びっくりまぁく

ただの確認事項

もうこの風景にもなれた。

私以外の頭上にびっくりマークのような何かが浮いてる風景。

そのびっくりマークに、実態はなく、触れることはできない。
色や形や大きさは人それぞれで、びっくりマークにもその人の個性的なものがあるのだろう。

しかし私の頭上にはない、びっくりマーク。
突然見えるようになったことより
自分のそれだけが見えないことの方が不思議でたまらなかった。



かれこれ見えるようになって
一週間が経とうとしていた。

相変わらず自分のは見えない。

「人は群れる生き物だ」と、どこかで習った。
「人は一人では生きていけない」と、よく耳に入ってくる。
だから不安なのだろうか
私は私のアレだけが見えないことに。

私だけ外れているような

私だけひとりぼっちのような

私だけ…何も持ってないような…


不可思議なもののはずなのに
「私だけない」というのは
とても不愉快だった。

いっそ…と思うこともあった。

少しだけ
死にたくなった…りもした。

もちろん死ぬことはしない。
不可能ではないが
非現実的な現実逃避だとわかっているから。


実態がないとわかっていながら
何回頭の上を探しただろう。
見えないだけだと信じて

それは結果として
無を証明する行為だというのに…

アレがないことは
少し前までは普通だったのに
何故みんなが持っているとわかったとたん
私だけ持ってないとわかったとたん
寂しくて、つらくなるのは、何故だろう。

いや、不安といったほうが
正しいだろう。


私はヒトと同じが大嫌いだ。

だから…
特別な人間になりたかった。
誰からも愛されるぐらいの才能を
誰でも愛す清き心を
まるで作り話のヒロインのような
特別な人間になりたかった。

わかってた。
ずっと前からわかってた。
私は特別なんかじゃなくて
普通の、
どこにでもいる
普通の人間なんだって。



お気に入りの抱き枕に顔を埋め
私は目を閉じた…



「えー××ちゃんのそれ、超かわいい!」

「○○ちゃんこそー今日服とびっくりマークの色とお揃いじゃん!センス超いいよー」


他のヒトも見えているのか?

ははは…


そっかぁ…
へんなものが見えるだけだったけど
特別だと…特別になったんだと思ったんだけどな…

所詮私は…


「でも××ちゃんのびっくりマークの色の方がかっこよくていいなぁー」

「なぁにいってんの!○○ちゃんのびっくりマークの色、○○ちゃんらしくて似合ってるよー」



らしい…か

私のびっくりマークは存在しない。
私の「らしさ」がわからない。

「私らしさ」って…なに?



「わかってた。
頭のどっかで
みんな特別で
みんな特別だからこそ
特別なんかないって。

作り話みたいに
ビームがだせたり
心が読めるヒトは存在しない。

だから

この世界では
特別とかじゃなくて
アイデンティティとか、個性とか、そんな言葉にかわる。んだ。」

びっくりまぁく

20展という、グループ展に出品した小説が出てきたので投稿しました。

ただ特別になりたかった私の本音です。

びっくりまぁく

ただ不思議小説を書きたかっただけ。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-12-15

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