初夏の姉弟

Twitterで友人からもらったお題「初夏」で書いたものです。

夏が来ると思い出す。高校時代に好きだったあの子のこと。

「卒アル床に置きっぱなしにしないでって何度言わせるの」
少し汗ばむ季節になり、風呂上がりのアイスを冷凍庫から取り出したところで久しぶりに帰ってきた姉ちゃんに叱られた。
「それは気になって見ちゃうから、ってこと?」
居間に座り込み、人のアルバムを見ている姉に先のお叱りの意味を茶化すとバカじゃん?と言われた。なんだそれひでえ。
「和道が躓いたら危ないからってことよ」
和道というのは、姉の息子、俺にとっては甥である。今姉ちゃんの旦那さんと風呂に入ってる。俺が風呂から出たら和道が脱衣場でスタンバイしてたんだ。びっくりしたぜ?
「いきなり来るからだろー?母さん父さんは夜遅いんだし、俺だって普段仕事あるんだからな。今日は休みだったからいいけどよー、って聞いてる!?」
27歳になっても、一児の母になっても姉は変わらず姉のままだった。人の説教をろくに聞いてくれない。お義兄さんも大変だな……。今頃風呂場で息子と遊んでいるのであろう義兄に同情する。
「ねえねえ、あの子とは卒業以来会っていたりするわけ?」
「ああ?なんでだよ」
風呂に入る前、つまり姉ちゃんたちが来る直前まで見ていたことだったので、思わずいつもより冷たい対応になってしまったかもしれない。
「なに、まだ未練あるの?いい加減にしなよ」
"何年経ったと思ってるの"そう言いたげな顔に、氷と炭酸ジュースを注いだ冷たいコップを当てながら"ばーか"と返す。
「未練なんてもうないよ。あるわけないだろ」
自分の分の炭酸ジュースを一気に飲み干す。喉がぱちぱちして涙が出てくる。
「でもさぁ、さっき、見てたんでしょ?」
先程のコップを器用に受け取っていた姉は、ちびちび炭酸を飲みながら、俺の返事を待っている。
「それはほら、夏が始まったからさ」
俺は妙に清々しい気分でそう返した。
夏はあの子と出会い、告白し、断られた、大事な季節である。だからこそ、夏になったらあの子のことを思い出す。高校生の甘くて苦いあの恋のことを。

初夏の姉弟

夏は暑いけど、初夏の少し涼しい風が心地よくて好きです。
お粗末様でした。
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初夏の姉弟

お題「初夏」で書いたフラれた男の子が昔を懐かしんでます。

  • 小説
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  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-28

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