妖し狐伝 第一話 日常
【登場人物】
藤森朱里(ふじもり・あかり)・・・主人公。16歳の誕生日を迎える高校1年生。母と二人暮らし。
父は小さい頃に亡くなったと聞かされて育った。負けず嫌いのがんばり屋。母想い。
藤森ほのか(ふじもり・ほのか)・・・朱里の母。しっかりもの。焔の素性を知った上で愛し合い、朱里を授かる。
矢神風汰(やかみ・ふうた)・・・朱里の幼馴染。矢神神社の息子。やんちゃな性格。朱里を好き。
焔(ほむら)・・・・・・狐一族の長である。妻子ある身でありながら、ほのかを愛している。
篝(かがり)・・・・・焔の息子。両親ともに狐の純血であるが、冷たい夫婦仲の間で、次期長となるべく育てられる。
野心が強く、冷静沈着。
疾(はやて)・・・・鴉一族の次期長。手柄を立てたいという野心がある。
環(たまき)5台詞・・・蛇一族の娘。妾の子。
【シーン1】日常
ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ・・・(目覚まし音)
ほのか 「朱里っ!! いつまで寝てるつもりっ?? いい加減起きなさいっ!」
朱里 「ん・・・ あと5分・・・」
眠そうな朱里。かまわず部屋のカーテンを開け、布団をはがすほのか。
ほのか 「だぁめ!! 早くしないと朝ごはん食べてる暇ないわよ?」
朱里 「えー・・・ん?うわっ まじでヤバぃじゃん!!」
びっくりして飛び起きる朱里。
ほのか 「だからさっきから言ってるでしょ!・・・んっとにいつまでも手のかかる」
朱里 「母さん!お説教はいいから!パン焼いといて! 走りながら食べるから」
階段を下りていくほのかに、慌てて着替えながら言う朱里。
ほのか 「はいはい 仰せのままに」
朱里 「うわー・・・もう時間なぁぃ」
ほのか 「その様子じゃww忘れてるわね(笑) アンタ今日誕生日よ」
慌てている朱里に、誕生日だと告げるほのか。
朱里 「あああああ・・・そうだった!!じゃあ今日は早く帰ってくんね。いってきまーす!」
ほのか 「あっ 朱里っ! 気をつけるのよーー・・・ ホントに・・・気をつけてね・・・朱里・・・」
学校へ向かって走っていく朱里を、心配そうにじっと見送るほのか。
登校中。走る朱里をみつけた自転車に乗る風汰。スピードを緩め並走する。
風汰 「おっす!朱里! ちんたら歩いてんなよ。遅刻すんぞ」
朱里 「なっ 風汰!!ちょっとー そう言うなら乗せて行きなさいよー」
風汰 「ったくしょうがねぇなぁ・・・今日だけ特別だぞ?」
自転車を止める風汰。風汰の自転車後部に乗る朱里。
朱里 「なんで今日だけなのよっ。同じ方向なんだから乗せてくれたってバチあたんないでしょ」
風汰 「今日だけ特別。お前 誕生日だからな。光栄だろ?オレ様に乗せてもらえて」
いつもは忘れっぽい風汰が誕生日を覚えてくれていたことがうれしい朱里。
朱里 「お! 覚えてたねぇー。忘れっぽいアンタのことだから期待してなかったのに」
自転車を左右に揺らす風汰。しがみつく朱里。
風汰 「なんだとてめー!降りやがれっ」
朱里 「ちょっ、何すんのよ!さっさと漕げ!!遅刻するじゃん バカ風汰」
風汰 「っくしょー・・・ちゃんとつかまってろよー・・・おぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ!!」
全速力で自転車を漕ぐ風汰。たきつける朱里。
つづく・・・ 第二話 罠、そして覚醒
妖し狐伝 第一話 日常