にじみおちる


 ぬりつぶしたような虚無感
 にぎりつぶした背徳感

 ぼくのてのひらにあるのは、空虚だけ
 ひっそりと植えつけられた恐怖を、ぬぐいとることができずに

 したたりおちる雫を追うたび、さみしさは何倍にもふくれあがる
 あのとき
 たしかにぼくでいたならば
 きっと、にじいろの月はぼくを見捨てたりはしなかった

 ここにいるのは、ぼくだけなのだ
 くっきりとした存在であるのは、ぼくだけなのだ

 ただ
 もう、時間はない

 逃げることもできず、抗うこともできず、
 虚無にひきこまれていくぼくを、どうか

 たすけることはしないでください

にじみおちる

にじみおちる

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-26

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