世界設定妄想記 04 少年の旅立ち
「面を上げい、苦しゅうない。」
2度目の国王の言葉に少年は応えた。まっすぐに王の目を見つめる。国王は続けた、
「その方があの400年前に予言された伝説の者というわけだな?はて、至って普通の少年のようだが。お前、どう思う。」
隣に座していた女王に尋ねると、「そうですわね・・。」と漏らし一息して女王は応えた。
「枢機院からの報告では幾度かの不可思議な現象が、彼の周りに起きているとのこと。もし、それが本当ならば試されてはいかがでしょう?」
「試す?・・何をだ?」
「決まっているではありませんか、本当の勇者か否かをですわ。」
女王は続けて言う
「いい方法がありますわ。普通ならば生きて帰って来れないような所に出向き、もし生きてかえって来れたならば、それは予言にある通りの使命があるから死ななかったという事。もし・・・、」
女王はそういうと少年の顔を見つめて、
「もし途中で命を落とすことがあればそれは予言の者ではないという事になります。」
国王は少し面食らった様子で渋い顔をしながらうなずいた。そして長い沈黙の後に少年の方に向き直りこう告げた
「少年、はるばる遠方から来たお主には少し酷ではあるがお主に命を授ける。」
「これより北西にある山岳地帯に炎の洞窟と言われる場所がある、その洞窟内には火の神殿があり火の精霊達が代々守護しておる。じゃが最近、その彼らの様子がどうもおかしいのじゃ。いつもは安全に火が使えるように火の事の警戒をしてくれるのじゃが、このところ城下では火事や放火が目立ってきておる。おそらく火の精霊達に何かが起こったのじゃ。少年よ、お主が使者となりこの事態を打開してまいれ。」
少年は頭を垂れて言った
「御意にございます。」
その後少年は前金を家来から受け取り城下町の小さな宿に案内された。長旅の後にすぐさま出向かせることを気遣っての王からの温情である。
だが明日にはもうこの町を発たねばならない。手早く旅の支度を整え宿に戻ると倒れるようにベッドに臥した。
少年の頭には様々な考えが去来し自分に課せられた使命の重さに悶々としながら一夜を過ごしたのだった。
翌日、朝早くに支度を済ませた少年は足早に城下町を立ち去り山岳地帯に抜ける草原を目指した。母から貰った家族の肖像が書かれているペンダントトップを握りしめて旅の祈りを捧げる。朝日の眩しさを堪えながら、遥かに聳える山岳地帯へと続く道をひたすら駆けていくのだった。
世界設定妄想記 04 少年の旅立ち