野良猫ドムの冒険 1(大人の 毎日連載中
シャム猫のリリーは、泥まみれになってドムの後を追っていった。感動の再会。
ドムの住まいは駐車場の車の下。野良猫5匹のたまり場だ。かず叔母さんはマリアさま?
僕は野良猫ドムです。
色は黒くて脚だけが白い。胴長で短足だ。まるで、白い靴下をはいているようです。
眼はゴールドと黄色のあいのこかな?
人間でいうと、20才位。青春真っ盛りというとこ。
僕の、生活圏は今のところ、田園都市線のつくし野駅辺りがテルトリーかな。
閑静な住宅地で、人影もまばら。
普段は近くの公園で仲間と過ごしています。悩みの一番はなんと言っても、食べ物の確保です。
それも、僕達、野良猫の溜まり場のそばに住んでいる、かずお婆さんの援助を受けているのですが、食べ物のには苦労しています。
ここは、繁華街と違って歩き回れば、なんとかなると言う場所ではないし、繁華街にでたとしても、この、生ゴミ管理の行きとどいた今日では、その保証もないのが現実です。
みっともないけれど、何とか、人間に泣きついたり、近くの川で小魚の日干しなどをゲットしたりして、暮らしています。
話は変わりますが、
僕には、天から授かった特技があります。
それは、何かと言えば、 僕は野良猫だけと、人間の話し声はきこえるのです。
他の動物たちも、たぶん、僕と同じで人間の話は聴こえると思いますけど。
そんな馬鹿な、嘘八百はやめとけ。と、言うかと思います。
では、なぜ声か聴こえるかというと、僕と暮らしている、頑固ポーじいさんの説によると、地球創造者の神様が、人間の横暴から、僕たち、動物を護るために、特別に聴こえるようにしてくれたらしいというのです。
人間の横暴を事前に察知できれば危険を少しでも避けること出来ますからね。
ポーじいさんは暇に任せて、何処からか飛んできたか、拾ってきたのか、古新聞を読むのが好きなようです。
新聞の拾い読みで、出会った記事によると、
今から約4000年位前人間が、野生の猫をイエ猫に家畜化してから、僕達の悲劇が始まった。
僕の棲む日本では、最近の統計だと、毎年4~50000の野良猫が、保健所の毒ガス室で命を落とすのだ。飼い猫の生存率は15年、僕達野良猫のは、5~6年、らしい。
ポーじいさんは、この記事ばかりではなく前から、人間の横暴に腹を立てていたのです。
人間の虐待行為の情報を知れば、僕達野良猫の犠牲者が少なくなるので、人間に少しでも抵抗出来るようにと、
人間の声が聴こえるようにしたのだと言う。
さらにポーじいさんの説は一歩踏み込んで、
人間も僕たち他の動物も、地球上に姿を現したときは、丸裸で、言葉は必要がなかったと言うのです。
平等で。それぞれのテルトリーで家族に囲まれ平和だったのだと。
運のない、巡り合わせのない動物は、他の動物を生かすために、犠牲になることもあったが、それも自然の定めと素直に受け入れていた。少なくても、必要以上に危害を与えたりすることはなかったが、人間が言葉を発明してから、そのパランスが崩れたと言うのです。
地球を創造したのは、誰れだか解りませんが、仮に神様だとすると、その創造者の神が言うには、
動物達ちに、言葉を使うようにすると、進歩もあるが、弊害もある。おのおのの動物達の生存をかけて、言葉の誤解を招いたり、暴言をはいたり、挙げ句の果てには争い事の源になる。
エスカレートすると、戦争になり、生き物のの、暮らしを破壊してしまう、だから、言葉を与えなかったとポーじいさんは僕にいうのです。
言葉を人間が、発明してから、生態系は悲惨な歴史を歩き出したと言うのです。
人間は、神の掟を破って言葉を発明し、人間同志で言葉をかわすようになり、他の動物たちと、差別ばかりか、支配を強固にするようになった。また、言葉があるお陰で、豊かになり、文化も日進月歩した。と言うが、 神の言う文化は、人間だけよくなればいという文化ではなく、地球上の生き物のは、全て生きる権利が始めからあるののだから、互恵の繋がりが基本にある文化でなくてはならないと、説教じみたことを言うのです。さらに、
そこで、神は、言葉は不要という掟を破った人間には、言葉は使いようによっては、悪の言葉、善の言葉になる。悪の言葉が幅を効かしている今日に善の言葉を導入して、人間社会を撹乱させ、反省を促し、他の動物には人間の声を聴こえるようにして、人間の危害から救おうとしているのだという、その神の考えは今現在、進行形だと言う。
ポーじいさんは、インテリ野良猫で、人間社会のことをよくしっている。
僕は時々話を聴いていて理解できなくて、疲れることがもあります。
だってさ、ポーじいさんの話を聞き入れると、神が造った弱肉強食の生態系はどうなるのと、言いたくる。
動物はお互いに平和に生きていく権利があるという説に矛盾しているからです。
僕が矛盾していると質問すると、ポーじいさんは
気流の関係でそうなるのだ。
気流?何故、まったく関係ないでしょう。
ドムよお前はいい質問をする。この問題は動物が直面する、最大のテーマだ。
わしにも、難題だか、つまり?うーん?なんだ?
この問題は宇宙の始まり、ビッグバーンまで戻らなくてはならない。
つまり、地球の環境は、宇宙と一体になっている。電磁波、宇宙線、いや、数億光年、あるいは、数十億光年さきの、星の消滅、誕生の影響を受けながら地球も生きているのだ。
この宇宙とのバランスシートが上手くいっているから、われわらもこうして、生きていられる。
つまり、あーんうーん?
つまり、運がいいということになる。運イコール巡り合わせだ。
それと、弱肉強食と、どう、関係あるのですか、
つまりだな、猫がネズミを取る時代があっただろう。今では、ネズミが猫を追っかけても、おかしくない時代だ。
宇宙の変化によって、地球も替わっていくのだから、今は、肉食系草食系と別れていて、殺しあいをしているが、これも、宇宙の変化で、様子がかわる。
それまでは、運のいい動物は生き残り、悪いのは淘汰されるのだ。人間も他の動物もまだ、発展途上中で、聖なる宇宙のエネルギーが届いていないのだ。
気流は宇宙の変化で起きる、運もつまり、気流の一つなのだ。
宇宙創造者の神は、人間に都合のいい言葉なと、与えていない。だから、動物を虐待する行為、計画的などを事前に動物に分かるよう、人間の声が聴こえるようにしたのだ。
物事の真理には諸説諸々。ポーじいさんの説もその一つだなと思っています。
確かに気流の気は見えないけど、存在してますよね。運気、つまり、巡り合わせも見えないけど、存在してますよね。運がいいとか悪いとかね。
気のつく言葉のほとんどは、見えない。
勇気、浮気、やる気、嫌気、気配り。気の毒、
探せばきりがない。みんな、気の流れ、つまり、見えないパワーに支配されている。
僕は、人間も動物も、気の流れの中で、生かされているのだなと、感じるようになりました。
ややこしい話はこのぐらいにしておいて僕達の日頃の生活ぶりを紹介します。
僕達野良猫のすんでいる駐車場は今は、比較的平和です。
永遠に平和であって欲しいのですが、ある日を境に、平和を破る事件が起こり、やむなく、野良猫皆で、あてのない旅にでる事になったのです。
それは、まさに、人間に、心の変革を求める旅の始めだったとは野良猫達は知らない。
僕の住んでいる場所は、田園都市線つくしの駅から、街路樹のある坂道を下って、信号のある交差点をわたって、すぐにある10戸ばかりの小さな賃貸マンションの小さな駐車場てす。
そこに、傷の付いた置きっぱなしの古いワゴン車があって、その車の下が本拠地です。
このワゴン車は、2階の山下さんの車なのですが、この半年間動いた様子はありません。
何かの事情で置きっぱなしです。
もう、一年以上駐車場がら、出たことがありません。駐車場の周りには樹木と植え込みで、囲まれ、落ちつくところです。
車の下は、夏は涼しいし、冬は、寒さも多少しのげます。
僕達野良猫は、もちろんいつも駐車場にいるけではありません。公園や、住宅の路地とか、商店の軒先とか、あちこちと、ぶらり散歩です。
この駐車場は、まぁ、仲間の野良猫と暮らす、いこいの広場というとこかな。
それと、家並びの 路地裏も最高の猫道だ。薄暗くて、犬もあまり通らない、人気はないし、野良猫のたまり場てす。
一番、幸せに感じるのは、駐車場に接しているマンションの1階に住む、かず叔母さんが僕らのために毎日、食事を出してくれる事です。
口は悪いけど、餌をくれるので、我慢してます。
僕の仲間を紹介しますね。
駐車場の野良猫は、ポーじいさん、リサ、チャチャ、ヨサ 、ドムの五匹で暮らしています。
それと、近所の人から、猫おばさんとよぱれているかずお婆さんも仲間かな。
先ずは、仲間から尊敬され、長老として中心的な存在で、村でたとえるならば、村長さんにあたるのが叔父さんのポーじいさんです。
ポーじいさんは、黒毛で目が少しくぼんで、年老いて痩せています。
その上、ひょろっとして背が高い。普段は飄々としていますが、ここい一番と言うときは、頼りになる猫です?
たまに、駐車場と、隣の高級一戸建住宅の境に立っている太い柿の木の、枝の分かれのくぼみに座り、古新聞をよんでます。
そんな、新聞を読む猫なんて聴いたことないと疑うでしょうが、摩可不思議と言うのか、読んでいるのです。
時には、どこからか飛んできた新聞の上に座り込んで離れないこともあります。もしかすると読んでいるように見えるのかも知れません。新聞のインクの匂いが好きなのですかね?
ポーじいさんの口癖は
人間は、地球を、我が物にしている。動物愛護運動をする人もいるが、ほとんどの人は、保健所で、猫や犬が青酸ガスで命を奪われてにいるのを、見てみぬふりをしている。
だから、我々も保健所に捕まらないように、情報を得なければいけないのだ。
どこの保健所でどれだけ、処分されたとかね。
平和に過ごすには、努力しなければならない。動物への虐待を無くすには、人間とほかの動物の格差を無くす運動を展開していくことだ。わかっているけれど、簡単なことではない。人間は動物を虐待している認識でさえないからだ。だから、この認識を変えるにはわれら、動物が人間を一度は折の中に押し込んで食事も与えず、苦しみを体験してもらう事だ。争いは望まないが、並みの手段ではなにも変わらない。地球を創造した神は弱肉強食という、生命維持装置を残してくれたが、薄情なことをしてくれたものだ。この生命維持装置も破壊しなければ、まことの平和は訪れることは永遠にない。こ動物解放運動を成功させるには、5000年の時間が必要だが、その一歩がいまなのだ。なぜ途方もない年月が、がかかるかといえば、地球創造の神と、人間と、他の動物との会談を通じて、解決する宇宙規模の課題があるからだ。その間に誤解と、偏見、欲望が交差していくから、何度も戦争が繰り返されるはずだ。まかり間違えば、水爆投下で、神も死ぬことになる。だから、そうならないように今から考え行動することだ。
ここにいる、野良猫達は幸せのほうだ。
チキン料理にされる 鶏など、。産まれて間もなく、明かりをつけっぱなしの飼育工場で育てられ、餌はあくまでも、肥らすのが目的で、年がら年中、餌の中で生かされているのだ。外の太陽さえしらない。べルトコンベアー暮らしだ。生きている暇などありゃしない。
ポーじいさんは、愚痴だか、正義感だか、わかりませんが、動物の虐待に心を痛めているのです。
口数が少なく、動作も鈍いけれど、柿の木の下で、ゆったりと新聞を読んでいる姿には、なんとなく威厳が漂っています。
次は、僕の兄貴分で、チャチャと言います。
茶色の毛をした野良猫で、ズングリています。餌が少ないこの頃なのに、不思議と太めです。
片方の目の視力が落ちて、物を見詰めるときは首を投げ出すようにしています。
太っ腹で、喧嘩も強く、近所の野良犬が来ても、平然として、餌を食べていたり、犬が餌を横取りしようと、すると、尻尾を逆さに立てて威嚇します。牝の野良猫には、特殊の猫以外関心を持たれている様子は聞いたことありません。
見た目は闘牛を彷彿させるような体形です。
チャチャは、右足が、車に跳ねられて、骨が曲がっているけれど、ギクシャクしながら飛び回っています。
かずお婆さんは、僕達に餌を与えるとき、チャチャには、辛くあたります。
(チャチャ、あんたは、最後に食べなさい。
さぁ、あっちに行け。
リサとドム。早く食べないとチャチャに食べられるよ。)
と、怒るのですか、チャチャはもう、大人だから、と、独立を促しているのだと思います。
僕たちの食糧は駐車場の前に建つ賃貸マンションの302号室に住むカズ叔母さんが、日課のように餌を世話してくれています。しかし、家計の関係で毎回餌不足状態です。
チャチャは僕たちの餌が足らないと、いつの間にか僕たちからスッーと消えて、どこからか、食べ物をもってくる。それが、腐りかけた、ハンバーグ、魚、お握り等です。近所のスーパーからだと思うけど。管理が厳しくて最近はほとんど、成果がない。
チャチャはカラスの友だちがいる。名前は黒三郎とよんでいる。
朝の餌場の情報源みたいです。
黒三郎が、電線にとまりながら、俺の後を着いてこいと、言わんばかりに、餌場を知らせてくれるらしい。
チャチャうは。見返りに。餌場を荒らす犬猫を追い払うという。
餌を探しにいくときは、朝方か、深夜です。
美味しくはないけど、その好意に贅沢はいえません。
でも、どこも、かしこも生ゴミは厳重に管理せれているので、滅多にありつけない。朝早く生ゴミの集積場でカラスと競いながらが餌とりをするのが確実だと、チャチャは言う。
チャチャは、ときどき食べ物を口にくわえながら、ヨタヨタ歩いてもってくる。ポーじいさんや僕とリサの分です。
ポーじいさんの情報によると、ここの裏山にタヌキが出没すると言うのでチャチャは裏山に行ったけど、猫が食べるものはみつからなかった。
僕も時々夜遅く狸の家族連れをマンションの茂みで見たことがある。かず叔母さんが、パンを投げあげていたのを見たことがある。
タヌキさんも、家族連れで、民家まで降りてくるようになってしまっている。
チャチャの話によると、高速道路のインターは比較的餌があるらしいです。インターのお客様が、テラスで食事しているときが、chanceと言う。
お客様のそばで、黙って座っているだけで、唐揚げ、お肉、パン、焼きそばなどを投げてくれるそうです。
餌をくれる人、くれない人は、顔に書いてあると、チャチャはよく言います。
姿、形で判断してはダメだ。例えば、黒ずくめの身なりで、厳めしい顔をつきのお兄さんでも、近づいてみると、自分と似たような野良猫だと、琴線に触れて、さぁ、食べろと言わんばかりに、
いか焼き、たこ焼。ウインナー、焼きそばなど、買ってくれる。
こうなると、辺りの野良達も、好機到来と、馳せ参じる。
以外と冷たいのが、綺麗なべべ着て、サングラスをかけ、脚を組んでいる女性だと言う。
一見、お金持ちのように見える、上品な人だ。
野良が近寄って行っても、素知らぬ顔だ。
子供連れのお母さんでも、子供に優しく、笑みを浮かべて接している、夫婦は、比較的、食べ物をくれると言う。
僕、それわかる気がする。子供に優しい心を育んでもらいたいから、野良達に餌をあげることで、実戦しているのだと思う。逆に、子供に、たいしたもを与えないで、自分達だけ、美味しい物を食べている人は、野良にも冷たいから、絶望的に餌には、ありつけないという。
あとは、外のごみ箱が有力らしい。
テイクアウトの食べ物の残りを、すてるる前に野良達にくれから。
その他色々ゲットする方法は、あるけれど、犬がすくないのもインターの魅力だとチャチャはいう。
でも、この駐車場から遠いからね。チャチャは、インターに行くときは、泊まりがけてす。
僕も誘われたことあるけれど、尻込みしています。なぜって?百戦錬磨の、チャチャと違って気が小さいのか、今一、気後れしてしまうのです。
チャチャもこの頃は遠出をしない。
なんたって今では、頼りになるのは301号のカズ叔母さんだけです。
引っ越しや、なんだかんだで、猫がインターに捨てられているそうだ。
人間すべてとは言わないけれど、身勝手な人もいるのものだ。僕達より、寂しい心を持っている。
たぶん、引っ越しなどで、飼い猫が、手に負えなくなり、捨てたのだと思います。
冗談ではないよ。猫を飼うなら、死ぬまで一緒にいるのが、原則でしょう。
それができないなら、飼うのをやめることです。
なんちゃって?
猫は、環境に適応するパワーがあるから、何となく生きていけると、ポーじいさんの口癖だ。
チャチャがこの駐車場に来るようになったのは、糖尿の気があり、目が悪くなり、公園でうろうろしていたところをポーじいさんと出逢い、この駐車場にきたといいます。
ポーじいさんによると、公園のベンチの下から這い出して、立ち上がるとき、後の足がよたよたして、しばらくすると、また、座りこんだので、チャチャの年齢的なことから、ポーじいさんは糖尿てはないかと感じたらしい。メタボの疑いもあって。
そんなことから、チャチャをこの駐車場に連れて来て看病したのです。
今は糖尿病も、ポーじいさんの指導で回復してきているようです。餌の加減が効いたようです。ボーじいさんが、血糖値を下げる草を自分の経験から選び、いやがるチャチャに無理やり食べさせたのが効果があったようです。
ドクダミの乾いた葉っぱとか、木の根、皮、とか、猫の嫌いなものばかりで、チャチャも断りたいのだが、そうもいかないので、薬草をポーじいさんに内緒で捨てていたみたい。
それても、片方の目は曇ってよく見えないと言います。白内障かも。
チャチャは、人間でいうなら、働き盛り、糖尿病には早すぎる。でも、かず叔母さんの餌だけでは足りないし、仲間の食糧事情を考えると、外で餌を得るしかない。
次は妹のリサです。僕とリサは、お母さんをほとんど知りません。僕達は、やっと、少し話せるようになったころ、もう、母はいませんでした。
名前はドキと言っていた。
ポーじいさんの話によると、白毛の顔立ちのいい猫だったという。
もちろん、ボーじいさんも母の行く末を心配してくれいます。
母は、ある日突然、姿を消したと言う。
母が、この駐車場に残れば自分も餌が必用となるために、その分、子供達にと思って、去っていったと、ボーじいさんは思っています。
ポーじいさんは僕達に、お前達の母は何処かで幸せになっている。まだ、若い猫だから、ひょっとしたら再婚しているかも、と言う。
僕達は、母に一目逢いたいと思う気持ちはあるけれど、あったところで、暮らしが楽になる分けでもないから、幸せに暮らしていてくれれば、それでいいと思っています。
女々しいことに耽っていたら、生きていけないもの。宿命は、静かに受け入れて過ごすことにしています。
母は白毛の美しい猫だったが、ここから離れる時は、白い毛も、艶がなくなり、汚れて、痩せ干そっていたと言います。
僕たち二匹を育てるのに、食べるものも食べずに育ててくれたとポーじいさんは言ってました。
口べらしで、やむ無く出ていく羽目になったと聞いています。
母は、何度も子ども産んで、その子ども達は、独り立ちできる頃になると、この、駐車場から、旅立っていったと言う。
その子供達も一緒にいると、餌が少ないし、痩せ細くなるから、旅にでたのだとポーじいさんはいう。
いずれは、僕達も、その運命になるのかも知れない。
それと、野良猫が、この駐車場に増えすぎると、人間の目が厳しくなり、ポーじいさんと、仲間達が、追い出される羽目になりかねないので、猫減らしも、仲間達の哀しい掟で、あると言う。
ポーじいさんから、聴いた話だけど、長野に姨捨山という山があり、貧しさのため、口べらしで年老いた人間は、自ら、家族を護るために、姨捨山に行くことを願い出ると言う。
僕にとっては哀しい話で心をうたれるのです。だから、ちょっと、そんなことを想像してみました。
この駐車場の仲間達も、似たような運命が待っているかも知れないもの。
(僕の母親が、口べらしのために長野県の姨捨山
に行くことになった。
雪の深々とふる夜半、野良値のドムは、老いた母を背負って、口ぺらしのために険しい山道を歩いていた。
なんで、こうなるのだ。
貧しくても小さない暖炉を囲み、じっと堪えて過ごしてきた家族と離れなければならないのだ。
出るのはため息ばかりであった。
神も仏もいない。あるのは、親子を裂こうとする地獄の冷酷な仕打ちだけだ。
ドムと母は、薄明かりの山道を黙り混んで、淡々と歩いていく。
背負子に、痩せ細った母が哀しそうな声で言った。
ドムよ、もういい、ここらで、下ろしておくれ、その岩影の側でいい。
山の頂きに近い、切りたった巖がそこにあった。
た
ドムは、母を優しく下ろした。哀しすぎて涙もでないドム。
おっ母、すまねぇ、おらが身代わりになりたいが、村の掟だ。村八分になったら、家族は夜逃げだ。逃げ出しても、行くところは地獄だけだ。
もうよい。ドム、そんな心配、男らしくない。分かつている。その哀しみを残された家族にむけてくれ。とくに身体の弱い妹のリリーを頼んだぞ。
おまえが、哀しい顔をすると、死んでも死にきれない。
しばらくの沈黙が、寒気を遮っていた。
ドムは、雪の降り積もる薄暗い岩影に凛とすわり、静に手を合わせ、合掌する母を見届けると、
哀しみを堪えきれず、一目散に岩場を後にした。)
こんな寂しいことにならないだけ、この駐車場は暖かい温もりのあるところだと、僕は思っている。
カズ叔母さんは毎日僕たちにキャットフードや、魚、肉、カリカリ、などの食べ物をくれます。
冬の寒い時期には、庭先に段ボールで、猫小屋を作ってくれます。
雪が予想されると、古い毛布で、段ボール箱を覆ってくれる、優しいオバサンです。でも、僕の母と、チャチャ、ヨサさん、たちには、冷たくするのです。ポーじいさんは特別のようです。一番歴史もあるし、なんたって老猫です。カズ叔母さんも、さすが出ていけとは言えないようです。
僕と、リサはまだ小さいから、不憫と思って世話をしてくれているようです。
大人の猫は、良く食べるので餌代がかさむので世話を見られないのかもしれません。
カズ叔母さんの、本音は、僕達野良猫が、どこかに消えてくれるのを、待っているのかもしれません。僕達を世話するのは好きらしいけど、家主との契約で、ペット禁止が、気掛かりだし、近隣の住民が、いやな顔をしているのが、気になっているようです。
ポーじいさんの話によるとカズ叔母さんの家庭は、夫の慎介さんが飲食店(居酒屋)を川崎で開業して、そこそこの評判で商売もそれなりに繁盛していたのですが、親譲りのお店だから、お金の苦労を知らないので、一口で表すと放蕩三昧で、店を破綻させてしまったのだと。
自分でお金を、貯めて、お店を開こうと、確たる信念があったわけではない。
かず叔母さんと、結婚することになって、生費を稼ぐために、追い込まれて、仕方なく居酒屋の一つをもらいうけ生活をしていたらしい。
慎介さん本人は、親が酒屋で、長男だから、当時の世相から言えば、跡継ぎが常識なのだが、商売が好きでなく、とかといって、勉強も今一。
どっち付かずの半端者に位置していた。結婚が慎介を後押ししたようです。
ポーじいさんは、この話を、むかし、マンションの部屋の片隅に居たころ、かずお婆さんの友達と話しているのを聞いてしまったと言う。
それで、おおむね、こんなことではないかと、僕に、話してくれたのです。
慎介さんは 商売よりも油絵を描きたいと思っていた人で、金銭には、疎い所があり、その上、お人好しで、遊び人の誘いにのって、博奕にのり込み、店を金貸し屋さんに取られ、それからは転落の一途の人生なのです。放蕩息子の典型な男のようです。
絵かきさんは、変わり者が多いとポーじいさんから聞いています。
ポーじいさんに言わせると慎介さんの絵は、土台が出来ていなし、哲学がみえない。描いているうちに、なんとかなるだろうで描いている。
第一、絵を見て感動がない。早く諦めたほうが、世のため人のためだと、手厳しく言う。
僕には、さっぱり解りませんが、ポーじいさんには解るらしい。さすがた。だてで、歳をとっていない。
慎介さんはいまでも、生きている証みたいに、このマンションの狭い部屋で油絵を描くのですが、畳に古新聞をひいて、キャンバスを壁に付けて描いているのですがが、僕が観ていても、辺りを汚すし、かずお婆さんには、絵は、部屋の中でやらないで、と叱られています。
慎介さんは、仕方なくて庭にでて、描いている時も有ります。
たいした絵でもないのに、本人は一生懸命です。売れる絵でもないのに、夢だけ追って、亭主とすれば、とんでもない人だとおもいます。
もちろん、かずお婆さんも、反対です。絵を、お世辞ても、理解しようと思いません。
だってね、絵をかきはじめると、時間が必要になるので、まともに、就職しようとないで、水道工事の手元とか、バートで、荷物の仕訳とか、焼肉屋の、皿洗い、などで、収入が一月八万円たらずと言うのです。
家賃にもならないから、かずお婆さんが角を出しますよね。
とんだ男にほれたもんだとポーじいさんは言ってました。
お陰で生活に行き詰まり、そのあげくの貧乏暮らし。家庭も、その影響で、カズ叔母さんが、懸命に働いて、二人の子供を育てているのが現状なのです。だから、僕たちの餌代も緊縮財政なのです。
猫も同じですが、メス猫の幸せはオス猫次第かも。
僕と、妹のリサだけは、額ほどの庭つづきのガラス戸から、家の中に入るのをカズ叔母さんから許可を得ています。
どのような理由か、わかりませんが、多分、まだ小さくて可愛いし、餌の取り方方もしらないからだとおもいます。
(少しは癒して上げてたのかな)
僕とリサの出入り口は庭先に続くガラス戸と、風呂場の換気口です。
風呂場の換気をとるための窓は閉鎖式で、いつも開いています。僕の他チャチャやヨサが密かにこの窓を使って家の中に侵入するので、窓の枠が汚れています。
なぜ、カズ叔母さんは開けて仕事に行くのかと言うと、庭先の戸は雨の日になると、雨がはいり込んだり、ゴミが舞い込んだりするので閉めて出掛けるときがあるから、僕と、リサが部屋の中に入れるように換気口をやむ無く開けているのです。
その間隙をついて、チャチャさんとか、ヨサさん達が家に入り込むのです。
勿論、僕達の餌を狙って入るのです。僕と、リサは、感謝、感謝ですよ。かずお婆さんには。
リサは口数の少ない白毛の子猫です。いつもポーじいさんのそばにいて、滅多なことでは離れようとはしません。
両親がいないから淋しいのかも。軽いうつ病かな、僕は少し心配しています
ある日、ポーじいさんは、玄関の前にある植え込みの中で思い出したように僕に話してくれました。慎介さんの僕たちに対する愛の話です。ポーじいさんは、慎介さんのいいところもあるのだと僕に言いたかったようです。その話とは
隣の302号室に住む若い夫婦に赤ちゃんがいまして、嫁さんが、家主の農協に駆け込んで、野良猫達がいて、あかちゃんの乳の匂いをかきつけて、乱暴するかもしれないから、保健所で駆除してもらうようにと、直訴したのです。
その事を農協から注意された、かずお婆さんは、この事を夫の慎介さんに相談したのです。
すると、慎介さんはその日の夜になって、かずお婆さんに内緒で若夫婦の玄関のドアホンを押したのです。
そして、中から出てきた夫婦の顔をみると
、猫のことで話し合いに来た、管理者の農協に抗議するほどの問題なのか、
庭の戸は閉めておけばいいすむことだ。
砂場に猫が糞をして匂うというが、どこの猫だかわからないだろう?
子供さんが、乳飲み子で、乳の匂いに引かれ、家の中に入って来たら、大変だと。
それならば、庭の戸は閉めておけばすむことだ。
若い夫婦は慎介さんの想わぬ抗議に返す言葉も探せない。
ただ、沈黙して頭をさげていた。
慎介は、返事を聞くことなど、頭の中にないから、
猫だって、生きていく権利はあるのだ、自分たちのことばかり考ええるな!と、
捨て台詞を残してドアを閉めたのです。
ポーじいさんは、
ドムよわしは、嫁さんの方が筋が通っていると思う。常識的だ、
子供を守る本能だし、飼い猫禁止のマンションだ。
砂場も庭のとなりだ、臭い、砂をかけただけでは、臭いは消えないさ。野良猫はお乳の匂いに敏感だ。あかん坊の顔でもなめ出したら、それこそ事件だ。
慎介さんの言葉は、恫喝に近い。でも、あんなこと言っても、自分の為にはなんにもならないだろう、慎介さんはわしら、野良猫を擁護してくれているのだ。
応援してくれるのはありがたいが、逆に農協に火を着けることにならなければいいが、その方が、心配だ。
もしかすると、突然保健所の係員が我々の駐車場を襲うかも知れない。
保健所は新型兵器をもっている可能性もある。例えば、麻酔銃とか、高級肉マン、睡眠薬入り飲み物とね。
その可能性ありますね。
皆に注意しておきます。特にチャチャだ、あわて者だからね。リサもまだ幼いし。
ドムよ、かずお婆さん夫婦は、我々が、居てやらないと離婚だね、二人とも猫が大好き????????????人間だ。我々が接着剤の役目を果たしているようなものだ。
ここに居る、役目もあるのだ。天はちゃんと調整している。あは、は、だ。
なるぼどね。
たぶん、慎介さんは、人生の厚い壁にぶつかっていて、やること、なすことが思うようにいかないので、八つ当たり気味だったかも
人格が疑われても仕方ないかも。僕が真介さんの人格を疑うのは日ごろの行動を見ていれば予想できるのです。
真介さんは、何処へ行くのかわかりませんが、昼頃出掛けたり、夜遅く帰ってきたり、かず叔母さんと比較すると、不規則な生活で、服装も、普段着というか、ラフな格好ですし、まともな仕事をしているとは思えないのです。
粗末な身だしなみで、無精髭。その上、言葉使いは、乱暴だし。
かず叔母さんも、ほとほと、手を焼いていると感じるからです。
そういえば、ぽー爺さんが言うには、かず叔母さんの夫婦は、離婚騒動は、度々あったと言う。
いまでも、二人で、出ていけ、出ていくさ、と夫婦喧嘩は、日常茶飯事のようにある。
僕は、夏のある日、かず叔母さんの、姉の満っちゃんが実家の諏訪湖から訪ねて来たとき、二人の会話を部屋のすみで、寝たふりして、聞いてしまった。
姉さんの満っちゃんが、狭い部屋の中で、静かに、かずお婆さんの辛そうな話に、うなずきながら、聞いていた。その中身は、
つくし野にくる前に、経営していた川崎の居酒屋の運営がうまくいかず、、借金がかさみ、かず叔母さんの叔父が資金を導入して、何とか倒産だけはしないように援助しようとしてくれたのですが、余りにも、ずさんな資金ぐりなので立て直しは無理だと融資の話は消えてしまったと言う。
叔父さんは、借金の裏に、慎介さんが、ヤクザや、遊び人の、世界に縁ができていて、お金をつぎ込んで、再生しても、無駄骨と、思って融資をやめてしまったというのが本音のようだった。
叔父さんは銀行に勤めているから、経営の、イロハは、熟知しているからね。
それからまもなく、二人は、かず叔母さんの実家がある、信州諏訪湖の親戚の長でもある、叔父が、二人を実家に呼んで、
離婚話を始めたのである。
その長の叔父が鋭い口調で、畳に正座をして、「今、此処で和子が(かずお婆さん)離婚すると言えば子供と、小さな家は建ててあげる。このまま慎介さんのところに戻るならば、二度と諏訪には戻ってくるな」と、まるで、舞台劇のセリフのようなことを言われたのです。
不幸にも、魔が指したと言うぺきなのか、かず叔母さんは、慎介さんを選んでしまったのだ。
勿論慎介は、この事では、言葉を返せない立場だから、黙していたという。かず叔母さんが、愛想つかして、離婚すると、言えば、僕達野良猫との縁も、無いわけだから、この物語も、成立しないことになる。世の中なんて、生き物すべてが、笹船に乗って川を流れるようなものですね。
見えない不思議な気の川に乗って、流れているようなものかも知れません。
次は、ポーじいさんとちがって深い考えをするタイプではないが、運動神経は仲間で一番の、 野良猫のヨサさんです。
僕より一年位僕より先に産まれた兄貴です。
ヨサさんは毎日、僕たちのそばにいるわけではありません。どちらかと言いますと、明け方に帰ってきます。
成瀬駅前の焼き鳥屋や、飲食店が閉店する頃、野良猫達がやって来て、生ゴミの蓋をこじ開けて、それを肴に朝ま遊んでいるみたいです。
その仲間に、ヨサさんと仲のいいサキと言う粋なガールフレンドがいます。
僕は、あの、サキさんは自己中だから、注意猫さんだ、チャチャから聴いた話たと、飽きっぽくて、気が向かなくなると、♂猫をポイとえんぎりするそうです。とヨサさんに言ったことがあります、すると
生意気なこと言うな、恋心なんて、なにも知らないくせに。
純ばかりが恋じゃないのだ。魚も綺麗な水にすめないのと、濁った水にしか、すめない魚もいるのと同じだよ。恋に真面目も、不真面目もあるか。
チャチャ兄もよけいなこと言うものだ。
自分がもてないか嫉妬だよ。こんなこと兄貴に言うなよ。ところで、
ドムの恋猫は、前の豪華な家に棲む飼い猫のリリーだろう。
お嬢さんだよ。純白のペルシャ猫の血統書付きだ。ドム、お前は野良猫だよ、高嶺の花だ。そんなの恋でもなんでもないさ、止めとけ。無駄な努力はしない方がいい。
そのうちお前と似合う野良を、紹介してあげる、町田の繁華街にいるノラと言う可愛いい猫さ。
真面目だし、俺なんか、相手にしてくれない猫た。ドムなら、波長があうかもよ。
ヨサさんに逆襲され、よけいな心配は僕のうのぼれというこになるのかな。
ヨサさんの恋の相手と言うサキさんは、目の大きな綺麗な猫です。町田周辺の繁華街に徘徊する野良猫たちに人気がある。
男勝りの気質で啖呵の切れも猫の心を掴むし、歌もダンスも仲間では一番だ。
夜になるとネオンの輝く街中の路地に人目を避けた野良猫達が集まってどぶ板の上で飛んだり跳ねたり、賑やかだ。魚の入っていた空き箱でサキさんは楽しそうに深夜まで、踊り、歌うのだ。野良猫達もサキに合わせて踊ったり、腰を下ろし、足をリラックスさせながら、観ているのです、
サキさんはちょっと前まで、横浜伊勢佐木町の路地裏で野良を集めては、ライヴをしたり、時には、猫生相談や占いをしていたと言う。
僕はヨサさんみたいな体育会系の単純な感性では、すぐ飽きられてしまうのではないかと心配しているのです。
まるで、人間社会でいえば、紐みたいなヨサさんです。
でも、ヨサさんは、あの、サキさんの自己チューが気に入っているのかもしれない。サキさんに頼まれると二つ返事たもの。まぁいいか、そんなこと、余計なことだから。
ヨサさんが、駐車場にすみついたのは、チャチャの紹介です。チャチャをまるで兄のように慕っていますす。
次はヨサさんが僕の相手ではないというリリーです。僕たちの棲家である、駐車場の隣りに建つ高級一戸建の中に棲む、血統書付きのペルシャ猫です。
リリーは、かず叔母さんの、賃貸マンションのすぐ脇に建っうている、デコレーションケーキのような住宅の飼い猫です。
僕だって、ヨサに言われなくても、かなう恋か、かなわね恋か、そのぐらいの常識はわかります。
相手は野良猫ではない、ペルシャ猫だ。
でもね、相手が高嶺の花でも、猫は猫だ。話しぐらいするのに、引け目はいらない。
僕が嫌なら、僕に話をしたくなければいいだかのことだ。
リリーと僕との出会いは、僕が、たまに、柿の木に登って遊んでいるとき、ベランダに接している、大きなガラス戸の隅の方て、寂そうに僕達野良をみているのが、なんとなく可愛そうに思えたのがきっかけです。
飼い主の意向て、リリーは外に出してもらえないのです。
外に出ると。シヤムネコで、まだ若いので、連れ去られる可能性がたかいからです。
僕達野良猫は邪魔者扱いで、リリーのような飼い猫は、自分の子供のように大切にされるのです
リリーの話によると、動物店から、買われてこの、豪華な家に住むようなったと言う。
僕は柿の木からベランダに跳び移り、ガラス越しにリリーのそばによったのです。
そしたら、リリーは僕を待ってたとばかりに、からだを起こして、ガラスを引っ掻くのです。僕は、歓迎の挨拶だと勝手に考え話しかけました。
出逢い頭だから、何から話そうかとためらっていると、リリーの方から話しかけてきたのです。
ガラス越しだから、聴きにくいけれど、そこは、なんとか、阿吽の呼吸で、話し声は、通じたのです。
私はりりーというの。あなたは?
ほくは、ドム。野良猫さ。
そう、ドムさんなんだ。いい名前ね。
(上から目線が染みついているような、リリーの仕草だ)
私の名前は、不幸なリリー。いつも独りでさ、外にも出られない。だから、友達もいない。
あなたは、いつも、友達に囲まれ幸せそう。うらやましい。
リリーにくらべれば、その日暮らしの僕達だから、君の方が幸せさ。少なくとも食べ物に関してはね
あなたも、鈍い猫さんね、ほんとうに、そう思っているの。
外に出られなくて気の毒だとか、たまには、トカゲとか、バッタ食べてみない。珍味だから、とか言いなさいよ。
そうなんだ。たまには外に出たいのだ。
当たり前でしよ。だけど、戸締りがしっかりしていて、ここから出られない。
もう、私の猫生は終わり。夢も希望もなくなった。
「哀しい雰囲気はなし」
そう。簡単に決めちゃだめだ。本当に外に出たいの。相談のるよ。なんとか出入り口をみんなで探してみるか
無理よ、私も散々探してみたけど見つからない。私は人間からすれば高級猫だから、奥様が出かけるとき部屋に閉じ込めて出て行くの。
まぁそんなに悲観しないでさ、抜け道は何処かにあるものさ
そんな会話から僕たちは友達となった。
りりーは、僕のことを、仲間と自由に愉しく語り合い、暮らしていく姿をみていて、羨ましいといいます。
僕はりりーのことを、食べる心配がない。寒さ、暑さも、心配しなくてすむ。
快適な文化生活をおくっているのだから、羨ましいと。
すると、あんたなんか、嫌いよ。もっともらしいことばかり言って。
ほんねで、はなしなしなさいよ。
私のことなど、自由が、きかなくて悲しい猫だとか、人間のオモチャにされて、きのどくだとか。ご都合主義で、嫌らしい野良猫だわ。
そんなこと会うたびにこぼすリリーなのです。
ほくからすれば、飯にありつけるだけでも、幸せになのに、なんと、贅沢な、メス猫だ。好きで、野良をやっているのではない、と、言っても、全然うけいれてもらえない。
だいたいこんなところで紹介を終わります。僕の生活環境と、野良猫文化は、今のところこんなもんかな。
〰☀いよいよ冒険が、はじまります❗
平穏な日々がつづいています。春です。街路樹の桜も満開です。
つくしの駅から続く桜は桜のトンネルです。坂を降りきった所に桜の花に隠れるように、信号があります、そのななめ45°に駐車場のブロック塀の上で僕とリサは毎日のように、カズ叔母さんよ帰りをまっています。
食べ物を運んでくる姿を見るのがたのしみなのです。
ブロック塀からは信号機は、よく見えます。
ある日の夕方です。
茜雲が丹沢山塊をドラマチックに写しています。野良猫で余裕ない僕でも紫色と紅いろに染まる夕映えは感動ものです。
あっ、あのHONDAのバイクはカズ叔母さんのバイク音です。
信号機で止まっています。
僕は、馴れと言うのか、エンジン音でメーカーを聞き分けられます。
HONDAスーパーガブは間違いなくこの時間帯だとカズ叔母さんしかいません。
赤い、ヘルメットに、バレー選手のように
背が高いのですぐわかります。
バイクの後の物入れには、野菜の葉っぱが占領しています。
あの下にはもしかすると、マグロのぶつ切りがあるかもしれません。
ときどき、マグロのぶつ切りが。出るのだ。生は旨い。いつも、マグロの時は、餌場が荒れる。ポーじいさんはは流石にゆったりとかまえている。
僕たちの餌場は、額ほどの庭先にある物干し台に下です。
ブルーのアクリルのお皿が二つあり、そのなかに入れてくくれます。
食べる順番は、僕と、リサが最初でポーじいさんが次で、ヨサさんとチャチャさんご最後です。
マグロぶつ切りの時は皆で取り合いだ、。
皿が猫の頭だらけです。
ご馳走だから、仕方ないかも。ポーじいさんだけは、離れて見ています。猫にもプライドがあるのですねー。
小さな幸せですが、野良猫達もそれなりにたのしい日々を送っていました。
そんなある日、妹のリサが風呂場の出入り口から飛び出て皆のいる、駐車場のワゴン車に駆け込んできました。
みんな、聞いて。
カズおばさんにが旦那様と会話をしていたのを聞いてしまっての。
なんだ。そんなに大変なことか。まさか、このマンションを出ていくということか?
そうなの。チャチャの言う通り。
県営住宅に抽選会で当選したから、1ヶ月位で、ここを出なければならないといってるの。
ドムか口を挟みました。
そりゃ大変だ。僕達、食べ物が、無くなる、近くで餌の確保は難しいから、日干しになって死んじゃうよ。そうでしょう、くポーじいさん。
ポーじいさんは、腕を組んだまま、だまっています。
皆の心は動揺しているのですが、言葉を失っているせいか、沈黙が続きました。
リサは将来の事を思うと、寂しくなって、メソメソ泣き出しました。
ポーじいさんが何か策でもあるのか、腕組みを止めて、静かに話し出したのです。
その日の夕暮れにポーじいさんは皆を柿ノ木の下に集めました。
いいか、みんな、よく聞け。
この家庭は裕福ではないのはみんなも知ってるはずだ。中学生が子供も二人いるしな。生活にゆとりがない。
家賃も、あるし、あの稼ぎの悪い怠け者の慎介さんだ。
少しでも家賃の安くて、広い県営住宅費に移りたくなるのは、無理もない。子どもも育ち盛り、自分の部屋がほしいだろうし。だから、間違いなくカズおばさんに達は、一月以内て、引っ越ししていくだろう。県営住宅に当選することじたい、おめでたいことだ。
それでわしの考えはだな。数年間にわたり、カズおばさんには面倒かけた。
ありがとう、つまり、感謝だな。
我らに毎日のように、安い月給から自分達は贅沢しないで餌を授けてくれた。まあぁ、言ってみれば命の恩人だ。
そこでだ、お世話になったカズおばさんに心配かけると恩返しにならない。
そこでだ、カズおばさんが、我らと離れる日に、とても悲しむと思うのだ。
県営住宅は、ペット禁止だから、あまく考えても、我らを連れていくことは、まず無理だ。
かずお婆さんも、慎介さんも、できることなら、新天地に連れていきたいと、思っているはず。いゃそうしたいとね。だけども、県営住宅はペット・ショップ・ボーイズ禁止だ。
ここで、提案だ。
我々は、引越しする当日まで、ここにいないで、かず叔母さんが引っ越しする前に我らはここを出ることにしょう。
僕は今までみんなのお蔭で楽しく暮らして来たのですが、さすが慣れた土地を離れるとなると、不安が募ってきました。
一番は、食べ物がなくなると言うことです。外の仲間と上手くやっていけるのかも不安です。
さらにポーじいさんは、話を続けました。
この間、この前の、道をよく通る、野良犬のケンが、言っていた。
ケンは、友達のブルーベリーとこれからは、旅に出るという。
その途中だというのだ。仲間の犬二匹つれてな。
それで、どこえ行くのかと尋ねると、東京湾にあるお台場だという。
そこに行くと、埋め立て地があって、大きなブルトーザーが何台も動いていて、生ゴミを海に沈めていると言う。食べられる餌はカモメが乱舞している場所だから間違いないらしい。
海を埋め立てているわけだ。
当然生ゴミもあり、魚、野菜、肉類、ハンバーグ
そりゃ、何でもあると言う。
ケンに、その情報をどこで知ったかと言うと、仲間の犬の、情報だという。
ケンが言うには、
ここにいても、この時世、食べ物が、なかなか手にはいらない。このままでは野垂れ死にだ。ついつい、追い込まれて保健所に捕まるのを待つより、望みがあれば挑戦していくのさという。
ポーじいさんの仲間も、お台場に 行けば良い。夢の島とも言うし。
賭けですよ、生きていく為には追い込まれてからでは手遅れになる。その前に、打ってでる。特にわれら犬族は、モタモタしない。決断力、実行力の塊たから、即、実行です。
そう言って町田から、夢の島に向かったのだ
東京のゴミ処理場だからね。東京のゴミが集まるからね。今や、野良犬猫達の人気場所らしい。
犬も、生きていくには命がけなんだよ
だから、わしらも、そこえ行こうと思うのだ。どうた、ここにいるわけにはいかないのだからね。
バラバラになって、行動するか、運を天にまかせて、新天地を求めて生きて行くかだ。
問題は、埋め立て地につくまが、命がけだ。
縄張り争いに捲き込まれる可能性もあるし、第一食料の、確保が難しい。ここみたいに、かず叔母さんみたいな人とは、まずいない。
だから、カエル、へび、少なくなった野ネズミ、鮒、何でも食べなければ、到達できない。
それと、車だ。ひかれたらおしまいだ。交通量の多い道路を横断することもあろう。
まぁ、何が起こるか分からない。
それでも、ここにいても、いつかは腹をへらして、死ぬまでだ。
みなどうする。
わしは、歳だから、途中下車でもいい。旅の途中で、死んでも良いさ。
若いものは、これからだ。独り立ちして、ここを出ていくのもよしだ。
腕をくんで、うつ向いていたチャチャは小さな声で話しかけました。
俺は、ポーじいさんの話に乗った。今さら新しい飼い主なんて現れるわけがないからな。俺は、太って目が悪くて、可愛らしさなんかどこにもなしな。ドムとリサはまだ若いから、公園でうろついていれば誰かが拾ってくれるかもな
ドムが、言った。
僕はみんなと一緒に夢の島に行く。みんなといると、それなりに幸せだった、どんな困難があろうと、みなでがんはれば、越えられないことはないと信じているからね
ドムの話を聞いていた、リサは泣きながらうなずいている。
ヨサは、柿の木によりかかり、足を組んで、腕組みしながら、最後に口を開きました。
俺は止めておく。行きたくねー。ジョンだか、ブルーベリーだか知らないが、あいつら犬の言うことなどあてにできねえー、俺達猫を虐めるやつらなんか。その気になって、行ったらとんでもないことになる。
夢の島だと言っても、未来永劫、埋め立てするわけではないしな。そうすれば、また、何処かへ行かなければねらない。
野良猫だもの、安住の土地など、あるわけないさ。俺は彼女のサキがいるから、無理かもね。
街場の路地裏で、何とか命をつないでいる奴がいるよ。生きるのに器用な奴がね。運がつきれば、それで終わりもありだ。
仲間の野良猫は個性が強くて旅立ちにも異論、珍説だ
ポーじいさんが、言いました。
わかった、ヨサ、機転のきくお前のことだ、みんなは心配していない、そうすればいい。
チャチャが、言った。
ヨサよ。お前、名前忘れたが、あの、威勢のいい猫、そう、サキだ。恋のみちは、千差万別だ。そこがまた面白い、俺もそんな頃があった。
サキは、見方によっちゃ情けが深い。情け深い猫は、それだけ孤独なところもあるのさ。大事にして上げな
サキはほっておけばいいのさ。必ずお前を頼りするときが来るものさ。
おめでとう、元気で暮らせ。俺は、この仲間と旅に出る。ケンタの話もまんざら嘘とは思えない。残されたメンバーのお守り役もある。用心棒だな。それも俺の生きがいだ。
チャチャ兄貴、ありがとう、サキは、自ら、ピエロを演じる寂しがりやて、可愛いやつです。二匹でなんとか、生きていきます。
それに、サキは、町田の、餌撒きおばさんに気に入られてるメンバーの猫だ。あいつについていれば、喰いぱぐれはないしね。
(餌撒きおばさんたは社会の猫叩きの批判にもめげず、猫に餌をやる婦人)
でもさ、、サキに皆が旅立ちすることを話すと、動揺するかもしれねぇ。まぁ、そんなことはないな。サキは、現実派だから、夢の島で暮すなんて、面白くないというよ。殺風景で、屋根もない、砂漠みたいな、夢の島なんて。ただ食料調達に多少、安定があるといえ,カモメさん頼りなんて危険なことはしないさ。
あいつは、面倒なことや、疲れることは、嫌いだし、街中で、うまく立ち回るのが、得意だからね。
ポーじいさんは、皆の気持ちが整理つくとおもむろに話だしました。
そうと、決まれば、今晩にでも夢の島に向かって出発しよう。いいな。
梅雨もあけたし。丁度いい季節だ。この時期をのがすと、時期が遅れて、かず叔母さんが、引っ越して先に出ることになるので、迷惑が、かかるしな。これまでの恩を思うと、御礼の一つや二つ、言ってから旅たちたいが、これが浮世の粋な別れというものだ。
僕達を愛してる、かず叔母さんになにも連絡しないでここから去って行ったらかえって気の毒ではないのかなとポーじいさんに話すと、ポーじいさんは
別れ際を綺麗に飾るのは雄猫の冥利。理屈はいらない。
あえば、未練が残るものだ。ここはサッとおいとまをしょう。
さぁ、ドムも友達にお別れの挨拶でもしてくれば。と言うのです。
チャチャ、ドム、リサの三匹の猫は不安げな顔をしながらも、首を 垂れてうなずきました。
夜になり、いよいよ旅立ちです。
空を見上げると満月です。
さわやかな、風が通り抜け、月の明かりに照らされて柿ノ木の、梢がわずかに囁いているようです。
かず叔母さんが、僕達の計画をなにも知らないで、いつものように、餌をおいて部屋に戻りました。
最後の宴だというのに、キャットフードと、カンズメ3個だ。マグロぶつ切りは無し。
いつものパターンでした。
旅立ちなのに、これだけでの食料では、この先が不安でした。もっと、腹一杯詰めておきたかたったのが本音です。
最後の宴にしては、みんな遠慮がちてす。
色々な、ここでの思い出が、走馬灯のように、廻り、食が進まないのです。
僕も、詰めるだけ詰めようと思ったけれど、食べ物が余計にある訳でもないので、自然と、皆に合わせ食べました。
まるで、お通夜みたいかな。
僕は、食事をすますと隣の飼い猫リリーにお別れの挨拶に出掛けました
相変わらす、柿の木の枝から、リリーのいるペランダに飛び移り、ガラス戸越しに話し掛けました。
リリーは、僕の姿を、見ると、ガラス戸越しに話しかけてきました。
ガラス戸が遮って、話がなかなか通らないのは、仕方ない事だが、大声をあげるしかない。毎度のことだ。
ドム、やっぱり旅にでるのね。みんなの様子を視ていたら、何となくそんな予感がしたの。
リリー、いよいよここを出ていくよ。
今晩だ。もうすぐ。
いままで、付き合ってくれてありがとう。俺さ、解っているだろう。リリーとは、離れ たくはないけれど、かずお婆さんとの哀しい別れを待つのではなく、僕達野良猫が、一足先に出て行けば、哀しみも少なくなるかもしれないと言うことで、今出て行くのとにしたのだよ。
たまには リリーを外に連れていきたいと思って、出入り口を探して見たけれど、見つからなかった。ごめんよ。時間があれば探してあげられたと思うけど。
いいのドム。その気持ちだけで。ありがとう。また、どこかで会えるといいね。
いや。会えるかもよ。だって、お互いに、愛を育んできたなかでしょう。
飼い主さんが、お嫁に行きなさいと言われたら、あたし、どうしょう。
それも、運命ね。うまく行けば、自由になれるチャンスになるかもね。
夢の島に訊ねていくかもよ。そのぐらいの夢、私にも持たせてね。
リリーも元気でね、こんなときなのに、なかなか、お別れの言葉が見つからないよ。
僕さ、ほんとうのこと言えば、夢の島なんか行きたくないのさ、
僕達のかず叔母さんにたいするお礼はこんなことしかできないだろう。だから、ここを出ていくのさ。
夢の島へいくけど、食べていける保証がある訳ではない。
何処に行っても、大して変わらないと思うけど、取り敢えず、ここから、出なければね。
何処も同じなら、少しでも、夢のあるところがいいし。
ポーじいさんには、言えないけれど、老猫さん置いて、僕たち抱け、旅にはいけない。ポーじいさんと、リサ、チャチャ、と一緒の方がいい。
てなわけだ。
リリーが、ガラスに身を寄せて、哀しげ言葉をドムにかけました。
とうとう、お別れね。ドムはいいな、自由になれて。私もその夢の島にいきたいな。
ダメダメ、そんな、切ないことをいっては。
リリーは野良猫に比べれば恵まれすぎだよ。
食事の心配はないし、病気すれば、かかりつけの獣医師がいるし、いつも綺麗にしていられるし。わがままは、駄目だよ。そのうち、いい旦那さんみつけてくれるから、あまり、哀しまないで。
あなたには、私の気持ちなんて解らないのよ。何でも揃っていれば幸せとは、限らないのよ。ドムこそ幸せよ!あなたには一番大切な自由がある。その上貴方を愛してくれる、大切な仲間がいる。
何がなくても自由に歩いて、走って、そりゃお腹がへることもあるとおもうけど、生きていると言う喜びがあるではないの。それに比べて、わたしは、衣食住は保証されているけれど、好きなところへは行けないし、恋もままならないし、好きな猫の子供も生めない運命なのよ、これで、何処が幸せなの、教えて。
ここの飼い主さん、奥さまだけど、優しく接してくれるのは有りがたいけれど、私の性格は、ベタベタされるの嫌なの。
さも、私がいなければ、あたなは不幸になるよと、言いたそうな、態度が、毎日続くわけ。
人間の。あの目線から、解放されたいの。
りりーは、薄いピンクのカーテンにそっと身を寄せこらえ切れない寂しさに涙を拭いた。
りりー泣くなよ。所詮僕とリサでは、格が違う、リサは、良家のお嬢様、僕は、ありふれた、野良猫だ。たとえ、お互いに自由がになれても、リサには厳し過ぎる。
泥んこ混じりの、野良猫の暮らしなど、出来るはずない、悪くおもわないで。君の幸せをいつまでも祈っているよ。
あんたなんか嫌いよ。
もっともらしいこと、偉そうに言ってさ。私を猫だと思っていないのよ。ペルシャ猫だから、どうしたと言うの。たかが、猫じゃない。
なんかと言えば。格だの、上品だの、綺麗なお嬢様だの。それが、どうしたと言うの。
けっきょくは、私のことを、好きではないのよ、
みそこなったわ。早く、向こうへ、行って。顔もみたくない。
別れる時なのに、喧嘩だ、これではお互いに嫌な想いを抱いていかねばならない。
哀しい現実は二匹を引はなしていく。
まるで、生涯会えない、テープが風に舞う、岸壁を離れるサンフラワー丸だ。
ドムは返す言葉もなかった。最っともだと、思うからだ。
とにかく、僕たちはもうすぐここを出ていく。 僕が残っても君とは結婚できる訳でもないし、人間の欲望の壁は厚い。リサは、不幸にも人間の玩具に運命を置かれている。不幸だ。でも、僕にはどうしょうもできない。
リサが、この贅沢な家からどびだして、泥んこ混じりの猫生活に、来てくれとは僕には言えない。
無茶すぎるし。野良に慣れていない。すぐに、ギブアップだ。
ドムは、ゆっくりと、ペランダを歩きリリーと別れを告げた。
与えられたお互いの環境のなかで幸せを探すしかないだろう。僕を卑怯な猫と思わないでくれ。
いつの日か、僕のことなど、昔の話になるのさ。でも、君のことは一生忘れないさ。
では行くね。サヨウナラ
自分の心にけじめをつけると、ドムは振り替えると未練が残ると思ってか、早足で、その場を離れていった。
皆が旅支度をしている柿の木の下に戻ってきたドムは、黙りこんでリサの傍らに座り込んだ。
ポーじいさんが寂しげにしているドムに声をかけた。
ドム!わかっているだろうが、辛い別れは生きている以上、何度かは起きるものだ。
時が経てば自ずと忘れていくものだ。儚い恋も、いい思いでた。
まずは、生き延びて行くことが先決だ。さぁ、行くぞ。ドムよ、これから先は、ドムが指揮をとれ。お前は若いし、その歳にしては、知恵もある。元気が良すぎるのが、たまに、傷だ。
ポーじいさん、心配しなくて良いさ。たかが、恋だ。僕はもう成年の猫だ。女々しくしている場合ではないさ、これからいく先々には、どんな困難が待っているかもしれないし、仲間の先頭にたって、がんはらないとね、さぁ、旅立ちだ。日も落ちて涼しくなった、ちょうどいい。ポーじいさんが、先頭だ、足腰が悪いから、ポーじいさんにペースをあわせないとね。つぎは、リリー、つぎはチヤチャだ。
チヤチャが、先頭のポーじいさんに言った。
じい様よ、なんだ、その姿は、まるで、楽しい旅行にでも行くようだ。
ポーじいさんは何処から見つけてきた、古い人形が、かぶる山高帽子を頭にのせている。
おお、この山高帽子は、神社の、どんど焼きの時に探したのだ。
一度は被ってみたかった。ほほほ、どうたチャチャ似合うか?
おやじさんらしい。よく似合う。まさかその出で立ちで旅に出るわけではないでしょう。人間に面白い猫ながいるとかいわれ、捕まるよ。
なーに。今晩だけだ。かず叔母さんに、威厳をもっとて、挨拶するのさ。凛として、制服でな。
夜も深まり、家々の灯りも、消えかけて、駐車場の広場も月明かりだけで、静まっていた。
のら猫だちは、かず叔母さんの寝ている部屋にむかって、深々とお別れの挨拶をした。
ポーじいさんは山高帽子をとり、胸にあてて、深く一礼をすると、お別れの挨拶をはじめたのです。
かず叔母さんと、そのご家族皆様。私達は住み慣れたこの駐車場をこれより離れて、新天地を求めて旅立ちます。
今日まで、私達を育ててくださり、深く御礼申し上げます。この深い愛情に包まれた、かず叔母さんの行為は決して忘れません。ありがとうございました。
感謝の言葉がおわると、ポーじいさんを先頭にして、駐車場をあとにして、信号機のある交差点を、横切り、桜並木の歩道を歩き始めました。
ドムは、桜並木の梢から空を見上げると、お月様が満月????に輝いているのを見て皆に言いました。
空を見上げてごらん、満月だ。
まるで、僕達の進むべき道を照らしてくれているようた。
まちがいないよとね。
多摩川の土手を野良猫仲間は夢見て進む、さてはて、待ち受けるものは
ところで、今日は、何処までいくのと、ドムはポーじいさんにたずねました。
先頭にいるポーじいさんは、
そうだね。今日は246号の藤が丘辺りで過ごすか、それとも、元気のあるうちに溝の口まで行こうか。街中なら、なにか食べ物は漁る事ができるしな。
わしが一番体力がないから、わし次第だ。
わしの頭の中には、多摩川を渡るまでは、マップが書いてある。心配するな、昔は、死んだばーさんと、多摩川で遊んだもんだ。釣り人の残りの鯉をさがしながらの。
干乾しの魚が、探せばおちているものさ。
その日は、溝の口の駅前のバス亭近くの路地うらで過ごすことになりました。
人気の無くなった、バス亭の近くの自転車置き場の片隅に集まり一日目の、疲れを取ることになり、ポーじいさんと、リサは庇のある、事務室の人影の見えない所に移動して、僕と、チャチャが食べ物をくわえて来るのを待つことにしました。
しぱらくすると、チャチャが近くの居酒屋の生ごみを漁らり、魚の残飯をくわえてきて、ポーじいさんと、リサに分け与えました。続くように、ドムが、戻ってきて、竹輪を口ににくわえて、もってきました。
皆は円陣を組んで歓談を始めた。
ポーじいさんは、チャチャに向かって、さすかだな、チャチャは、餌取りのコツをしっている。こんなときは、。雑草のように、たくましく生きるチャチャが、頼りになると。
リサが、話しかけた。ポーじいさん、夢の島は、本当に猫の天国なの、しあわせが一杯あるの。
うーん。
ポーじいさんは、返事にこまっている。
犬のケンが言うには、食うものには困らないというが、正直なところ、行ってみないとわからないな。でも、わしの感では生ゴミを、大量に処分するお台場だから、残飯は必ずある。
高度成長で人間は、贅沢になり、賞味期限が、切れた、オニギリ、パン、ハンバーグなど、売り物にならないから、どんどん捨てている。それだけでも、安心感がある、むしろ野川の駐車場辺りに、たむろしていても、食にありつける確率は少ない。
猫も進化してネズミもとらなくなった。
むしろネズミが進化して、猫を追いたてるまで、進歩した。歴史の重味を感じるね。YouTubeを昔、見ていたら、ネズミが猫を追いかけていた。
その内、猫が、人間を追い回すかもね。そうなる時代が来ると、猫を虐待していた、人間は法廷にかけて、、斬首晒し首の刑だな。
冗談だけど。あは、は、、は。
とにかく、ネズミが捕れなくなたのは、環境が良くなり、その反面、動物達には棲みにくくなっていることだ。夢の島も夢物語かも知れないけれど、その夢を追うのも楽しみなことだよ。
妹のリサに説き伏せるように
いいか、リサ、猫生はな、只、生きているだけでは価値がない。
旨いものばかり食べていると、ブクブク肥るし、健康的ではない、精神にも異常を招く。
夢と希望に向かって生きていかなければ、死んでいるのと同じだ。夢に向かって行動するから、元気でいられるし、楽しいこともできるのだ。
われらが、夢の島に旅立ちしたのも、生きる喜びを叶えるためだ。
これからも、続くてあろう困難も、決して不幸なことではないのだ。夢の島が荒れ地であろうと、なかろうと、行動することが、大切なのだ。
雨ふると、ちょろちょろ降ると気になるが、どしゃ降りになると、気にならない。
雷が、落ちれば、恐いけど、春が近いと思えば希望がでる。
風が、強いと歩けないが、ひと休みしていけとのシグナルと思えば、納得だ。
夢の実現に向かって行動することは、困難であっても幸せなのだ。
ドムが、寝そぺりながら、ポーじいさんの話を聞いている。
てなことだと。リサ。
チャチャが笑いながら、リサの顔をなでていた。
おまえには、むづかしいかもね。
簡単に言えば、苦労が、幸せと言うこと。
私、全然わからないわ。苦しみが、幸せだなんて。
夢の島に行こうとする、行動そのものが幸せなのだ。
結果は、どうであるうと、行動するプロセスが、幸せなのだ。
チャチャがドムに言った
ドムよ、お前、どこで、ややこしい、哲学問答みたいな、ことを覚えたのだ。野良猫は、生きる為の食料を確保するだけて、目的、夢、希望だろうが。
チャチャさん、とくに学んだわけではありません。この自然界を深く考えてみると、そのような結論にたどり着くのです。勿論、ポーじいさんには、それとなく質問して、教えてもらいましたが。
チャチャが言う。
ドムは、賢いな。さすが、ポーじいさんの血筋だ。俺みたいに単純化された、野良猫と違う。
たのもしい。宜しくたのむぜ。
よしてくたさいよ。チャチャさん。
こんなこと、よく考えれば誰にてもわかることです。それよりも、経験より、強い。私のものは、経験ありません。こちらこそ、よろ、です。
夜も深くなり眠気が出て各猫は、横になりかけたとき、毛づやのいい、黒の猫が、茶色い二匹の猫を連れて静かにちかずいてきました。
そして、ドスの効いた声で
おい、そこの赤猫。誰の許可を得て、そこに寝てるのだ。
そして、チャチャを揺り動かしておこしているのです
チャチャは、横になっていたのを、振り返り、
だれだ、こんな遅い時間に起こすとは?なんのようだ。
たから、勝ってにそこに寝るなと言っているのだよ。寝たけれは、挨拶料よこしな。金なんか、紙くずだ。そんなのいらない。
喰い物だ。なーんだ。お前達ろくなもの食べていないな。普通はな、鰹節とか、赤身のマグロ、鶏肉だ。仕方ねー、土産の一つも用意出来ないと言うなら、ここに残って、身体で挨拶してもらうかな。
なぁに。魚屋で、ちょいと、盗みをな。そこのじいさんは、やめてくれや。面倒が起きると行けねぇ。邪魔になるからよ。
ここは、山嵐一家の縄張りだ。
そう言うと、あぐらをかいて、腕組みをして、座り込みました。
ポーじいさんは話を聴いていたのか、むっくと立ち上がり、ヤクザ風の猫にいいました。
やはり、きたか。
なんだてめぇは。老いぼれには、用はない。寝てろ。
いやいや、そこの威勢のお兄さん。悪さに手をかせだと。そうかい。じゃお願いするか。
チャチャは、ヤクザ風の猫に立ち向かおうとして、立ち上がり、兄貴分の黒猫の胸ぐらを掴んだ。
おい、茶色いの、そんなことしてもいいのかい。ケジメはつけてもらうよ。
ポーじいさんは、
チャチャやめとけ、騒ぎが大きくなるだけだ。
そう言うと、右足でチャチャの身体を押さえました。
ここは、わしに任せとけ。
山嵐組の親分さんは、いまでも、鉄さんかい。
おい、じいさん、親分をさん付けて呼ぶとはいい度胸している。鉄親分だったら、どうだと言うのだ。
この老いぼれの名前は今は、ポーじい、という気まぐれ者だ。若い頃は、ジョージと言ったがね。このあたりは昔、よく遊んだもんだ。そこの路地に天神さまがあるだろう。そこが、鉄とわしの隠れ家だよ。
お互い野良猫どうしでな。親も知らない淋しい猫どうしだった。
数年過ごしたある日突然、鉄は姿を消した。
その後、仲間の野良の、風のたよりに聞いたところによると、魔が差して、賭け事にはまり、世間から、疎んじられ、流れの中で、組を背負うことになり、その名前が山嵐組と聴いてたから、ひよっとして、とおもってね。
そうかい。鉄も、この辺りでは情のある親分になり、弱い犬猫の相談にのり、猫徳のある親分さんになっていると聴いていたが、わしらのような、夜逃げ同然の野良猫たちから、カスリを取るまで、世間を敵に廻すようになってしまったのかい。
昔の友が道に外れちゃ、この、わしも、肩身が狭い。まぁ、浮世の流れは先がみえないと言うが、そんなもんかねぇ。
おい、チャチャ、この歳で、泥棒猫呼ばれは、勘弁だ。赤身のマグロとはいかないが、小田原、鈴正の蒲鉾がまだあるだろう。出してやんな。
傷物だけど、腹は壊さない。
さぁ、これで勘弁だ。なぁ、兄さん。
ち、ちょとまってくれ。そこまで親分の事を悪く言われちゃ、立つ瀬がない。そんな、汚ない親分ではない。情の深い親分ですがな。
なーに。この頃よそ者の野良が、この辺りを徘徊し、島の猫たちを脅すので、ちょいと見回りに来たのさ。
あぁでも強く出ないとよそ者になめられるからだ。
蒲鉾なんかいらないさ、それよりも、親分の友達なら、黙って返す分けには、いかねぇ、ちっとまってな。
そう言い残して立ち去ると、しばらくして、数匹の子分を連れてもどってきたのです。
親分に、じいさんのこと伝えたら、喜んでよ。
昔、牝猫のポンタさんを取り合いして、親分が負けたそうですね。ポーじい様も、隅におけないですねー。
親分は顔から、背中にかけて帯状疱疹ができて、会いたくてもいけねーから、宜しくといっていました。醜い顔を見せたくないのかもです。
皆さんは、何処へいくのかわかりませんが、今しがた、人間がか多摩川に返し忘れた、多摩川の魚を持っていけと、渡してくれた、鯉です。
さぁ、皆の衆、腹一杯てたべてくれ。
親分のことずけで、なにか心配事があったら、訪ねてくれといってました。
旅の帰り道には、是非ともよってくれ、昔の戦友だから、つのる話は、一杯あるからと。
若い衆は、ポーじいさんの痩せた肩を軽く叩いてて、別れを告げた。
その夜は、想わぬ事で、皆、寝不足になった。
リサが、ポーじいさんに近より、話かけた。
あの恐いお兄さん、ポーじいさんに頭下げた。どういうこと。
チャチャが口を挟んだ。
リサ、ポーじいさんはね、怖そうななお兄さんの社長さんと、幼い時の友達だ。友達だから、仲良くしようと、その、社長さんが、言ってきたのさ。
ふーん。そうなんだ。最初はポーじいさんをいじめようとしていたから、恐いお兄さんと思ったけれど。仲直りしたのね。
チャチャは何度もうなずくように頭下げ、幼いリサの素直な質問をかわした。
僕は、旅の初日から、猫社会の厳しい環境とか、闇の一部を垣間見て、先々の旅路が不安になってきていた。
たまたま、ポーじいさんが、親分と昔友達だから、助かったけど、知人でなければ、ここから追い出され、街中の魚屋とか、乾物屋とか、弁当屋とかを、歩きまわされたかもしれない。
そう思うと、旅行気分で旅立ちなんて言っていられないと、気を引き締める僕でした。
朝がきました。まだ、辺りはまだ薄暗く、街も静寂の時間をすごしています。カラスだけ、元気に声をあげていました。
溝の口駅前ロータリーから、少し奥まった商店街の電柱の脇にカラスが生ゴミの袋を破り餌取りをしています。
僕達は、カラスの鳴き声をたよりに餌場に行き、カラスと共に食事をすました。
カラスは利口者で、繁華街の生ゴミは、ブルーのアクリルでできた生ゴミ容器に蓋がついていて、取り出せないから、家庭のポリ袋を狙う。当たり前の話だが、感が鋭い。僕達も、感はいいけど
カラスみたいに、空察は出来ない。
それにカラスは何でも食べられるようだから、生命力は強い。
僕達は、よほどの事がない限り、肉食傾向だから困る。でも、なにもないときは、パンでもラーメンでもたべる。
チャチャなんか、町田のタヌキが、出没する山でミミズ、カエル、ヘビ、最近はあまり見かけないと言うネズミなどを捕まえ命綱としていたという。
これから先々、チャチャ兄さんには、生きる術を教えてもらわなければ。
ポーじいさんのゆっくりした、朝食がすみ、僕達が、軒下で休んでいるところに、やってきて、今日の行程をつげた。
この先が、すぐ多摩川だ。川原の土手沿いの草むらを歩く。
目立たないし、餌もあると思う。ザリガニだとか、日干し魚だとかね。食いなれておかないと。これから先は、一人一人生きていかねばならないからね。
チャチャが言った。
ポーじいさんよ、ところで、その夢の島まで何日ぐらいかかるのよ。
そうだな。皆目、分からん。何せ、犬のケンの話によると、三日位だというが、犬は足が早いし、敏捷だからね。我らの脚だとその倍かな。
それに加え、皆に面倒掛けるが、わしは足が悪くての。
途中でわしが倒れたら、お前たちは、わしを置いて先に進めばいい。
なーに、よけいな心配するな。
よか死にかただ。本望だよ。つまらん哀悼などするな。わしが、一番望む生き方だからの。
じい様よ、そんな淋しいことは、旅先に言うのは御法度だ。俺達が担いででも、その夢の島とやらに連れていくさ。
太陽が、眩しく照りつけるが、多摩川の草むらは、過ごしやすい。
野良たちは、水辺の川原石を飛んだり、日陰の葦にに隠れたりしながら、多摩川を下っていく。
小鳥のさえずりや、魚の跳ねる音を聴きながらの旅です。
昼下がりの一時、ドム達は、疲れもでたのか、ひと休みすることになり、麦わら帽子をかぶり、川原で釣りをする、人の傍らに近くで休むことにしました。
人影もたまには、いとおしいのかも知れません。
釣り人は、じっと、川のな流れに逆らうウキに目線をあて、我ら。野良猫が近くにいるのに気がつきません。
魚がなかなか釣れないらしく、あくびをしたり、タバコを吸ったり。紙袋からなんやらお菓子を取りだししたり、しています。ウキの流れも気にしていないようです?、
ドムどリサは、退屈しのぎに。麦わら帽子のお兄さんの傍らに近づきました。
なんだ、お前たち。なにしに来た。
お兄さんは。僕達に、話しかけてくるのです。勿論、自分声は猫には聴こえないと思っているはずです。
麦わら帽子のお兄さんは勝手に話しかけてきました。
なんだ、お前たちも行くとこ無いのか、俺も同じだ。ここで、プーをしているのさ。プー太郎だよ。
腹ペコか、残り物のお握りだ。よかったら食え。心配するな。セブンイレブンのやつだ。
なんだ、いらないのか、人の親切無にしやがって。
そうか、俺がお前たちを捕まえると思っているのか。
心配するな、おれの家は、ほら、そこにある、ブルーの幕で囲った、例のブー太郎小屋だ。
このハウスには、お前たちのような野良が二匹いる。だから、満員御礼だ。
残念だが悪く思うなよ。
野良猫も、時代の流れになのか贅沢になったもんだ。ほら、そこの石の間に鯉がいる。
なに、取れないだと。
ほら、食べごろの小さな鯉だ。持っていけ、
と、僕達の前に投げてくれた。そして、生け簀の数匹の鯉を川に放した。たぶん釣るのを楽しんだだけなのだろう。
麦わら帽子お兄さんは、そういい残すと、自分の小屋に向かって歩きだし、振り向き様に声を残した。
おーい。お前たち、ここにいても生きていけないぞ。ここはな、お前たちの食える物はない。鯉はお前たちには釣れないからな。
僕達は、小さな鯉をくわえて、ポーじいさんが寝転んでいる、土手の傍らにもどってきした。
チャチャが、でかしたな。活きている鯉を持ち帰るとは。
いきさつを話すと、ポーじいさんは、人間にも優しい人がいるものよ。特にこの辺りのプー太郎さんにはな。自分の姿を野良猫に映しているからね
ところでポーじいさん、プー太郎とってどういうこと。
プー太郎とはね、大雑把に言えば、貧しい生活をする、人間のことだ。つまり、何かの理由で貧しくなった人間だよ。別に心が貧しいとは言えないけど。
じゃ、僕達野良猫と変わらないわけだ。
りりーは、プー太郎ではないと言うことだ。チャチャが言った。
お前は、まだリリーの事を忘れられないのか。
そんなこともないさ。月とスッポン、だけですよ。大きな壁が、邪魔して、どうすることも出来ない二匹です。もう、とっくにあきらめていますよ。なんてって、相手はシャム猫だから、目立ちすぎる。真綿のような、フサフサした純白の毛ですからね。デイトしても、リリーは持ち去られる、僕は足蹴にされるのがわかってますから、いいこと有りませんよ。
いまごろ、どうしているかなー、
リサが言葉を入れた。
りリリーは今ごろ、金印のフードと、牛乳で優雅なお食事。午後イチから、白い毛のシャンプーとビハビリ。太りすぎないようにとかで。
あぁあ、私には、夢も希望もない。これから若い乙女の恋の目覚めと言うのに。こんな多摩川の土手で、美味しいものはなにもない。身体は汚れほうだい。いっそのこと、川に身を投げ死んじゃおうかしら。
馬鹿いうな、冗談にも、なんでも揃えばいいと言うものでもない、たまには、いいこともおきるのだ。チャチャは、リサを諭すように言うが、リサは、そっぼむいていた。
この日は多摩川のボートに中で寝た。
ドムの恋人が後を追ってきた。馬鹿だよ、りりーは、どうするつもりだ
旅立ちから、今日で四日目。
多摩川に沿って歩くのが一番分かりやすいとポーじいさんがいうけど、街の喧騒もたまには、いいと思うのですが、全然、行く気がないのです。
寄り道は、いろんな誘惑がまっていることもあるから、意識的に避けているのかも知れません。
ときどき、土手を下り民家の路地裏を歩き、飼い猫とコミュニケーションをして、猫社会の状況を探ります。
別にそんなに改めてする行為ではない。
ただ、リサは可愛くて、顔つきもいいので、もしかしたら、誰かが拾ってくれるかもしれないから、リサを一匹にして、公園とか、スーパーの店先に遊ばしておくだけのことです。
僕は、男だし、ポーじいさんの面倒をみたいから、飼い猫予備軍にはならない。
人間が、ちやほやしてくれるのは仔猫の時だけだからね。
リサには、もしかしたら、飼い猫になるチャンスもあるかもしれない。
ポーじいさんは、リサにそのチャンスを与えてやれというのです。
猫は残念ながら人間に飼い慣らされて、人間社会に迎合してしまった。だから、飼い猫になるのが幸せになる早道だ、と言うのです。
特にリサは仔猫でかわいい。わざわざ、修羅場かもわからない夢の島に連れて行くこともないだろうと、ポーじいさんは、言うのです。
昔は、ネズミやトカゲ、バッタなど、カエル、ザリガニ、小魚など、自然が豊かだったから、それもとれたが、今は人間により、自然が破壊されて、猫が生き残ることも大変なのだ。
ここは、愛だの、へちまだのと言っていないで、現実を見て生きていけとポーじいさんは
リサを諭してしいたのだ。勿論、その道もあるのだよ。という感じです。
リサは、当然のごとく、みなと別れるのをいやがりましたが、しぶしぶ承知しています。
なぜならば、これからの旅の事を思うと、自分のことだけではなく、その事が、皆のためにもなると悟っているのだと思います。
健気なリサです。
ても、人間が拾うとすると、リサは逃げ出すと思う。
僕もそう願っている。だって血のわけた兄弟だもの。でもリサの幸せもあるし。あぁ、辛いとこだ。
ポーじいさんは、リサを見張りしているわけではないし。
チャチャは、むしろ、その時が来たら、逃げろ
と言うかも。
優しい人が来たら、良かったねと、言うかも。
この話は、無理矢理することではないので、実現性は薄いと思う。
田園都市線つくし野の駐車場を出てから、一週間位過ぎた。
多摩川空は曇天曇り空、辺りが暗くなり、川辺の葦がざわざわしてきた。さっきまで、囀ずっていた、小鳥の声もしない。
水の流れもせわしくなっている。
そんななか、僕達は、言葉もなく、繁みを歩いています。
僕は、チームリダーだから、何となく危険を察し、土手に上がりその上を歩くことにした。
夜になり、雨がふってきたので、大きな桜の木の下でひとまず休むことにした。
コカ・コーラの赤いベンチもあり、雨もしのげる。
もう、時間は夜の8時は過ぎていると思う。県道をサーチライトが走り抜ける。
この桜の木の下は、土手の傍らにあり、行き交う車がよく見える。
しばらく、皆で身体を寄せあい、雨の過ぎるにを待つことにした。
この急な斜面を一気に渡り、競馬の厩舎が並ぶ向こう側まで横断するのは暗いし、車もスピード出しているので今のところここが安心とドムは判断していた。
そんなとき、土手の川上からトボトボト疲れきった姿をした、一匹の猫が近かづいてきました。
ドムは、その猫を疑似していた。
桜の木の青葉が、こぬか雨に微かにゆれていた。
手をふる猫が近ょってきた。
ドム、ドム、私よりりー
やっぱりドムなのね。
ドムは、あまりにも変わりすぎたりりーの姿に一瞬声を失った。
りりーの姿は、高級住宅に住んでいた時のような、純白で、真綿のような、毛は、無惨に消え、うす黒く汚れ、体毛は、雨のせいか、身体に密着していて、当時リリーと雲泥の差だ。
ドムは、リリーの声に引きずられるようにりりーに近ょって、
リリーか、怪訝な顔つきで、
なんでここにに来た。
そう、いいながらドムは、優しくリリーをつつんでいた。
しばらくの間がすきると、リリーが元気声で話だした。唖然とリリーを見詰めている仲間に近ょって声をかけた。
ポーじいさんもチャチャもリサもみんな元気でよかった。
皆さん。びっくりしたでしょう。当たり前よね。
今日から、仲間にいれてね。
あはは、 押し掛け野良猫のリリーてーす。
ドムもその環に入り笑みを浮かべている。
リリー、それにしても汚い、毛は、まるで染めたように汚れている。毛もフサフサしていたのが、短くなったようだね。君らしくないが。
当たり前でしよ。
ドムが、前に言ったでしょう。
リリーの姿では旅立ちしても、すぐ人間に拾われる。容姿端麗で、上品、血統書つきのチンだから、野良猫にはなれないと。
そんなこと私自身全く関係ないの、私はドム達の暮らしや生き方に憧れと、夢をもらいたくて、敢えて姿を変えた分けよ。この姿か。本物のあ、た、し、。解った。リリーは逢えた、よろこびを無邪気に現しいた。
フサフサした毛は、木に擦り付け、多摩川の汚れた水辺を選び、泳ぎながらこの毛を染めたのよ。どう、もうこれで、立派な野良猫でしょう。ふんだ。
解ったよ。努力だけはね。でも、どうやってあの高級な家を出たの。厳重に管理さ!ているから出られないはずだが。
そうなの、その通り。
私はね、前々から、脱出法を考えていて、奥様が、夕方、買い物に行くとき、玄関のドアを開けるから、その瞬間を狙ったのよ、まんまと成功さ。
奥さん、びっくりして後を追いかけて来たけれど、外にでれば、私のものでしょう。と、言うわけ。
それで、どうして、僕達の居場所が解ったの
そんなこと、簡単よ。
行き先々の野良猫に尋ねれば分かることでしょう。
怪しい野良猫に襲われなかったの?可愛いからさ。
わたしを襲ったら勘弁しないよ。つくし野のお嬢さんでは、もうないのだから。今まで飼い主の言いなりだから、その反動があるからね。
私の自由を奪う野良猫がきたら、半端じゃないよ。ドム、私と格闘してみる。?
冗談よ。もし野良猫が数匹で襲って来ても、強烈な足蹴りがあるの、私にはは。
そう言うと、桜の小枝に蹴りを入れて、折ってしまった。
一瞬、ドムは自分を疑った。
猫も見た目では、わからない。とんでもない猫に恋心を抱いてしまったと。そうは思っても、不思議な縁だ、運命の反応だからと、ドムは、まぁいいかと自分を慰めたが、物は考えよう、たくましい牝猫は、それは、それで、必要なのだと、思い直していた。
リリーは話をつづけた。
四匹の野良猫の特徴を言えば教えてくれるから。
そう言えば、溝ノ口で、野良猫でも、真の野良猫とでも言うのかしら、ヤクザ風のお兄さんど出合い、このような野良猫達を知りませんかと尋ねたら。すごいのよ。
大歓迎してくれてさ。
ポーじいさんは、凄い猫なのね。だってその猫さんが、ポーじいさんは昔は、二子玉の兄貴とよばれ、なんだ、かんだと不良野良猫の面倒をよく見てくれた猫だと言うの。
今でも不良仲間に伝えられている伝説的な猫ですと。
その兄さん、私に、いろいろご馳走してくれたわ。ポーじいさんは尊敬されているのね。
ポーじいさんがリリーの言葉をつまんだ。
ぺつに尊敬されるようなことはなにひとつしていないさ。恥ずかしいよ。
余計なことだと皆に言わないでいたのさ。良いじいさんで終わらせようと生きてきたが、昔の事が出てきては説明するしかないな。あ、は、は、。
わしも若い頃は、不良猫での、親を泣かせたものよ。喧嘩はするし、縄張り争いは、年がら年中だ。恥ずかしい限りだよ。おふくろは、泣いて更正するように促したが、その時はもう、手遅れでね。悪の道には、何本抜け道はないのさ。
アレヨアレヨという間に、坂道を転がり落ちて、
親に縁を切られ、嫁さんには、わしから、縁を切らせてもらってね。少しでも、幸せになってもらいたいからね。嫁さんには。
この道から足を洗えたのは、わしが、正直過ぎて、応用が、きかないので、首になったのさ。
あるとき、溝ノ口周辺でね。車に跳ねられ、怪我して、土管の中で、怪我を癒していたら、違う仲間の不良猫にめっためったにされてね。
仲間の猫の裏切りでね。居場所がわかってさ。
わしの存在が目障りだったようだ。
不良世界でも、嘘はきらいだから厄介者になるのだ。
そんななか、優しい人がいてね、病院につれていくは、金印の缶詰くれるはで、すっかりお世話になり、体力がついて、健康になると、世間が、少しは見えるようになり、まともに生きようと考えるようになったと言うことだ。
お世話になった人の応援もあり、恩返しもあった。
わしのことなど、どうでもいい。それより、リリーはなんでまた、わしらを追いかけてきたのだ。
うーん。分からない。たぶん?
たぶん、皆の生きなたが素敵なのね。それだけ。
嘘つけ。
チャチャが笑いながら言った。
ドム。お前何とか言ってやれよ。
リリーさ、来てしまった事は仕方ない、馬鹿だな。
チャチャが口をはさんだ
馬鹿なのはお前だ。皆の前だからといって、そんな、説教みたいなこと、止めとけ。
リリーは、なわしら野良猫と違って、決心するのに、命懸けなんだ。バカたれが。早く二人でどこかえ消え失せろ。つのる話もあるだろう。時間はたっぷりあるからさ。
チャチャに押し出させるように、二匹の猫は、土手をよじ登り、姿が見えなくなった。
土手を登り、県道を横断して、競馬厩舎の傍らに座り、ドムはリリーに話しかけた。馬がいなないてた。
どうしてまたさ、追ってきたの。
わかってるでしよ。ドムが忘れられないからさ。
邪魔なの。
別れるの時は、泣き出しそうな顔つきだたのに、元気がいいね。
泣き出しそうなんかではないわ。
あなた方が不憫で、悲しくなっただけ。
相変わらす、強がり言う猫だ。
でも、本当は、僕も嬉しいのさ。
だって、計算できない恋だもの。つれなくなるのは仕方ないさ。
本当によく来てくれた。これから先、どんな猫生げ待っているか分からないが、リリーと暮らせるなら、どんなことおきても構わないさ。
あたしもよ。
霧がはれて、お月さまがチラホラ顔を出してきた。
猫の独立国をつくだと、そんなことできるはずがないさ。意見が割れて、この先の旅に暗雲が
多摩川の河口近くを歩く野良猫達。リリーは飼い猫だったことなど、すっかり忘れ、ドムの、前を歩いている。
古市場をすぎた。
六郷橋もここからみえます。リリーが、参加してから3日が過ぎた。
土手沿いに一列になって、進む。
陽気は初春のせいか日差しかやわらかく、唄がでてもおかしくない。
先頭を進む、ポーじいさんの足がとまった。
右側の街並みは。昔の遊郭や川崎の渡し船があったところだ。
今は、川崎市の中心地になっている。
これから先は、今は工場地帯になって、餌の確保が難しくなる。だから、この辺りで休息をとり、餌探しをした方がいい。わしは、済まんがこかでまっている。
リリーもこれからは餌さがした。辛いけどやるしかない。
では行くがいい。
川崎の街は、本当ほ、夜がいい。夜の街でもあるし、野良猫達も、我が物顔で、暮らしている。
チャチャは
遠出で、この辺りに来たこどがある、人間は、別名色町とも言っている。華やかで、色恋沙汰の濃い夜の街だよ、ここで、働く女性は、水商売が多い。だから野良猫達も幸せだ。
なぜかって?
人の心の痛みがわかるからさ。だから、野良猫達にも、優しいのさ。社会のレールからはみ出して、苦労してるのさ。だから、野良猫の気持ちがわかるかるのさ。
と、得意そうにドム達にいった。
でも、夜を待つには、時間が余る。さて、どこから、漁り始めるか。
国道沿いの稲毛神社の境内へ、まず行くとしよう。あすこは、お年寄りがよく散歩したりする溜まり場だから運よければ、何かしらくれる。
四匹の野良は、チャチャの経験に頼って、遊郭のある、稲毛通を歩き、稲毛神社の境内へ、入った。
チャチャの言う通り老人たちが、三々五々と集まって憩いのひとときを楽しんでいる。
チャチャ、ベンチに座り、お弁当を開けているおばあさんに近づいて、目の前にに座り込んだ。
リリー、ドム、リサもそれにならい、膝を立てておばあさんの顔色をうかがっていた。
おばあさんは、笑みを浮かべ、折箱を覗きなが、
そうかい、お前達も、お腹が減ったのか。よしよし、さあ、お食べ。
と箸でベンチの側にそっと、てんぶらものや、焼き魚や、御飯などつぎつぎとおいてくれたのです。
チャチャは言う
おいみんな。こんなことめったにないぞ、俺達は、今日は、運がいい。俺は雑食系だから後で何処かでさがすから、今食べなくても大丈夫だ。
リリーよ、ここのところ、ろくなもの食べていない。野良の宿命だ。川原の日干し魚や、パンくずばかりがだから、さあ、お食べ。
おばあさんは、ドム達に肉ボールや、焼き魚を投げ与えると。残りのお弁当をベンチの下にそっとおいて、
私の食べるものなくなったわ
あはと笑いながら去っていった。
リリーは、お弁当をつまみながら言いました。
チャチャさん、心配ご無用。そんな柔な猫ではないの。
見た目は、柔に写るけど、夢のある、夢の島に行くのだから、こう見えても、芯は強いと思っているのよ。
そうだよな、それでなくてはね。
だけと、夢のある夢の島と言うが、見込み違いもあると思うのさ。
東京中のゴミを集めて埋め立て地を造る計画が進んでいると言うけれど、生ゴミは新鮮な物は少ないし、腹へらして。飛び付くものなら、下痢をおこすし、計画がいつまで続くとは限らない。
野良犬のケンは、身内の情報だから、心配いらないというが、見て確認したわけではないから、不安もあるのさ。
リリーが言う。
お腹が減っても大丈夫。なんとかなる。
皆さんは私が高級住宅に飼われ幸せだったと言うけれど、それは違うのよ、
夢の島にいけば、今日のように、人間にこびびらなくても、すり寄らなくて、自立していける。
そこが大事なのよ。
生きているとは、心に余計な負担をかけないで、自然と備わとっている、身に付いている、自由を伸ばすことではないのかしら。
人間に頭を下げて餌をもらいながら一生を終えるなんてもってのほかよ。
私だって好んで高級住宅に棲みついたわけではない。
人間に餌漬けされて、ならされて、癒しの道具にされているのは我慢てくまきないの。
これよ、この多摩川をこうして好きな仲間達と毎日暮らすことよ。明日死んでもいいじゃない。
猫らしく、独立した行動の結果なら。
夢の島にいって、ブルトーザーの後を追いかけて、餌を探して、その日暮らしも良いかも知れないが、夢の島に猫の大国を造るぐらいの気迫がないと、ただ、餌とりとか、ひもじいだけで、いくなら、成瀬駅前辺りで、一日中、歩いて餌を漁れば、生きて行くことぐらいのこと、
出来るでしょうに。
ドムが言う。
猫の独立国が。犬も野良犬と言葉の認知を受けているから野良の仲間だね。
夢のようだな。
チャチャが怪訝そうな顔をして言った。
リサさ、おら達は、人間と違って悪知恵がない。純粋だもの。無理だよ。
東京中の犬や、猫が集まってきたら、収拾がてきない。それこそ法律とか規則とか、場合によっては、兵隊兵もつくらないと。
そうなれば、猫ばかりか、人間と戦争になるかもよ。無理、無理。人間は、たくみに善悪を使い分け、制御する術を編みだしている。
猫にはそんなことできないし。やらない方が良いかも。
リリーが、反論した。
確かにチャチャの言う通りかも。ボーじいさんも、たぶん、似たようなことを言うかもね。
私の考えは
何も完璧に独立国を作らなくてもいいの。
人間に猫の尊厳を認めさせるために、独立運動をする事よ。
そのために夢の島に行くと言うなら、死んでも悔いがないでしょう。
ドムが言う。
わかった。夢の島に棲むことによって、人間の関心をよび、なぜ、こうも野良猫だの野良犬が集まってくるのか考えさせることから始まるのか。
10*100*1000*匹と段々エスカレートしてくれば、墨田区保健所だけでは対応できなくなり、近辺の保健所から、動員されて、夢の島は、大混乱だ。
人間対ペトット大戦争の勃発だ。我等の死傷者も、数知れない。
保健所は、あらゆる壊滅方法で我等に攻撃してくるだろうが、毒薬とか、麻酔銃などをやたらと使うと、動物愛護団体から、保健所が非難ゴウゴウと受けることになる。
こうなってくると、我らにも、勝ち目がでてくる。人間と、野良犬猫との、暮らしを守る協定を結ぶ気運が生じるからだ。
その礎になるのが我らだな。
リリーが、ドムの言う通りね。こうなると、まるで、一揆よ。100年戦争になるかもよ。
そこまで考えていたとはおもわなかった。
とり合えず、夢の島で、少しは理想郷ができるか、どうか、試して見ることよ。行くとこないのだから。
さぁ、もう、戻りましょう。ポーじいさんが心配するから。
ドムは、ポーじいさんのために残しておいた、唐揚げを口にくわえ、皆で土手沿いに歩き、木陰で休んでいる、ポーじいさんの処に戻りました。
おー戻ってきたか。
おそかったの、餌とりは苦労するからな。唐揚げか。ありがとう。
ドムは、遅くなった理由として、独立国の話をした。
ポーじいさんは環になって座り込む、皆に向かって笑いながら言った。
ほ、ほ、猫の独立国だとな、考えるのはかってだが、そんな空手形のような話は疲れるだけだ。そんなことより、旅は厳しくなる。第二京浜を通り、羽田空港まで行く。そこから先は、羽田空港で考えよう。
これから街中を歩く。危険が一杯だ。はぐれないようにな。
猫の独立国の話は、ボーじいさんと妹のリサはほとんど興味がないらしい。
お前達なに馬鹿なこと言っているのだ。と思われている感じでした。
その夜はこの木陰に寝ることにしました。
リリーとドム、とチャチャはボーじいさんとリサが眠りついたのを確認して、少し離れたところに移り、独立国の話をはじめた。
リリーは、
ボーじいさんに話しても無理よ。年老いているから、独立国の話をしても、興味がないのよ。あたりまえだけど。
でも、皆は、諦めは禁物よ。
私達は若いし、夢かなければ死んでいるも同然だからね。難しく考えてはだめ、夢の島に着いてから考えても遅くないからね。
リリーに念を押され、独立国の話は継続する事になった。
僕は、動物公園的独立国を実際にどのような計画で進めるのか、わからないけど、リリーの執念なのか、理想像なのか、その力強い信念に驚きを感じていた。チャチャも同じだと思います、
僕の想像ですが、お台場の夢の島埋め立て地に僕達のような、動物が年々増加してきたら保健所の係員は、捕獲に来るのはあたりまえ。
千匹に増えたら、島にどじ込め、海との境にある橋を封鎖して、逃げられないようにされたら、どこも逃げられないから、それで、独立国は終焉だ。
そんな心配を今では夢の島計画の責任者的なリダーである、リリーに聞いてみた。
ドム、あんた馬鹿ね。私の彼でしょ。これからは、私を護る戦士よ。弱音を吐いては行けないの。チャチャも。単純だから、緊張して考えてね。
私なら保健所の係員に簡単に降伏しませんよ。
リリーはつくし野駅の高級住宅にいたころの、品がよく、清楚な感じのリリーではななく、ジャンヌダルクのような、戦士のの雰囲気が、漂っていた。
僕は、豹変していく、りりーに覚悟をきめた。
いずれの日には夫婦になるだろうから、その時は、紐だ。かかあ天下だ。生殖機能の牡だけだ。
リリーはなお、雄弁に語る。
海を渡る橋を係員にバリゲートされたら、犬猫混成軍団をつくり、一人の係員に、10匹が一斉にに飛びかかるのよ。そして、噛みつくのね
10人来たら100匹が飛びかかるのよ。係員はたじろぐからね。これに懲りて、次は、饅頭、毒入りガリガリ、間ては、兵糧攻め、催眠銃、など考えられるもので、攻撃してくるようになる。
われらも死傷者がてる。これは仕方ない。戦争だから。
正義の戦いだ。後世に、名を残す名誉ある戦死です。
とは言うものの、圧倒的に人間の方が強いに決まっています。
彼らは野良軍団を壊滅するために、あらゆる手段をつかってくる。
そうしたら、この戦は、我らの勝利です。
ドムは、負けて勝つ、?そんな?と、リリーに尋ねた。
だってよく、考えてごらん。勝ちですよ。
恐らく。毎日のようにマスコミに、ニュースとして、テレビに登場します。最初はもの珍しさで、娯楽番組と、して、扱われるけど、戦いが長引くと、娯楽番組ではすまなくなる。
人間の中にも、優しい動物愛護団体が、野良達はなぜそこまで、戦うのかと、その真意を探り出す。
スポンサーは積水ハウスかな、たぶん。アットホームが売りでしよ。うふ、ふ、
そうなってきたら、野良猫の暮らしの実態が更に明らかにされ、なぜ、暴動が起きたのか、関心をもたれ、注目されるはず。
そこがつけめよ。
保健所は注目されているニュースだから、猫の
暴動を更に押さえ込もうとするから、餌になる生ゴミは棄てない分けにはいかないので、焼却してからお台場に持ち込むだろうし、とにかく野良猫が生きられないようにあれやこれやと策を練るだろう。毒殺などしたら、保健所に批判がゴウゴウと起きる。
生け捕り作戦も始めるだろう。無駄だけどね。逃げ足速いからね。
野良猫の犠牲者も沢山でる。名誉の戦死者だ。歴史を創った名誉ある、猫達になる。
少なくともお互いに、駆け引きや、もんでいるいる間だわは、独立国として名を成していることになるでしょう。
猫にも、最低の暮らしを・人間から解放を。
とかの旗を揚げられると良いけど、其ればかりではできないね。出来れば人間になってしまう。気持ちだけでいい。仲間に緊張感をあたえるからね。
リリーは頭の回転がいいね。みな感心して聞き入っていました。
猫好き人間は何処にでもいます。
様々な理由で飼い猫にできなくなった猫を手放すのに、引き取り業者に、
安心してください、これからは私どもがタマちゃんを死ぬまで世話をいたしますから。
とか言われて、その、費用を取られ、暫くして、ゆくへが分からなくなった猫も多いと聞く。勿論一部の業者ですが。
また、家中。猫だらけの話も少なくない。
とにかく愛猫家は沢山います。
その人たちを味方につけて、センセーションを起こせば、独立国と騒がなくても、猫の暮らしを護る世界ができるかもね。
まあ、やってみないとわからないけれど。大切なことは、人間から、解放をされて、生きていけるかの実験かな。
その日は、夜おそくまて語りあかしました。
ポーじいさんは、グッスリかねていました。
旅の疲れがたまっているのです。
兎に角人間に例えれば70歳ぐらいですからね。
よくついてきてくれてます。
なんて言うと怒るかな。
翌日は午後から雨がふり、六郷橋のたもとで一休みではない。のところのすることなにしました。
目の前にグレーの色合いの鉄橋が多摩川をまたぐように、でんと、横たわっています。
国道の鉄橋だから、車も頻繁にた行き来しています。
たもとに近づくと、手をふる猫がいます。そのとなりに三毛猫がこちらを見つめています。さてはて?
、
野良のヨサは伊勢崎町のメス猫、サキこと親不孝通りの竜を伴って
あの黒毛の猫はヨサさんに違いない。隣りにいるのはもしかするとサキさんかも。
ヨサと、サキさんが、足早に近づいてきました。
やっぱりここで待っててよかった。多摩川ぞいに、四、五匹の野良が、歩いていいたと、溝ノ口や、川崎で聞いたから、六郷の河口で待てば会えると思ってね。会えてよかった。
ポーじいさんが言った。
お前達は、夫婦になって成瀬で、仲良く暮らしているのではないのか。
それがね。ポーじいさん、
気まぐれなサキが、気が変わってね。
俺が、毎日のように、ドムだの、チャチャへ今ごろ、どの辺りとか、言うものだから、そんなにみんなのことが、気にるなら、あんたもお行き。
と、威勢はよかったのだが、
サキも、餌の焼き鳥をふるまってくれた馴染みの店かが暇で店じまいになり、野良猫も餌が無くなり、チヤホヤしてくれたサキの馴染みのオス猫達はどこかへ消えてしまったのさ。仕方なく、俺についてくるようになったのさ。女の心は、わかんねー。
サキが二人を別けるように話の中にはいってきた。
あんた。馬鹿なこと言わないでね。あんたみたいな風来坊に誰かついていくものか。
こうみえても、面倒見てくれる男は、山ほどいるのさ。だけど、どいつもこいつも、私から見れば、男じゃない。
てめえの女房と縁がキレない意気地無しばかりだ。そのくせ、その場かぎりの愛だのへちまなどと、たぶらかす男ばかりさ。もう、そんな世間が嫌になっていたのさ。
そんなときに、彼が現れて、好きだの嫌いなどと言うものだから、仕方なしに一緒になってあげたのさ。
わたしが、こうして、みんなに付いていくのはね。この、ヨサさんに、惚れたからじゃないのさ。
わたしが、ついていないと、子供見たいで、なにもできないからさ。でも、此処に来るわけがあるのね。
ポーじいさんが笑いながら言った。
もう、ここまできて、喧嘩はいい。やめだ。
サキが、恥ずかしそうに言った。
ポーじいさんのことは噂で存じ上げています。
猫柄のいい、人情味のあるおじい様たと。
若い頃は、遊び猫を束ねていたと聞いています。
聞いてくれますか。お爺様。
私も町田の街中で、水商売の流れの中に暮らしていましたが、もう、つかれました。
見掛けは派手て、贅沢で、そこいらの野良猫なと鼻もかけない、優雅な暮らしをしていたけれど
もう、飽きたのよ。こんな偽の心の探り愛なんか。ポーじいさんならもと遊び猫だから解ってもらえますよね。
それでね、ヨサさんが、餌をまわしてくれていた、かずおばさんが農協のマンションを出ていくことになり、駐車場の猫たちも、仕方なく、旅に出ると、聴いたものだから、これは、心のケジメというか、猫生をやり直そうと、きてしまったのです。
別に、ヨサさんに惚れてからではありません。
猫生のついでに、誰もいないより、側にヨサさんでもいれば、なんとなく頼ることもあるのかなーと。それだけさ。
ヨサが口をはさんだ。
まだ、あんなこといってるよ。俺みたいに、真剣に、サキさんを、思っている猫はいないぜ。
こんなこと、ここで言う話ではないよ。言わせるなよ。みっともない。
チャチャが言った
何でもケジメが大切だ。サキさんが、その気で旅するなら。楽しいぜ、どんな、物語になっていくのか。興味津々だ。よろしくね。
リリーはサキに歓迎の意味合いを込めて話だしました。
サキお姉さま。わたしは、ドムの友だちのリリーと言います。駐車場の農協のマンション
に隣接する、高級住宅にいた、飼い猫でした。
私は、飼い主の拘禁から。逃れてきた猫です。
お姉さまと経緯は違いますけれど、似たようなものです。どうぞよろしくねお願いします。
話と言うのは、夢の島に着いたら、猫と犬とで、独立国をつくろうと皆て、相談してるところで、猫は多いほど助かるのて、よろしくお願いいたします。ても、ポーじいさんはそんな馬鹿げた事はよしなさいと言っていますが、若い私達は、燃えているのよ、特に私がね。お姉さま、協力してくださる?
協力って、何を?
聞いて。サキお姉様。私達は猫ばかりでは無いけれど、頭にきませんか。
なにが?
私達、人間のおもちゃよ。
勿論一部の人は大事にしてくれるけれど、ほとんどの人は、猫なんか無視でしょ。
あいつら、野良猫野良犬ほっておいても、何とか食べていけると、無関心。人間は自分達の都合で、そう思っているでしょう。
私達は餌探しに追われる毎日だから、車に跳ねられたり、腐った魚を食べて、病気になったり、命がけでしよ。
私など、飼い猫にだったから、幸せだったけれど、ドムも含めてみなさん、命がけ。当たり前だけど。
私は勝手に、自由を求めて飛び出して来たけど、何かしら野良猫のお役に立ちたいの。
ゆがんだ猫社会は人間のごう慢から産まれているでしょう。
さも、当たり前のようにね。
だから、一矢むくいてやりたいのね。人間に。
猫の一向一揆見たいに。
サキお姉様どう思う。
そうね。夢の島で、ドンパチか。あんたもやるねえ。人間なんて、雲の上のことかと思っていたよ。相手が人間か。あたしはねリリーさん。実は
肝臓やられているのさ。いつ死んでもおかしくないのさ。いいよ。あんなに負けていられないよ。
さすがてすね。肝が、すわってる。この先が楽しみ。
リサがこの勇ましい二匹の牝猫の話を聞いていて、あくびをしていた。
その日の夕方、、ポーじいさんを先頭に、リサ、サキお姉さん、ヨサ兄貴、ドム、リリー、チャチャ、総勢7匹の猫が、車の喧騒を尻目に、人影を盗んで、六郷橋を蒲田駅に向かって歩き出しました。
暫くすると、ポーじいさんがふり向いて、
おいドムよ、多摩川の茂みと違って、目立つな。ばらバラバラになって歩こう。
人間につかまると夢の島にみんなでいけなくなるからな。特にリサとリリーは可愛いから、連れされそうだ。
拾って育ててくれれば、それでもいいけど、家に持ち帰り、都合がわるくなると、ポイ棄てだからね、人間は。
この信号から数えて三っ目の信号で、お互いに待つことにしよう。はぐれるといけないからね。
もしはぐれたら、大鳥居の駅前で待つように。
はーい、了解てーす。
リサとドム、リリーとサキ、チャチャとヨサ。とタッグを組んで、適当に歩き出しました。ポーじいさんは、ゆっくりと足をかばいながら歩いていいます。ても、皆はポーじいさんが心配なのか、後ろを放り向きながら歩いて行く。
ドムが指揮をとった。
三っ目!三っ目と信号機で落合いながら、国道沿いに歩いて行って、夜遅く電車が止まるのをまって京浜急行の踏み切りを横断して、羽田空港方面にむかい、そこで一休み。と皆に伝達した。
深夜に踏み切りを越えた。
踏み切りなど、ポーじいさん以外渡った事はないから、緊張して、足元がふらついていた。
この日は、踏み切り近かくの公園で、寝ることにした。下水工事の土管が並べてあり、その中が宿だ。
食べ物は、ここのところ、一日おきぐらいだから、ひもじいものです。土管の中で空腹をこらえて、眠気が来るのをまつ僕達でした。
雨が降りだした。公園の街路灯に雨が映る。
食べ物を確保する場所で、確実なのはやはり夕方のスーバーです。
自転車置き場が、穴、スポットです。それと、広場のイベント、ここも心ある人なら、焼き鳥、ハンバーク、焼き蕎麦なとをた投げてくれる。
野良猫をこのような習慣を植え付けたのも、人間なのに、可愛いそうだと優越感に自分を誉めて満足している。
違うのだよね。
こんな惨めな野良猫にしたのは、君達なんだけどなぁ、と言いたい心境でさす。
僕達の先祖を野山に放し飼いしてくれさえいれば、また、飼い猫ても、最期まで、面倒みていてくれば、このような悲惨な光景は見せないで済んだはずです。
野良犬猫独立国をつくると、大袈裟にリリーは言っているけど、よく猫考えれは、当たり前の話だし。、僕は、彼女の勇気を買うよ。
土管の中で休んでいると野良犬が顔を出してこちらを覗いている。雨に出合い、避難してきたらしい。
チャチャが例の如く尾を立て、ドスの効いた声をあげて威嚇した。
茶色の中くらいの、雑種だ。おとなしそうた。
場馴れしているのか威嚇にもたじろかないて、話しはじめた。
いいよ、いいよ。この土管は、僕かたまに、雨の時に使うだけだから、僕は友達の処に行くから。そのまま、そのまま。
チャチャは立っていた尾をだらりと下げた。
ごめんなさいね。気が速いので、イチャモンつけにきたのかと。
ところで見られない野良猫だけと? どこから来たの。
おいらたちは、町田から、これから夢の島に行く、途中なの。
夢の島?
しってるのかい。
今流行りだからね、、猫も犬も狸まで夢の島詣でだ。話にはよく聞くけど、期待したほど食うものはないらしい。
体力戦みたい。犬猫でも強いものしか残れない、仲間どうしで、喧嘩らしいよ。食べ物の奪いあいで。
だからね、僕みたいな気の弱い犬はついていけないから、こうして、この辺りをうろうろしていると言うことです。
リサが言う。
なるほどね。解るわ。どこの世界も同じなのね。
腕力があり、暴力的で、強い野良犬猫しか生きることができないのね。野蛮ね。
それなら尚更私達は夢の島でに行かねばならない。人間と戦うまえに、仲間説得し、民主化して、公平な組織をつくらねばならない。
チャチャが言った
リリーさ、君はもう、政治家だね。恐れ入谷の鬼子母神様
なにそれ。鬼子母神って。冷やかしているのね。
リリーのやることなすこと、考えること、全てに、納得、称賛するけれど、ちょと、違うよってとこかな。冗談はともかく、この猫の数で無理な話だよ。
リリーが言った。
怖じ気ついたら終わりよ。チャチャさん。
怖じ気などついていないが、惨敗だ、数で潰される。
僕はリリーの用心棒だから地獄の底までいくさ。
アタリマエダノクラッカーだ。
チャチャは。大きく✋を広げ。俺はポーじいさんと。リサの用心棒だ。
ヨサさんは。
あたぼうよ。惚れた女を見殺しにできるか、なぁ、サキさん?
惚れたのは勝手でしょう。修羅場は、私の18番よ。すっぽんのお龍とはあたいのことだい。なんちゃって。わたしは言われなくても行くよ。ふざけた野良は許せないからね。
外は雨が降っているのに土管の中は、熱気で賑やかだ。呆気にとられていたケンタが、水を差した、
あっ、そうそう、僕の名前はケンタという名前です。
皆さんは勇気あるし、迫力もある。頼もしい。僕も連れて行って下さい。夢の島に同僚も行っているので、役に立つこともあるとおもいます。
それに、ここにいても、食べて寝るの繰返し。
体全体が胃袋みたいなもの、ただ、命の消化のために歩いているようなものです。是非、お供さして下さい。
皆さんお腹がへっているでしょう、ついてきてください、案内します。この坂の上のしもたやです。
緩い坂道を登りきると、数寄屋風の家は、丘を見下ろすように建っていた。瓦葺きの門を避けて、裏にまわり、植え込みの垣根から、中庭に入り、池の傍らにある、灯籠の陰に潜んだ。
僕が家の庭先で、わん、わん、わんと三回吠えると、家主のおばあちゃんが、金印の缶詰め、それその他にも、唐揚げ、マグロぶつ、など、出してくれます。
三回吠えると友だちを連れてきたと思うのです。
へー。
ケンタはこの家に居ればいいのに。
それがね、そうは行かない。
旦那が、野良犬は毛嫌いしているからね。
旦那が、いないと居間の明かりがついていないのでわかるのさ。
今日に二度めになる、僕は、ここのおばあさんが散歩に行くとき、お供していくのさ。その、お礼みたいなものですよ。
独りで散歩は楽しくないみたい。
雨も上がり、星が雲間から顔をだしていた。
この日はケンタの言う通りご馳走にありつけたのでした。
翌朝、道に詳しいケンタを先頭に夢の島を目指すことになりました。
ケンタは、野良猫たちを案内するのが楽しそう。
一足先にいったり、戻ってきたり、次は、ポストを右折だ。とか、尾っぽをふって飛び回ったり、時には仔猫のリサに付き添い花壇の中を歩いたり、明るさ一杯です。
二匹は、花壇のすみに座り話を始めました。
僕さ、気がついたときはすでにひとりぼっちさ。
親の顔をろくにおぼえていない、
私も同じ、知らなかったの
でもね、寂しくなんかなない。
生きてさえいれば、こうしていい仲間ときっと会えると信じていたから。
リサも幸せだね、ポーじいさんやその仲間に恵まれて。
そうなのよ。しあわせよ。私、少し鬱なところあるから、よけい大切な仲間なの。
鬱って、マイナス思考でしょう。
そうなのよ。わたし、どうしょう、どうしょう、が多いの。嫌な性格。ふ、ふ、
蝶々が花のたまゆらを飛び回ったりしていた。
二匹の話しは終わりを知らないようだ、
ケンタは
さぁソロソロ行こう。
ドムにこの先、大井競馬場の、正門の左手に、植え込みががあるから、そのあたりに待っててください、と言ってあるから、大丈夫だ。
競馬場の正門には競馬を楽しもうとする人並みであふれていた。
ドム達は、その人並みの足元を潜り抜け、人陰もまばらな場内と外と仕切る金網の植え込みの中で寝転んでケンタたちが戻ってくるのを待っていた。
ごめんなさい、おそくなって。
ケンタとリサが足取りも軽くやってきた。
チャチャは
大井競馬場って馬が競争させられているところ?
そうです。競争するために産まれてきた哀れな馬ですよ。
人間の欲望の犠牲者ですよ。そうは言っても、競争馬の中でも、才能のある、スピードの速い馬は、人間より大事に扱われているらしい。聴いた話ですけどね。
温泉地にいったり、大きな牧場でのびのびと暮らしたり。栄養分の高い食べ物を食べさせてもっらたりして、待遇も良いけど、競争馬として、成績の悪い馬は、食肉として、殺される。
そんなこと知らずに産まれてきたお馬さんは、生まれてこないほうが、良かったと思いませんか。
いずれにしても、目の前にいる馬は人間の飽くなき欲望を叶えるための舞台装置みたいなものです。
ケンタさん、詳しいのね。競馬場のこと。
うん、なれかな、僕はここで競馬が開催される日の何日かは来ています。これから案内するのは、観客が気安く利用している屋台のような店です。
さぁ、行きましょう、人だかりが見えるでしょう。腹へったし。
まず、この金網を越えるのです。そして競馬場の中に入るのです。
中に入ったら注意してください、警備員に捕まったらアウト、競馬場の中を追いかけられ、逃げまとうから、食事どころてはありません。もっとも逃げ足は僕らのほうが速いから心配していませんが、ロスタイムになり、腹も減るからね。
逃げるなら人混みの中です。ここにいる人間は馬券が当たるか、外れるかで、頭がいっぱいで、犬猫には関心なんかありませんよ。
僕は、金網から、中に入る穴を内緒で、作ってあります。夜来てつくったのです、三ヵ所あります。
これからその金網の下の穴に案内します。
ちょうど昼時で売店は混雑していますのでチャンスです。中に入ったら、バラバラで、行動してください。
売店の前で人間が食べ物を与えてれるのを待つのも方法です。
中には、馬券が当って、お金儲けが出来た人もいる。気分がいいので、気前がいい。猫がそばに居れば、
おー、招き猫がきた、こりゃ、縁起がいい、
と、食べてくれと言わんばかりに、警備員の止めるのを無視して、ソーセージ、唐揚げ、アジフライ。アジフライは、川崎競輪場だ。
でも、大井競馬場にも探せばあるかもね。とにかく、たこ焼き、焼そぱ、なとだいたいの物はそろっています。
二階には、寿司、トンカツだ、ただし、僕は、入ったことありません
警備か厳重で、すぐ、ばれてしまう。猫も無理だ。行かない方がいい。下の広場で充分ですよ。
内に入ったら、一度中で会いましょう。
金網の下にケンタが掘った抜け穴をやっとのおもいで、スリぬけ、競馬場の中に入ると、多くの人がうごめいていた。
それぞれ円を画くように散って警備員の眼をくぐり抜けていく。
つかまったら、保健所の毒ガス部屋だ。危険極まりない。
さすがにポーじいさんは参加を取り止めて、安全な外の街路樹の下で帰って来るのを待つことにした。
チャチャは、こんなことぐらいで、恐れていない、むしろ、ここぞとばかりに、心が踊っていた。
俺はポーじいさんの分までとらなければと、勇んで、匂いをかいて、方向づけをすると、一目散にかけ出した。
リリーとドム。ヨサと、サキ、ケンタと、リサに、それぞれペアになって、いろいろな売店を目指したのである。
ポーじいさんは街路樹のしたで、どこからか飛んできた。シワシワの新聞を興味深いく、見ている。
一日前の競馬新聞には、赤い字で。2-5 3-5とか、数字や、馬の出走表が記載されてある。
なるほど、馬を競わせて、1着とか二着とかを当てて、配当金をもらうのだ。
馬は賭けの道具か、人間はなんてことを考えるのだろう。いつの日か、この思い上がりに天罰が降るにちがいない。しかし、こな競争馬のお陰で我々は食べ物にありつている。
矛盾の極みだ。
しかし、よくよく考えて見ると、馬は気の毒に思えるけど、競馬をする人間も気の毒だ、
馬も競いあっているが、寧ろ、人間どうしも、競いあいしているのだ。
賭けに、勝った、負けたとね。
馬も、自由がきかない不幸、人間は負けると、心が荒むし、場合によると、生活が出来なくなる不幸だ。まだ、馬の方が、すぐ生活に、影響ないだけ、幸せなのかな。
でも、人間の玩具とは、気の毒だ。
そう思うと、わしの仲間の野良猫達が、自由と神がくれた、生存権を死守するために、旗を降り始めたことは、何かの兆しかもしれない。
場内では、野良犬猫が、それぞれバラバラになり、餌を探し求めていた。一時間ほどして、皆は
トイレの脇に集まった。
たいした成果もなくしょげた顔つきだ。
リサとリリー、サキさんはうまく餌にありつけたと言う。
牡猫は、全滅だった。そこで、トイレの側にある、ベンチに集まり、ケンタが、餌とりの講義を始めた。
行き交う人間を指差しながら、
ほら、あの、ペアさ、猫のデザインが入った、バックを持っている。あれさ、あれ、あれ、
あのペアは追い回せば餌を買ってくれる。
なぜなら、男があの可愛い女の子に惚れているから、女の子の言うことは何でもきくはずです。
それと、ぼら、パドックで、馬の良し悪しを観ている黒い帽子をかぶった年配の男。
馬の良し悪しなんか、馬に聞かなければわからないのに、無駄な努力をしてる人です。
あの、夕刊フジをもってさ。ついていくと、面白いかも。
なぜかと言えば、毎回とは、言わないけど、結構、競馬場に通う人です。
ポケットの中の軍資金は、10000円位かな、馬券を買う金額は、100円券が多い。毎回来るほどだから、セーブしてるのだ、僕は、あの人を追い回しているからわかるのです。
(またお前かと言ってね)
競馬が大井で開催してなくても、ここは、場外馬券も売っているので、そのつど来ている。川崎競馬場、船橋、浦和、など、年がら年中開催しているからね。僕も、近くに住んでるので、たまに来るのですが、黒い帽子のおじさんは必ず来ているのでわかります。
あの人は、競馬に命を賭けています。
馬券が、当たらないと。帰りの交通費も、賭ける程の男です。普通はどんな、競馬依存症でも、そこまでやりませんよ。プレーキが掛かるものです。
このタイプは、敗けが、多いので自責の念に陥り、悲愴感にさいなまれているのかわかりませんが、餌取りの格好のポイントになります。ターゲットですね。
リリーが、怪訝な顔して、
なぜなの?どうしてターゲットになるの。
それは、自分の惨めさを野良犬猫に置き換えているからです。あのオジサン詩人てすよ。
演歌のね。白髪のオヤジと二人で来ているときに、売店で安いアイスコーヒー飲みながらそんな話を聞いたことごあるのです。
馬券が当たって射れば、演歌などでてくるはずがありませんから、二人で、慰めているのですよ。
北の待合室に女がひとり
行こうか戻ろう雪がまう。
夜行列車が過ぎていく。
泣いて別れた一夜の命
こんなつまらない、歌をつくっていました。
隙なのです。馬券かう金がつきたから、二人で、寂しい♥ハートを演歌に託して時間を潰しているのです。
それが、どうしたの、餌と関係ないじゃないの。
と、チャチャが言った。
それがですね。演歌の詩人に悪い人いませんよ。相場では。
心が優しいから、詩がかけるのです。
まぁ、言葉にはしませんが、おおかた心内はこんなところかも知りません。
(まいった、また敗けだ。使ちゃいけない金を叩いてしまった。
俺はなんて情けない男だ。ここにいる野良犬猫と同じだ。生きてるだけだ。なぁ、野良よ、
お前たちのほうが幸せかも知れない。馬券が買えないだけしあわせだよ。)
そうです。ここで、勝負に負けた男達は、自分以外は敵に見えるものですから、癒されないのです。そこで、癒しの相手に選ぶのが我々です。
(俺も競馬に負けて辛いが、お前達も俺より大変だな)
という、バランス感覚が生まれて、いい気分になり、餌を買ったり、分けてくれたりする心理が働くからです。勿論、その様な人間ばかりではありません。下向いて歩く人を探して、後を追うことが大切です。根気よくね。それでも確率は低いからね。
見ててご覧なさい。あの黒い帽子の人は、後で、テレビの下の広場ベンチに座り、買ってきた焼きそばを食べるから、その時に、行くのです。
あの人の心には、野良達が癒しの猫犬になっているのです。まさにターゲットです。
演歌の世界に我々野良犬野良猫は、貢献してるのですよ。
仲間の野良犬猫達は、ケンタの話に聞きいて、半信半疑ながら、再び、戦場に向かって行きました。
時が過ぎ。最終レースのハンハレーが広い競馬場に鳴り響き渡りました。
しばらくして、ドムとリリーが戻ってきて、慌ただしく言った。
ポーじいさん、思いどおりいかないものですよ。
すぐ、食べ物にありつけると甘く考えていましたよ。
辛抱しないと、食べ物にありつけない。無視されて、なんでこんな、危険をおかして、ケンタさんは競馬場まで来るのかなと思ったぐらい。
ケンタさんも命がけでいきているのだと、反省しきりですよ。
そうだろう。競馬馬も尻たたかれて、めっいつぱい走らなければ、桜肉にされるから命がけだ、ケンタも一つの獲物を求めて。わき見をぜず一直線なのだ。
馬券を買う人間も、餌を求めて競馬場にきているのだ。命がけの人も、多いはずだよ。
娯楽た。スポーツだ。と綺麗事言っても、所詮は命の取り合いかもよ。
招き猫とか、うのぼれていると、痛い目にあうのさ、ケンタは皆が腹減らしているの一所懸命に気配りしてくれたのさ、
なんでも、あてはまるが、辛抱が大切なのですね。粘っていたら、自然と食べ物にありつけたのです。ほかの仲間も頑張っているはずですよ。
最後に金網の穴に戻ってきてきたのは、唐揚げをくわえたチャチャだった。
ケンタが、申し訳なさそうに言った。
皆は初めてだから戸惑ったかもしれません。
僕は慣れているから、なじみの、お店屋のお姉さんがいて、ファンかな、僕の?
馬が走っているときはお客さんは少ないので、その隙をねらっていくと、お姉さんはよそ見しながら食べ物を投げてくれるのです。実績の積み重ねかな?
大井競馬場の餌取りは、皆が考えていたほど、簡単ではなかった。それでも、根気よく続けたので、空腹を満たすことができた。
そして、僕が競馬場にきて学んだことは、僕ら野良犬猫たちより、競走馬のほうが、衣食住は安定していても、成績が悪くなれば、食肉にされる運命がまっている事をおもうと、自由でいられる僕達のほうが、幸せだと思うことでした。
おの黒帽子のおじさんも、明日こそは万馬券をあてると、ロマンを追いかけて生きている。
貧乏しようが、夢を追うことは、僕達が夢の島に行こうとするのと、変わらない。ロマンがあるから、生きているのかれないと、思いました。
この日は、競馬場の近くにあった、建築現場の片隅で、身を寄せながら眠りにつきました。
羽田空港に飛行機が行き交う、夢の島はもう近い
犬のケンタも仲間に入り、賑やかな一行となりました。
昨夜いろいろ食べたから朝は抜きで、出発です。
ポーじいさんは年齢差を感じさせないで、頑張っています。
皆が夢の島、夢の島と騒いでいるのが気になっているようです。
老いては子に従えの格言が、身に染みてきているかもしれない。
羽田空港を離着陸する✈飛行機が、大空を飛んでいる。
騒音も身近にかんじます。
これから東京圏に入るので道順が複雑になるみたい。
こんなときは、ポーじいさんの眼力が頼りだ。
勝鬨橋を過ぎると、もうすぐお台場だ、夢の島に期待が走る
数日が、過ぎて野良猫達は、新橋駅前の蒸気機関車の傍らにいた。
似顔絵の絵描きさんが広場の片隅にテントを張って、中で水商売風のお姉さんの似顔絵を描いている。
線路を背負う赤レンガの壁はレトロな雰囲気を引き立て、辺りを和ませていた。
野良猫達は薄明かりのさす蒸気機関車の下に潜り込み一夜を明かした。
朝になり・一番電車がホームに入ってきた。その音にあわせたかのようにドムたちは蒸気機関車を後にしてビルの谷間にすいこまれていった。
競りが始まる、魚河岸についた、
場内の中に入りたいけど、厳重な警備が隅から隅までゆきとどいているので、魚河岸を惜しむ眼差しで通りすぎ、勝鬨橋のたもとにさしかかった。
開かずの勝鬨橋を急ぎ足て通り抜け東京港に接する、ゴミ集積船がある船着き場に着いた。
江戸時代に7箇所あった砲台も近代化の波に呑まれ次々と埋め立てられている。
ドムが船着き場をみて、あのごみ集積船に乗り込めばゴミを棄てている所に行ける、それが手っ取り早いねと皆に言った。
すると、ケンタが、ドムの話を止めた。
それは、危険ですよ。もし見っかったら、逃げられない、海に投げ込まれることも想定しなければ。
それより、月島に出て、その先端で埋め立て工事をしてるから、そこに行きましょう。陸続きだから、舟に乗らなくてもすむ。
僕の友達もそこに、生きていれば、まだいるはずです。
お台場周辺は埋め立て工事で、生ゴミも棄てられているという噂話に乗って、月島へいく、月島へ行きたいと言っていた、仲間の野良犬猫達です。
生きていれば、と言うことはどんな意味があるの。と、リリーは訊ねた。
その仲間のなかに、僕の友達のマサが月島にいって一月もたたないうちに、痩せこけて、ぼくらのいた公園に戻ってきたのです。
マサによると人間が贅沢になり、賞味期限のきれた、ハンバーガー、売れ残りの寿司、パンなど豊富に捨てるから喰うには、贅沢を望まないならば、なんとか暮らせるけれど危険も棲んでいるとね。
保健所の係員もネズミや野生動物が発生してはいけないから、時折消毒薬をまくので、餌の確保は難しい、腐敗も、臭いも強く、また、炎天下だと熱中症になる犬猫が多い、それと、下痢、腐っているものもまじっているからだ。
マサはそんのことで、身体をこわして、命からがら、戻ってきたのです。それと、カモメが時折、集団で乱飛するところは、餌がある場所らしいが、元からいる野良犬のボスがいて、その手下が数十ぴきはいるというのです。
秋田犬との混じりの犬て、名前はゲンタロウといって、身体はは大きいし、眼光鋭く、狼みたいな犬が場所を仕切っているので、新参者は餌にありつけないのだと言うのです。
マサは月島から戻ってきて、この公園の土管を棲みかにして、生きる方法を考えると言っていたのだが、ある日、出掛けたまま帰って来なくなった。私に迷惑がかかると、思っていたかもしれない。体が衰弱して、土管の中から、出られない日が多かったからね。遠慮しなくても良かったのに。無事ならば、良いけど、
羽田空港辺りでさ迷っているのかもしれない。、仲間が大鳥居のあたりをねぐらにしているからね。
間違えて、滑走路に入って仕舞うと、二度と戻ることはない。あすこは、どんなことがあっても野生動物を捕獲する。飛行機の離着に影響するから。生きていてくれればいいのだが。
ふっと、我にかえるケンタは話を続けた。
ポー様、埋め立ては東京湾を一周する位の規模で昔から工事は進めている。国策です。埋め立て工事は10年位かかるかもしれません?その間、生ゴミも含めゴミは東京近辺から、ここに捨てに来るので、餌は何とかなると思いますが、広い埋め立て地をさ迷いながら探すから大変です。問題は
カモメがいる所は食べ物が豊富です。しかし、新参者は近寄れない。縄張り規制の餌場です。
犬猫の習性というのか、縄張り争いが、頻繁にあって争いが絶えません。命を落とす野良が数え切れないとサムは言ってました。
兎に角、50匹程の野良犬や野良猫が、ゲンタロウの手下になっているのです。
このお台場あたりで、飯を食いたいなら、ゲンタロウ一家の手下になるか、死を覚悟で、鴎のこない所で餌漁りをするしかない。
手下になるにも、一家の掟を守らなければ生きて行けないのです。
組の掟は、
1*餌になるものは、勝手に食べてはならない
まず、親分に差し出すこと。
2*保健所係員!新参者の見張りを怠ったものは、海に投げ捨てる
3*自由恋愛は禁止。所帯を持ちたいものは、届けが必要事。子供は許可なく生んではならない。
5*脱走を企てた者は、全員海に棄てる
6*隠してある、食料品を盗んだ者は海に棄てる
7*組を転覆及びそのような先導したものは、政治犯として、公開処刑とする。情状酌量のあるものは無期懲役とす。
8*お祭りに参加しない者は組から脱会すること。迷惑だから。
おーい。君の言うことだから、間違いないと思うが、本当だったら大変な事だ。
血相をかえるチャチャだった。さらに
計画の練り直しだな。町田に帰ろう。故郷に帰れば、馴れた土地だから、勘もある、この、チャチャが、ひもじい思いをさせないよ。
ヨサがいった
せっかくここまで来たのだから様子をみて帰ろうよ。土産話にさ、その、なんとかと言う親分さんの顔を見たいしね。そんな、悪党なら、たいした顔をしているはずがない。知恵を働かせば道働かせば開けるかもよ。
ドムが反論した。
ヨサ、無責任なこと軽々しく言うな。袋叩きにあったらどうするのだ。怪我でもしたら、戻るに戻れないぞ。土産話だと、軽々しく言うな。
ゴミ集積船にトラックがゴミを移しはじめていた。野良犬猫達は、埠頭の傍らで円陣になって、
篤い協議をしている。
ドムが、喧騒の間に入るように言った。
でもさ、暴力団のような犬猫軍団をこのまま、放置したら、永遠に、理想の夢の島動物独立国は出来ない。そこまでいかなくても、自由に食べ物もそこそこ足りて暮らしていくのが当初の目的にして、その理想の一歩さえ踏み越えられないなら戦いをするしかないのでは。
チャチャがドムの言葉を遮るように、
ドムよ、相手は50匹のならず者だ、こっちは、8匹、それも、女、子供いれてだ。
戦にならない。お前は馬鹿か。戦にならない。夢の島作戦は白紙にもどった。他に探せば、埋め立て地はあると思う。町田戻るのも良しだ。
皆は首をうなだれ沈黙してしまった。さすがのポーじいさんも、腕を組んで、唸ってしまった。
リリーが立ち上がり演説モドキを始めた。
他の埋め立て地に行っても、同じ問題が起こって来るはずよ。
チャチャさん、それでも牡猫なの。親分だか、大統領だか知らないけれど、そのゲンジロウ親分に怖じけがついてさ。
悪はどこにでもいるのよ。
お台場で苦しむ仲間のためにも、一揆をしようと、言ったではないの。裕福そうな、身なりをしていても、心の醜い人間は山ほどいます。野良犬猫達だけではない。問題は、悪が、蔓延していくと、弱い生き物すべてか、滅びるだけではなく、
最後にはその、悪人間、悪野良犬猫達も不幸になるのが気が付かないだけなのよ。
だって、そうでしょう。よく考えてみて。
富が一ヶ所に集中したら、お札に例えれば、ただの紙切れでしょう。だって、使う人が、いないのだから。
お金は幸せを運んでくれるけれど、それなら、幸せが誰にでも行き渡らないとお金の意味がないてしょう。わかった。
だから、私達にできるのは、知恵を出しながら、悪がそこに、立ち塞がったら、進むしかないでしよう。勇気のあるチャチャと聞いていたけど、案外ね。怖じ気ついたの。
ふん。あなた達が恐れをなしているなら、ここで待つなり、帰るなり、すればいい。
チャチャが言う。
そうだよね、リリーが、勇気ある野良猫だと、思っていてくれたのだから、俺はいくよ。男には、プライドがある。なくなったら、この世は闇だ。
サキが言う。
リリーの言う通り、ここは女猫二匹に任しておきな。
自慢話じゃないが、昔はね、ヤクザやさんの親分に、親爺の残した借金を延ばしてくれとお願いしてさ、駄目ならこの窓から飛び降りるとね。そうしたら、延ばしてやるからこの窓から飛び降りろと言うからさ。私はね、窓に手をつけて、片足を外に出したのさ。
そうしたら、後が面倒になると考えたと思うよ、(やめとけ、やめとけ)と止めに入ったのさ。
どこで、何が起こるかわからないのが、この世さ、そのゲンタロウ親分さんとやらの所へつれておいき。
さぁリリーさん行きましょう。あんたも、半端な猫じゃないね。面白そう。ふ、ふ、ふ、。
ポーじいさんが立ち上がり、リリーとサキのそばに行きました。
年老いているから、声も渋い。ゆっくりだ。
この、老いぼれもリリーと、サキさんの意気込みには畏れいった。やるだけやるしかないな、昔の心ある人間が、花落ちて実を結ぶという句を残している。上手いこと言ったもんだ。じいさんよ、後の世ために、華はもういい、枯れて、良い種を残せと、わしにはそうとれる、わしは枯れすぎた。丁度いい、死に場所だ。
リサが、悲しそうに、
じぃちゃま、死んじゃうの。そんなことないよね、ドム
ぼーじいさんは、死ぬわけないだろう。リサ、心配するな、みなに、決意を示しただけだ。
死ぬ気でがんはれとね。
。皆はな、命を粗末にするなよ。なにがなんでも生き延びろ。これからがある。
チャチャが笑みを浮かべて、
ポーじいさんが腰を上げれば、恐いものなしだ。
知恵の塊まりだからね。千人力だ。
そうときまれば早速その月島の埋め立をしている所に出掛けよう。
月島の先端には、四トントラックが、満載のゴミを積んで土埃りをあげ、数台のブルトーザのそばにゴミを下ろしていた。東京ドーム程の広さだ。
警備員の事務室に通じる入り口以外は、白いコンパネで囲まれていた。
あまりにの広さに、野良猫仲間は驚きを隠せない。
ポーじいさんは皆に
おそらく最後のトラックが通過する、夕方には、あの入り口はバリゲートで入れなくなる。
今なら警備員の監視の目を盗んで入れる。やるならいまだ。
一ぴきづつだ。とりあえず、右奥の黄色いブルトーザの影に集まろう。ほら、海の近くにあるだろう、1台だけ、動いていない。
わしが最初だ、よく見とけ。
そういい残すと、弱ってきた、右の脚をかばいながら、警備員が事務をとっている隙を見つけて20メートルはある入り口を通り抜け黄色いブルトーザを目指した。
皆が、ブルトーザに集まるのに、30分位かかってしまった。
ポーじいさんは全員集まったのを見届けると、
さぁ、これからが勝負だ。必ず、その何とか組だかしらないが、不良の犬猫らが、見廻りにやってくる。お前たちは口をだすな。わかったな。
案の定、5匹ほどの野良猫犬達が近づき、たんかをきった。目はつり上がり、鋭い。
中には片目の猫もいる、犬が四匹他は猫だ。その中でガタイのいいセパート崩れの犬が、ポーじいさんに近づき、
おい、じじい、お前が一番うるさそうな猫だな。
この島に誰の許可をもらって入ってきた。
ここはな、ゲンジロウ親分の縄張りと、知ってのことだろうな。
ポーじいさんはだまっていた。
黙っていてはわからない。誰の許可を受けたか聞いてるのだ。
ポーじいさんは相変わらす黙していた。
このじじい、俺をなめてるな。いい度胸だ、おい皆な、そこにいるやつも、叩きのぱせ。
そう言うと、悪党犬猫は一斉に飛び掛かってきた
ポーじいさんは、仲間に視線て奥に下がれと、険しい視線を放すと、一番最初に口を開いた、やかましい犬に蹴りを入れ、間髪入れず、次から次えと面白いように叩きのめしていった。
辺りには呻き声あげたり、骨が折れたり鼻から^血を出したりして、犬猫が倒れていく。
ポーじいさんは脚の痛みなどどこふく風、舞い上がてっては、蹴りこんだり、叩きのめしたり、猫座頭市のような活躍だ
悪党猫は足をひきずったり、手をかかえたり、その場に倒れたり、足早に逃げていく者もいた。
ブルトーザの脇に隠れていた仲間は、この勇ましい、ポーじいさんの格闘をみて、驚きを隠せない。ただ茫然としていた。
チャチャが、
おい、皆、見たかい、ポーじいさんをよ。何処にあんなパワーがあったんだ。
腰痛だ、脚が痛むから先にいけとか、肩をかせとか、こぼしてばかりいたのに。
フルトーザーの陰に仲間と潜んで様子を見ていたサキさんがいった。
私はね。ただのじい様ではないと分かっていたよ。
あの格闘技は、日之影無念流、と言う技だ。あの腕前は最高位たよ、九段かもね。
名誉の段だけど、ポーじいさんには通用しないみたいね。
何でそんなことリサさんは、知ってるの。
よくきいてくれたよ。
ぼーじいさんは若い頃、溝の口に住んだことあると言っていた。確かねー。もしかするとの話だよ。
私の馴染みだった、じいさまがね、昔、溝の口界隈に、名前は忘れたけど、腕ぷっしの強い若者猫がいたと言うのよ。その道の悪猫には、恐れられていたという。
日之影無念流という武道の達猫だったてさ。
人情家てさ、誰かの濡れ衣背負ってさ、股旅くらしさ。
いいい男だねぇ。そんな男、今時見たことないね。
もしかするとポーじいさんは昔の話をしない、じじ様だから、その男ではないかとね。たぶん当たりだよ。うふふ。やるねーあのじい様。
ドムが興奮して言う。
つくし野の柿の木の下で、朝から晩までにじっと、新聞を読みふけるが、雀と遊んでいるか、変わった猫だとおもってました。だから、何か奥の深いものを隠していたように、この若輩者の僕にも、感じていましたよ。
腕前は伏せていたのね。貫禄ね。暮らしに関係ないからね。
喜ぶような表情でリリーが言った
ぼーじいさんは、皆の話を聞いていて、なにも語らす、身に付いた汚れを払っていた。
倒れている悪党犬猫が残っている。呻き声をあげ。所々ゴミの悪臭を放つ地面に、ポーじいさんの蹴りで、意識を失っていた犬が、やおら、起き上がり、眼を擦りながらケンタをみつめていた。
おーい。そこにいるのは、ケンタではないか?
(声はかすれて、元気がない、)
踏みきりの、土管にいたケンタだろう。俺だよ、ドボンだよ、
小さな声ですがるように手を上げるドボン。
おっ、ドボンさんか、やっぱりお台場に来ていたのですね、なんでまた、この連中と?真面目なドボンさんがさー。なにしているの、こんなところで。
、会えてよかった。
この二匹の犬は幼なじみの親友だった。
すまねー、こんな惨めな姿をみせちっまて。俺はケンタの親方、いや、仲間達をここから、追い出すために襲撃した。許してくれ。
ドボンは、まわりで、怪訝そうな顔で見つめるドム達に、頭を下げていた。
そして、ゆっくりと立ち上がり、ここを去ろうと足をひきずりながら歩きだした。
ケンタはドポンの腕をとり、
待って、ドボン、行っちゃだめだよ。行っちゃ。
ポーじいさんが、ブルトーザの脇で座りながら、言った。もう、普段のポーじいさんだ。落ち着いていた。
ドボンとやら、ここにいろ。帰るとひどい目に、会うぞ。そこの倒れている者の中で戻りたくないも者はここに残ればいい。
三匹の猫と1匹の犬が立ち去ろうとしなかった。
ポーじいさんが静かな声で、ドホンに話しかけた。
ところで。ドボンとやら、お前さんはこのままゲンジロウ組にもどってもいいこと一つもない。
どうだろう毛、わしらの仲間に入って、協力せんか。
はい、親方。協力するもしないもありません。命あるだけてありがたいことです。
私は、組の幹部でも有りません、今回の失敗は、ああだ、こうだと言われ、最後は、お前達がドジだからと罵られ、幹部は生き残り、我ら三下は、他の野良犬猫の見せしめのために、身体に重りを結わかれて、海に投げ込まれるか、ブルトーザの下敷きにされるのがせきのやまです。
やはりな、わしの考えた通りだ。
ところで聞きたい事がある。
へい!何なりと
ゲンジロウ組は今晩にも再び襲ってくるはすだ
このまま、なにもしないと、組の存続が難しくなるからだ。
戦うには腹が減っては戦は出来ない。どこからか調達して貰えないか。よろしくだ。
はい。やってみましょう。命がけです。
能書き言うわけでは有りませんが、ご存知だとは思いますが、野良の世間では、風評で、ここに来れば、餌に不自由はしないと流れていますが、勝手に探すのも一日かがかりなのに元締めのゲンジロウ組がこの島を思い通りに締めているので、新人さんには、地獄の思いをしている犬猫がたくさんいるのです。
監視されているし、自由に行動すれば、ポイと重石附けられ海のなかです。
わたしも、その中の一匹です。後悔しているのです。ポ親方の期待に応えられるよう、これからひとっ走りしてきます。
これから行くところは、ゲンジロウ組の食材置き場です。警備員にわからないように、古材を集めて囲い、乾物が保管してあります。
普段は夜にになってから、水際に出てくる、小物取り、イッコ、蟹、ごかい、海草などです。これも、規則で、黙って取ると、海にポン棄てです。
規律がキツイほど、組織は一本化されるらしいです。いやな渡世です。
食材置き場には監視の犬猫が常備しています。わたしも、順番でやらされましたから、勝手はわかっていますが、運があれば良いのですが。
ケンタと、ドムさんと、ヨサ、チャチャさん、は私と一緒に来てくれませんか。
なぁに、監視の犬猫は、二匹ですし、何とかなりますよ。
五匹の野良はバラバラ横隊で目的の食材置き場に向かった。
お台場のボスと出逢って、さあ、どうする
ゲンジロウ組の食材置き場は幾つにも分散されているとドボンはいう。廃材の集積場か、掘っ立て小屋の裏とか、海辺の石の間が多いらしい。
危険回避の為だという。
ブルトーザでいつ壊されるかわからないからだ。
廃材の集積場は、海辺の近くにあり、板切れで食材が隠されていた。
見張り役の野良犬が二匹いた。黒毛と茶色だ。
ドムさんとチャチャさんは、俺がおとりになって、逃げまわるから、そのすきに、あの資材置き場の下に食材が、板で隠してあるので、持っていってください。
ドボンは番犬に近より、
俺はもうだめた、こんな、暴力団見たいな世界はおさらばだ。食い物を盗みにきた。そこをどけ、
と一括すると、
なに、お前はドボンだ。気が狂ったのか、掟破りは死罪だぞ。
しばらく取っ組み合いが続いたあと、一気に逃げた。後を追いかける番犬二匹。
その隙を狙ってドムとチャチャは、材木を振り分け、食べ物を漁り始めた。
素早く、乾物になった、いか、タコ、アジ、イワシ、などをくわえて、一目散に皆のいる黄色のブルトーザに持ち帰りました。
それと、同じ位に、三匹の犬がこちらに向かってきた。ドボンと追いかける番犬だ。
ブルトーザにつくとドボンは、反転して、にらみ返した。
いつの間にか番犬二匹は、ドムだち、仲間に囲まれていた。
なんだこれは?
番犬二匹は暴れるのを止めて怪訝な顔つきで。その場をくるくるまわりだしていた。
多勢に無勢。観念したようである。
リリーが番犬二匹に近より、言った。
あなた達、元を正せば、普通のワンちゃんでしょう。もういい加減にゲンジロウ組を辞めなさいよ。似合わないわよ、顔見ればわかる。暴力団向きではないのよ。仕方なしに見張りをやらされているのが解るのよ。今がいいチャンスですよ。
絶好の機会よ。
私達仲間はこのお台場に野良猫犬猫の独立国を作ろうと、わざわざ町田から来たのよ、
自由と、正義と、情のある野良犬野良猫を創るためによ。野良犬野良犬達でこんな大それた革命擬き行動に賛成する仲間はいないのは、承知です。
でも、誰かが、やらないと私達は、永久に奴隷なのよ。
馬鹿げた事だと思うになら、ここから、逃げても良いわよ。犬猫版、夢の島一揆と言うところかしら。
番犬二匹はお互いに眼を合わせて考えている。
一匹の番犬が、
リリーに向かって言った。
俺達も仲間に入れますか。悪義なことをばかりしてきた俺達だけと。
昔から反省すれば、おとがめなしと、昔の聖人がいってたわよ
はい、はい、そうと決まれば、手伝って。夜には、ゲンジロウ組が襲って来るからね。
ぼーじいさんは、
手伝って、といっても、バリゲート作る材料もないし、あっても、重くて運べない、作ったとしても、無駄だ。人間は飛び越えは下手だが、犬猫は、上手に飛び越える。
連中は総掛かりでやってくる。おい、新人さん、ゲンジロウ組は総勢何匹だ、
はい、62匹です。
増えたのだな。うーん。
ポーじいさんは少ない髭をなぜていた。
これはでごわい。攻められると負けるな。
時間が過ぎていく。お月さ間は、知らんぷりしている。横浜の港を見ると横一線に光り輝き、行き交う船が波まに揺れていた。
ポーじいさんは黄色のブルトーザの側に皆を集め、静に話しかけた。
一揆とは、社会の理不尽な行為に我らの要求をのませるものだ。今の皆の考えは一揆ではない。ただの、戦にすぎない。食べ物を確保するためとかね、一過性だ。これからは、リリーの掲げる夢の島一揆とよぶことにしょう。
そうなると、死して勝つ、の心で立ち向かう覚悟が大切になる。
座して敵の攻撃を待っていてはならない。こちらから、仕掛けるのだ。
ゲンジロウ組はただ暴力で自分達の利益をむさぼる野良猫犬猫集団に過ぎない。
本当の敵は我ら野良犬猫を人間の都合のいいように交配して、飼い慣らし、都合が悪ければ、無責任にも我らに餌もあたえず、路上に放置したり、野山に捨てたり、保健所で毒ガスで殺したりして、道義を忘れた神をも畏れない地獄に堕ちた人間に成り下がってしまったこの醜い人間こそが、真の敵である。
一揆と皆が言うなら、野良猫犬猫解放、安定した、食料の提供。虐待禁止の為の闘いなのだ。
その、手始めがこれから始まるゲンジロウ組との戦いだ。勝ったからといって終わりではないぞ。
リリーが言う。
なんか、ポーじいさんの話を聴いていて、モヤモヤしていたのが、スッキリしたわ。
この悪党犬猫をこらしめて、ここの主導権を掌握しても、いずれ、この土地にもビルが乱立して、私達はもとのように、どこか、街中を徘徊していく。
それでは意味ないのよね。人間反省させる、起爆剤にならないとね、
チャチャが太い手を上げて、言った。
先ずは、ここの野良猫犬猫達を改心させることだ。叩きのめすことではない。でも、戦に負けると、彼等の道理が通ることになるので、ここは、やはり、腕ずくでもねじ伏せる。
いずれにしても、タコがタコの足を食べていることに気がつかさせることだ。
何となく意志が統一出来たようだ。
では、向こうから、攻めて来る前に、こちらから、行く。
ぼーじいさんは、やおら立ち上がり、ゲンタロウ親分のいる方向をみつた。
そこの新人さん。少し尋ねるが、ゲンジロウ親分はこの時間はどの辺りに居るかね。
はい、今頃は、慌ただしくしていると思うので、何かあるときはブルーのブルトーザと決めてあるのでそこかとおもいます。ここから離れているので、今は暗くて見えませんが近づきけば月あかりで見えます。
わし達がそこまで案内いたします。
取り巻き幹部はいつも一緒かな。
いいえ、それぞれのグループの長をしてますから、親分の回りには、二、三匹の取り巻きだと思います。手下は10匹、一組で、行動すると思います。以前、浅草下町の連中と一戦、交えたときは、そうでした。
サキがつかつかとポーじいさんの前に出てきた。
ポー様
私にも花を持たせてくれませんか。なぁに、昔どった傷あとが、じくじくしだしてね。
一度は死んだわたしてす。ポー様がダメと言っても、先に行かしてもらいますよ。
皆さんが来る頃、殺されているか、猫質になっているか解りませんか、その時は私のこと等、忘れてくたさいまし。
昔はすっぽんのお竜と浮き名を流したこたもある、親不孝なメス猫です。
大義名分があって命を落とすなら、こんな粋な死にかたは贅沢です。
だだしゃ、死にませんよ。竜さんはね。
よけいなお世話かもしれませんがね。
先にいって、無駄な戦はよくないと、説得してみす。無駄だとおもいますがね。ここにいる猫達の、純な命を渡すわけにはいきませんからね。
サキ姉さんは、皆の意気に感動していた。
ポーじいさんは笑みを浮かべながら、
サキさんは粋な猫さんだ。止めても無駄だろうから。
なぁに、、皆んな、そんな哀しい顔をしなくていい。心配いらない、サキ姉さんがゲンジロウ組の親分と渡り合うのも一つの方法だ。度胸があるから、ここは、一つの見守ってみよう。
サキ姉さんの危険を避けるために、我等もその後をしばらくして着いていく。
数が多ければ戦は勝つと言うものでもない。歴史家が証明している。
サキさんはヨサさんに
別れの言葉は言わないよ。
あんたには、お礼を言うね。何だかんだ有難う、こんなあ姉さんと、形だけでも。夫婦になってくれてさ。
いい娘がいたら。幸せになるんだよ、あばよ。
そう、言い残すと、案内の犬を連れて静まり返った、埋め立て地を歩きだした。
お兄ちゃん、もうすぐかい。その親分とやらの、いる場所は。
はい、あすこに屯している中にいます。私は顔が割れているし、喧嘩にはめっぽう弱いのでこれで戻ります。気をつけて下さいまし。
有難う、ここから先はわたしだけでいいよ。
ブルーのブルトーザの廻りには、野良猫犬猫達がうごめいていた。
召集が掛かかって、殴り込みの体制だ。どの犬猫も興奮して、静にしているものは少ない。
遠くで汽笛がなっている。
サキさんはその環の中心を掻き分けて入っていった。案の定、二、三の獰猛な悪党犬猫が立ちふさがった。
なんだ、きさまは、ここは女猫が来るとこではない。腹減らしたのか?食うものはないぞ、忙しいのだ、さっさと行け。と、罵声をあびた。
サキは無視して前にでる。
二匹野良猫犬はサキを腕ずくで止める。
神妙に取り押さえられ、座らせた。
いい加減おしよ。あんたらに用はない。親分のところに連れていきな
なに、このアマ、親分に会わせろだと、
サキの腕を掴み、立ち上がらせて、追い出しかかった。
なにすんだい。この組のものは、こんなことしかできないのかね。ふん、お台場の大親分だなんて、聞いて呆れるよ。親分も親分なら、子分も子分だ。さぁ、運が悪かったと諦めるか。
さぁ、殺すなり、ナンなりしな。渡世の仁義も地に堕ちたもんだ。
'
なに、吠えたな。蹴りを二三回入れる悪党犬猫。これを見ていた代貸しが、
もうよせ。離してやれ。三文親分と呼ばれちゃ、俺も形見がせまい。
分かった。連れて行ってやろう。だが、お帰りはないと思え。いいな、いなせのお姉ちゃん。
ところで、なにしにきたのた
おい、そこの、さっきの兄さんよ、中には気の聞く兄貴がいるじゃないか。少しは見直したよ。
何しに来たかと言われれば答えなければオア兄さんの顔を潰す。
いいかい。耳のあなほじってよくきくんだね。
親分にきいてくれ。佛の竜が、来たとね。それだけでわかる。
佛の竜だと。
さん、をつけろ、佛の竜さんがきたと。
おい、サンタ、親分に聞いてこい。佛の竜さんが会いに来たから。どうなさいますかと。
しばらくして、ゲンジロウ親分が自らサキに会いにきた。
佛の竜さんとはお前さんかい。死んだ政五郎兄貴の馴染みさんと聞いている。
ワザワザお出迎えとはどんな風の吹き回しだい。
あたしは、あんたなんかしらないよ。じょうたんじゃない、馴染みぐらいで、こんなとこくるか。
もう、すんだことは、きかないさ。佛の政五郎は世のため犬猫のために惜しまれて死んだあんた見たいなコセコセしていないよ。
親分、昔この姉さんとどんな関わりがあったんですか。回りのうるさい幹部が訊ねた。
いや、大したことはねえ、
サキは、
そりゃいえないさ。政五郎さんには、おっ、やめとこ。後でゆっくりききな。ここまで組を大きくするには、傷の一つや二つ越えてくるものさ。そのくらいのことわからないのか、ここの代貸は。
(政五郎親分は関東の元締めだった。ゲンジロウ
親分は、評判のいい、政五郎をねたみ、仕掛けをつくり、殺してしまう。手下のアサに罪をかふせ、自分は知らんぷりだ。そのながれのまま、今日にいたっている。サキは、年期を済ました、アサから聞いていた。アサは刑務所で、政五郎の誠の任侠道を知りその後、心を入れ替え、瀬戸海の離れ小島にある、小さな寺にこもり仏門に帰依した。
マサはサキに、若気の至りとは言え、ゲンジロウに騙されたと謝りを入れていた。
サキはこんな世界に嫌気をさして、凡人にもどっていた。
この件の成り行きを、他の組長に漏れればゲンジロウ組は壊滅するかもしれない、わけがひそんでいる(
ところで竜さん、わしに何の話があるのだ。
よく聞いてくれた。亡くなった政五郎さんの、言霊でね。
その頃夢の島一揆の犬猫達は、ゲンジロウ組を目指していた。ブルーのブルトーザに集まっている悪党犬猫達は、足音に気が付き、攻撃をかけようと騒然となっていた。
チャチャとヨサを先頭に野良猫犬猫達は、中央突破をもくろんでいた。
サキにとゲンジロウ親分の姿が見えてきた。
ドムの仲間達は毅然として近づいていく。
それを囲むように悪党犬猫達が、襲撃をかけようとした。
ゲンジロウ親分は、サキとの話を中断して、荒くれものの、悪党犬猫に、
やめろ、手をだすな、相手は僅かだ。いつでも殺れる。こいつらは、竜さんの身内だ。話を聞いてからでも、遅くない。
チャチャがサキさん、無事でしたかと、声をかけた。
サキさんだと、竜さんではないのか。
竜はむかしの名前で出ています、の頃の名前だよ、今は堅気のサキだよ、そんなことどうでもいいことだ。
皆さん、心配けけました。サキは間だ、死んではいませんよ。
ゲンジロウ親分は、情けのある親分だ。
心配いらない、その辺で、話を聞いていて。そうだろう親分はさん。違うかい。
ポーじいさんはサキがゲンジロウ親分を料理し始めたと、感心して笑みを浮かべた。
リリーが、サキの側に来ていた。
仏の竜さん、タンカ切り。そこ、どきな
リリーこれから、目の前にいる、情け深い親分さんと渡り合う、足らないところがあれば、遠慮はいらないよ。
凹ましておやり。
情け深いのか俺が?
甘く見ては行けないぜ。こっちから、攻める手間がはぶけただけだ。油断するなよ。さぁ、話を聞こう。
いっておくが、佛の竜さんとやら、死んだ清五郎親分の亡霊が気になり、お前さんと会ったのではない。佛の竜さんと言う姉御さんとあってみたかったのよ。一度はね。
昔、浜の港にさ、いいメス猫がいてさ。あんたのように容姿端麗で、気立ていいやつだった。
兄貴に譲るはめになり、俺は情けない男さ、それから狂い始めたわけさ。お竜さんがにてるんだよねえ。
できたら、浮き名を、流してみたいものだとね。。あは、は、は、冗談だよ、
そんな安いセリフはたくさんだよ。
言いたいことはそれだけかい。親分さん。
話は簡単さ。この、島から出ていけと言うことさ。
なんでだって。
取り巻き連中が、血相をかえ、親分の顔色をみる。一触即発だ。
サキは毅然と続ける。
腹減らしてやっとの思いで、食べていけると、この夢の島に来てみたら、正直者の犬猫を暴力で脅し、自分達の餌取りにこきつかい、反旗を翻す野良はブルトーザの下敷きか、海に錘をつけて投げ殺すそうだね。
あんた、それでも男かい。
人間に追い回され、やっとの思いで、夢を抱いてやって来た夢の島が、仲間を助けるどころか、同じ野良が仲間と争い、殺仕合の様だ。これじゃ、人間の思うにつぼだろう。生きているものは、すべて地球の恩恵を承ける権利があるのさ。お前みたいな奴に解るはずがないさ。仲間を奴隷にして喜んでいる野良だ。バカなやろうだ。
さぁ、言いたいことはそれだけさ。スッーとした。殺るならやりな。
南無妙法蓮華経。南無妙法蓮華経。
おい、姉さん、当てつけがましくお経などやるな。
そんなに極楽に行きたいのか、地獄極楽なんてあるもんかい、あったとしてもな、俺は地獄で、地獄の親分さ。言いたいことはそれだけか。
ゲンジロウ親分はシェバートの雑種で、狼のような眼光だ。黒毛混じりで、少し置いているが、それなりの風貌がある。
ふん、いい歳してさ。恥ずかしくないのかい。お前さんのやっていることは、子供でもわかる。そんなこともわからない親分なら、どこかにいっちまいな。
そう言っても、いくとこないしか、ふん、あわれな親分だよ。
ぬかしたな、佛の竜と遠慮してたら、とんでもねぇことぬかしやがる。それまで言うなら、覚悟はあるんだろうな。おい、そこの威勢のいい姉さんよ、
ふん。余計なお世話だよ。前にも言っただろう。
こんなゲスの親分の手に掛かって殺されるのは、情けない女猫だが、これもあたいの因果応報と諦めているのさ。さぁ、殺りたければやるがいい、
やり取りをそばで聞いていたリリーはゲンジロウ親分に言った。
サキさん、この親分さん、なにいっても無駄みたい。時間の浪費よ。糠に釘、豆腐に釘、帰りましよう。無駄死にすることないわ。
そこの、若いメス猫よ、ついでに、いまここで、無駄死にさしてやる。そこに、黙っている仲間達もついでにあの世にいかしてあげる。
ポーじいさんが、親分の前に姿をだした。
なんだ、老いぼれ。お前は、殺すのが忍びない、
俺の親父を思い出す。こんな場面に出てくるやつがあるか。消えろ、さぁ、早く消えろ、これ以上親不孝はごめんだよ。
ポーじいさんはダンボール敷いた、その上に座って偉そうに話す親分に言った。
親分さん、あんたの敗けだよ。
ふざけたこと言うな。何でだ
周りを観てごらんなさい。ほとんどの犬猫が話を聞いていて心が動いたのだ。
あんたの仲間達があたまをさげて、うなずいている、違うかい。
俺達はもう、お前さんの命令は効かないぞと、静かに抵抗しているのだ。だから、終りだ。おまえさんはな。
ゲンジロウ親分を取り巻く幹部の一匹が、肩で、仲間に取り抑えろとせっつくが、動く気配はない。むしろ、幹部をにらみかえしていた。
さぁ、親分さん、私達を捕まえろと号令かけて見てください。
ゲンジロウ親分は厳めしい顔して、大きな身体を揺すっている
。
ブルトーザの陰で争いがあったらしく、喧騒が続く。
しばらくして、チャチャとヨサが悪党犬猫の首根っこを押さえてポーじいさんの前に姿をつきだした。
チャチャが言う。
ポーじいさん、こいつらは親分さんの怒鳴り声聞いて、わしらに、飛びかかってきたのてすよ。
周りには20匹の悪党犬猫がいたので、これは大変だと思い、二、三の悪党犬猫と取っ組みあいをしていたけど、他の連中は、我らの格闘を眺めているだけで、手を出そうとはしないのです。
そればかりか、我々に手助けをするのです。
なかには大声を上げて、
おい、みな、こちらさんの犬猫さんは、おら達をすくいにきただ。
この機を無くしたら、一生、ここで奴隷あつかいだ。立ち上がれ、皆の犬猫よ、さあ、銃をとれ、槍を持て、と叫ぶものが出てきて、大半の野良達が顔を見合せ、うなづき、ゲンジロウ組に反旗をひるがいした、ということです。
まもなく、ここの本陣に来ますよ。今、銃を槍を槍の代わりに、武器らしき物を探していますよ。
素手だけでは負けると思っているのです。
狼狽した、ゲンジロウ親分は、目の前にいる、数十匹の悪党犬猫たちに、
な、なにやってんだ、テメー達。はやくやっつけろ。
以心伝心していたらしく、誰も動こうとはしないのだ。
数匹の幹部が、親分を後ろにして、ポーじいさんに挑んできたが、ポーじいさんの日之影無念流を出すことなく、取り押さえられた。
しばらくして、へこんだ、アルミ缶や、フライパンをたたき、大声を上げながら、電線の切れ端。鋭い箸。パイプ。なとを持った野良達が集団が現れた、
ポーじいさんはゲンジロウ親分に
そらみたか。暴力の呪縛から、解放されて、みな喜んでいる。もう、これで終わりだ。観念して、この夢の島を我らに引き渡せ。文句ないな。
ゲンジロウ親分は
この一家も終りだ。さぁ殺せ。お前達、この俺を裏切りやがって。覚えておけよ。この、始末はきちっと、ケジメをつけるからな。
ゲンジロウ親分さん、この場に及んでみっともないぜ。一度は、この島を束ねた親分なら、潔いとこ見せなきゃね。裏街道をちっと知っているお人なら、この見苦しいとこ見せれば相手にされないぜ。と、ヨサが呆れた顔を浮かべながらいった。
うるせぇ、うーん。わかったよ。
俺も男だ。これ以上、みっともないことは、しねぇさ。保健所でも、海の中にでも連れていけ。
ゲンジロウもこれでおわりだ。思いだせば、あくぎなことをしてきたもんだ。お天道様。御免よ。遅蒔きながら詫びいれます。勘弁してください。
ところで、ポーじいさんよ、お前さんのところの佛の竜さんには負けたよ。
度胸のいい、今どき珍しい女猫さんだ。骨董品の輝きだ。竜さんの歯切れのよいタンかには参ったね。よろしく言ってくれ。あんたに会わなきゃ、組を明け渡すにずんだとね。
さぁ、さっさとどごにでも連れていけ。
開き直るゲンジロウに、ぼーじいさんは諭すように言った。
ゲンジロウさん、もう親分ではないからね、
どうですか、皆の食べ物のの、ありかを教えてくれませんか。冥土のみやげですよ。三途の川を渡るときの、木戸銭ですよ。
三途の川ね。木戸銭ねー。
おい、甚平、長介そんなところで、寝てんじゃねえ。寝たふりしてるのか、どうでもいいから、食い物の有りかを教えてあげろ。
昨日な、カモメのやつが、飛び回っていた、新しい埋めたてたところにある。
外の野良にもあげろ。大盤振る舞いだ。
水際の生け簀に。小魚もある、鯛は無理だ。ここにはいねえ。
さすが、夢の島を仕切った親分らしい。散りぎわは見事なもんだ。
あっそうさ。
だからといって生かしくれなんてケチなこといわないぜ。
あい、わかった。
では、ぼつぼつ死んでもらいましょかな、ゲンジロウさん。
ポーじいさんはにこやかな顔で言った。
えーい。と大きな声をあげ、日之影無念流の気合いをいれた。
ゲンジロウさん、いま切り殺したよ。もう、古い首は切り取った。
そんなことないぜ、ほら、ご覧の通り首は着いている。まだ生きてるぜ。俺は。
殺したのはお前さんの数々のあくぎな心だよ。
今は別犬だ、只の野良犬だ。そこいらにいる野良犬だ。そこいらにいる野良達に成るのは難しいのだ。それを勉強するんたな。
これからは、みんなのために頑張るんだ。
そこでだ。ゲンジロウさんには、
人間と闘ってもらいたい。といっても、喧嘩ではない。愛を持って接すると、必ず人間も優しくなる。一匹、一匹の愛がやがて大輪の花になる。それが、やがてリリーの言う独立国になるかも知れない。その歴史を創る礎になるのが我々だ。
1000年かかるかもしれない。
ポーじいさん、いや、ポーさま。
ありがとうございます。本来なら仲間の犬猫を、てめえさえよければと、自由であるべき仲間を、暴力で威嚇し、不本意な掟で、縛り付け、何て言う情けない奴だ、こんな俺を、活かしてくるれるとは。
さぁ、顔をあげてくださいな。
その声は、佛の竜さん。
ばかなこと言うのではないよ、佛の竜なんてさ。佛さんに笑われるよ。
ゲンジロウさんは今から、足を洗ったお兄いさんだ。
私はね、浜の竜さんだよ。これからね。伊勢佐木町の薄明かりでさ、野良を集めて占いだよ。
あたしみたいな裏街道を見てきたメス猫が、以外と、人気のがあるのさ。自分で言うのもおかしいがね。
あんたも、かたぎになって、ふらふら、伊勢佐木にきたら、親不孝通りの竜さん、今日は何処に出でているかいと、伊勢佐木五丁目の交差点の前の、ラーメン屋大王のせっちゃんにきいておくれ。
ただじゃ、占いはやらないよ。あんたなら、竹輪一本だよ。
おおとろは、当分、あてにならないからね。いまのあんたではね。稼ぎがないからね、
猫生相談のるよ。
竜さんは何でも屋さんかい?
その、屋と言うのだけはやめとくれ。駄菓子屋じゃないのだから。
あんた、悪党ぶってきたけど、本当は違うんだよ、一度つまづくと、気の弱い猫は、坂道を転がる雪だるまさ。
よかったね。崖にぶっかってさ。
海に落ちたらおだ仏だたよ。
ポーじいさんを囲んで、深夜の宴が続く。元親分の隠し食料をが華だ。
元悪党犬猫とドムの仲間達が一同に集まり歓談している。
リリーが寂しい顔でリサにちかよってきた。
サキさん、こと、佛のお竜さんかな。うふふ、
サキさんは、横浜に帰ってしまうの。嘘でしょう。ダメよダメダメ。寂しくなるからね。
直ぐにはいかないわよ。もう少し、皆が落ち着いてからさ。私には、独立国とか、人間を変えるとか、ややこしいのよ。
リリーみたいに、奉仕の精神が薄いのね。自己中専門だからさ。
自分の食いぶちぐらいは、なんとかなさ、
ヨサさんはどうなるの、サキさんにぞっこんよ。
私のようなキズ猫より若いの見つけるわよ。
あまり、接近し過ぎると哀しい思いでつくるから。
しばらくほっとけかな。時間が何かを創るさ。
よかった、サキさん、すぐ、行かないから。
サキさんは色んな顔を持っているのね。そこでさ、私の願い事の、夢の島独立国構想、出来るか出来ないか占ってみて。
いいわよ。吉と目が出れば、努力、凶と出れば
反省して頑張るんだな。
だけどね
占う前に問題ないのかしら。犬猫が独立独歩の国を創るなんて。一月も持たないかもよ。
しっかりした企画力が必要よ。
かりに夢の島を犬猫国とすると、私達にはお金は必要ない。食べ物だけあれば、最低限の暮らしは出来る。ても、それに甘んじていてはできないわね。解っていると思うけど。
独立国の意義は、交通事故。捨て猫の保護。人間の玩具からの脱出。保健所の監視委員の廃止。犬猫病院の増設。診療科無料化。毒ガス死刑の廃止。とりあえず、これだけのスローガンを上げていかないと、長続きしないわよ。
それぞれの目標を達成して始めて独立国になるのね。
その覚悟なければ、独立国は一時的にお蔵にしまっておくのね。
だから、今のところ、占う必要ないかもね。
占う時は、考え抜いたあとに、まだ迷うなら、占う価値があるけれど、いまみたいな、独立国の意義も理解していない仲間達だから、もう少し様子見だね。稼ぎで占いやってるわけではないからね。こう見えても、猫だすけ。
ありかがとう。サキさん、皆で、考えて見ます。
ポーじいさんは、勝利で喜ぶ100匹位の野良の前で言った。
この瞬間を持って解放だ。皆は、餌とり名人のカモメと共に暮らすことが出来るようになったのだ。
アチコチで歓声がわく。
だが。本当の闘いはこれからだ。その説明をここにいるリリーかする。
皆さん、頑張ったわね。今までは、仕方なく悪さをさせられたのだから、自分を責めなくていいのよ。リーダーのポーじいさんが。これからが、大変だと、言ったことはね。
これから、人間と戦を始めるのよ。人間は、知恵もあるし、なんでも持っているから、勝ち目はないよね。
闘うといっても、勝目のない戦はやりたくないよね。人間と闘うけど、人間のハート、心と闘うのね。
人間は、気の毒なことに、人間以外の動物と対等に暮らすと言う、自然界の道理かな、原則を忘れてしまったのね。可哀想なことです、
もう、かれこれ20万年もたつかしら。
だから、忘れた動物にも優しい心を思い出させることなのね。
そんなに、難しいことではないわ。
まず、手始めに、ここにいる
野良だけで、独立することよ。
たぺるもの、寝るところ、などを人間の世話にならないで、自分達ですることよ。
少しは分かった。
ゲンジロウ親分がまともな暮らしに切り替えたので、その事に嫌気をさして、この場所から、逃げさった、野良を除くと、ブルトーザの周りには、60匹ほとの、野良達が残り、気勢をあげた。
別れはつらいね。でも、でもだ
縄張りの引渡しがすんで、その夜は興奮して、野良達はろくに寝ていない内に夜が明けた。8時になると、この月島の埋め立て地に、警備員や、建設の大型トラックが来るので、夜明と同時に野良達が検問所から、見えない、埋め立て地の突端に集まった。
つくし野駐車場出身野良達は、サークルの真ん中にいた。
リリーが元気な声をあげた。
おはようございます。
昨日は疲れたわね。ポーじいさん?大丈夫ですか。
ポーじいさんは笑みをうかべている。
さぁ、私達の国を創るとなると、どうしていいか分からないのが本音です。
規則とか、当番だとか、見張りだとかね。
元ゲンジロウ組の一太郎が、立ち上がり
私の言う筋ではありませんが、参考にでもなればと思い言わせてもらいます。
とーぞ、どーぞ。どんどん意見をいってくたさいね。
独立国、独立国と言いますが、もう、出来ているのではないですか。
暴力とか、イジメとか、規則とかは、やっと捨てれれたし、自由は、僕たちで保障すれは、いいことだし。
そんなことより、人間に、我らを理解してもらう方法とか、運動を考えませんか。
確かに、ここにいた犬猫は解放されているのよね。
チャチャが
つくし野組は、かずお婆さんに、マグロブツト、カリカリとか缶詰とか、だしてもらっていたから、贅沢になっているのだ。
かずお婆さんがいなくなり慌てた俺達は、夢の島という理想郷を探し求めて旅にでた。
ここに、いた野良達は、そんな自由も無かったし、食い物にも恵まれていなかった。
だから、僕達と根っこは同じだが、幸せの物差しが違うのだよ。
そう、考えると、彼等は、今、独立国を手にいれたことになる。違うかな?
ポーじいさんが
チャチャ、その通りだ。リリーの探す独立国は既に出来ている。
あとは、今の我々の環境を、どう、維持していくかだな。ドボンやケンタのおかげで、犬の仲間と友好になれたしね。
どうだりりー不満か?
そうなのね。これが夢の島独立国なんだ。了解てーす。
では、さらに発展させるためにはどうするの。こうしてワンコさんやねこチャン経ちと夢を共有できてのだから、このまま、お別れなんて寂しいです。
ドムのが言う。
皆でさ、ここに残り、カモメと仲良くして、暮らそうよ。外に出れば、また暴力犬猫達の餌食になるかもしれない。人間に邪魔者扱いにされるかもしれない。
その提案にリリーも賛成。皆さんどうかしら。
サキさん、が言う。
甘いね。
お台場の埋め立てもいつまでもあるわけではないよ。
雨も嵐も来るのさ。飯場の材木も、雨しのぐ、廃棄物も無くなるときがくる。
そんなこと考えるより、ポーじいさんの言う通り、外にでて、愛を忘れた人間達に、あんたらとおなじだよと、啓蒙していくことさ。
ポーじいさんが言う。
つくし野をでて、目的地には到着したが、着いてみれば、故郷のつくし野ご懐かしく思う。
我らは、食べ物が足らなくから、旅に出た。
ここは、カモメを頼りに、命はつなげそうだ。命だけ考えると、目的は、達したかも知れない。
だが、生きると言うことは、ダラダラ生きるのではなく、各々目標を立てて、それに向かって行く事だ。
従って、これからは、いまの理不尽な人間を、改心させ、真の愛とはなんぞやと我らの行動により、教えていくことだ。
そんなことできるのですか?
やろうと決めたらできる。1000年かかろうが。
先ずは、この夢の島から始めよう。
ブルトーザの運転手でも、警備員でも、誰でもいい。我らの悪い癖を出さないて、例えば、餌を貰うとすぐ逃げる。恋囁きがやかましい。行儀が悪い、などだ。
物をもらったら感謝の気持ちで、頭を下げて、お礼に一声鳴いてみこと。
なにがいいたいのかと言うと、人間に喜ばれる猫になることだ、
猫を見て、我身を変える。大袈裟だけどね。
その繰り返しだ。猫たけではない。犬も同じです。
それと、やたらに子供をつくるな。制限も必要。
リリーがつけくわえた。
あれ、最近の犬猫達は礼儀がよくなったと言わせるのね。
サキが納得しない顔で言った。
ポーじいさんは相変わらす平和主義てすね。
確かにいい方法だと思います。
しかし、悪い人間だと、殺されますよ。人間の愛なんて当てにしたら、命がいくつあっても足りませんよ。
やはり行動も必要です。
先ずは、墨田区保健所。ここに標準を合わせ
皆で、毒殺撲滅の一揆を仕掛けるのです。
とりあえず、身近な所からやりませんか。
占いの名前が親不孝通りの竜と言うだけあって、やらかすこどもド派手だね。
おもしろいねえ、このゲンジロウも行かせておくんなまし。
修羅場はあっしの世界ですよ。
昔の仲間も何匹も殺られている。弔い合戦ですよ。
いや、兵隊はこの中にいます。理屈の分からない
暴れ者がね。、
こんなことでポー様に御返し出来るなんて、思ってもみませんでしたよ。
墨田の保健所なら詳しいやつがここにたいます。
おい、鉄、そんなところで、ちっちやくなってないで、顔をだしな。ポー様、こいつ顔、歪んでいますが、若いときの病が元でね。
おい、鉄、墨田をさ、話してみろ。
ポーじいさんはあきれて、話を止めるチャンスをを忘れていた。興味もあった。先を聴いて見たいのだ。
へい、お初にお目にかかります。鉄ともうします。
墨田保健所を懲らしめるのは、塀の中だと、あいつらのおもう壺てす。塀の外であぱれれ、いざの時逃げられるし、係官を脅かせます。
あいつら、月一で、野犬狩りをやる。この、向島界隈は連中の縄張りです。たまには、他に行けばいいのに、馴れというか、数字が上げやすいのか、野良が多いのか。
トラックの荷台の鉄囲いにいる、仲間を救うのですが、鍵が架かっているので、ほとんど、救い出せません。
仲間は囲いのなかで、泣いてますよ。何も悪いことしたわけではないのに、。
あっしらにできるのは、車から降ろす時に、係官に、噛みつくのです。
仲間を助けられない腹いせもあるので、派手に噛みつきますよ。
この野郎とね。
あっしらのできることは、こんなことぐらいです。
係官も噛みつかれたことが、表に出れば、自分たちの恥じですからね。新聞にものりませんよ。
猫が襲うとすれば、塀を乗り越えて、保健所にくる一般人を襲うといい。たまに、猫も仲間が、ガス室におくられるので、腹いせにあぱれていますよ。
だけと、ポー親分さん、こんなこと、やっても無駄ですよ。むしろ、野良犬野良猫退治の口実をつけるだけですよ。
ゲンジロウ親分、いやゲンジロウさんは、仲間の弔い合戦だと言うけど、何の役にも、たちませんよ。
鉄、役にたたなくても、黙っていたら、ますます頭に登り、正義が見えなくなるからいいのだ。
ポー様も、保健所に打撃を与えるのは、世間に犬猫の存在を知らせ示す手段だと考えて
いるのだ。その時は頼むぞ、鉄よ、鉄っさん。あんたが大将。
いかったですね。ポー様。これで恩もお返し出来ます。
親不孝通りのお竜さん俺も、鉄も今回は鉄砲玉だ。
サキさん、があきれた顔して、言った。
そこまで仕掛けたら、台無しだよ。解ってないねー。
ポーじいさん、、保健所へ抗議にいくのは、無理だ。犬猫が保健所で騒ぎ立てても逆効果。取り消します。やはり、時間はかかるけど、平和的が一番ね。急がば回れか。残念だけど。
ポーじいさんがゲンジロウに言った。
勇ましね、鉄っさんとやら。仲間を思う気持ちが大切だ。良いことしたね。その気迫は尊敬ものですよ。
やはり、それは、それとして、人間と戦うのだが、戦う意味、方法が違うのだ。
しゃくにさわるが、人間を反省させるには、猫も犬も、まず人間に好かれるようになることですよ。
逆も真なりで、愛を受けたいなら愛をさしだすことかな。
かならず人間も、気がついてくれる時がきますよ。猫も犬も他の動物たちも、地球の同じ生き物だとね。100*200年位かかるかも知れませんがね。
お台場の埋め立工事は着々と進み、7ヵ所の砲台跡も残すは僅かとなりました。
夢の島に理想を求めてつくし野を旅立った仲間たちの行方は、もうわからなくなりました。
おそらく、何処かで愛をちりばめているのはずです。
風の便りですと、つくし野メンバーはポーじいさんは夢の島が終焉の地となり、ドムは妹のリサが精神的に弱いのでいっしよに生活しているようです。たしか、かずお婆さんの面影が忘れられなくて引っ越し先の相模原にいるそうです。
チャチャはポーじいさんに最後まで付き添い、その後のゆくへは分かりません。リリーは銀座のインテリジェントと結婚しました。
ドムとは、結局反りが合わなかったようです。
なんでたろう。やはり、それは、それとして、育ちかな。ドムかわいそう。
サキさん、こと、親不孝通りの竜さんは、伊勢佐木町のかたすまで、占い稼業のようてす。
見料が高い安いとかで客の猫と時々もめてるという。元気印は健在のようです。
ヨサさんは、やはり若い猫とどこか、都落ちです。竜さんが怖いからかもね。
あの山越へたらまた山があった。つくし野のドム
越えても、越えても、青い山。
種田 山頭火
2016 5 25
完了、そうざん、
野良猫ドムの冒険 1(大人の 毎日連載中