた美香穂が何気なくキスされた頬に手を当てた瞬間! ジョリッと言う感触に声に鳴らない衝撃と悲鳴を喉に詰まらせ両手で口元を覆い隠した。

 



【九話】



 敵との戦いで連戦連勝に沸いている日本軍の基地内で慰安所の女達が不思議そうに軒下の廊下に座り語らっていた。

「え…? 貴女達もそうなの!? 私だけかと思って悩んでたんだ…」
 髪を肩まで下ろし休日を仲間と過ごす和服姿の女は両隣りに座った二人にそう語った。
「私なんか兵士(おとこ)に入られてる最中に一瞬、自分が男だった頃みたいな幻覚って言うより… 頭の中にパッ!と、フラッシュするの!」
 素足にサンダル履きのワンピース姿の女は両手を合掌させ思い出すように語った。
「私は毎晩、何故か男の身体で女装している夢を見て恐ろしくて目を覚ましそうになるの! そしてその後、変な機械室見たいなところに入って、いつもそこで目を覚ますから寝不足で…」
 デニムのショートパンツをはいた女は廊下の板に体育座りして大きなアクビをして見せた。

 女達は個々に自分たちが慰安夫として戦地に派遣されたことを寝起きを関係なく思い出そうとしていたが、同時期、日本の政府機関のとある研究施設では慰安夫たちのことで秘密裏の話がでていた。

「注射は秘密漏洩を防ぐもの… 個々の記憶を入れ替えることで日本の技術が敵国に漏れるのを防ぐためですが、効果には時限がありましてね! 定期的に打たねばなりません… 既に三度目の分も製造を終了していますから至急、コレを現地へ!」
 白衣を来た銀縁メガネの狐目の男はスーツ姿の要人に積み上げた箱を指差してみせた。

「だがこの戦争が終わったらどうするのかね! 全てが露見すれば再び国際社会から叩かれるのではないのかね! 我々政府としてはソコが心配なのだ!」
 眉をしかめて難しそうな表情をみせる要人は白衣の男に声を窄めた。

「その点は大丈夫です♪ すでに手は打ってあります♪ 要するに戦地に慰安婦(おんな)達など居なかったことにすればいいんですよ♪ この戦争は時期に終わるでしょうから終わりを迎えると同時に慰安婦(おとこ)達を元の身体に戻せばいい♪ そして兵士は勿論のこと将校に至るまでその記憶が消えれば何ら問題は無いでしょう!?」
 白衣を着た狐目の男はニヤリと頬を緩ませポケットから一本のオレンジ色の液体の入った注射器を取り出した。

「ほ! 本当にそ! そんなことが!? 信じられん!!」
 要人は仰天して目を丸くして白衣の男に視線を合わせた。

「現在我々が開発を終えたスタップ細胞を使えば、男から女。 女から男への性転換など造作もないこと♪ 注射一本で一晩で性転換して尚もその記憶は一瞬にして消滅します♪ 御安心下さい♪ その代わり例の国立薬学研大学の設立と理事長の椅子。 確実にお願いいますよ♪」
 ニヤニヤしつつ注射器をチラつかせる白衣の男は針先にキャップをして再びソレをポケットに戻した。

 そして要人は安堵の表情を見せると大きく頷いて白衣の男に見送られつつ秘密の通路から施設を抜け出した。

 だがそんな折、施設職員達が大騒ぎになる連絡が戦地から入っていた。


「ヒゲ! ヒゲが生えて来たんです!!」
 慌て声を震わせ緊急連絡先に指定された電話番号に現地から入った内容に職員達は仰天、それは田所中将屋敷在住の立花美香穂からのモノだった。

 施設では警報が鳴り響き職員達は一斉に狐目の白衣の男の部屋へと駆けつけた。

「で! 様子は!!」
 狐目のセンター長は白衣を脱いで大きな机の前にある席に座ると美香穂からの詳しい内容をそのまま係員から報告され、集まった職員達は顔色を青ざめさせ狐目の男の指示を仰いだ。

「他にはそんな報告は一つも入っていませんが、現在慰安婦はヒゲを剃ってマスクで隠しているとのこと… 」
 続けて報告すね係員に驚きつつも、押しついた口調で聞き返したセンター長。
 
「なっなんで、この施設の連絡先を知っているんだ!? 記憶摩り替えの注射を受けたなら忘れているはず! しかも相手は田所中将が見受け人になってるじゃないか! 厄介なことになったぞ…」
 センター長は顔色を変えてパソコンデーターを見る指先を俄かに震えさせた。

「もしかしたら… もしかしたら未だ注射を受けていないなんてことはないでしょうか?」
 狐目のセンター長の周囲に近寄る職員達。

「そんなはずはないだろう… 確かにこの立花美香穂なる者も受けているし注射器番号に日時も記載されていて確認印も押されている!」
 パソコンを前に周囲の男達の目を左回りに見回したセンター長に一人の男が顔色を変えた。

「まさか… まさかですが、この立花美香穂って… 未だ処女…? しかしそんなはずはない… もう数ヶ月も経っていて…」
 男はセンター長を見て顔を強張らせた。

「おいおい! バカも休み休み言うもんだ! この美香穂(おんな)の顔と身体を見ろ! 男が指を銜えて見てるだけの慰安夫(おんな)かあ~!? 兎に角相手は中将閣下様だかなあ~! 注射(しごと)するにも細心の注意が必要だ!」
 机を囲む複数の男達をニヤニヤして見回すセンター長は突然、狐目を鋭くさせた。

「慰安夫(おんな)たちの処女幕には性転換を促進し定着させる作用のある物質の袋が仕込んである! もし美香穂と言う慰安夫(おんな)が処女ならヒゲが生えてきたと言う辻褄は合う… 早急に調査して手を打て!」
 狐目のセンター長は一人の男に命じて隠密にて美香穂に新たな注射をすべくその日の内に民間機で戦地へと向かわせた。

 そんなことを何も知らない美香穂は一人自室でヒゲを剃り化粧を濃くして他に変わった所がないか全裸をチェックし安堵の表情のまま着衣して鏡に見入った。

 だが緊急連絡先に電話して以来、何の音沙汰もないことに不安を隠せぬ美香穂は来るはずのない電話を待ってやきもきしていた。

 その頃、ワクチンとでも言うべき治療薬(ちゅうしゃ)を持って美香穂のいる慰安所ほ目指す男は飛行機の中で時計を気にしていた。

 そして同じ頃、一向に美香穂に手をつけないことを感じ取って心配していた執事の宮坂は、田所に精を付ければと、街中の魚屋で極上の鰻を家政婦を連れ買い求めていた。

 鰻で精を付ければ流石の田所(だんなさま)も美香穂に手を出すだろうとの目算であった。

 



【十話】



 
 もう直ぐ田所が帰って来ると不安に駆られ自室でウロウロしていた美香穂は壁掛け時計を気にしつつ、窓の向こうに車の音はないかと聞き耳を立てていた。

 その頃、厨房では夏ばてを防止しようと言う執事の宮坂の声援で大量の極上鰻が家政婦達の手で焼かれタレを塗りつけられていた。

 厨房は鰻の蒲焼の香りで充満し換気扇では追いつかないほどだったが、執事の宮坂や家政婦達は田所(だんなさま)のお帰りに間に合わせるのだと必死になっていた。

 そんな頃、美香穂に注射を届けようと空港の傍でレンタカーを借りた男は不慣れな道をカーナビ頼りに向かっていたが、街に近づれば近づく程に街は人と車でごった返していた。

 そして同時刻、田所は軍部での会議疲れを癒そうと屋敷へと帰宅した。

「おお!? なんだ? このいい匂いは~♪」
 帰宅と同時に大きな扉の中へ入った田所は出迎えに出た執事の宮坂を見てニッコリと笑みを浮かべた。

「お帰りなさいませ♪ 本日は暑さを乗り切るために極上の鰻を焼かせております♪ ささっ! まずは御着替えを♪」
 出迎えた信じの宮坂は田所から上着とカバンを受け取ると田所を先頭に後を追いかけた。

 久々の鰻の匂いに笑みする田所とは真逆に不安を募らせる美香穂が自室で田所の帰りを知った。

 お迎えしなければと鏡に顔を映してヒゲの無いことに安堵した美香穂は、田所の部屋へと足を急がせ気分が優れずに出迎え出来たかったことを素直に詫びた。

「ヨイヨイ♪ お前もここのところの暑さで参っているのだろう♪ だが今夜は宮坂の気遣いで元気も出ることだろう♪」
 田所は深々と詫びる美香穂を前にそして執事を横に笑顔で部屋のバスルームへと移動し、宮坂は美香穂を気遣うように部屋から一緒に廊下へと出た。

「ささっ♪ 美香穂様も今宵の料理で元気をつけてくださいませ♪」
 執事の宮坂は満面の笑みで美香穂に頭を下げた。

 すると美香穂はかしこまって宮坂に囁いた。

「あの! 私はただの慰安婦です… その… 様と言うのを…」
 美香穂は自分に礼を尽くす執事の宮坂に、思いを言葉にだし終えようとした途端、宮坂に話の腰を折られた。

「御無礼ですが、ここでは美香穂様は。 ああ… はしたない言葉で恐縮ですが現地妻のお立場でございます。 現地妻と言えば奥様同然でございますれば私たち召使には本土に居られる本妻様と同様に美香穂様にも御仕えしているつもりでございます。 今後は慰安婦などと言うお言葉は御慎み下さいませ… 旦那様のお名を汚してはなりません…」
 美香穂の話を止めた執事の宮坂は小声で美香穂の耳元で囁くように話した。

 ハッとした表情を見せた美香穂は無言で執事の宮坂に深々と頭を下げて詫びた。

 そしてその頃、屋敷の玄関の外では数人の家政婦と尋ねてきた男との押し問答が始まっていた。

「ですから! 何処の誰とも分からない方に美香穂様を会わせる訳には参りません! お引取り下さい! 旦那様… いえ… 田所中将閣下も帰宅しております! 余りしつこいと憲兵を呼ばねばなりません! お引取り下さり御面会の約束をまずはお取り下さい!」
 アタッシュケースを持ったスーツの男は数人の家政婦に玄関から追い出され外門にも鍵を掛けられてしまった。

「くそ! うかつだった… 事前に来ることを伝えておくべきだった…」
 スーツの男は右手を握り締め、見回りに来た憲兵たちから逃げるように急ぎ足で暗闇にその姿を紛らわせた。

 その頃、一階へと降り立った執事の宮坂と美香穂だったが、無用の心配を掛けまいと家政婦達は誰一人として玄関先での出来事を報告しなかった。

 そして一時間後、一階の食堂へ入って来た田所は充満する蒲焼の匂いに、珍しくビールを家政婦に申し付けた。

「今宵は夏ばて防止の夕食(ゆうげ)。 無礼講で良い♪ 皆も一緒に食そうぞ! わあっはははは♪」
 田所は目の前のテーブルに山と詰まれた鰻の蒲焼に満面の笑みを浮かべて、その大らかで逞しい性格を見せ付けた。

 そしてそこへ宮坂に言われた通り肩紐無しの黒系ドレスを身に纏った美香穂が現れその見事なプロポーションを田所、そして家政婦達に見せ付けた。

「ささっ♪ 美香穂様♪ 今宵は旦那様のお計らいで無礼講♪ 旦那様のお側にお座り下さいませ♪」
 執事の宮坂は山と詰まれた鰻の蒲焼を前にする田所の右側の角から一番目に美香穂を着席させた。 そしてその瞬間、田所の視線は美香穂の全身と顔そして胸に移動しつつ直ぐに前を向いて誤魔化した。

 そして執事の宮坂の思った通り、久々の好物の鰻を前に田所は大いに食べそして美香穂をチラチラと見てはビールで喉を潤した。

 大勢いる家政婦達も田所の視線の先を見ぬフリして極上の鰻を頬張り冷たいウーロン茶で喉を潤した。

「さあさあ! ドンドン食え♪ ドンドン食ってこの暑さに負けるでないぞおー♪ わっーはははははは♪」
 楽しげに声を張り上げる田所はチラりと見える黒いストッキングに包まれた美香穂の左太ももを見て鰻を飲み込んだ。

 そしてそれを見た執事の宮坂は中座すると、田所の部屋へ入りベッドの棚の上にコンドームを配置して静かに食堂へと戻ってきた。

 執事の宮坂の思惑はトントン拍子に進んでいたようだった。



【十一話】



 
 執事の思惑通り田所は腹いっぱい食った鰻の蒲焼の所為で自室に上がって一服した後、執事の宮坂を通じて美香穂を部屋に呼んだ。

 そして美香穂がドアを開けて中に入るなり、駆け寄った田所は鼻息を荒くして美香穂の身体に纏わり付きながらソファーをチラッと見てソファーの上に美香穂を起たせた。


「はぁはぁはぁ… なんていい香りなんだぁ~♪ もう我慢出来ん!! 隅々まで味わってやる!! お前も鰻同様に腹いっぱい食うてやるから覚悟せえいー!!」
 美香穂のドレスの裾を巻くり上げた田所は、そのままドレスの中に頭部を入れると尻を両手で抱きしめ黒いガーターストッキングに染み込んだ太ももの匂いを嗅いだ。

「はぁはぁはぁはぁ… 堪らん! 女の匂いで充満している!」
 黒ストッキングスレスレに鼻先を滑らせた田所はそのままガーター紐の匂いを嗅ぎそして黒いスキャンティーへと侵攻した。

 美香穂は何がなんだか分からぬままストッキング越しに感じる田所の熱い吐息に背筋をシビレさせ全身を越え直させた。

「ワシは! ワシはなあ! お前が! お前を! お前を!! お前を~~~!!」
 黒いスキャンティーに前側から鼻先を押し付け中の匂いに咽つつ吸い込む田所は、狂おしい声を押し殺して美香穂の尻を鷲掴みしモミモミと柔らかさを確認した。

 美香穂は吸い込まれるスキャンティーの中の体温に恥を感じつつも心の中で「遂に来た」と、両脚を内側に窄め恥じらいの震えに全身をプリンプリンと揺らした。

 これで自分も女性(ほんもの)になれると涙を堪える美香穂の両脚を力ずくで開かせた田所は、黒いストッキングからはみ出した柔らかい内モモにムシャブリついて舌を滑らせた。


「あひいぃー!」
 内モモに滑るザラ付いた田所の舌とヒゲに思わず腰を引いて恥ずかしい声を奏でた美香穂に田所はドレスを脱げと荒い吐息の途中で叫んだ。

 美香穂は舐められる内モモに腰をオロオロさせつつ、自らドレスを脱ぎ白熱灯の真下で自分を味わう田所の姿を目の当たりにした。

 そして田所は美香穂のドレスから這い出るように下着姿になった美香穂をソファーへ横倒しにすると、真横に起って持ち上げ寝室へと血相を変えて走りそしてドアを開けた瞬間、足をもつれさせ美香穂もろともベッドへ倒れこんだ。


「きゃぁ! ドスンッ!」
 黒いスリーインワン姿の美香穂の身体はベッドのクッションで数回跳ね上がって止まると田所は、夢中になって黒いストッキングの上から美香穂の脚のつま先にムシャブリ付いた。

 田所は黒いストッキングごと美香穂の脚を舐めムシャブリついて味わいつつ黒ストッキングを吊る止具をむしり取り、美香穂は顔をしかめてその小さな痛みにシーツを両手で鷲掴みした。

 美香穂は普段から温厚な田所の見たことの無い程の獣化した男の怖さを感じずにはいられなかった。

 田所は味わい尽くしたストッキングを邪魔とばかりにスルリと脱がせると、再び白くプリンのように柔らかい左太ももに抱きついて舌を滑らせチュパチュパと恥ずかしい濁音を部屋に響かせた。

 そして伸ばした両手で美香穂の肩から肩紐を外した瞬間! プルリーン~♪ と、大きく揺れて弾ける豊満な乳房に左手を掛け「ムニュッ!」と、掴んで蕩けそうな柔らかさに股間の一物を一回り大きくさせた。

 太ももを直に味わい舌を滑らせつつ左手でモミモミする田所は、まるで獲憑かれた別人のように鼻息を荒く右手でズボンを脱ぎ始めた。 そしてその瞬間! ベッドの棚に置かれたコンドームを目にするや否やその横の電話が甲高い音を立てた。


 一分後…


「この糞忙しい時にいいいいーー!! 何処の誰だああーーー!!」
 電話の向こうに居る宮坂に怒鳴り散らす田所は、美香穂の蕩けそうな乳房を前に鼻血を出してティシューを鼻穴に詰め込んだ。


 更に数分後…


「何故、本国の政府の遣いがワシのところに!? しかもこんな時間に!?」
 玄関で門前払いされた男は、政府の要人の遣いであると身分を明かした上で、慰安婦の美香穂に会いたいと申し出た。

「な! 何もこんな時間に!」
 ガウン姿の田所は悔しさを滲ませつつも遣いの男から嘘の事情説明を受け会わせない訳には行かない状況に追い込まれた。

 中将と言えば閣下と呼ばれている田所も本国の政府の遣いに楯突くことが出来ずに仕方なくそれを了承。

 執事の宮坂の鰻作戦は寸でのところで阻止されたが、政府の遣いは本来、尋ねて来なければ良かったことに気付いてはいなかった。

 そして着替えを済ませた美香穂は応接室での対談で遣いの男に違和感を感じさせた。

「君は自分が男であったことを記憶しているのかね!?」
 そして頷く美香穂に続けて質問した。

「まさか君は! まさか未だ処女のままなのか!?」
 黙って頷く美香穂に男は顔色を真っ青に変え顔を強張らせた。

「そのことは他言してはいないだろうね!?」
 再び無言で頷く美香穂に安堵の表情を浮かべた男は、再質問を続けた。

「何故? 何故、未だに処女なんだ!?」
 男の言葉にカチンと来たとばかりに美香穂が口をはじめて開いた。

「てめえぇの所為だろうがああー!! さっき! たった今! 処女喪失の直前にてめえが来たからだろうがあぁ!!」
 顔、姿に不似合いな男言葉で目を吊り上げる美香穂はテーブルに両手を付いて男に迫った。

 男は自分が来たことで全てをお釈迦にしてしまったことに再び顔色を真っ青に変え声を上ずらせた。

「と! とにかく! 生えて来る毛を何とかするワクチンを持ってきたからそれを!」
 男は自らの失態に慌ててアタッシュケースを床から膝の上に置いて開くと、中からオレンジ色の液体の入った注射器を取り出した。

 美香穂は悔しげな顔のまま席に戻るものの男を睨み付けたままだった。

「とにかく注射をさせてくれないか…」
 男は注射器を持って美香穂の右側に来て床に膝を着くと、美香穂の腕に注射器を使った。

「取敢えずこれで暫くは持つはずだから安心して下さい… あと、出来るだけ早い段階で処女を喪失して下さい… 今日は申し訳なかった…」
 男は睨み付けたままの美香穂から逃げるように応接室を立ち去ると屋敷から帰って行った。

 美香穂は注射跡を揉んで右手でテーブルを叩き、この夜は二度と田所に呼ばれることは無かった。


【十二話】



 街は賑わっていた。 兵士(おとこ)達に肩を抱かれる派手な服装の慰安婦(おんな)達と、慰安婦(おんな)達を物色する兵士(おとこ)達で溢れ商店街の様相を見せる街の隙間で抱き合ってキスするカップルに美香穂は視線を反らした。

 そして兵士も慰安婦もその服装と立ち振る舞いで一定の階級が分かる美香穂を周囲は避けた。 街を歩くときには必ずネックレスを着けることを義務付けられていたことで、行交う人達と美香穂には一定の距離が置かれていた。

 そしてて後ろから付いてくる家政婦は美香穂から付かず離れずの位置で見守っていたが、この街にいる慰安婦(おんな)達から取り残された気のしている美香穂は立ち並ぶ慰安所をまともに見ることが出来ずに横目に見て歩いていた。

 美香穂は心の中で「何故、将校を選んだのだろう」と、楽しげに笑みする慰安婦(おんな)達を横目に将校専用の慰安研修の辛い授業を思い出しつつ、慰安券を山のように貯め込んでいるであろう慰安婦(おんな)を眺めていた。

 美形の慰安婦(おんな)は群がる兵士(おとこ)達の中から好みの男を探すように物色していたが、将校専用ネックレスを首から下げる美香穂をチラッと見て直ぐに視線を他へ移し別の慰安婦(おんな)達とも楽しげに会話を弾ませた。

 そして美香穂は知らず知らずここでしか買い物が許されていないと言う将校専用のショッピングモールへ来ていた。 人気も疎らな広い空間で後ろから付いてくる家政婦を気にしつつ心の寂しさを埋めるつもりで興味の無い衣類やらを見て回った。

 欲しい物が特別ある訳でもない美香穂は時間を忘れ店内を彷徨いそして自分のいる場所に違和感を覚えた。

「なに!? これ……」
 ショーケスの中に起てられた無数の擬似ペニスを見て「ハッ!?」と、周りを見るとソコは男女の営み玩具専用コーナーだった。

 美香穂は驚きと興味が重なった状態で周囲を見回すと、そんな美香穂を「ジッ!」と、見ている家政婦がいて美香穂は恥ずかしさから思わず家政婦に聞いた。

「貴女はこう言うのは使わないの?」
 優しい口調で家政婦に聞くと家政婦は驚いた様子で無言で首を左右に振った。

「じゃあ自慰はどうしてるの?」
 再び家政婦に尋ねると、家政婦は小さな声で囁いた。

「指… で… す……」
 赤面して恥らいつつ俯く家政婦に美香穂もまた赤面して無言になった。

 そして数分間の静まりの後、歩き出した美香穂の正面に今度は電動式の擬似ペニスが色彩豊かにケースに収められていた。

「あんなモノ入らないよ~!! 痛そおーぅ! ねえ~」
 少し大きめのバイブを目の前に、後ろに居る家政婦を右手で隣りに引き込んだ美香穂は、赤面する家政婦を見て自らも赤面して照れた。

 そんな美香穂に今度は家政婦が尋ねた。

「美香穂様はお使いにならないのですか?」
 囁いた家政婦は直ぐに俯いて顔を隠すと、ゆっくりと一歩後退した。

「私は… そう! うん! 貴女と同じ… 指… 指よ…」
 美香穂は咄嗟に家政婦の答えを真似たが、男から女になって一度も自慰したことが無かったことに気付いた。

「貴女、男性経験はあるの?」
 自分より二つほど若い家政婦は無言のまま一度だけ小さく頷いた。

「そうよね♪ みんなあるわよね…」
 溜息混じりに出た言葉に家政婦は「えっ!?」と、言う顔して一瞬顔を上げると直ぐに俯いた。

「ご! ごめんなさいねこんな話し!」
 美香穂は慌てて再び歩き始めると、家政婦は美香穂に後ろから声を発した。

「美香穂様! もしかして未だ処女なのですか? す! すいません! へ! 変なこと聞いて…」
 家政婦は自分の言葉に驚いて打ち消すように何度も詫び美香穂は歩く足をピタリと止めた。

 そして家政婦を振り向いた。

「うん……」
 美香穂は素直に返事を返すとクルリと身体の向きを変えて再び呟いた。

「未だ男を知らない……」
 寂しげな言葉に家政婦は驚いて顔を上げると偶然に重なった美香穂の視線を直ぐに外して俯いた。

「でも… 旦那様… あ、いえ… お… お屋敷に来てから随分と起ちますが……」
 恐る恐る俯いたまま小声を発した家政婦。

「魅力無いのかな私……」
 一言だけ家政婦に声かけた美香穂はそのままスタスタと場所を離れ、遅れまいと家政婦も後を追った。

 追いついた家政婦は歩みの遅くなった美香穂に声を掛けた。

「旦那様は御家族思いの方で軍隊でも有名なほどなのです… ですから耐えているのだと思います… 本国の奥様のために浮気すまいと…」
 家政婦の言葉に足をピタリと止めた美香穂はうろたえた。

「そんな! じゃあ私は何のために連れて来られたの!? 旦那様が家族想いなのはいいとして私はどうなるの!! 私は何のために屋敷に居るの!? 私達は見受けされたら相手を変えられない規則なのよ!!」
 思わず家政婦に八つ当たりした美香穂は直ぐに身体の向きを変えて歩き始めた。

 家政婦は美香穂の言い分も正しいと思いながら後ろをついていったが何かをか迷ってもいて、美香穂はその後、黙ったまま広い店内を徘徊して回り苛立ちを発散させてもいた。

 そして家政婦は無言の美香穂に気分転換にもなると、あるモノを買うように勧め美香穂は言われるままにそれを買い求めた。




【十三話】



 

 
 田所の屋敷で朝の送り出しと夜の出迎えのみ仕事にしていた美香穂は時間を持て余している最中、夜の慰安所では何百人と言う兵士(おとこ)達が一斉に思い思いに腰を前後に振って慰安夫(おんなた)達を悶えさせそして鳴き声を奏でさせていた。

 慰安所の壁はさほど薄くは無かったが隣り同士、そして三階建ての建物からは夏のセミのように一斉に慰安夫(おんな)達の声が充満そして外にまで聞こえるほどだったが、慰安夫(おんな)達は個々に自分の過去を略、忘れてもいた。

 生まれながらにして女性(おんな)であると塗り替えられた記憶を持って完全な女性(おんな)として性行為を楽しんでいた。 そして兵士(おとこ)達もまた、自分のモノが入っている女達がまさか元々は男だったなどと夢にも思っていなかった。

 慰安所の一階は酒場と飯場(はんば)と交じり合いながら、女達が兵士達に選ばれまた自分達も兵士を選ぶ出会いの場と化していて二階とと三階が営みの部屋に分かれていたが、入りきれない場合のみ屋上を使う者も大勢存在した。

 街の繁華街の真ん中にある慰安所周辺は押すな押すなの鮨詰め状態が朝まで続き、少し離れた場所の士官専用の慰安所は兵士専用とは違って若干の気品を見せるかのように静まり返っていた。

 兵士の集う慰安所とは違い無言できては無言のまま自分の番が回ってくるのをジッと待っている、兵士達とは違う士官達は異様な雰囲気をかもし出していた。 酒場と言うよりバーと言う感じの室内で仕官達は無言で酒を飲み、そしてそこに同居する飯場(はんば)とは呼べないレストルームでも沈黙の中で食事が行われた。

 そんな異様な中で仕官達は酒をそして食事をしながら、ソファーに座り足組するドレス姿の士官専用の慰安夫(おんな)達を物色していた。 我先に焦る者も居ないいわゆるガッツイた者は一人もいなかった。 

 そしてそんな士官達を前に士官専用の慰安夫(おんな)達もまた、慰安券欲しさに自らを安売りすねような者は一人もいなかった。 更に士官の上の将校専用慰安所は街外れにあって建物は高級ホテルと同等の作りであった。 故に中で働く者達も高級ホテル並みの教養と知性に溢れドアマンすらも一流であった。 

 シックで落ち着いた高級クラブと隣接したレストランは兵士達の想像の付かないほどの贅沢を極めていて、そこにいる慰安夫(おんな)達もまたそれに適合した高級な身形をし、泊まりが多かった将校専用は営みをする部屋もまた3LDKの作りできらめく星の見えるベランダも備えていた。

 早く慰安券を貯めて本国に帰りたい慰安夫(おんな)と、そこそこ楽して慰安券を貯める士官専用の慰安夫(おんな)達、そして一晩に一枚の慰安券を手にする将校専用舎は夫々に利用者も慰安夫(おんな)達も性質が異なっていた。 

 だが、それとは別に美香穂のように見受け制度を利用している慰安夫(おんな)達だけが将校の屋敷にそれぞれ住み込んで現地妻としての生活を営んでいた。 だが将校とはいいながらも中には変質的性癖の者も少なからず居て、毎日泣いて暮らす慰安夫(おんな)も居た。

 住み込みの慰安夫(おんな)を荒縄で縛り蝋燭や擬似ペニスを用いて営む将校の中には、憲兵に連行され罰を受ける者も少なくはなかったが、全ては受け入れる慰安夫(おんな)達の胸三寸でもあったことで、本来なら一回一枚と決められていた慰安券も一度に数枚使う将校もいた。

 証拠を掴まれれば将校と言えど憲兵には逆らうこと出来ぬ場合も多々あって、慰安夫達はそれほどまでに本国に守られた存在でもあったが、何もしない。 慰安夫(おんな)に触れないことを罪とした罰は何処にも存在せず美香穂の場合、蛇の飼い殺しも同然であった。

 
 そして何もされぬまま経過した数日後、美香穂は仲良くなった家政婦に田所を見送った後で何かを耳打ちされた。

 どうせ何もされないならせめて下着や服装だけでも楽になればという助言に美香穂は素直に従った。

 ノーブラ、キャミソールに白いパンティーと水色のノースリーブ。 そして黒いパンティーストッキングで下半身を包みつつ白いショートパンツを履いた。

 朝から晩までエロチックな下着を身に着けドレスを纏っていた美香穂にとって、それは身受けされて以来、初めての身軽な格好であった。


「うわあぁ~ん♪ 軽くて涼しいわあ~♪」
 両手を水平に伸ばしてクルクルと広い部屋の中を回る美香穂は珍しく家政婦の前に笑顔を見せた。

 本当は黒いストッキングも脱ぎたい美香穂だったが、外にせよ屋敷にせよガーターにせよパンストにせよ黒いストッキングは慰安婦の証であって必ず身に着けにければならないアイテムであった。

 美香穂に耳打ちした家政婦は身軽になって嬉しそうに踊る美香穂に自らも笑みしてソレを喜んだ。

「黒いストッキングさえ履いていれば特別な拘束はないはずですから今日はそのまでお過ごし下さいませ♪」
 美香穂と親しい家政婦はそう言うと一礼して部屋を立ち去った。

 屋敷に来て初めての軽装に美香穂は一人、部屋の中でピョンピョン跳ねたり走り回ったりまるで子供のようにハシャギ回った。

 そしてそのまま外へ出ようと自室のドアをふけた瞬間、美香穂は執事の宮坂にその姿を見られ一瞬、全身を硬直させた。

「はて? これはお珍しい♪ 涼しげで良いと思いますよ♪ 本日はそのお姿で旦那様をお出迎え下さいまし♪ 最近は暑いですからね~♪」
 執事の宮坂はガラリと服装を変えた美香穂に驚く様子もにくニッコリと笑みして立ち去った。

 美香穂は執事に咎められるかと思っていた服装を認められ心身ともに身軽に屋敷の敷地の散歩に出かけた。

 スキップして燦々と降り注ぐ太陽の光を浴び芝生の上を歩きつつ、時にはスキップして両腕を水平に広げた少女のよう笑みを輝かせた。

 広い屋敷の玄関から敷地を左に歩くこと百メートル。 右に曲がって更に数百メートル歩いて更に右に曲がったところで美香穂は足をピタリと止めた。

 美香穂の数十メートル先に鯉のぼりのように洗濯されて風に舞う何十足の黒いガーターストッキングが目に入った。

「凄い数でしょ♪ うふふふふ♪ 私達、家政婦はトイレも早く済ませられるようにパンストは履かず全員がガーターストッキングなんです♪ 吊り紐の上からパンティーをつけるから直ぐに脱げて急いで履けるでしょ♪」
 突然、後ろから掛けられ声にビックリして振り向くと、そこには仲良しの家政婦が笑みしていた。

 美香穂は「なるほど♪」と、相槌を打って両腕を後ろに回した。

「ねぇ、名前。 聞いてもいいのかなあ~♪」
 美香穂は今更ながらと照れながら家政婦に名前を尋ねた。

「あ! はい♪ 長瀬貴美子といいます♪ 四国出身です♪」
 長瀬貴美子は辺りを見回しながら笑顔で自分より少し身長の高い美香穂を見上げた。

「長瀬さん… 貴美子ちゃん… 貴美ちゃん♪ 貴美ちゃんて呼んでいいかしら♪」
 美香穂は嬉しそうに貴美子に視線を合わせた。

「申し訳ありません! 名前で呼ばれるのは私達の規則に反するので長瀬でお願いします!」
 突然、長瀬は両腕を前に深くお辞儀して声を慌てさせた。

 美香穂は家政婦達の規則の重さの全てをここで知った気がした。

「分かったわ♪ じゃあ長瀬さん。 私専用の付き人になって貰えませんか? 以前、執事の宮坂さんに専用の付き人を選ぶように言われたのだけど…」
 美香穂は真剣な目を長瀬に向け長瀬もまた視線を更に重ねた。

「私で宜しければ! 宜しくお願いします!」
 長瀬は両腕を前に再び深くお辞儀し、美香穂は長瀬の両肩に手を置いた。

「でも凄い数のストッキング… それにガーターベルトやスリーインワンとか… 全員分なの?」
 美香穂は両手を後ろに組んで長瀬を右に見て洗濯物を見回した。

「お屋敷は大きいので手が回らずに交代で全員分の一週間分です♪」
 長瀬は嬉しそうに説明して洗濯物干し場の横にある家政婦専用の洗濯場の建物を指差した。

「じゃあ急いで執事の宮坂さんに付き人は長瀬貴美子だと伝えるわね! ああ! 長瀬ね! 長瀬… うん♪」
 美香穂は友達が出来たようにピョンと飛び跳ねると、長瀬も照れ臭そうにピョンと飛び跳ねた。


 そして三十分後、付き人を長瀬に頼むと執事の宮坂に申し出た美香穂に、宮坂は肩の荷が下りたように嬉しそうに了承した。

  


【十四話】




 長瀬を付き人に指名すると突然、長瀬はメイド服からスーツスカートにその服装を替えた。 美香穂に付いて何処にでも行かねば鳴らぬ長瀬は屋敷全般の家政婦から美香穂専用の付き人へと出世した形となった。

 他の家政婦達から羨ましがれる付き人の仕事は、主に美香穂の世話係として屋敷の仕事から完全に外れることだった。 長瀬は屋敷に勤めてから初めての付き人役に若干舞い上がりつつ美香穂の隣室を付き人専用室として入居した。

 家政婦達に別れを告げるように寮を出た長瀬は、他の家政婦達の手を借りて寮から付き人室へとその身と荷物を移した。 木目と白い壁が美しい二十畳ほどのカーテンで二つに仕切られた付き人室は、美香穂の部屋同様に美しい星空の見えるベランダを有していた。

 美香穂の部屋と結ばれた専用の電話と備え付けのトイレにシャワー付きのバスルームに、長瀬は目を丸くし来賓扱いの待遇に心ワクワクさせた。 そして身に着けるスーツスカートやブラウスの他、下着やストッキングに至るまで用意されていたことに仰天した。

 その長瀬が一番驚いたのは引き出しの中に収められていた新品の黒いパンティーストッキングだった。 それは多忙で用足しも落ち着いて出来なかった家政婦と違ってある程度の時間をキープ出来る付き人故のことだった。

 長瀬は新品のパンティーストッキングを包装のまま頬に寄せるとクルリと回って満面の笑みを浮かべ、自分を指名してくれた美香穂に心の中で手を合わせた。 それほど家政婦から付き人への抜擢はある意味、昇格人事であった。

 そんな長瀬は引越しを終えると付き人としての心得や規則を改めて執事の宮坂に教わるべく、数日間仕事の合間を見て教習に事務室へ行くことになった。 長瀬は宙にも舞う心持ちだった。 

 だがそんな事とは全く何も知らない美香穂は友達感覚の長瀬に用事を頼むことなく暑さ凌ぎに、脱ぐに脱げないパンストをガーターに替えようか迷いつつエアコンのツマミをフルにしていた。

 そして太陽が西に傾き始めた頃、部屋を訪ねてきた長瀬のスーツスカート姿に美香穂は目を丸くした。 そして「貴美ちゃん… 綺麗…」と、宮坂の指導の下で髪型から化粧まで変えた長瀬を部屋に入れた美香穂は思わず長瀬を友達として抱きしめた。

 家政婦のメイド服からスーツスカートに変わった長瀬の手を引いてエアコンの傍のソファーに腰掛けた美香穂は、見事に付き人に変身した長瀬に驚きそして喜び長瀬もまた満面の笑みを美香穂に見せた。

「美香穂様。 何か御用があれば何なりと申しつけ下さいませ…」
 突然ソファーから立ち上がった長瀬は起立し両手を前に深々と美香穂に頭を下げた。

「ちょ! ちょっと! 友達… 友達なんだからそんなことしないでぇ…」
 慌てて長瀬に立ち寄り頭を上げさせた美香穂は何故か長瀬の視線に胸中をドキッとさせ緊張した。

「いえ! 私は付き人… 恐れ多いですからその… 友達と言うのは…」
 長瀬は慌てて一歩後退して再び美香穂に頭を下げた。

 美香穂は何故、自分が長瀬に胸中をドキッとさせたのかそして緊張したのかその理由を心の中で承知していた。

 身体は女でも心まで完全に女に成り切っていない美香穂にとって、長瀬は一人の女性(おんな)であった。

「何か… お… お飲み物をお持ちします…」
 声を上ずらせた長瀬もまた何故か緊張し全身の震えを隠しつつ冷蔵庫のある台所へ移動し、美香穂に不思議なな違和感を感じた。

 そして長瀬と一緒に時間を過ごした美香穂は時計の針を見て急に立ち上がると着替えをと衣裳部屋へ向けようとした。

 その瞬間! 長瀬は慌てる美香穂を咄嗟に止めた。

「今日は暑うございましたからそのままの方が涼しげで旦那様もお喜びになると思います…」
 美香穂は長瀬の言葉に自分を見回して首を捻りつつ長瀬に従った。

 そして更に時間が経過し主である田所の帰宅に間に合わせて玄関先で田所を迎えた。

 そして手にカバンを持った田所が執事、長瀬、家政婦達と美香穂を見た瞬間、突然鼻息を荒くした田所は無表情のまま美香穂に声を掛けた。

「涼しげでいいぞ美香穂! 中々似合っている!」
 美香穂の軽装を見た田所は目を血走らせつつも何かをグッと堪えるように冷静な物言いで屋敷の中に入って言った。

 だが当の美香穂は叱責を受けるモノと覚悟して意気消沈して田所の後に続いた。 そして屋敷の中の廊下の中頃に来た時、突然安代を振り向いた田所は美香穂の付き人になった長瀬を見て「美香穂を頼むぞ!」と、声を掛けた。

 長瀬は初めて田所に掛けられた声に緊張して全身をガタガタと震えさせつつ深々と頭を下げた。 長瀬にとって田所からの声はそれはそれは恐れ多いモノであった。 そして気付けば廊下には誰も居なかった。

「今日は気分がいい! 内風呂ではなく外風呂にしてくれ!」
 自室へと戻った田所は後ろから来た執事の宮坂に機嫌く声を放つと、美香穂に来るように伝えた。

「かしこまりました… 只今、お伝え申し上げます…」
 執事の宮坂は深々と頭を下げるとそのまま部屋を出て、ドア向こうの廊下に立つ美香穂に伝え、付き人の長瀬を連れてヒソヒソ話しをしつつ階段を下りて行った。

「失礼します… 美香穂でございます」
 美香穂が部屋へ入ると田所は目を血走らせたままソファーで足組して美香穂を傍に呼んだ。

「お前は涼しくていいなあ~! ワシは軍服じゃから朝から暑くてかなわんわい! 罰としてワシが良いと言うまで今夜は着替えも風呂もシャワーも禁止じゃ! 良いな!」
 美香穂は唖然としつつ「かしこまりました」と、意気消沈して頭を深々と下げるとそのまま後退して部屋を出て行った。

「やはり着替えるべきだった… こんな姿での出迎えは余りにも無礼…」
 美香穂は心の中で深く反省しつつ自室へとその身を移動させた。

 屋敷に来て以来、初めての叱責に美香穂は何処かに隠れたい気持ちになっていたが、付き人の長瀬は何故か姿を見せなかった。

 美香穂はショーパン姿のまま食事の時間まで自室に篭っていたが五分ほど経過した辺り付き人の長瀬が部屋を訪ねて来た。

「やっぱり叱られたぁ…」
 長瀬を見つつ呟いた美香穂を見て、長瀬は「御安心下さい。 旦那様は御機嫌で外風呂にお入りになられていると執事の宮坂より承っております♪」と、笑みして美香穂を元気付けた。

 美香穂は長瀬の笑みを見て「はあぁ~~~」と、大きな溜息をして見せたが、長瀬は笑みを崩すことはなかった。

 そして一時間が経過し涼みを終えた田所が食堂へ移動して来る頃、宮坂から美香穂の部屋に電話が入った。

「旦那様がお見えになられます…」
 美香穂は元気なく長瀬に背中を押されるように自室をでると食堂への道のりで数回溜息をついた。

 だが食堂に到着した時、テーブルの前で田所を待つ宮坂はいつもと変わらぬ様相を見せ、後ろから付いてきた長瀬もまた宮坂同様に平穏の様相だった。

 そして美香穂がテープルの前に立って待っているところへ田所が憮然とした表情で現れ宮坂の引いた席に座った。

 美香穂は激しい緊張感に襲われていた。




【十五話】




 美香穂は聞かされていたご機嫌と言う言葉とは真逆り田所の無表情に怖さを覚えていた。 皆が暑い中、正装している時に自分だけがしていた軽装はどう考えても理不尽であって叱責されて当然だと美香穂は思っていた。

 だが田所は食前酒を口にして尚も美香穂を見ることなく食事を始めてからも無表情で無言を貫いた。 正装している執事の宮坂も付き人のスーツ姿の長瀬すらも田所同様であったことに、三河は息苦しさを覚えていた。

 夕食は家政婦以外は身分関係なく全員で頂くのが屋敷の慣例だったが、美香穂は出来ることならこの場から姿を消したい気分だった。 ナイフとフォークを持つ手が震え黒いパンティーストッキングに包まれた両脚が重々しく揺れた。
 
 そしてそんな中で、突然開いた田所の口に美香穂は胸中をドキッとさせた。

「宮坂! 美香穂にもワインを。 あぁ、ビールがいいだろう。 ワシだけ飲んでいてもつまらん! 宮坂(おまえ)達は仕事もあるだろうからな。 あっははははは♪」
 田所の後ろに立っていた家政婦が直ぐに厨房へと移動し、盆に乗せられた冷えたビールとグラスが美香穂に届けられると、美香穂は両肩をすくませて田所に立ち上がって一礼し直ぐに席に着いた。

 美香穂は重苦しい空気の中で苦いビールを飲んでいたが、何故か田所はその頃から難しい表情を軟化させ美香穂はそれをワインの所為だと思っていた。

 そして重苦しい田所との夕食が終わると、田所は突然、座っている美香穂の背後に立ち両手で肩を数回揉んでそのまま食堂を離れた。 そしてその様子を見ていた長瀬は俯いて口元に笑みを浮かべた。

 田所が立ち去った後、美香穂は嵐が過ぎ去った後の様に一気に張り詰めた緊張が解れ残っていたグラスのビールを一気に喉に流し込んだ。 それを横目にみつつ席を離れた長瀬は「もう一本、お持ちしますか?」と、美香穂に聞くと、美香穂は「意地悪言わないでぇ♪」と、一気にストレスを発散させた。

 そして食堂から出ようとした美香穂に宮坂が近づき「今夜、旦那様がお呼びでございます… お風呂やお着替えは旦那様の許しを得てからにしてくださいませ…」と、耳打ちしてきたことで、美香穂はいよいよ叱責の時間が近づいたと再び緊張感に包まれた。

 美香穂は自室に戻ると等身大の鏡に自分を映した。

「確かに不誠実かも知れない…」
 白いショーパンに黒いパンストとサンダル。 そして水色のノースリープ。 軽くジャンプしただけでプルプルと大きく揺れる全身。 ギリギリ見えそうなパンストの切り替え部分。

「中将閣下の屋敷には相応しくないもんなあ~」
 素直に謝罪しようと鏡の中の自分にそう言い聞かせた美香穂はせめて歯磨きだけでもと洗面台に移動した。

 そして美香穂が洗面台の前に立っている頃、田所は木目の仕事机を前にソワソワし打ち込んでいたパソコンのキーボードから手を離した。 タバコを銜え時計を何度も見ては火の点いてないタバコを机に置いて洗面台へ移動そして歯を磨き始めた。

「今夜は誰にも邪魔はさせん!」
 ガジカシと歯ブラシで男磨きする田所はアゴを触ってヒゲが残っていないか入念にチェックした。

「ああ。 宮坂か。 あとで美香穂がワシの部屋を尋ねるがワシが良いと言うまで電話も誰も取り次ぐでないぞ!」
 田所は落ち着かない様子で大きなリビングの中を行ったり来たりしては一向に進まない時計の針にムシャクシャしつつ、時間潰しとばかりに再びシャワールームで水浴びして全身を冷やした。

 そしてシャワーから出た田所は再びリビングでソワソワ、イライラしつつ時間が来るのを待ち続け、美香穂が尋ねて来る時間が近づくと、田所は仕事机に向かい仕事してるフリしてドアが鳴るのを待った。

「コンコン… 美香穂です……」
 ドアがノックされた瞬間、田所は心臓が口から飛び出しそうになるのを「ぐっ!」と、堪えて中に入るよう即した。

「ソファーに座りなさい…」
 仕事机に向かい後ろに立つ美香穂に背を向けたまま渋い声を出した田所は白いショーパン姿の美香穂を思い出し笑みを隠した。

 普段から事務服(スーツ)やメイド服を見慣れている田所の急所を付いた長瀬の見事な作戦は確実に功を奏した。

 田所は席を離れソファーに座る美香穂の傍に来るとテープルを挟んだ向かい側に腰を下ろし足組して美香穂を観察した。

「ちょっと起って見なさい…」
 白いショーパン姿の美香穂は顔を強張らせ振るえる全身の筋肉に力を入れてその場に起った。

「中々、良いモノだな… 女子らしい服装だ… 後ろを向いて見なさい」
 足組した田所は床に立つサンダルからゆっくりと黒いパンストに包まれた美香穂の脚を見上げ、ショーパンの裾の部分を凝視し喉をゴクリと鳴らし、誤魔化すように咳払いをした。

 すると美香穂は泣きそうな声を震わせて後ろ向きのまま田所に謝ろうと「旦那様」と、囁いた。

「良い良い♪ 今日の服装… 涼しげでワシは良いと思うぞ♪ 硬くならずにこちらに来なさい♪」
 後ろ向きの美香穂に優しい声を掛けた田所は左腕を背もたれに掛けた。

「女子(おなご)らしい服装にチョッと驚いただけだ♪ 心配せんでもいい♪ ささ。 こちらに来なさい♪」
 美香穂は田所とテーブルの隙間をゆっくり歩いて田所の左側に来ると静かに座った。

 田所は当然のように美香穂の肩を抱いて引き寄せると、左手で美香穂の髪を静かに撫でた。

「今夜はこのままワシの部屋に泊まりなさい♪」
 叱られるとばかり思っていた美香穂は田所の言葉にビクッとして一瞬顔を上げ直ぐに恥ずかしそうに俯いた。

「何か飲むか? 冷えたシャンパンがあるがどうだ?」
 美香穂は胸中をドキドキさせて無言で静かに頷くと、田所は「そかそか♪」と、上機嫌で冷蔵庫へと移動した。

 だが美香穂は自分の姿を見回して汗を流していないことに唇を軽く噛んだ。

「恥ずかしいよ… このままじゃ嫌われる……」
 女以上に自分(おんな)の身体に敏感な美香穂は機会を見て田所にシャワーと着替えを頼もうと思ったが、笑顔でシャンパンを用意する田所を見て言い出せずに居た。

 その頃、一階の食堂に残っていた美香穂の付き人に昇進した長瀬は、同僚だった家政婦達と世間話を楽しんでいて執事の宮坂も女達に囲まれ笑みを見せていた。

 今まで退屈だった田所屋敷も美香穂が来たことで笑みの絶えない営みを見せるようになっていた。



【十六話】



 クリーム色の大きなソファーの上、左側に座らせた美香穂とシャンパンを乾杯する田所は、チラチラと黒いパンストに包まれた美香穂の両脚とブラ無しの豊満な胸に目を奪われていた。

 そして美香穂もまたシャンパンを飲みつつ、見られていることを恥じらいつつ右膝を黒いストッキングの上から触手されその指の動きに全身をビク付かせ感じていた。

 美香穂の身体とシャンパンは美香穂が身体をビク付かせるほどに揺れその揺れを田所は目を血走らせて楽しんでいた。 スルスルと滑りの良いゾッキタイプの黒いパンティーストッキングに滑らされた指は白いショーパンツの裾に第一関節ほど入ると、美香穂は大きくビク付かせた反動でシャンパンを右太ももに零した。

「キャッ… す、すいません!」
 零したことを詫びる美香穂の太ももに咄嗟にムシャブリ付いた田所は自らの股間を大きく膨らませ、そして美香穂はその膨らみに赤面して恥らった。

 黒いパンティーストッキングにムシャブリ付く田所の右手はそのまま美香穂をソファーに抱き倒し、そのままノースリーブの裾を捲り上げた。

 そして透けるような黒いキャミソールの中に見える白く豊満な乳房に喉をゴクリと鳴らした田所は、美香穂からノースリーブをスルリと脱がせた。

 だが田所は直ぐに胸に移らずに黒いパンティーストッキングに包まれた美香穂の右脚の爪先に鼻先を押し付け、酸味の利いた爪先の恥ずかしい匂いを嗅ぎストッキング越しに滑らせされた舌先に美香穂は思わずソファーの上で仰け反り小さな鳴き声を奏でた。

「ああん! だめぇー! ゆ! 許して下さい! 汗を! 汗を流させてぇ! お願いです!! 汚れてるんです!!」
 美香穂は慌てて絡み付く田所を制止したが田所は聞く耳持たず、荒い吐息を吐いて汗で汚れた爪先にムシャブリ付いた。

「はぁはぁはぁはぁはぁ… じっとしておれ! 味わってやる! お前の本当の匂いと味を!! ハフハフハフハフ。チュパチュパピチャピチャ!」
 口の中に入れた美香穂の脚の爪先にムシャブリ付いた田所は声と息を荒げた。

 田所は時間を掛けて、美香穂の下半身を包む黒いパンティーストッキングに染み込んだ味と匂いに尋常ではない男(けもの)の様相を見せ、その舌はストッキング越しにカガト、そしてフクラハギに達するとやがて、膝裏に染み込んだ美香穂の汚れに達した。

 そしてその舌は膝裏に染み込んだ汚れを徹底的に舐め吸いシャブリついて飲み込むと、黒いパンティーストッキングに包まれて行き場のないまま上下左右斜めにプルプルと大きく揺れる太もも両手の平で挟んで頬擦りを繰り返した。

 ストッキングの上から滑らされる言葉にならい快感に美香穂は何度も首を左右に振りそして仰け反りソファーの表面を鷲掴みした。 そして当の田所は白いショートパンツの裾の隙間に鼻先を入れ思いっきり鼻で美香穂の体温を吸い込むと咽せた。

 甘く酸味のある体温は田所に吸い込むと同時に顔全体を覆い居つくしプリプリと柔らかい内モモに左頬を張り付かせた田所は、スベスベ感とストッキングに染み込んだ甘い香りに頬を擦りつけた。 そして両手でショーパンのボタンを外した田所は敢えて全てを外さずに裾の隙間に顔を埋めて鼻先で激しい深呼吸を幾度も繰り返した。

 黒いパンティーストッキングに染み込んだ美香穂の肉の香りと白いパンティーから溢れた女の香りがミックスされ、田所はこれ以上ない幸福感に顔と心を蕩けさせた。 元来、ショーパンフェチとパンストフェチであった田所にとって黒いパンティーストッキングとの組み合わせは極上のコスチュームであった。 

 そして美香穂の下半身から白いショーパンが剥ぎ取られるまでの四十分間、美香穂はショーパンの半脱ぎ状態で触れられる快感と嗅がれる恥ずかしい官能の二つに板挟みになって喜びを噛み締めた。 そしてショーパンを剥ぎ取られた後、薄っすらと田所の目を楽しませた白いパンティーの秘部の盛り上がりに鼻先を押し付けた田所は、パンストに染み込んだ肌とパンティーの香りとパンティーに染み込んだ生肉の香りに薬物患者のごとく目を虚ろにさせた。

 耐えに耐え続けた家族想いの田所は今や別人のように、獣のように美香穂の下半身に纏わり付いて離れず、黒いパンティーストッキングに覆われた両太ももと弾力のある尻に夢中になって触手し続け、美香穂の恥ずかしい香りに咽て咳き込む場面も。 美香穂はそんな荒々しい田所にライオンを思い浮かべ自らを野ウサギに例えて燃えた。

 黒いパティーストッキングは無造作に舐められ田所の唾液で激しい湿気を帯びていたが、その端を剥きながらヘソ下を舐められる美香穂は窓ガラスを振るわせるほどの鳴き声を奏で「女になってよかった」と、脳裏の更に奥の奥でそう呟いていた。 黒いパンストを剥がし、剥がした分だけ舐めシャブル田所の舌と唇に若干の痛みはあれど、美香穂にはその痛みこそが味見される女の心地よさなのだと覚った。 くすぐったいそして心地よくウッとりする。

 そして田所の両手が美香穂の下半身から黒いパンイーティストッキングを完全に剥ぎ取った瞬間、田所は更に素肌になった美香穂の太ももと尻に猛反撃するかのように舐め回しムシャブリついて吸い付いた。 


「ああああああーーーーん!! あんあんあん!!」


 凄まじいほどの味見は美香穂の全身を悶えさせそして仰け反らせて髪を振り乱させた。


「これが… これが女の喜び!!」
 美香穂は全身が乱れるほどに肌でそう感じていた。

 そして更に三十分以上を掛け美香穂の下半身を味わい尽くした田所の向かった先は、白い豊満な乳房を透明感のある黒いキャミソールだった。

 獣のように唸り声を上げる田所の両手が美香穂の両肩から肩紐を外すと、弾みで豊満な乳房は「プルルル~ン♪」と、心地良い柔らかさと瑞々しさを他泥の目に焼き付けた。

 そして何よりも田所を驚かせたのは生まれたばかりのような美しいピンク色した乳首だった。 その美しいピンク色の得日を見た瞬間、田所は目を充血させ突然貪りついた。


「あひいぃー!! ああーーーーーん!!」
 全身を大きくビク付かせた美香穂の乳首は間髪入れずに勃起し食べてしまいそうになるほどのコリコリ感を田所に知らせた。

 美香穂の乳首は勃起して田所の舌に絶妙なコリコリ感を与え、甘い味を口いっぱいに広げさせた。 スイーツともフルーツともつかない甘美な乳首は田所にその持てる甘みの全てを吸い尽くされた。

 そして揉めば揉むほどに両手に馴染んで張り付いてくる豊満な乳房に田所はメロメロ状態に陥り、美香穂の白いパンティーは本人も気付かぬままにグショグショに濡れていた。

 やがて邪魔だとばかりに剥ぎ取ったキャミソールは宙を舞いソファーの端っこに静かに落ちたが、美香穂の身体は貪る田所によって大きく揺れ動き持てる柔らかさの全てを空気に振るわせた。

 美香穂はパンティーの中身を残したままで全身の全ての匂いを嗅がれそして味を奪われた。 

 そして三十分が経過した辺り、美香穂を抱く田所の上半身がゆっくりと美香穂の恥ずかしい部分を包む白いパンティーへと向かった。

 目を血走らせた田所は歓喜に満ちた表情を浮かべ武者震いをしつつその両手をパンティーにそっと寄せた。 男性(けもの)として生まれた喜びを堪能する瞬間、突然、街中の鉄塔から大きなサイレンが鳴り始め、数分後、田所の部屋のドアが大きくノックされた。


「ドンドンドンドン!! 旦那様!! 旦那様大変です!! 空襲警報です!! 旦那様ーー!!」
 ドアの向こう側から大声で叫ぶ執事の宮坂のケタタマシイ声が田所の耳に伝わると、田所は悔しそうな顔をして白いパンティーに食い入って見ると、咄嗟に美香穂をそのままにドアへ移動した。

「解かっておる! 心配するな! お前達は地下の防空壕へ全員で非難しろ!! ワシも美香穂をつれて行く!!」
 サイレンの鳴り止まない中、アチコチで空襲の爆発音が聞こえた。

 田所は怖がる美香穂の頭を数回撫でると服を着させ自らは軍服に着替え始めた。

「お前を食うのはもう少し後になりそうだ! 急いで服を着て一階の食堂へ移動しなさい! 宮坂が待っているから!」
 軍服に着替えた田所からは男の匂いは一瞬にして消え軍人の匂いが美香穂を咽させた。

「宮坂! 車を運転手にださせろ! ワシは軍部に出向く!!」
 電話で話す田所は女を求める獣ではなく中将閣下の田所であったことに美香穂は凛々しさを感じていた。

 美香穂は田所に言われ起き上がると初めてパンティーがグッショリなっていることに気付き、黒いパンストを丸めると白いショーパンをそしてキャミと服を着た。

「見送りはいらん! お前は急いで宮坂のところへ向かえ! よいな!!」
 軍服に身を包んだ田所は帽子を被ると白い手袋をして部屋を慌しく出て行った。

 一人残された美香穂は慌てて自室へ移動するとショーパンを脱いでパンティーを自ら剥ぎ取ると、陰部をティシューで拭いて別のパンティーに履き替え白いショーパンを再び、そして両脚に黒いニーソックスを履いた。

 静まり返った屋敷の階段を一気に駆け下りた美香穂はそのまま食堂へと駆け込んだ。


【十七話】




 田所は屋敷を出たまま翌朝も戻ることはなく、深夜まで続いた敵国の空襲に怯える田所屋敷の住人達は地下の防空壕で朝を迎えた。

 そして防空壕から這い出た住人達は一階の食堂でラジオからのニュースに耳を傾け被害の状況に息を呑んで、軽い朝食を摂った後で、戻るかも知れない田所のために着替えを用意して待った。

 ラジオからの緊急ニュースでは敵国の爆撃機が数十機飛来し軍の施設を破壊し敵航空機も数機が撃墜されたと言う。 宮坂は電話の前に立ち、二人の家政婦は屋敷の玄関に立って田所を待った。

 敵軍の思わぬ奇襲作戦だったが日本軍も早急に対応し市街地への爆撃は阻止出来たとニュースでは陸軍を賛美した。 そして三十分が経過した朝の八時半ごろ、宮坂の目の前の電話が鳴り田所の無事が確認された。

 田所邸の住人たちは手を取り合って安堵の表情を見せ、前夜、女の喜びを教えられた美香穂は付き人の長瀬を前に涙くんだ。 

「数日帰れないから」
 田所は軍部へ着替えを届けさせるよう執事に命じて電話を切ると、宮坂は家政婦に命じて数日分の着替えを準備させた。

 その頃、美香穂は自室のバスルームで前日に受けた田所からの愛撫の形跡をシャワーで洗い流していたが、否応無く思い出される田所の舌の動きと触手の数々に激しく打ち付けるシャワーの中で乳首を勃起させていた。

「パンティーだけだったのに…」
 前日脱いだグショグショに濡れた白いパンティーの内側を思い出した美香穂は、打ち付けるシャワーの中で両脚を内側にキュッと陰部を締め付けた。

「駄目! 駄目よ! 処女を喪失するまでは…」
 自慰したくて堪らなかった美香穂だったが貞操を田所に捧げるまではと熱いシャワーを冷たい水に切り替えて火照った身体を冷やした。

 水で身体を冷やすのは自分を指名した田所への忠義心のようなものが美香穂の中に存在していたからだった。

 慰安夫(おんな)として着任して慰安券を貯める毎日に明け暮れるはずだった美香穂は、今や屋敷では現地妻扱いで夢のような生活をしている。

 最初は逃げ出したいほどだった美香穂も、住めば都で田所の屋敷に馴染んできたことも理由の一つだったに違いなかった。

 ただ、良くして貰える分だけ美香穂は本当の自分のことを隠していることに罪の意識をも感じ始めてもいた。 

 だが前夜、田所に呼ばれて行ったはずの美香穂がパンストではなく下半身にニーソックスを履いていたことに安堵する付き人の長瀬の存在も大きかった。

 長瀬には家政婦時代から何かと面倒を見て貰っていた美香穂の心の友とでも呼べる存在だった。

 
「昨日はどうでした~♪ 旦那様♪ オオカミになってませんでしたか♪」
 屋敷の玄関横で、耳打ちした長瀬は笑みを浮かべた。

「えぇー! ちょっ! やだぁ~! もおぅ~♪ でもどうして知ってるの?」
 顔を真っ赤に照れる美香穂は両手で頬を覆いつつ俯いて長瀬をチラチラ見た。

「ショーパン♪ 黒いパンスト♪ ノースリーブ♪ 旦那様の大好きな服装なんですよ~♪ フェチって言うのかな♪ お車の中から街中の人をチラチラ見てることありますもの♪」
 種明かしをした長瀬に益々赤面した美香穂は恥ずかしそうにそして驚いたように顔を上げた。

「え!? もしかしてあのお店でショーパン勧めたのも… そう言うことなのぉ? え!? 恥ずかしいよおぅ♪」
 長瀬の目に視線を重ねた美香穂は再び俯いて長瀬に背中を向けた。

 美香穂は長瀬の意図に気付くと、長瀬の背中に抱きついて礼を言った。

「私の方こそ。 指名して貰って感謝してます…」
 美香穂に背中を貸す長瀬は小声で礼を言うと、そのまま少し歩いてとまった。

「でも… もう一歩ってとこで空襲だったんだもん… 本当にあと一歩だったのに…」
 長瀬から離れた美香穂はその横に斜屈んで地面を見た。

「大丈夫よ! これからもチャンスはいくらでもあるわ♪ ただね、本土にいるお嬢様と同じ名前なのよ美香穂さんって… だから旦那様も耐えていたんだろうけど…」
 長瀬の言葉にビックリして顔を斜め上に上げて長瀬を見つめた美香穂。

「そっかぁ~ そうだよね~ 自分の娘と同じ名前の女なんか抱く気になれないよね…」
 消沈する美香穂。

「でも此間の宮坂さんの作戦は爆笑ものだったわよね♪ うなぎー♪ 宮坂さんも気付いてたんじゃないかな♪」
 口元を手で覆い隠して笑う長瀬につられて笑い始めた美香穂。

「あんなに鰻食べたら男性じゃなくっても興奮するわよねえ~♪ あはははははは♪」
 元気を取り戻したように言い放った美香穂は立ち上がって門を見つめた。


 三十分後。


「え!? ちょっと私、ヤダァー こんなの見たくないよぉ!」
 長瀬の自室につれて来られた美香穂は、何処から入手したか解からないアダルトビデオを見せられ激しく困惑した。

「駄目ですよ♪ 何事もちゃんと勉強しないと♪ 何も知らないネンネじゃ旦那様も気の毒です♪ さあちゃんと見て♪」
 モザイク無しの男女の絡みを見せられる美香穂は恥ずかしそうに俯いて上目つかいに画面に視線を向けた。

 長瀬は斜め座りして大型テレビを前にする美香穂を観察するような目で見ていたが、画面の中の男が女の恥ずかしい部分を舐める場面、美香穂は両手で顔を覆い隠して開いた指の間からソレを見ていた。

 
 十五分後。


「大丈夫! 練習よ! 練習~♪」
 長瀬は嫌がる美香穂を床に押し付けると美香穂の乳房を半袖シャツの上から揉み始めた。

 美香穂は何がなんだか解からないうちに抵抗しつつもウットリし始め、そのままショーパンを脱がされると一気にパンストとパンティーを剥ぎ取られた。

 そして美香穂の真実に長瀬は驚きの声を胸中で発した。

「そんな!? 綺麗過ぎる…」
 開かせた美香穂の恥ずかしい部分を見た長瀬は生まれたての赤ん坊のような綺麗な割れ目に驚きを隠せず、逃げようとする美香穂の割れ目に舌を押入れそして滑らせた。

「あひいぃぃーー!! や! やめてぇー! あああんっ!」
 舐められた瞬間、美香穂は腰と首を仰け反らせ逃げる力を奪われ、長瀬は開いて押し付けた舌先を縦に往復させるとアンモニア臭い塩気のある生肉の感触に心地よさを覚えた。

 処女らしい乙女の香りと味にレズであることを隠していた長瀬は瞬時に溢れた透明な愛液で自らの喉を潤し、同時に舌先に絡めた透明な愛液で尿道、そしてクリトリスを責めた。

 痛々しい程に綺麗な美香穂の割れ目の中、クリトリスの表面に長瀬の舌先がヌルヌルした愛液を塗り付けると、三河は全身を仰け反らせつつ身悶えして恥じらいの鳴き声を奏でた。

 美香穂の全身はプリンプリンと全身をゼラチンのように揺らしそのまま床に溶けてしまいそうなほどだったが、長瀬の伸ばした右手の指が美しいピンク色した乳首に絡みつくと、瞬時に僅かな筋肉を硬直させ両脚の爪先はギュッと閉じたままになった。

「ニッチャピッチャレロレロレロ…」
 美香穂の下半身に半濁音が放たれ柔らかな内モモがプルプルと左右に揺れると美香穂の両手の爪が床に食い込んだ。

「何て可愛い美香穂(こ)なの…」
 長瀬は美香穂を味わいつつ心の中で美香穂の愛らしい身体に嫉妬心さえ覚え、勃起したクリトリスを意地悪げに舌を絡ませた。

「ヒイイィィィーー!」
 両脚が内側に硬直し長瀬の頭部を左右から挟みこんだ瞬間、長瀬は「これでもか!」と、舌先をクリトリスに滑らせた。

 美香穂は全身をヒクヒクさせ錯乱したように髪を振り乱しエクスタシーに達してそのまま失神した。

 そして練習と称してその後も美香穂を味わった長瀬だった。



【十八話】




 戦争は刻々と変化し楽勝ムードだった軍部は突然の奇襲攻撃に襟を但しアチコチの前線で苦戦を強いられていた。

 軍部は第二陣、第三陣と兵士を投入し同時に慰安夫(おんな)も続々と投入されて行き、街の慰安所に居た多くの慰安夫(おんな)達は各戦線へと散らばるように配置され街には新人の慰安夫(おんな)達で溢れた。

 だがそんな中で将校専属の慰安夫(おんな)達だけが各屋敷にとどまることを許された。 そして数日前の奇襲攻撃の後、田所が屋敷に帰宅したのは一週間を経過していた。

「ワシも前線へ行かねばならんかも知れん… 行けば数ヶ月。 いや、終わるまでかも知れん…」
 久々に屋敷に帰宅した田所は不安げな表情を浮かべる皆に重々しく口を開いた。

「私も! 私も付いて参ります!!」
 屋敷の一階で一歩前に出た美香穂は表情を険しくさせていた。

「いや! 行くのはワシ一人で良い。 前線は危険を伴うからか! 気持ちだけで十分!」
 美香穂の前に立った田所は皆の前で美香穂の頭を撫でると宮坂を伴って二階へと歩いて行った。

 そんな中、美香穂の付き人の長瀬。

「今朝の新聞にも出てたわね… 兵器も技術的には日本は勝っているものの、敵は人数で勝負してるから侮れないらしいわ! もしかしたらこの街を占拠出来たのも偶然かもしれないわ… 本来司令部に居る旦那様が前線に行くってことは切迫していねのかも知れないわ…」
 グレーのスーツスカート姿の長瀬は不安げに顔を曇らせ、美香穂もまた不安げに長瀬に寄り添った。

「美香穂様が行くのであれば付き人である私も行くわ… それが私の使命…」
 肩に寄り添う美香穂に呟いた長瀬は深呼吸して自らを落ち着かせた。

「さあ! 私達は旦那様が何処にいようと精一杯、お屋敷にご奉公するのよ! さあ! 行くわよ!」
 家政婦長の掛け声と同時に散り散りに屋敷に散らばる家政婦達も不安げだった。

「旦那様が行く前に、一度声が掛かるかも知れないわ♪」
 長瀬は誰も居ない一階広間で美香穂を抱きしめ口付けをした。

 そしてそれから平穏な日々が繰り返されたが一向に田所から美香穂に声は掛からず、再び薬の切れ掛かった美香穂は政府の要人の遣いから渡された予備薬を自ら注射した。

「何としても旦那様が居る内に…」
 美香穂は田所の好む服装で毎夜のように自発的に田所の部屋を訪ねたが、多忙極まりない田所は女を抱いている余裕なく机に向かって作戦を練っていて美香穂を振り向くことは無かった。

「このままだと再び…」
 予備薬を使い果たした美香穂の焦りは日に日に増して行った。

 美香穂はヒゲの生えた自分の顔を思い出し再び、政府に連絡を取った。

「残念ですがあの注射は二度までが限界なんです… それよりも早く処女を喪失して下さい。 もし次にヒゲが生えてきたら貴方はもう女でいられなくなります! 女の身体をした男になってしまいます! 兎に角、急いで下さい!」
 焦った美香穂は渡された直通の番号に電話すると相手は驚いて対応し美香穂を慌てさせた。

 そして美香穂は決心した。

「何が何でも旦那様に……」
 田所が帰宅し風呂と食事を終えた一時間後、美香穂は再び田所の部屋を訪ねていた。

 机に向かう田所の背中をソファーから見入る美香穂は、深呼吸を二度してから一世一代の大勝負とばかり立ち上がって田所に近づいた。

「旦那様! お願いがあります!」
 振り向いた田所の前に跪いた美香穂は、想いのすべてをブチ巻けるように前線へ行く前に女にして欲しいと自らが処女であることを告白した。

 田所は美香穂の見たことのないほどの真剣さに押された。

「解かった! 一度だけ! ワシも前線へ行けば二度とお前と会えぬかも知れん! ワシとて随分我慢していたのだ…」
 田所は美香穂の見ている前でトランクス一枚になると、美香穂の手を引いて寝室、そしてベッドへ美香穂を寝かせた。

 美香穂は遂に来たと、自らノースリーブを脱いで黒く透けるキャミ一枚になるとそのまま目を閉じて待ち、ショーパンのボタンをも自らの手で外した。

 黒く透けるキャミ、白いショーパンと黒いパンストと田所の大好物を晒した美香穂は直ぐに肩紐を外され荒い吐息を胸に全身を大きく揺さぶられた。

 乳房を揉みまわす田所の大きな手にウットリし、太い指先が乳首に絡んだ瞬間、美香穂は仰け反りを見せそして鳴き声を奏でた。

 そして勃起した乳首を長瀬(おんな)のネットリとした舌の感触とは違う、田所(おとこ)のザラついた舌に舐められ吸われると、美香穂は両手でシーツを鷲掴みして腰を仰け反らせたまま息を詰まらせた。

 田所は徐々にヒートアップし乳房もろとも乳首に貪りついて、長瀬(おんな)に開発された美香穂の身体を右に左に大きく揺らし伸ばした片手で黒いパンストに包まれた太ももを忙しく触手し続けた。

 美香穂は前回同様に隅々に渡って味見されつつショーパンをそしてパンストを脱がされ白いパンティーだけの一枚になった瞬間、これで女性(ほんもの)に成れるのだと涙を閉じた瞼から溢れさせた。

 そして女として生まれて初めて恥ずかしい部分を田所(おとこ)の前に晒した瞬間、美香穂の瞼からは大粒の涙が溢れた。 

「クチュッ! アヒイイイィィーーーー!!」
 左右に開かれた恥ずかしい部分の内側に、長瀬(おんな)とは全く違う田所(おとこ)のザラ付いた舌先が滑った。

 美香穂はザラ付いた舌先に両手足でシーツを鷲掴みし仰け反りを限界にまで達しさせた。 田所の舌先は大陰唇と小陰唇の間を左右交互に何度も滑り、そして美香穂(おんな)の汚れを掻き出して飲み込まれた。

 恥ずかしい。 でも気持ちいい。

 田所は何度も美香穂(おんな)の匂いと味に咽ながらも止まることなくその全ての生肉を味わい尽くし、美香穂からあふれ出た女の汁をも幾度も飲み干した。

 そして田所の舌先が肛門の表面に到達した瞬間、美香穂は狂ったように全身でベッドを激しく揺らしつつ、もう直ぐ女性(ほんもの)になれると確信した。

 だがその直後から閉じた瞼の外で妙な違和感を感じた。

 田所の荒い吐息だけが聞こえるものの、美香穂の中に一向に入って来ない田所は美香穂の両脚から手を離した。


 そして一分、二分と時間が経ち三分ほどした辺りで閉じていた瞼を開くと足元に仁王立ちする田所はトランクスに手を入れ何故かイチモツを扱いていた。

「す! すまん… もう少し待ってくれ。 ストレスで中々… くそ!」
 田所はトランクスの中で一向に起たないイチモツを懸命に扱いて硬くしようとしていた。

 そんな田所の真正面にアヒル座りした美香穂は田所のトランクスをゆっくりと下げ降ろすと、イチモツから田所の両手を外させた。


「カッポッ! ジュルッ…」


 ここまで来て諦められない美香穂は無言で長瀬に教えられた通り田所のイチモツを銜えると舌を滑らせながら首を前後させた。

 すると、田所のイチモツは徐々に硬くそして大きくなって、美香穂の口に収まりきれないほどの大きさに変身を果たした。

 田所はその間、両膝をガクガクさせ男悶えをしていたが無我夢中の美香穂は何も解からぬまま、次に気付いた時には恥ずかしい割れ目の窪みの中に強く鈍い痛みを感じて瞼を開いた。


「痛あぁーーーーーい!」


 美香穂は硬くて太い肉棒を挿入され余りの痛みに田所から逃げようとベッドを上に移動して板に頭をぶつけた。

 だが処女を喪失した美香穂の女らしさに田所は自信を取り戻し獣となって美香穂を追い詰め腰を懸命に振った。


「痛い! 痛い! 痛ああぁぁーーーい!!」


 美香穂は両脚を閉じようと無意識に田所の腰を両脚で締め上げていたが、田所にとってそれは処女を手に入れた証しであり獲物を仕留めた獣の喜びでもあった。

 田所は痛がる美香穂を見ては「ニンマリ」して腰を激しく振ったが、美香穂は余りの痛さに大粒の涙を溢れさせ泣いていた。

 そして美香穂は田所の荒い息遣いに限界を悟り研修所で教えられた通り叫んだ。


「中に! 中に出してええぇぇーーー!!」


 美香穂は躊躇する田所を逃がすまいと必死に両脚で田所を締め上げ、田所は恐怖に離れようとしたが間に合わず、田所は美香穂の中に濃厚な精液を撃ち放った。

 だが尚も腰を振る田所はそのまま続けて二度目へと突入したが両脚を肩に担がれた美香穂はどうすることも出来ずにそのまま二発目も中に発射された。

 そして田所が美香穂から離れたのは三度目を美香穂の顔に出してからのことだった。

 田所は美香穂の顔に腰を回すように掛け垂らして、全てを出し切ったとばかりに美香穂から離れ横に並んだ。

 白いシーツは鮮血に染まり美香穂の顔は白い液体に染まった。

 



【十九話】




 屋敷の主である田所が前線へと旅立って行った日、街中から軍人と慰安夫(おんな)達が一斉に消えた。

 残っているのは見受けされた慰安夫(おんな)達と屋敷を守る住人達だけで、街は昼間だというのに人影も疎らで軍服を見ることなく時折吹く風に乗った砂ホコリが目に付くようになっていた。

 そんな中で屋敷内に流れるラジオでは日本軍の勝利に次ぐ勝利のニュースが住人達を沸かせた。

 この頃になると本国からのテレビの電波は制限され、ニュースらしいニュースを聞けるのは現地の放送局で流すラジオだけが唯一の情報だった。

 ただ、何処の将校屋敷でも主が無事に帰ることだけを願って、いつ戻ってもいいようにと仕事に精を出していた。

 そして美香穂を残したまま旅立った田所中将率いる大部隊もまた、連戦連勝の報告がラジオから流されると知った屋敷の住人達は田所の無事に笑みして安堵した。

 だが、美香穂のようにその身を案じて残された慰安夫(おんな)達ばかりではなく、主に前線へと連れられて行った者も少なくは無かったがその安否は報道されなかった。

 そして田所が前線へ移った数日後辺りから、長瀬は度々、美香穂の部屋を訪れるようにもなっていた。

 下着姿の二人が一つのベッドで抱き合いそして互いに愛撫し合っていることなど、住人達の誰も知るところではなかった。

 最初は受身専門の美香穂も徐々に長瀬の身体を求めるようになり女として抱かれる喜びと逆に抱く喜びにその身を浸らせた。

 そして二人の愛欲は毎晩のように続けられ同時に戦争も終焉へと近づきつつあった。

 そんな中で本土の日本政府のとある機関では、後に慰安婦問題を残さないために秘密裏にワクチンの開発が成功していた。

 前線へ送り込まれた慰安夫(おんな)達の記憶を男の頃に蘇らせ同時に女の身体から男の身体に戻し兵士として活動させる。

 前線で死んだ者は別として生き残った慰安夫(おんな)達は慰安券を貯めたまま、流行風邪の予防として再び秘密裏に製造された注射を一人また一人と打たれて行った。


「なあぁ~に心配は要りませんよ♪ 例え兵士(おとこ)達が慰安夫(おんな)の存在を喋ったところで慰安夫(おんな)そのものが何処にも存在しないんですから……」
 スーツの上に白衣を着込んだ医師は政府筋の要人に笑みを浮かべて溶液の入った注射器を見せた。

「万に一つのしくじりがあってはならんぞ!」
 黒服の要人は固い表情を医師に見せると秘密の出入り口から姿を消した。


 その頃、田所の屋敷に居た美香穂は最初の注射で男の記憶を消失させれるはずだったが、処女であるが故に記憶を消されぬまま二度目の注射を打った後での処女喪失に精神的以外に心は男のままであった。

 日本国政府の最初で最後の失態は美香穂の記憶を消すことが出来なかったことだったが、政府はそれを知るすべが無かった。

 故に美香穂は精神的には女であっても男の記憶を持ったままの女として、毎夜のごとく長瀬とレズビアンの関係を維持していた。

 美香穂の知らないところで前線に移動した慰安夫(おんな)達は、記憶を書き換えられ身体を元の男に戻し兵士(おとこ)として戦場に散って行った。

 そして更に数日が経過した頃、美香穂の住む街にも政府筋の遣いが来て流行り風邪の予防接種と言う形で将校の屋敷を一軒ずつ訪ね歩き注射をして行った。


「美香穂さんですよね♪ 私はこう言う者ですが本土から連絡は来ていますよね♪」
 男は応接室にいる美香穂に笑顔で挨拶するとカバンから注射器を取り出し、美香穂に腕をまくらせた。

「また流行り風邪の予防ですか~?」
 遣いは笑みして椅子に腰掛けたままの美香穂の腕を丁寧に掴むとそのまま注射した。

 そして三十分後、美香穂が目を覚ますとソコには男の姿はなくフラつきながら起き上がった美香穂は、かけられた毛布を弱々しく捲くり取って起き上がった。

 だが美香穂には何ら変化は訪れなかった。

 それは最初からの順番の狂いが美香穂を他の慰安夫(おんな)達とは違う体質へと導いた結果であった。

 美香穂は応接室を出ると自室に戻って冷たい水で顔を洗うと、鏡の中に映る自分を見つめ意識がホンの少し遠のくのを感じながらリビングにその身を移動させた。

 だがその頃、敵国の前線に居た兵士達の殆どもまた同じように流行り風邪の予防と証する注射を戦場医師や看護師達から注射され慰安夫(おんな)達の記憶を抹消されていた。

 そして時、同じくして田所中将の悲報が屋敷に電報で伝えられ、屋敷の住人達は呆然とその内容に立ち尽くしたが、それは後に解かる誤報であった。

 戦地で死体の見つからない田所中将を現地では戦死と決め込み軍部経由で知らされたモノだった。

 そして同じ頃、政府筋では慰安夫(おんな)達と軍部全体の記憶の書き換えが思ったように順調に終わった報告を受けていた。

 それから数日後、攻勢に攻勢を重ねた日本陸軍は共産国を追い詰め戦争は程なく終戦を迎え、日本国は何事も無かったかのように敵国との和平に向けた交渉に入った。

 だが屋敷では戦争に勝利した喜びの笑顔は何処にもなく、遺体の無い形見だけの入った棺を前に涙する者ばかりだった。

 そして同時に敵国の統括地にあった各将校屋敷では次々に本国への帰国手続きと引き上げがまもなく開始されたが、田所屋敷だけは形見の入った棺をそのままに軍部からの遺体発見の連絡を待ち続けていた。

 だが終戦の後、数ヶ月を経過しても田所屋敷だけは取り壊しを特に軍部から免れていたが、主を失った田所屋敷からは一人、また一人と家政婦は本国への帰国手続きに入っていて、同時に疫病を持ち込まぬようにと政府からの達しに予防注射が使われた。
 
 そして田所屋敷を出て本国への帰国の途に就いた辺り、飛行機の中で元家政婦達の記憶の中から慰安夫(みかほ)の記憶が徐々に消滅して行った。



【二十話】

 

 
 

 田所屋敷に残ったのは美香穂と長瀬と宮坂、そして家政婦数人だけであったが、葬儀を保留してきた田所屋敷の宮坂宛てに本国の軍部から田所の国葬を行う趣旨の通達が届いていた。

「早めに屋敷に置いて仮葬儀を執り行うべし」
 一行だけの命令書に住人達は落胆し、仮葬儀のための準備を進めていたところへ、突然、前線の軍部から吉報が届けられた。

「田所中将閣下。 御生還に付き早々に葬儀の中止を命令するものなり…」
 敵の砲撃により爆破されし田所は敵国の現地住民に助けられ記憶を若干喪失するも徐々に回復傾向にあるとの知らせに、のこされた田所屋敷の家政婦達は地獄に仏とばかりに沸きに沸いた。

 屋敷では早々に仮葬式の棺を片付け宴の支度に大きく沸いた。

 そして何より美香穂は、初めての田所(おとこ)の帰還に涙を零し付き人の長瀬、宮坂もまた田所無事の知らせと帰ってくると言うことを粛々と受け止めた。

 田所無事の知らせに飛びはねて喜ぶ美香穂を横目に、身体(じょう)を重ねあってきた長瀬は複雑な思いでその様子を見ていたが、その日の夜、美香穂は田所が屋敷に向かっている報告に安堵して久しぶりに熟睡し、暗闇の中で誰かに何かを注射されたことにすら気付かなかった。

 そして迎えた翌朝、ベッドから滑り出すようにネグリジェを引き摺った美香穂は再び自らの身体に異変を発見した。


「何だろう……」
 ベッドから擦り抜けた両脚の違和感に視線を向ける美香穂はそれを見て仰天した。

「な! 何これ!」
 床に降ろした両脚に薄っすらと生えたスネ毛を見た瞬間、美香穂は気を失いかけるほど驚きそりののベッドに上半身を投げ出した。

 そして更に自らの両腕をみた美香穂はその腕に生えた体毛に慌ててベッドから這い出て洗面所へネグリジェを舞い上がらせた。

「キャァッ!」
 以前同様に生えたアゴヒゲを鏡の中に見つけた美香穂は顔色を変え、ネグリジェをその場で脱ぎ捨てると、全身を映し出すべく等身大の鏡の前に立った。

「あわわわわわわ……」
 美香穂は全身に生え広がっている男のような体毛に全身を大きく震わせ立っていられずその場に崩れた。

「ガシャンッ!!」
 美香穂が崩れた弾みで倒れた等身大の鏡に大きなヒビが入り美香穂を醜い姿に映し出した。

「こ! こんな姿を誰かに見られたら!」
 美香穂は腰を抜かしたように四つん這いで自室のバスルームへ行くと慌てて石鹸と剃刀でアゴのヒゲを剃りはじめた。

 アゴのヒゲと両手足の体毛を剃った美香穂は浴室の鏡に身体を映した。

「一先ずはこれで凌げる… でもこんなことしてたら何れ……」
 前側、背中と全身を映しだした美香穂は取敢えずはツルツルになった自分に安堵し風呂場を後にした。

 だがアゴを触ると解かるジョリジョリ感を化粧で誤魔化すしかないと思った美香穂は直ぐに化粧をした。

 そして普段着にしていたショートパンツをやめ、滅多に着ることのないブラウスで袖口をガードし黒い厚めのパンストで下半身を覆い、タイトスカートを上から履いた。

「これなら何とか誤魔化せる…」
 鏡に自分を何度も映す美香穂は髪型を服装に合わせてセットすると自室を出て一階の食堂へ向かおうとドアを開き、ソコに起っていた長瀬の存在に胸中を「ドクッ!!」と、させた。

「今朝はお化粧が濃いわね… 旦那様が戻るのは明後日よ。 今からそんなにしなくてもいいと思うけど…」
 長瀬は怪しむような視線で美香穂を見つめると、美香穂は顔を強張らせて顔を横に向けた。

「偶にはこんな服装もいいかなって♪ そ、そう思ったのよ…」
 美香穂は長瀬に異変を悟られまいと笑顔で答えその場を擦り抜けようとした。

 だがその瞬間、長瀬に左手首を突然掴まれた美香穂は全身を硬直させた。

「ちょっと、いいかしら…」
 長瀬は美香穂の左手首を掴んだまま強引に美香穂の部屋の中へと美香穂を引きずり込んだ。

 美香穂は長瀬の行動に胸中をドキッとさせ、中に入った長瀬に背を向けたまま黙り込んだ。

「ねえ、旦那様が戻られたら私達の仲も終わりなの? 私はまだ貴女を飽きてないし今まで通りの関係を継続していきたいの… 旦那様が戻れば私達は全員、数日のうちに本国へ戻らなければならないのは知ってるわよね? でも… 私はこのまま貴女とここに残りたいの… この国は日本に戦争で負けた敗戦国… 私達はその気になれば残留資格をも得られるわ♪ 勿論、期限付きだろうけど… 貴女も本国へ戻りたい?」
 背中越しに美香穂に語り始めた長瀬の物言いは意味深だった。

「私は… 私達慰安婦は慰安券が貯まるか戦争終結と同時に本国へ戻れる契約でここに来てる… 戦争が終わったのなら本国へは戻りたいって思ってる… それに仮に戻ったとしても私は旦那様にお仕えすることは無いわ… 旦那祖真には御家族も居られることでしょうし…」
 背中越しの美香穂は話しながら長瀬の方へ振り返ると、寂しそうな言葉を詰まらせた。

「解かった… そうよね… 現実の話し。 本国じゃあ慰安婦なんて必要ないものね♪ でもそれでも本国への帰還はするんでしょ?」
 両手を前側に言葉を少し弾ませた長瀬。

「ええ… 私はそうする… 日本に戻って特別やりたいこととかないけどね♪」
 椅子を引き寄せ座りながら放す美香穂。

「ところで、旦那様が戻られたら多分… 多分、何度かは抱かれるんでしょうね♪」
 同じく椅子を引き寄せ座って足組した長瀬。

「そうね… それが私の仕事だもの… 本国へ戻るまではそれが私の仕事…」
 長瀬に視線を合わせる美香穂。

「そうね… 旦那様が貴女を求めれば応じるのが貴女の役目ですものね… でも役目が終わったら貴女はもう自由なはず…」
 腕組する長瀬。

「ねえ。何が言いたいの? ハッキリ言って頂戴!」
 長瀬に前屈みになる美香穂。

「私は貴女が欲しいのよ! 手放したくない! 私とここに残留して欲しいの! せめて残留期限内だけでも!」
 椅子を美香穂の傍に移動させる長瀬の表情が変わった。

「………」
 無言で俯く美香穂。

 田所の留守の間、情に情を重ね愛し合った長瀬だけに、美香穂と離れることをなんとか阻止したかつたが、美香穂は自身の役目終了と同時に日本への帰国を強く望んでいた。

 そして美香穂は長瀬の口から信じられないことを聞かされ激しく動揺しその身を震撼させたが、俄かには信じられないと言う表情を露にした。

 その頃、一階の食堂では中々降りてこない美香穂と長瀬を待ち続ける家政婦と宮坂は田所帰宅の話しで盛り上がっていたが、日本への帰国と同時に皆が離れ離れになる話しに楽しげな声は次第に消えうせた。

 街からは連日のように日本人の姿が消え、数え切れないほどあった商店、飲み屋はその入り口を閉め、政府が立てた慰安所の建物は解体され次々に更地に戻されていた。


【二十一話】

 


 華やかだった街は歯抜けになったように更地が目立ち、手入れされていたであろう店先の鉢植えは雑草に覆われ人通りの少ない中心部の路の中央を砂煙が塞いだ。

 走っている車はと言えば殆どが本土への帰省のための引越し用のトラックばかりで、エンジンを切ったタクシーは道端に止まったままピクリとも動かなかった。

 そしてそんな中、日傘をさして街を一望できる四階建て廃業ホテルの屋上に美香穂と長瀬の二人が居た。

「これが証拠よ… 貴女もこれが欲しいはずだわ… もうすぐ旦那様も帰って来るしこれが無いと貴女は窮地に立たされる…」
 手すりを前に長瀬は美香穂に注射器を見せ美香穂の目に視線を重ねた。

 長瀬が見せたのは以前、美香穂が政府の遣いから貰った薬剤の入った注射器だった。

「私ね! 実際(ほんとう)は貴女が屋敷に来る一ヶ月くらい前なのよ屋敷に来たのは… 私達は最後まで残るであろう将校達の慰安夫(おんな)達を監視するのが役目… だから貴女が元は男性(おとこ)だって言うことも知ってるわ! ここまで話せば私がその全てを知り尽くしていることは解かると思うけど…」
 注射器をバックに仕舞いつつ呆然と立ち尽くす美香穂をチラっと見る長瀬。

「じゃあ、私達が知り合ったのも、友達になったのも全部作戦通りって訳ね…」
 注射器の入ったバックをチラッと見てから長瀬に視線を合わせた美香穂。

「違うわ! 貴女と秘密の関係を持ったのは私が本気で貴女を好きになったから… ただ、終戦と同時に貴方達の存在を消滅させるために居たことは認めるわ… 政府にとって最早、貴方達は無用の長物でしかない…」
 日傘を片手に遠くを見る長瀬。

「他の! 他の慰安夫(ひとたち)はどうしたの!? 貴女の言うように男に戻された上に記憶まですり返られたの!?」
 言葉を強める美香穂。

「他の屋敷の慰安夫(おんな)達は貴女の言うように、性別と記憶を変えられた者もいるけど、前線で死んだ人も少なくないわ…」
 日傘を持ったままその場に斜屈みこんだ長瀬。

「じゃあ、私達は最初から女として本国には帰れない運命だったってことなの!? 全員、元に戻されて戻るか兵士として死ぬ運命だったてことなの!!」
 長瀬に怒りを露にして見下ろす美香穂。

「そうよ… 日本政府は他国に勘ぐられるようなことは避けたかったんでしょ… それに慰安夫(おんな)の問題で追求されたくなかったんだと思うわ…」
 立ち上がって日傘をたたむ長瀬。

「酷い… 酷すぎる…… あんまりだわ…」
 ガックリと肩を落として手すりにもたれる美香穂。

「日本はね。 既に三十年以上前からワクチンによる性転換手術を成功させていたの… でも未来の戦争のために男性(おとこ)が減少することを食い止めたかったから表立って性転換を支援しなかった…… 結果、今回の戦争でそれが立証された…… そしてその全ての証拠を隠滅した…… 貴女以外はね……」
 手すりから離れてベンチに座る長瀬。

「それじゃあ! 私達は使い捨てじゃないの!! 使い捨ての性ロボットじゃないの!! 酷すぎる!!」
 ベンチに声を大にして近づく美香穂。

「でも。 少なくとも記憶を保持している貴女は女性(おんな)として喜びを知ったわ~ 違う? 夢が叶ったのは事実でしょ? しかも誰もが羨む美女として… 貴女に政府を憎む権利はないわ! むしろ感謝しなきゃね… そこに陰謀があったとしても貴女はあなたなりの夢を実現させた… それとも形だけ変わる諸外国の旧式の性転換で良かったのかしら!?」
 美香穂に声を大きくした長瀬。

「………」
 黙りこんで立ち尽くす美香穂。

「キャッ!」
 無言で立ち尽くす美香穂を自らの方へ引き寄せ座らせた長瀬に咄嗟に小さな悲鳴を上げた美香穂。

 長瀬は美香穂を自分の右側に座らせると有無を言わせず口付けをし、抵抗する美香穂の両腕は数秒後、ダラリと力が抜けた。

「このまま男に戻るか、美しい女として私の傍にいるか選びなさい…」
 口付けされて勢いを失い俯く美香穂に囁いた長瀬。

「………」
 困惑する美香穂。

「今、注射すすれば数週間は持つわ… 但し数週間以内に旦那様も他の人達からも貴女の記憶を消され世の中に存在したこと自体が消滅するわ… それなら美しいまま私のそばに居れば数週間おきにワクチンを注射してあげるわ! 勿論、私も政府にとっては裏切り者になっちゃうけどね……」
 美香穂の肩を自らに抱き寄せスカートの中に左手を忍ばせた長瀬。

「あんっ! や、やめてこんなところで!」
 フレアスカートの中に忍ばせた手で美香穂の左太ももに触手し指を滑らせる長瀬を拒む美香穂。

「貴女はもう私の言うことをきくしかないのよ! それにワクチンを打ち続ければ貴女は二度と男性(おとこ)に戻れない身体になるわ♪ ここで私を拒んで怒らせるより利口になった方が貴女のためよ♪」
 美香穂の両脚を開かせ恥ずかしい部分にパンスト越しパンティーの上から指を滑らせる長瀬は不適な笑みを浮かべた。

「いやあぁ~ん!! やめて! こんなとこで!!」
 両脚を閉じる美香穂は恥ずべき部分を長瀬の指に擦られた。

「観念なさい~♪ このまま毛むくじゃらの大男に戻るつもりなの!? 貴女は本来、処女喪失で完璧に女性(おんな)になるはずだった… でも処女喪失までの時間が掛かり過ぎた所為でワクチン無しでは女性(おんな)で居られない身体になったのよ♪ 日本からここに来る前に注射を打たれたはず… あれから貴女は時間を食いすぎた結果が今の貴女なのよ♪ これからは私のペットとして生きるのよ♪」
 ベンチに座る美香穂の正面に斜屈んだ長瀬は美香穂の下半身を包む黒い厚物パンストをビリビリと両手で破りスカートの中に顔を押し付けて中の匂いを嗅いだ。

 美香穂はパンストを破られ剥ぎ取られることに逃げようとモガイタが長瀬の一言に唖然とした。

「あらぁ~ スネ毛だわ~♪ こんなに伸びたスネ毛を旦那様に見せるつもり~♪ あっひゃひゃひゃひゃひや♪」
 呆然とした美香穂の両脚をベンチに持ち上げた長瀬は両脚を広げさせ、美香穂からパンティーまでも剥ぎ取り、恥ずかしい割れ目を左右に広げると口を押し付けて汚れた内部を舐め始めた。

「あひいぃー! やめ! やめてえぇー!! 嫌あああぁーー!!」
 美香穂は激しい快感(しげき)に全身をビク付かせ肌伝いに聞こえる半濁音に全身の筋肉を硬直させた。

「美味しい~♪ 蒸れ加減も丁度いいわあ~♪」
 長瀬の舌先は美香穂の恥ずかしい部分の内肉に激しく滑り、美香穂は内側からオビタダシイ量の透明な液体を溢れさせた。


 大きく広げられた美香穂の両脚。 長く伸びたスネ毛が風になびいていた。


「これでいいわ…」 
 三十分後、長瀬の条件に首を縦に降った美香穂は注射を受け、長く伸びたスネ毛は見る見る間に抜け落ちて風に舞いそして何処かへと消え陰部を拭いて丸められたティシューもまた屋上から消えた。

 美香穂は長瀬のペットになることを条件に注射を受け再び美貌を元に戻し、長瀬から手渡されたライトブラウンのパンストをその場で履いた。

「貴女はもう私からは逃げられないわ♪ 可愛い子猫ちゃん♪」
 美香穂を前にパンストとパンティーを膝まで降ろしティシューで自らを拭いた長瀬は、そのままパンティーに別のティシューを敷いて下半身を整えた。

 戦争終結と田所の帰還で揺れに揺れた美香穂は、本土に帰れない状態を悔やみつつ政府に騙された憎しみと長瀬の性奴隷になった自分に苛立っていた。

 



【二十二話】




 澄んだ空の下、田所は部下の車で屋敷へと送り届けられたものの、迎えに出た屋敷の住人達は皆、田所の異変に顔色を変えた。

「閣下は記憶の一部を無くされているようですが、医師の話では本国へ戻って療養すれば回復も期待出来るとのこと… すまんがその辺のところ気配りを頼んだぞ」
 田所を屋敷に送り届けた部下は厳しい表情で住人達に説明を果たしそして帰って行った。

「旦那様! お帰りなさいませ♪」
 玄関先で宮坂は自分のことを覚えているか不安げに田所に近づいた。

「おお♪ 宮坂かあ~♪ 心配をかけたなあ~♪ 戻ったぞ♪」
 田所は宮坂の両手を握り締め満面の笑みを浮かべ周囲を見回し、見慣れないと言わんばかりに美香穂を見て首を傾げた。

「旦那様、お帰りなさいませ♪」
 家政婦達は次々に田所に挨拶し頭を下げると、田所もまた見覚えがあるとばかりに家政婦達に頷いて笑みを浮かべた。

 そして首を傾げられた美香穂と長瀬が近づくと、田所は長瀬を見て微かに覚えがある表情を見せたが、一緒に並んでいた美香穂に再び首を傾げた。

「はて… 何処の娘さんだったかな… 何処かで会ったことがあったかな~ ああ、気を悪くせんでくれ。 何れ思い出すと思うから…」
 首を傾げつつ腕組した田所は美香穂を見て必死に思い出そうとしていた。

「美香穂です… 御記憶にありませんでしょうか…」
 自分を忘れている田所に涙目になって頭を下げた美香穂は、そのまま一歩後退して口元を手で覆った。

「申し訳ない… 事故にあってのぉ… まあ、何かの拍子に思い出すだろう♪」
 田所は迎えた住人の間を割って玄関へと向かったが、宮坂や家政婦達は美香穂をチラッと見て玄関扉を開いて田所に続いた。

「仕方ないさ… 私も貴女も屋敷に来て間もないからね… でもこれでアンタも旦那様に抱かれることもないだろうさ…」
 長瀬は目を潤ませる美香穂の肩を抱いて玄関へ近づくと美香穂を中に入れ扉を閉めた。

 宮坂のことも家政婦達をも覚えているものの、自分を忘れている田所に美香穂は一粒の涙を頬に伝えた。

「泣くなよ… 美香穂…」
 無人になった長い廊下の端っこ。 玄関の中で美香穂を抱きしめる長瀬の表情は厳しかったが、廊下の奥から田所の笑い声が聞こえると長瀬は美香穂の耳を両手で塞いだ。

 そしてこの夜、田所の無事帰還を祝して宴が開かれたが田所を中心に右に宮坂、左に美香穂そしてその隣に長瀬の席順に田所は違和感を隠せなかった。

 田所は自分の右側にドレス姿で座る美しい美香穂を見て「何処の誰だったろうか…」と、何度もチラ見してはグラスを傾けた。

「旦那様のご活躍はラジオで毎日のように聞き及んでおりました♪ 皆も大喜びで聞き入って降りました♪」
 宮坂の田所を称える楽しげな喋りに田所は御機嫌とばかりに大きく頷いては満面の笑みを浮かべたが、右側に座る美香穂は息苦しさに耐えていた。

『ところで、こちらのお嬢さんは一体……』
 そんな表情を宮坂に見せた田所に宮坂は困惑しつつ、田所に小声で話しかけた。

「旦那様専属の慰安婦の美香穂様でございます♪」
 小声で田所に伝えた宮坂に田所は首を傾げ口を開いた。

「おいおい♪ 宮坂も冗談の一つも言えるようになったのかあ~♪ あっはははは♪ ワシは浮気なぞせんことはお前が一番知っておるだろう♪」
 声を大にして左の宮坂の肩をポンと叩いた田所に宮坂は笑顔で困惑し再び田所に調子を合わせた。

「お隣の竹中少将閣下の御嬢様でございますよ♪ お屋敷には以前から遊びに参っておりましたので♪」
 宮坂は咄嗟に田所に嘘を話すと、田所は大きく頷いて美香穂を見つめて笑みを放った。

「おお! 竹中の娘かあ~♪ わっははははは♪ そうかそうか♪」
 田所は宮坂の言葉を疑うことはなかった。

 この夜の宴では美香穂は隣家の娘という設定で時間を共に過ごし、田所が自室のベッドに入る頃、コッソリと自室に身を移動させた。

 そして夜中の十一時、足音を忍ばせて美香穂の部屋の寝室を訪れたのは長瀬だった。


「今夜は許して! ねぇ、お願い! 許してぇ!」
 美香穂が横たわるベッドにスルリと侵入した長瀬は、気付いた美香穂の両腕をベッドに押し付け哀願する美香穂に濃厚な口付けを果たし黙らせた。

「こんな夜だからこそ燃えるのよ! 私の言うとおりジッとしてなさい!」
 美香穂のネグリジェのボタンを外し左右に広げた長瀬は、目の前にある二つの豊満な乳房に掴みかかり甘みの強い乳首に吸い付いて舌を転がした。

「うああんっ! あん! うああああんっ!」
 首を左右に振って悶える美香穂は直ぐに乳首を勃起させ自らの乳房にコリコリ感を覚えた。

「チュポッ! チュパチュパチュゥチュゥ!」
 長瀬の舌が勃起した美香穂の乳首に巻き付いて擦れると美香穂の両足の爪先は内側へと引っ張られた。

 そしていつしか長瀬に許しを請う美香穂からは受け入れる喘ぎ声と身悶えが連発した。

 女同士の切な過ぎる愛欲は互いの陰部を舐めあい、密着させ擦り合わせるまで続けられ二人は終わりのないエクスタシーを幾度も求め合った。

 そしてそれから数日後、家政婦達は屋敷を離れ空港の特設施設で免疫注射と称する記憶削除の注射を受け、何も知らぬまま帰国の途につき、葉国と同時に殆どの家政婦達の脳裏から美香穂の記憶は消えていた。

 屋敷には執事の宮坂と長瀬そして美香穂だけが残ったものの、田所は相変わらず美香穂を思い出せぬまま宮坂共々帰国の準備に追われた。

「美香穂様、明日で私も旦那様とこの屋敷を離れます… 聞けば、長瀬と暫く御滞在を延長するとか… 屋敷は数ヶ月以内に取り壊されますが、それまではお使い頂いて結構です、 今までご苦労様でした…」
 宮坂は丁寧な口調で別れの挨拶を美香穂に伝えると屋敷内に忘れ物はないか歩いて回った。

 街は廃墟と化し順次、端っこから取り壊され更地になっていて、殆どの将校屋敷も取り壊されて行き、田所と宮坂は翌日の朝早くに屋敷を出て行った。

 広く大きな屋敷にポツンと残された美香穂と長瀬は静まり返って物音一つしないフロアーの真ん中に居て、周りを見回した。

「とうとう私達だけになっちゃったわね…」
 両腕を後ろに組んでグルリとフロアーを見回す長瀬は、俄かに二人だけになったことを喜んでいるように美香穂には見えた。

 敵国と和平を結んだ日本人は兵士も民間人も流れる川の濁流のように日本へと飛行機でそして船でごったがえした。

 そんな中で、長瀬と美香穂の二人は屋敷の最上階の天井裏の窓から、解体される街の様子を無言で眺めていた。

「あと数回も注射すれば貴女は完全な女性(おんな)になれるわ… それまでは私と一緒にいて頂戴…」
 長瀬は窓辺に立って伸ばした右腕で美香穂呑む肩を抱き、美香穂は長瀬の右肩にもたれた。

「もう… 私のことは誰も思い出すことはないのね…」
 長瀬の肩にもたれる美香穂はポツリと呟いた。

「そうね… 戦争には慰安婦は欠かせない存在だけどその事実は公表はされることはないわ… 貴女も女性(ほんもの)になっても口にしないほうがいいわ。 政府に命を狙われかねないからね…」
 美香穂を抱き寄せる長瀬は窓越しに遠くを見つめた。

 美香穂はこの街にいた全ての人達から、自分の存在が消えたことに寂しさを覚えていた。

 そして二人は広く大きな屋敷の中で数週間近く暮らし美香穂は最後の注射を長瀬に打たれた。




【二十三話】



 美香穂と長瀬の住む街はその九割が解体され残り一割の将校屋敷へと大型機械群は迫っていて、屋敷の中に居ても地響きのように機械の音が床を鳴らしていた。

 屋敷に居られるのも残り僅かと言う時、長瀬は美香穂と二人で空港までの切符を駅に買いにでかけたが、駅には人の姿も疎らで殆どが現地の人間か工事と警察関係者だけだった。

 そして数台しかないタクシー乗り場で屋敷へと向かったものの、消え行く街並みを見て二人は黙り込んでこの街で暮らした日々を振り返っていた。

「何か街が消えて行くのが辛いわね…」
 両手に荷物を抱えてタクシーを降りた長瀬は、同じく荷物を両手に抱えた美香穂にポツリと呟いた。

「そう… ね……」
 荷物を置いて屋敷の玄関を開いた美香穂は小声で返事を返すとそのまま中へと入った。

 二人は何も話さずに荷物を食堂奥の厨房の冷蔵庫へと運ぶと二人並んで品物を中にテキパキと並べて入れた。

 そして再び外へ出ると、もう使われることのない屋外プールに近づいて水抜きのハンドルを回し水位の落ちる水面をジッと見ていた。

 プールの水はドンドン水位を下げ残り半分と言う所で長瀬は突然、美香穂を芝生の上に抱き倒し口付けして抱きつくと、真上から美香穂の目に視線を重ねた。

「ここにいるのも残り一週間… 日本に帰国したら貴方の戸籍変更の手続きは私がちゃんと果たしてあげるから安心して… 但し、慰安夫のことは一切、一生涯口にしないこと。 喋ったら命がなくなると思ったほうがいいわ…」
 真剣な眼差しの長瀬は無言で頷く美香穂に再び唇を重ねると両手を美香穂に合わせた。

 
 夜の六時、静まり返った大きな屋敷の中の広い食堂で夕食を済ませた二人は、ワインを口に運びグラス越しに互いを見詰め合った。


「愛してるわ… 美香穂…」
 静かに囁く長瀬にコクリと頷く美香穂は視線を反らさなかった。

 そして七時を過ぎる頃、二人は二階のベランダに居て、灯火の極端に少なくなった街方向を見て竹製の手すりに寄りかかった。

「楽しかったわあ~♪ 貴女と二人だけの日々… 一生忘れないわ…」
 ブラウスのボタンを四つ外した長瀬は胸元を風に晒し涼んだ。

「私も忘れない…」
 テーブルの上に置いてあったワイングラスを片手に椅子に腰掛けた美香穂はワインを一口喉に流し込んだ。

 二人だけの宴は夜の十時ごろまで続きその後、美香穂の部屋で長瀬に身を任せつつ美香穂は女同士の喜びに幾度もエクスタシーを果たした。

 一晩たった美香穂の部屋は女臭さが充満しベットシーツは女が故の大量の液体に塗れ、翌朝シーツは丸められて床に捨てられていた。

 二人は全裸のまま抱き合って眠っていたが、先に目を覚ました美香穂は長瀬をそのままにバスルームへと向かったが、バスルームからの使用音で目を覚ました長瀬は隣室の自分の部屋のバスルームへと全裸のまま移動した。

 そしてバスルームに着替えを持って入った長瀬は浴室内の鏡の中に映る自分を見て、大きな溜息をつきつつ「とうとう着たか…」と、その異変に驚く様子は無かった。

 三十分後、バスルームから出た美香穂は、長瀬の姿が見えないことに自室へ戻ったのだと窓を開けて女臭さを部屋から追い出し、そして二人分の使用済みの下着類を洗濯籠にシーツと一緒に放り込んだ。

 美香穂はノースリーブシャツにショーパン生脚で洗濯籠を持って一階へ移動すると入ったことの無い洗濯場へと足を踏み入れた。 そして数台ある洗濯機に籠の中身を放り込むと洗濯機のボタンを押して辺りを見て回った。

 普段は長瀬がやってくれていた洗濯だったが、入ったことの無い洗濯場故に美香穂は探検家のように両腕を後ろに組んでみて回った。 ピカピカに磨き上げられた残り五台の洗濯機は帰り際の家政婦達がやって行ったのだと思った。

 美香穂は窓の外を眺めて「あそこで長瀬(かのじょ)と知り合ったんだ♪」と、思わず扉を開いて芝生の上に足を移動させた。 そして物干しロープにヒラヒラと舞う大人数分の黒いストッキングを思い出した。

「あら! こんなところに居たの!? 全く! 洗濯は私がするって言ってるのに♪」
 突然かけられた声にビクッとした美香穂は振り向いてパンツスタイルの長瀬に抱きついた。

「ここで出会ったんだよね♪ なんか変~♪」
 嬉しそうに笑みして抱きつく美香穂に長瀬もまた抱きしめた。

「まあ、確かにここでは偶然出会ったのは事実だね… さあ、朝ごはんにしましょ♪」
 自分から離れた美香穂の手を握った長瀬は洗濯場へ戻りそのまま屋敷内へ通じる廊下を歩いた。

 そして食堂へ辿りついた二人は紅茶とパンとハムエッグで腹を満たした。

「ねえ、私達さあ今夜から別々の部屋で休みましょう♪ ここにいるのも残り数日。 独りで過ごすのも悪くはないわ♪」
 突然の長瀬の言葉に美香穂は唖然とした。

「え!? あ!? うん… 悪くはないけど… でも……」
 美香穂は歯切れの悪い返事をしつつ、小さな溜息をして黙って頷いた。

「お互い、荷物の整理やら荷造りもあるでしょう♪ それに思い出に独り浸るのも悪くはないわ♪」
 長瀬は、はつらつさを美香穂に見せると美香穂きニッコリと笑みを浮かべた。

「まぁ、荷物って言っても必要なモノだけね♪ 後は放置しとけば業者が来て片付けてくれるし、下着とか見られるのが嫌なら外の焼却炉で燃やしてもいいしね♪」
 長瀬は椅子に座ったまま焼却炉の方を指差してニッコリ笑った。

「うん♪ そうね♪ うん♪」
 長瀬の笑みに誘われるように美香穂もまた笑みして不安を消化した。

 
 この日の日中は二人別々に行動し、段ボール箱に詰め込んだ不要な衣類を焼却炉の前へと軽トラックで運び焼却にいそしんだ。

 中でも衣類の多い美香穂は帰国時の荷物を減らすために未使用の下着類と使用済みを分け、使用済みを焼却炉で燃やし未使用をそのままに残したが、その量は半端ではなかった。

「ああああーん。 駄目だああー! こんなに未使用があったなんて… こんなことなら全部使えば良かった……」
 残った衣類を前に今度は実用性のモノとそうでないモノを選別し始めた。

 思い余った美香穂は長瀬に相談しようと隣室を訪ねた。

「そうねえ~ じゃあ取敢えず私の家の住所にして送りましょうか♪ ここにある未使用のドレスとかアクセサリーとか日本(むこう)でお金に換えられるし♪ そのお金で貴女も新居を構えればいいわ。 その代わり慰安券のことは忘れて全部焼却して。 いいわね!」
 腕組して山のような未使用衣類を前に助言した長瀬は慰安券のことになった瞬間、表情を一変させ硬くした。

 美香穂は長瀬が出た後、ダンボール箱に丁寧に帰国までに使わない衣類を少しずつ詰めては、衣類の間に貴金属を並べて部屋の隅っこに積み上げた。

「よし! これでいいわ♪」
 荷造り前の整理を終えた美香穂は窓辺に立って、ここにきた日のことを考えていた。

 その頃、隣室では美香穂同様に衣類の整理をしていた長瀬は美香穂との衣類の量の違いに愕然としていた。

「なにこれ… 私。 何もないじゃない!? あはっ♪ 当たり前か♪ あはははは♪」
 使用済み下着を焼却炉で燃やした長瀬は余りにも少ない自分の衣類に圧倒されたが、クローゼットの中に最後に着ていく衣類だけを残した。

 そしてこの夜、夕食を終えた二人は朝方の話し通り、個々に自分達の部屋へと足を移動させた。

 いつもなら十時過ぎまで一緒にいて一緒のベッドに入っていたはずの美香穂は、静まり返った部屋の中でポツンと全てが終わったのだと再びここへきた当時のことを想いだし、隣室にいる長瀬もまた美香穂同様にここに来た当事のことを想い出していた。




【二十四話】



 翌朝の七時過ぎ、美香穂はいつものように起きて窓を開いて空気を入れ替えると半袖シヤツとショーパンでその身を包んだ。

 そしていつものように部屋を出て一階へ降り立ったが静まり返った屋敷の内部、ひと気を感じられずに再び二階の長瀬の部屋へ向かった。

「コンコン。 貴美ちゃん!? 貴美ちゃん!? 起きてるの?」
 いつもならとっくに起きているはずの長瀬なのにと、ノックして名前を呼んだが返事なく、ノブを回して入ろうとしたが内側から鍵がかけられていた。

「鍵なんてかけたことないのに…」
 美香穂は不安げに再び長瀬の部屋のドアをノックして名前を数回呼んだ。

 するとドアの向こうからガタッと言う音がして、スゥーっとドアの下からメモが出て来た。

『風邪引いたみたいで声が出ないから少し横になってるから心配しないで』
 メモに書かれた内容に、美香穂は驚いたものの具合が悪いと言う長瀬にドアを開けろとは言えず、その場を立ち去った。

 そしてこの日は昼食も夕食も出てこず、一度も長瀬の顔を見ることなく一日が終わろうとしていたが、音沙汰のない長瀬を案じた美香穂は我慢出きずに夜の七時過ぎに再び長瀬の部屋を訪ねた。

 すると再びドアの下からメモが出て来た。

『もう一晩安静にしてれば治ると思うから』
 メモは急ぎ書きしたような筆跡だったが美香穂は困惑した。

「解かったー♪ じゃあ何かあったら声出せなくても室内電話で呼び出し音だけでも鳴らしてね♪ すぐに来るから♪」
 ドア越しに長瀬に聞こえる口調を放った美香穂はワインを手に隣室である自室へと入った。

 美香穂にとって屋敷の中で誰とも会うことのないはじめての一日だったが、何かあったらと電話の横にタクシー会社と病院の電話番号をメモしてワインを手に窓辺へと移動した。

 だが、窓辺から微かに見える長瀬の部屋の灯りは消えていて中の様子はまるで見えなかった。 そしてこの夜の十一時過ぎ、静まり返った部屋の壁伝いに背筋の凍りつくようなうめき声に美香穂は目を覚ました。

 そして暗闇の中、耳を澄ますとカーテン越しに入る月明かりに照らされた長瀬の部屋のある壁に視線を移した。 

「ゥゥゥウウ… ゥゥゥウウウ…」
 微かに聞こえるうめき声は壁に伝わって静まり返った美香穂の部屋の空気を震えさせた。

「大変! 貴美ちゃんが苦しんでいる!!」
 バサッと布団をはぐった美香穂はベッドから飛び出して、長瀬の部屋側の壁に耳を当てて澄ました。

「ゥググググ… ゥゥゥウウウ… ゥグゥグッウグッ!」
 美香穂は咄嗟に壁から耳を離して部屋を飛び出すと長瀬の部屋のドアノブを回し中に入ろうとしたが鍵が掛かっていて入れず、再び自室にもどると壁越しに声を張り上げた。

「ドンドンドンドンドン! 貴美ちゃん! 貴美ちゃん大丈夫!! 貴美ちゃん!」
 美香穂は夢中で長瀬側の壁を叩いて大声で叫んだ。

 すると、うめき声の途切れ途切れに「大… 丈… 夫だから…」と、言う長瀬の苦しそうな声が壁越しに聞こえたが、長瀬の部屋へ入れない美香穂にはどうすることも出来なかった。

 そして数分後、長瀬のウメキ声は静まり、美香穂は壁から離れてベッドに戻ると普段は使うことのない、長瀬の部屋のスペアキーがあることを思い出した。

「大変なことになってなきゃいいけど…」
 美香穂は勝手に鍵を使って長瀬の部屋へ入って良いものかどうか迷いに迷った末、付き人であった長瀬の部屋のスペアキーを握り締めていた。

「軽い風邪ならいいけどアレは軽いなんてモンじゃない… でも… もし眠っていたら起こすことにもなる…」
 美香穂は握り締めたスペアキーを一旦元に戻してベッドの上に座り込んで耳を澄ました。

「もし今度またウメキ声が聞こえたら……」
 美香穂はスペアキーを見てから長瀬側の壁を見つめた。

 だが十数分間、物音しなくなったことで美香穂は安堵の表情を浮かべて胸を撫で下ろした。 そしてベッドに入ろうとした瞬間、突然、絶叫が長瀬の部屋から聞こえた。

「ギヤエエエエエエーー!! グエエェェーーー!! ゲエエエエエエー!!」
 長瀬の部屋から聞こえた尋常ではない絶叫にベッドから跳ね起きた美香穂は我慢も限界と、スペアキーを手に自室を出てドア越しに長瀬に声を発した。

「貴美ちゃん!! スペアキー使って中に入るから!! いいわね!!」
 ドア越しに大声を上げた美香穂はキーを穴に差し込んで鍵を外そうとした。

 その瞬間! 中から怒声のような乾いた長瀬の声がした。

「開けないでえええーーー!! 入って来ないでえええーーー!!」
 美香穂は長瀬の怒声に躊躇しつつも息を止めてキーを外しドアをゆっくりと開いた瞬間、再び長瀬の怒声が部屋中を駆け巡った。

「来ちゃだめえええーー!! 入るなあああーー!! ゲホゲホゲホ!!」
 激しい絶叫に美香穂は入ろうとした足を止め片足立ちして様子を見守ったが、ベッドの上でノタウチ回る長瀬に得体の知れない恐怖さえも感じた。

 そして月明かりで照らされた長瀬の七転八倒する苦しみの黒い影を目の当たりに美香穂はその身をすくませつつ、一歩そしてまた一歩と長瀬に近づいた。

 そして徐々にベッドの上で苦しむ長瀬を見た瞬間、その苦しみ方が尋常でないことに美香穂は驚きそして涙を頬に伝えある種の恐怖に耐えた。

「グエェェー!! 来るなああー!! 近づくなああー!! ウギヤアアアァー!! ウオオオオオオオオーー!!」
 長瀬は七転八倒しつつ怒声と悲鳴をあげ美香穂ほ制止し布団を被って大きくベッドの上で弾んだ。

「ど… ど… どうしちゃったのおおおーー!!」
 美香穂は声を震わせ目の前で暴れる長瀬に再び近づこうとした瞬間、長瀬は「グオオオオオーーー!!」と、大きなウメキ声を発してそのまま失神してしまった。

 そしてピクリとも動かなくなった長瀬を前に美香穂は慌ててキッチンへそして冷蔵庫から冷えた麦茶をもって部屋に明かりを灯した。

 布団を被って四つん這いのままピクリともしない長瀬のベッドの横のテーブルに麦茶を置いた美香穂は、恐る恐る長瀬を包む布団をゆっくりと剥がした。


 そして蹲る長瀬を見た瞬間、美香穂は瞬きも呼吸すらも忘れて呆然とその姿に立ち尽くした。


「そんな……………」

 
 美香穂は色白の長身の男を目の前に呆然としつつ、気絶しそうになる自分を必死に押さえそしてフラつくように後ろへ下がった。

 長瀬貴美子は自分と同様に性転換した男だったことに美香穂は数分間、それ以上立ち尽くした。


「俺は… お前を監視するために… 慰安夫達を監視するために男から女へと性別を替えて潜入していたんだ… 帰国するまで持つだろうと思ってたが持たなかったようだ…」
 無言で立ち尽くす美香穂の目の前で顔を開けた長瀬は鼻筋の通った美形男子だった。

 長瀬は左手を伸ばして美香穂が置いた麦茶のボトルをゴクゴクと音を立てて飲み干すと、顔色を変えて立ち尽くす美香穂を見て疲れきった表情でニッコリと笑みして白い歯を見せた。

「悪いけどクローゼットの中に男物の下着があるから取り出してくれないか… 一汗流して眠りたいんだ♪」
 クローゼットを指差した長瀬は筋肉質な腕を美香穂に見せそしてベッドの上に正座して局部を布団で覆った。

 激しいショックに呆然としていた美香穂は頷くことをせず無言のままクローゼットの前に行き、扉を開いて中にあるトランクスを一枚取り出すと、その奥にハンガーで吊るされた背広とスラックスを目の当たりにした。

「悪かったよ… 騙してて。 帰国までは持つはずだったんだが、俺の分は全部、お前に使っちまったからなあ… 本当は日本(むこう)で男に戻るはずだったんだが…」
 長瀬は美香穂に渡されたタオルを腰に巻くと床に両足をついてその鍛えられた肉体美をマザマザと見せ付けた。

「俺の仕事はお前達慰安夫を監視することと守ること… それが政府からの命令だった…」
 長瀬はベッドの下から拳銃を取り出し美香穂に見せてからテーブルの上に置いた。

「悪いが腹も減ってるんだ… 厨房から何か持ってきてくれ、俺はちょっと汗を流してくるから…」
 長瀬は美香穂の目を見て伝えるとそのままフラフラとバスルームへと入って行った。

 美香穂は声が出ないほど喉をカラカラに乾かせたまま部屋を出て一階へと出て行き、バスルームで長瀬は久々の男姿でシャワーを浴び美香穂に心の中で詫びていた。

 本来は見せるはずのない姿を見られた長瀬だったが、記憶に新しい美香穂との女同士の愛欲を想い出しつつ二人の仲が壊れるのだろうと思っていた。

 その頃、一階の厨房の冷蔵庫の前に跪いた美香穂は、心から愛した長瀬に裏切られた想いに大粒の涙をポタポタと零し咽び泣いた。

 そして長瀬のための食事をボンに乗せた後、美香穂は力無げ長瀬の部屋へとおぼつかない足取りで戻ったが、美香穂は長瀬がバスルームから出るのを待たずに自室へと戻って行った。

 そして長瀬がトランクスを履いてバスルームから出ようとした瞬間、突然聞き覚えのある乾いたパーンと言う音が屋敷中を駆け巡った。

 長瀬は「もしや!」と、血相を変えバスルームを出るとベッド横のテーブルに置いたはずの拳銃がなくなっていることに気付き、美香穂の部屋へ急いだ。

 
「美香穂ーーーーーーーーーー!!!」


 美香穂の部屋に飛び込んだ長瀬はリビングの中央で頭を拳銃で撃ちぬいた美香穂の遺体を前に呆然とその場に崩れ落ち、美香穂からの最後のメッセージを拾い上げた。

 長瀬は拾い上げた急ぎ書きされたメッセージを見て男泣きに男泣きを重ね、長瀬が零した涙と美香穂から溢れた血液が一つに結ばれた瞬間、長瀬は声が枯れるほど美香穂の名前を屋敷中にとどろかせた。

 そして長瀬は翌日、本国の政府筋に「作戦成功、速やかに我、この地を去る」と、連絡を取ったものの長瀬はその後、消息を絶ち何処かの美しい湖畔に日本人らしい男の死体が打ち上げられたと地元のテレビでニュースが流れた。

 政府から美香穂の命を絶つように指示されていた長瀬は、秘密裏に美香穂を日本に連れ帰えるはずだったが、くしくも政府筋の思うところになってしまったことを悔いて美香穂に詫びるべくそして再び愛を告白するために自ら命を絶ったようだ。

 そして解体予定の田所屋敷の二階からネグリジェと女性下着を身に纏った男の遺体が発見され地元の人間達を仰天させた。



【完結】

 
 

【性転換ⅩⅢ】

【性転換ⅩⅢ】

  • 小説
  • 中編
  • ファンタジー
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 成人向け
更新日
登録日
2014-06-02

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