超能力高校の電撃使い(エレクトローター)

超能力高校の電撃使い(エレクトローター)

ここは超能力の技術を向上させる学園。
学校や施設。商店街などおおくの機関が揃っている。

なぜ超能力を向上させる必要性があるのか…


本文に続く…

1話 科学の世界

1話 科学の世界


超能力。(ちょうのうりょく)
 このような力は古代から神の力と言われ、御伽噺や伝説での産物であり全く証明がつかない異能力であった。
 この能力を現代社会に引き込まれていったのは何時のことだろうか。
 超能力は“神の真効力”と呼ばれ、言われ信じる者・信じない者で分かれていた。
 確認できる最初の記録は西暦2004年のこととされている。

 ある小学校に薬物依存の暴走族による学校テロをとある少年が阻
止したあの事件が一番最初に超能力が確認された事例とされている。
 少年が使用した能力は、 物質構築能力ぶっしこうちくのうりょくという物質の原子の動きをコントロールできる能力。
 当時は、それについて必死に研究する機関が多様であったがこれを証明できる者はなく、証明不可能と考えられていた。
 だがそれは、誤りであった。
 ほとんどの研究機関が赤字により中止され、証明される余地がなかったのだが
 日本の南西に位置するとある大きな研究機関が研究を進行させてい
た。
 そして2025年9月1日、21年間に渡り証明不可能と言われていた現象を証明したのが貝塚明彦という天才研究者が証明したのである。



 人には気を集中・願念をする時に 念力(サイコ)サイコという力が生まれる。
 そして 念力サイコを空気中に拡散している時(集中している時)に身体の周り窒素が”ヘキサンジウム”という気体に変化するのだ。
 このヘキサンジウムを分解することで不思議な現象(超能力)が起きる。
 一般人は 念力サイコは創り出すことができるが、それを分解する能力がない。だから超能力が使えない。
 超能力者とはこの念力・ヘキサンジウムを分解や構築・コントロールできる優れた人類を示すようだ。
 超能力の種類の違いはヘキサンジウムの粒子の種類の違いである。
  透視能力クレアボイランス(透視できる能力)や 水流操作スクリューター(水を操作できる能力)や・ 念動力者サイコキネシス(手を使わずに物が動かせる能力者)などいる。
 能力の強さというものは念力の強さやヘキサンジウムのコントロール技術などで変わってくる。
 超能力は生まれつきの問題であり、遺伝することわかっている。
 超能力者は日本に数少ないとても稀で貴重な存在だ。
 当時は世界中が統一される気配が無く、戦争が続いていること現状があった。
だが現代の世界中は”超能力”という技術や文化などで統一されつつある。
 そのおかげで日本や世界は外国などのグローバル化が多くなり、科学技術や建築技術などが大きく発展した。
 普通の一般人は能力が使えないが、全ての 時間割カリキュラムを受ければ紙コップ1個位は動かすことができるようになる。分解能力がつくということだ。
 世界中は超能力者の育成や技術の提供に争って取り組んでいる。
 超能力とは異常なエネルギーを造り出すことができ、大量発電などが社会の大きな負担を大きく減らすことが可能なのだ。


 それだけ超能力とは可能性を秘めている。
 最近の社会は能力育成の模様が多く関わってきている。
 そのため学校には「 能力技術スキル」という時間割が多く取られるようになった。
 高校では能力全般の授業しかない国立学校や専門学校が出てきている。
 その中の一つ。
 「科学技術国立高等学校」(かがくぎじゅつこくりつこうとうがっこう)。
 前のこの学校は理系の天才エリート校であったのだが、最近の経済の動きにより能力技術の育成のための高校になった。
 能力が使えない一般人でもこの学校に入れば、必ず能力が使えるようになると言われ、多くの能力者や天才を生み出している。
 最近の高校は学力より能力が優先され、能力技術がないもの・あるもので優劣が決められてしまうような実力主義になっている。いや、能力主義である。
そしてこれが今の世界。
 
 超能力を技術化しようと全世界の動きが止まらない。
 能力主義で優劣差別ができている。世界は大きく変わってしまっているのだ。
 これが 現在いまである。


・・・


 
 春はあけぼの。
 鳥がピヨピヨと鳴き始めている。
  2036年4月5日。
 青き色と朝の太陽の赤い光が混ざりあっている空が壮大広がっている。太陽が登りまだ時間は経っていない。
 急に2階の窓から太陽の光がベット就寝中の俺に飛び込んできた。
 「ひろ!!起きろーーう」
 カーテンをバット開けたのは高校2年生になる姉の 加奈かなだった。
 朝にしては珍しく何か上機嫌な雰囲気でこちらを見ている。
 「んだよ・・・眠い・・」
 明暗の差に目が眩み 広翔ひろとは掛け布団の中に入り込み二度寝。
 まだ朝の6時であり、アラームが鳴っていない。まだ起きるには早い起床である。
   ーなに張り切っているのかー と一瞬寝ぼけて思った。
 「おいおい、今日は入学式だろー?
   早く起きんしゃい。」
 なんだか嬉しそうに言った。
 そうだった。今日は俺(美咲 広翔)の晴れ晴れしい入学式である。
 彼女が張り切っているのは同じ兄弟で同じ学校に一緒には行くとで、昔から弟思いの姉にはたまらない夢だったからだ。
 中学生の時は違う学校だったため、昨日はドタドタしていた。
 親思いではなく、弟思いである。すこしベタベタしすぎだが…

 行くのはあのエリート学校の科学技術国立高等学校である。ーかがくぎじゅつこくりつこうとうがっこう
 この学校は 科学研究者サイエンスを育成する日本最大の科学高校だったのだが、最近は経済の流れにひっくり返されて能力育成のための専門学校になっているのだ。
 広翔は試験に受けたわけでは無く、特別能力生(特能生)と呼ばれるもので、この学校から声がかかったのだ。
姉の加奈はれっきとした能力者だが学力でこの高校に受験したのである。
兄弟揃って国立の高校に入ったということはとてもすごいことである。
加奈は入学式のことで委員会があるため早く家を出なきゃいけな
いらしく、俺も早く出なきゃいけない。
「下に朝ごはん用意したから早くきて〜」
「すぐ行くよ。」
と即答し、すぐ新品の制服に着替える。
この学校の制服は学ランとは全く別物で、黄緑のワイシャツ・
緑の制服に黄色いラインがスッキリ入っている女子向けのデザインをしている。
すこし恥ずかしげはあるが仕方が無い。
制服に着替えたら、すぐ一階に降りた。
キッチンでは姉の加奈が姿が無く、バスルームから音がする。
テーブルには一つのベーコンエッグとコーヒーが置いてある。
いつもは自分が朝食を作るのだが、今日は特別に気を使って作ってくれた。
9
優しい姉だ。
俺たちは事情があってここに2人暮らししている。
すぐに朝食を済まし、家を出る身支度の準備をした。
学校には30分で着くはずだから、入学式9時30分開始、全くの時間が余るのである。
自分はこんなに早く出発する必要はないのだが、気持ちが高ぶ
っているのか学校内を見て回る趣があった。
「かなぁ〜早く行こうぜ」
彼女はまだ風呂を出た後だった。
バスルームから顔を出し、部屋のデジタル時計をみて慌てた。
「あれぇ!?もうこんな時間?」
ドタバタと着替え、準備をする。
姉は昔から天然、且つマイペースなのだ。裏表のない純粋な性格
している。
新学期 (彼女にとっては)早々、大丈夫なのかという素振りをみせるが、一瞬で準備が終わった。
「さぁ…いこう」
・・・・
自宅から駅までは近く5分くらいで着く距離。
大通りは朝早くから賑わっていて黒い制服を着た親連れの中学生で混んでいる。今日、4月5日はどこの中学校も入学式のようだ。
それに対して広翔たちの制服は黄色に黄緑の鮮やかでとても目立つような色をしていて、
広翔にとって少しぎこちなさを感じている。


科学技術が大きく進行しているこの世界は多くの掃除ロボットや物売りロボットが道中で活躍していて、おかげでゴミがないような夢の場所を生み出してくれる。
超能力のおかげでこの世界は急成長を遂げたのだった。
「ねぇ、緊張してる?」
と親の暖かそうな言葉で問いかけてきた。難しい質問である。
「してねえよ。バーカ」
と強がりを言うような調子で即答した。
「あ、してるんでしょ」
顔を見直してニヤけながら、バカにしている。
「いやいや、してねーから。」
「素直じゃないなー。思いっきり顔にでてるし」

2話 無人機車(モノレール)

2話 無人機車(モノレール)

広翔と加奈は14区の大通りにでた。
車が走っている数は少ないが、何故(なぜ)か人混みが多い。学ランや制服を着ている中学生がよく見える。同じく入学式なのだろう。次々と駅の中に入って行く。

この街には電車という乗り物は存在しない。無人機車【モノレール】が沢山と通っている。
「満員電車」という言葉も死語になっており、 2分間に1度というテンポで駅に停車する。そのため、大勢いてもあまり問題はない。
最近は駆け込み乗車や、ホームに落ちることはまずなく、安全性に満ちた科学技術世界に変わっている。
一方に能力を応用したテロ事件や暴行事件が多発してしまっているのが現状である。
過去にも事件は沢山あった。


改札で学生用パスポートを通し、階段を登った。 足が軽い。
《足が軽い》とはもちろん表現技法の一種で、《気持ちが浮いている》という意味だ。
あの地獄のような中学生時代はもう終わったのだ。
次の高校では俺の過去を知る者は姉以外誰もいない。
もう他人を避ける必要はなくなった。気持ちが軽い。


時刻は7:00。
ホームで停車中の無人機車に乗車しようとすると、 ホームの方から女の子が手を左右に振りながらこちらに走ってくるのが人混みの中から見えた。

黄色の制服に緑色のブレザー、科学技術国立高等学校の制服。同じ学校の生徒のようだ。

『加奈(かな)ぁーーー』
とトーンが高い声を出しながら少女は声を掛けてきた。
自分より20センチくらい、150前後の小さい小型系少女だった。中学1年生くらいの幼児体型だが加奈を呼び捨てなので同級生なのだろう。広翔にとってはれっきとした先輩だ。

『おはよ〜』
加奈に向かって言ったのだろうが一応こちらも

「おはようございます」
と敬語で軽くお辞儀(じぎ)しながら応答した。
彼女はニコっと笑い、手のひらを向けてくれた。
その表情には裏が無く、純情可憐な雰囲気が漂っていた。

『この子は? 彼氏さん?』
少し真面目な顔でこそこそと加奈に聞いた。広翔には聞こえてない。

「杏里(あんり)、うちの弟だよ。」
と杏里に呆れながら答えた。
杏里の不思議そうな顔は晴れ、一瞬で納得した。

『あぁ!!弟さんかぁ〜 いいなー』

「杏里にも妹がいんじゃん」

『えー だけどうちの妹全然可愛くないもん』
と出ましたよくあるパターン。
世の中には《隣の芝生は青い》という言葉がある。自分のものよりも相手のものの方がよく見える、という意味だ。
この言葉がピッタリ合うだろう。
能力に対してもそうだ。人の能力が羨ましく見える、何故か人は自分を否定してしまう部分があってしまう。

『弟さん、沙苗(さなえ) 杏里(あんり)です。 よろしく。』
いきなり自己紹介を押し付けてきたが、この人の言葉は自然体で不思議な点はどこにも無かった。

「美咲 広翔です。よろしくお願いします。」
かしこまりながら応答した。

モノレールのドアが閉まる前のチャイムが鳴った。
急いで中に入る。
席は十分に空いていたので、加奈が真ん中になるように座った。

『ところで広翔くんはこれからどこに行くの?』



「・・・はい?」
と、こちらからも疑問形で返してしまった。この人はもう分かっていると認識していたからだ。この制服を着ている時点で分かっていなかったのだろうか。

「杏里… 入学式。」
完全に呆れている声でフォローしてくれた。
この人にはピュアという文字よりも天然という文字の方が似合いそうだ。
でも天然は世の中で嫌われてない存在であることは確かである。


『そっか〜入学式かー 懐かしいね。』
全く反省していない様子。
自分を天然だと理解していないのだろうか。聞いてみようと思ったが無駄だろうと感じた。


「ところで杏里さんは…」
『杏里でいーよ。』
と話の前に突っ込まれてしまった。
先輩を名前で呼び捨てでいくのは無理があるだろう。 この人は…

加奈は微笑している。

話す気はなくなったがここで話さないのも気持ち悪いと思ったので一応聞いてみる。
「杏里は、なんでこんなに早いんですか?」
やはりタメ口 (みたいなもの)と丁寧語が混ざっているのはおかしすぎる。
義コチがないし、姉は笑っている。
ちょっとうざいと思ったが、彼女は真面目に回答した。

『加奈と一緒で運営委員だよ。』

「そーなんですか…」



乗って3分くらいしか経っていないがもう駅に着きそうだ。
距離的には15キロメートルくらいあるのだが、
摩擦変化金属【サーマニュチウム】という金属をレールに使用し、モノレールを低摩擦で走らせることができるため平均時速180キロメートルで走ることができるようになっている。
このために移動時間が短縮され、且つ電気量も相当減量ができるため、経済成長に大きく関わる点でもある。
サーマニュチウムの仕組みなど、まだ未解明であるため研究者たちの研究内容になっているのが多い。

第7学区の駅に着いた。

3話 怪盗者(ぼったくり)

3話  怪盗者(ぼったくり)

第7学区・東部駅前。


学園エリアは20学区まで土地が振り分けられ、1つの学区でおよそ面積10平方メートル位の場所に分けられていた。
1つの学区には東部・西部で2つ駅が振り分けられる設定になっている。
第7学区には主に大きなデパートエリアが存在する。大きな商店街や立ち並んでいるデパート・ブックストアなどが沢山とあり、来客者が多いためデパートエリアは密集度が高い。
昼夜間人口の差が大きく、夜には全く人が見られない。そのため、夜活動している輩(やから)や不良が多いことが問題視されている。夜は危険地帯に特化してしまう。
商店街を過ぎると学校地帯(スクールエリア)が存在し、その中に科学技術国立高等学校がある。



快晴。入学式にはもってこいの気象条件である。
商店街には人が溢れかえっている時間帯が多いためバスは走ってない。
徒歩で学校に向かう。


「ねぇ、今日昼ごはんどうする?」
話を持ちかけた。今日は2年生も早く帰れるため、昼ごはんなど所持していない。

「せっかくの入学式の日なんだからレストランでもよって行かない?」
姉はもう決めていたかのように言った。
こと割り切れないような陽気な表情をしていた。

「そうしようか。 杏里も行く?」

今度は馴れ馴れしく"杏里"と言えた。少し自分に否定しているが…

杏里は逆に残念な顔をして
『ごめん今日用事があるんだ。 悪いね。』
と苦笑に戻しながら話した。
なにか大事な用事があるのだろう。そこは追求しない方が良いとおもう。

『ところでさ、広翔クンはどこのクラブに入ろうと思ってるの?』



「そうですね… 今は特に何も。」


『そっか。 よかったらうちの軽音楽部見に来なよ。』


「軽音楽部ですか。 なんか意外ですね。」
意外性に微笑を浮かべながら言う。
自分の見解では陸上部とか体育部とかそうゆう系統の部活をやっている感じがしていた。
だがあいにく音楽系統には興味がない。


『意外? そぅかなぁ?』
拍子抜けした様子で笑っていた。

そうだろう。小体系に軽音楽部は似合わないと思う。


『広翔クンは運動系だよね。』
杏里は頷き、確信したようにそう言った。
まぁそうだ。広翔は勉学より、体術・能力の成績の方が断然に高かった。
別に勉学ができない訳では無かったのだが……
勉強は嫌いだった。



しばらく部活のことは話しながら歩いていたが全く興味がない広翔には暇つぶしになってしまった。
実は広翔と加奈は中学時代、部活に入ったことが無かったのだ。
あの事件以来……




「・・・?」
加奈が急に不思議な顔をして商店街の周りを見渡しだした。周りにはあまり人がいないのだが…
加奈は目を瞑った。

・・・
彼女の能力はサイコキネシス系統の暗言能力(テレパシー)。
暗言能力(テレパシー)とは口頭でなくても話ができる能力。
自分の念力(サイコ)を微弱に振動させ空気の波を作り、相手に伝えることで、聴感信号に直接発信でき、だから言葉を発せずとも話を伝えることができる。
それとサイコキネシス系統の彼女は逆に微弱な波動 (振幅数)でも直接感じることができるのだ。
10m先の人の会話を感じることができたり、誰にも聞こえないような超音波も感じることができる。



「加奈…どうした?」
目を瞑った加奈のその行動は能力を使う時の表情と仕草をしているのに気がついた広翔は直接聞いた。
空気の振幅数を感じているのだろう。


「あっちの方で何か騒ぎが聴こえる……」
歩いて来た道を指差し、説明した。
広翔にはもちろん聞こえなかったが、これは彼女の能力の作用であり、昔から見てきた広翔には確実性があることがわかっていた。
杏里は弱々しい顔で気のせいだろうと眺めている。




女子の声。商店街には人が少なく、よくその声は響いていた。

「つかまえてー!!」

と響き渡る声が聞こえてきた。
見ると黒めのジャージを着た男がこちらに向かって走って来ている。
"つまえて"とは、俺に言ったようだ。
右手には黒ジャージに似合わないピンクのカバン。必死に逃げる姿。
そして追いかける女子学生。

間違いない、今時似合わないぼったくりだ。
しかも意外と足が早い。加速能力(メーター)でも身につけているのだろうか。
こっちに来る。

「なに? ぼったくり?」
杏里は単純に顔をゆがませて悲観した。

「そうっぽいですね。」

もう近づいてきたため、
広翔は加奈たちと仕方なく一旦離れ、確保に向かう行動にでた。


普通に歩いているふりをしたら簡単に広翔のとなりに男が通ろうとした。
その瞬間、男の腹の溝にアッパーを入れ「ドゴッ!!」と深重い音を鳴らせた。
そのまま男は痙攣しながら転倒した。
普通のアッパーではない。能力を応用し、スタンガンのように拳に電流を流していたのだ。

・・・

男は無言で気絶した。

女の子もようやくこちらの様子に気づいて、疲れた様子で手を腰に置いた。
よく見ると緑の制服。科学技術高校の生徒のようだ。

4話 天然女(ガール)

4話  天然女(ガール)

それは緑の女制服。科学技術高校の制服だった。


「これ、お前の?」
広翔は地面に横たわっている男からピンクの鞄を取って
冗談を言うように言った。

科学技術高校の生徒なら、このような派手な鞄(バック)は禁止されているはずだ。
通常の学校では鞄(バック)の色は《白・青・赤・黄色》と規定で厳しく守られていて、学校ごとに微妙に色や、デザインが違っている。75校もあるこの学生エリアで間違えがないように、という事であろう。

普通なら彼女のものでないはずだが一応と、聞いてみていた。


『ありがと。 でも違うわよ、商店街にいたおばあちゃんのものよ。』
渡したが、やはり違っていたようだ。

その女の子の声は坦々とした喋り方をしている。見た目は長髪で黒髪で、キッパリした感じだった。
言葉で言えば、彼女には "しっかりした学級委員” がお似合いだろう。と広翔は思った。


「そう…」
少し苦手なタイプに感じたが、それよりも広翔は彼女が着けている左肩の黒い腕章が気になってしょうがなかった。


(あれは…)


心の中で思ったが口には出さずに
「じゃあね。」
とすぐにキッパリと別れの言葉を告げ、
こちらを見つめている彼女を無理やり断ち切って行こうとした。
このままここにいると面倒くさく話かけられそうだったからだ。



彼女は何か話したさそうだったが、キッパリ切ってしまった。
広翔は少し悪いことをしたような雰囲気になった。



・・・



桜の花びらが蝶のように飛んでいる。


科学技術国立高等学校。門にはそう書いてあった。
横には「入学式」と書かれた電光盤が置いてある。

今日は入学式。これからこの巨大な国立学校に入ることになったのだ。



「どう?この学校広いでしょ?」
ウェルカム清心満載の姉。

とても広いと聞いていたが 確かに広い。 広すぎる。



〜この学校の説明〜


この学校は学園エリアのなかで3番目の大きさがあり、面積は約1キロメートルもある巨大な学校である。
校舎は5つA棟ーE棟までの校舎が設置されている。
A棟・B棟は学年別で主にクラスルーム。
C棟はいろいろな特別学科を含む専門科ルーム・図書室。
D棟は購買部・カフェ・レストランが存在感し、
G棟はほとんどが能力・実技ルームとなっている。

能力・実技ルームとは能力診断(スキルテスト)や、特に対技戦・能力(スキル)アップの練習に使われる。
能力に応じて分かれており、対人 能力(スキル)だったら実戦ルーム・念力 能力(スキル)などは実技ルームになる。
なので沢山のルームが設置してあり、G棟はほとんどが能力系のルームになっている。


一棟一棟が広いため、移動に時間はかかるものだが、能力専門系学校の中ではトップの広さと充実性を持っているだろう。
この学校は戦技士(スパルタント)の配属や、能力技師(スキルエンジニア)の配属が主な、目当てとし、能力向上に徹している。



現状、
もちろん能力向上に徹しているのはここだけではない。全ての学校が「能力向上のため」という力に染まっているのである。
実力主義。
学園エリアだけではない。
これが世の中の色(・)になっているのも現実であった。
超能力が使えないものは敗者・使えるものは勝者というように、差別・断裂してしまっている。
イコール、いくら努力しても才能がある奴だけしか世の中に溶け込めない、無能力者の就職率は低くなり、テロリストの増加・チームの結団が多くなって不安定な社会になっているということだ。
だから学校で能力向上の時間割(カリキュラム)が増えている。

科学技術国立高等学校はそういうところはとても充実している。




・・・



「私たちはもう行くから、校舎のなか見回ったら?」
と加奈は言ってくれたが、言われずとも行く予定であった。
いった通り、広翔は高校見学に来てないため学校の中身を全く知らない。
色々と興味がある。


杏里はつけたしで、
「広いから気をつけてね」
と笑顔でお世話臭く言ってきた。


「あたしなんか迷ったこともあったんだから」


・・・俺に注意深く呼びかけるように言っているっぽいが…



(こいつ…本物だ…)

5話 差別(ディワァレンス)

5話  差別(ディワァレンス)

科学技術国立高等学校(かがくぎじゅつこくりつこうとうがっこう)。
巨大な敷地と施設を持つ日本トップクラスの能力専門学校。
能力の成績で学校の価値や権利がつく。
実力主義のこの世界に生きるために力をつける。

広翔はこの学校の現状について知ってはいなかった。
実力主義の本当の現状を。


・・・・・


「じゃ、後でね。」
姉と杏里は委員会の業務のために行ってしまった。
忙しそうにしている姉と全くのんびりしている広翔では違った。
入学式の準備と打ち合わせで色々と気を使うようだ。


「・・・」
校舎からも中庭からも音がしない。見渡した限りではどこにも人が見当たらない。
入学式まで1時間ちょっとだが実感が湧いていなかった。
広翔はしばらくそこに立ち止まっていた。


SCD(スクールデバイス)を見てどこに行こうか迷っていたが、とりあえずのんびりしようとカフェルームに行くことに決めた。
学校の施設場所はSCD(スクールデバイス)の案内図で確認出来る。



カフェルームはC棟の4階でそのフロアの5分の3くらいの面積を占めている。
自習をする生徒などが多くいる居場所であり、テスト前になると沢山の生徒がいるらしい。
営業時間は朝の7:00から夜の9:00までと長い営業時間を持っている。
夜などは先生達などが立ち寄る愛想しい場所である。



・・・


カフェルームは静かで端のほうで男子生徒が自習してるくらいだった。
ファーストフード的なテーブルの配置の雰囲気だったのは少し趣はあった。
ただ座っているのはまずいとのでレジで一様コーヒーを1つ頼んだ。


席に座った広翔はのんびりとSCDをいじりながらコーヒーを飲んでいた。
SCDには色々と学校の情報が配信され、入学式のプログラムや時間などがきっちりと配信されている。



『隣、座っていいですか…?』



急に青い髪をした女の子が腰をかがめて話しかけて来た。右手には同じくSCDを持っている。



『1年生…ですよね…?』

連続して半確信の様子で引き気味な声で尋ねて来た。
その女の子の雰囲気はしっとりと不思議なオーラみたいな感じだ。

「そうですけど、何か?」

広翔は簡単に答え、冷静に質問を返した。
面倒くさかったので冷たい感じを出した。


[お、さっそく一年はっけーん!!]

と今度はもう一人の女の子が青髪の子に飛びついてきた。
その子の自然な口調は馴れ馴れしい感じ。
広翔にはなりふり構わず話しかけてくるこの2人には疑問があるが…コミュニケーション能力としてはいい点なんだろうか。

[私は一年の木村エレナ!! エレナでいいから同じ学年同士よろしく!!]

と にっこり笑いながら、高気味の声で挨拶をした。
身長は160センチ上だろう。


「俺は美咲 広翔(ひろと)。ひろとでいいから」

広翔もそれに応答した。


『私はエレナの友達の南(みなみ)鈴葉(すずは)です。よろしくお願いします。』

青髪の女の子だ。



〔ところでサ、ひろとクンは何クラス?〕

この学校は入学試験でクラスが分かれてしまうため決定されているのだ。
そのため、生徒にはどこのクラスか分かる。

「…Aクラスだよ、」

冷静に簡単に広翔は答えた。


〔Aクラス!? …そっかー、残念だね …〕

と驚きの表情をして、そっから悲しげの表情に変わった。



実はこの学校には能力レベルによって、クラスが分けられていて、順番にAクラスが一番高レベルで、Fクラスが一番低いレベルになっている。
このように対技戦や能力行使の練習のためにクラスで分けられてしまっているようだ。
上のレベルの生徒は下の生徒を見下したり、差別したりという傾向が非常に多くある。
《これが本当の実力主義である。》



広翔は差別なんてことは全く知らない状態であった。
実力でクラスが分けられていることも。
差別意識がたかいのは差別を受ける方であるからだ。

〔そっかー…〕


「エレナたちは?」
なにも知らない広翔は素(す)の表情で言った。


〔Dクラスだよ。鈴葉と一緒。〕

と今度は空元気(からげんき)を出して表情を戻した。
にっこりした表情が少し悲しいような。

「そっか。残念。」
エレナの表情に察知をした広翔は何かあるのか思った。


『広翔さんの能力(スキル)ってなんですか?』

鈴葉が興味深そうに聞いてきた。
目が輝いている。

「大したもんじないよ。」

とテーブルの真ん中に軽くてを差し伸べた。

6話 能力(エレクトロスキル)

6話   能力(エレクトロスキル)


『広翔さんが所持している能力(スキル)ってなんですか?』

鈴葉が興味深そうに聞いてきた。目が輝いている。

「大したもんじないよ。」

広翔は謙虚な言葉で語った。
そしてテーブルの真ん中に軽くてを差し伸べる。


・・・

すると手が強く激しく青光(フラッシュ)をだした。
バチバチと音を発しながら青く真空放電をしている。
でも広翔の表情は変わらず、冷静に能力行使をしていた。
二人の目線は俺の手に集まっている。

「そう、これが俺の能力。電撃使い(エレクトローター)だよ。」


二人の目の輝きはとまってはいなかった。時間が止まっているように。
軽く能力を見せただけなのだが…

〔すご〜い!! 綺麗だね、ひろと!〕

(もう呼び捨てか…… まぁいいんだが…)
朝の杏里といい、こいつ(エレナ)といい、呼び捨てが流行っているのか。それとも俺が硬派だから違和感を感じやすいのか。
このような軽い世界には俺はついていけてないのか………



この能力を綺麗と言ってくれた者は初めてであった。
昔はこの能力は自分が嫌っていた。
この能力は……



〔ひろとはどこ中?〕(どこの中学校?)

またまたエレナの質問だ。
質問に答えていた広翔はだが、この質問は広翔にとって嫌だった…


少し間をおき、答えようとした瞬間、


ーピロンー

と3人のSCDが鳴った。


SCDには入学式の15分前通知が届いていた。


質問の内容を無理やり消滅させるように席を立った。

「さ、行こうか。」

すぐコーヒーのカップをかたずけた。



・・・・・




〔うわーー すごい人数だね〕

エレナは見上げてそう言った。
ガイダンスルームにはもう1年生がずらーと並んで座っていた。
全て新入生、確かにすごい量の人数だ。

この学校は日本の中でもトップクラスの学校だからであるが、悪い言い方をすれば対技戦や能力行使での事故で使えなくなった生徒を埋めるための人数なのである。
実力主義。この経済が生み出した形である。




当校のガイダンスルームは一般と異なり、体育館のように校舎から切り離されていて、集会や議論会などで使われるルームである。
前にはステージがあってその他は椅子が備わっている構造をしている。
ステージには巨大なモニターが設置され、こうゆう入学式などでしか使われていない。



1年だけでもそのルーム全体を覆っている。
制服の黄緑色で綺麗にみえる。
男も女も上は同じ制服なため、男女の見分けがつきにくい。
違いは女は短めのスカート。
男は普通のズボンだ。


〔ひろと、鈴葉、どこに座る?〕

もう友達扱いだ。この女はどれだけコミュニケーション能力に長けているのだろう。

「別に俺はどこでも。」

棒読みで返した。



『あ、あそこ空いてるよ。 』

鈴葉は奥の席を指差して言った。
前も空いていたのだが後ろのほうが良かったのだろう。
無論、入学式で前に座るメリットはないから目立ちにくい後ろのほうが良い。

〔よし、じゃああそこでいーか。〕

とエレナも便乗した。



・・・・

入学式。


「静粛に!!」


会場は静かな空気に包まれ、それなりの入学式の雰囲気になった。


「これから第24回、新入生 入学式を開式します。」

ーパチパチパチー(拍手)ー



・・・



「新入生答辞、川島 めい。」

と司会にコールされると、見覚えある女の子が出てきた。
黒髪のストレート。



(あれは…朝の…)

朝のひったくりを追いかけていた女であった。
さっきは無理に避けてしまった。
あの《黒の腕章》 を肩に着けていたこの女は苦手だと感知したからだ。



ステージの前でたんたんと演説をしている。


(どっかで聞いたことあるような声だが…)



何故かこの声に聞き覚えがあった。

姿には見覚えがなかった。
ただの勘違いだろう。

そんなことを考える自分がバカバカしく思えた広翔は咳払いをした。

7話 出会い(インカウンター)

7話  出会い(インカウンター)

入学式が終了し、少しHR(ホームルーム)まで時間が空いているようだ。

新入生代表で答辞を行ったあの女に見覚えのある違和感を感じていた。
しかも朝着けていたあの腕章には見難いものがある。

(あの声、何処かで聞いたことがあるような…
でもあの髪型と顔には見覚えがないし…〕

広翔はあの違和感が頭から離れず、知恵熱を出していた。
時間が止まっているように全く動かない。

「・・・」


〔…ろと!!ねぇ!!〕

はっ、と呼びかけた声に気づいた広翔は急いで顔を上げた。
エレナだった。


「あ、悪い。」

仕方なく謙虚な言葉で謝る。表情を引き戻した。


〔HR終わったら、ご飯食べに行かない?〕

今日は入学式とHR合わせて2時間だけしかないため、昼は何処かで食べようかという誘いだった。


「嗚呼(ああ)、いいけど、姉も一緒でもいいかな?」

広翔は姉と約束があった。
昼にレストランで待ち合わせている。


〔もちろんいいよ。へーー ひろとってお姉ちゃんいたんだ〕


エレナは言葉の通り意外そうな顔立ちをして見ていた。
こっちもそう言われるのがなんだか意外というか、なんなんだろうか。


『なんか意外ですね。』


鈴葉に差し込まれた。


「そうかな?」


〔そうだよ〜〜 なんかひろとってお兄ちゃんって感じだもん〕


心外であった。
別に自分に深く関係しているわけでもないのだが。



「・・・エレナは次女だろ。」


直行した。


〔ヒドーイ。 私こう見えて長女で弟いるんだよ〜〕


冗談を分かって微笑していた。
気さくな少女は冗談が効くようだ。



新入生はずらずらと動き始めていた。
もう少しでHR開始時間のリミットがくる。


HRは新入生達の最初の顔合わせの場面であり、トップクラスのもの達はライバルと出会うような時間である。能力定期テストや、定期試験の中で生徒達はトップ争いに出る。将来のため成績や、功績が必要だからである。
まずこの科学技術国立高等学校は日本有数のトップであり、その中の生徒のトップ争いとは尋常ではない。
研究者(サイエンス)志望で来ている者は勉学でのエリートが多く、定期試験でトップをとるものは、いわゆる天才に匹敵する頭を持っている。


特別能力生(とくべつのうりょくせい)の枠で通った広翔にはあまり関係が遠いもので全く気にしていなかった。


「じゃ、そろそろいこうか。」


・・・・・


エレナたちとは約束を告げて、ルーム別なので別れた。
1年生のルームはA棟のほとんどを埋め尽くしている。
1-Aのルームは2階にある。



教室にはもう多くの生徒が乱雑に立っていたり、座っていたりしていた。
よくみると男子が少しばかり少ないような気がした。



そう、この学校は完全成績に頼ってクラスや優劣を決めてしまうために男女の比があわなかったりしているのだ。
たまたま今年のAクラスは女子が多くなってしまっているのだろう。



あまり落ち着けない状態で席に座った。

(!!)

隣の女と目があった。


「あ、さっきの……」

そう、そいつは朝に会ったひったくりを追いかけた女&新入生代表であった。



『・・・・・!!』

広翔は軽く驚いたのだが、そいつは何故かオーバーリアクションをしているように見えた。


『ひっ… ひろと?』



!!!!
どうした。 その女の目がウルウルになっている。


それ以上に驚くべきなのは俺である。この女に名前を教えた記憶はなかった。
過去にあっていたのか、でも見覚えがない。
一応広翔はYESと答えた。


「嗚呼(ああ)……」
縦に頷いた。

した瞬間、ドバッと椅子が倒れるような勢いで抱き飛んできた。


「うっ!!」

8話 彼女(ガールフレンド)

その女の子には全くの見覚えがなかった。


黒髪の長まのストレートヘア。見た目は学級委員の美少女だ。
でもそれには少しばかり似合いにくい表情でこちらを見ている。




『ひっ… ひろと?』


驚くべきなのは俺のほうである。こんな学級委員ヅラの女の子とあったことがあったか…
広翔は一応YESと答えた。



「嗚呼(ああ)…」


軽く首を縦に振って言った。


その瞬間!! ドバっと倒れたような勢いで抱き飛んできた。


ガタッ!!


「うっ!」



椅子がガタッと揺れた。


・・・・
気がつくと、その女の子はもう広翔の肩の上で泣いている…
抱きつかれた広翔には足の指一本も動かせなかった。


どうしたのだろうか。広翔は状況が読み込めなかった。



一瞬で冷静になった広翔は、言葉を発した。


「おい…」



『会いたかった……!! ひろと……!!ひろと…………!!』



と名前を二度連呼し、強調するように言った。そう言った彼女は抱きついたままで離そうともしなかった。
泣いているようで少しばかり彼女の声のトーンが異なっている。大粒の涙を流しているのが広翔にはわかった。
彼女の涙は温かかった…


「・・・」

(この声、この抱きつき方、どこかで・・・)


広翔には過去の記憶が返ってきたような気がした。
どこかで体験したような感覚を覚え流ような……


『ひろと……』


と言ってまだ顔を上げない。
周りからの視線とザワザワとした雰囲気を感じた。

(これ以上このままでいると問題だな……)


そう感じ取った広翔は彼女を撫で、無理に席を立った。


「ねぇ、 廊下に出よう。」


広翔はそう言って彼女の手を引っ張った。

彼女も泣いているままで、床にぺたんと座っていたが下を向きながらようやく立った。
シクシク、と過呼吸になりそうな感じだった。



・・・・・


ひと気のない所まで行こうと思ったが、
その状況で連れて行くのもいろいろと問題がありそうなのでクラスルームをすぐ出たところで止まった。
でも廊下には少しひと気がある。

足が重く感じた。


「なぁ…」

と声をかけると、彼女は顔を上げた。
彼女は落ち着いた表情を取り戻し、逆な表情をしていた。


今度はすごい嬉しそうな表情に変わっていた。



安心した広翔は一つ質問をした。


「俺とお前、会ったこと…あるのか?」



間を置いた。
どうやら昔 会っていたことは確かなようだ。
もう一度顔を確かめた。
それに気がついた彼女は顔を少し赤くした。



間を感じ取った彼女は言った。


『桐生(きりゅう) 海波(うみは)だよ……久しぶりだね。』
満面の笑顔でそう言った。




広翔の情態は一変した。


「お前……………お前が!?」



彼女の姿を見て全く分からなかった広翔は、今だに信じられなかった。
髪の色と髪型が変わっていたのだ。彼女は茶髪でポニーテールにしていたのだが…
雰囲気も違っていた。



『やっぱり驚いた?
髪の色はね、 事情があって変えたのよ。』



「そうか…全くの雰囲気が違かったから分からなかったよ…」



そう、広翔と海波(うみは)は昔から仲が良くてよく遊んでいて所謂(いわゆる)、幼馴染だった。
あの大事件があってから2年間会っていなかったのだ。


「あぁ 俺も会えてうれしいよ。」

と広翔が言うと
急に彼女の顔が赤くなって後ろを向いた。


《海波(うみは)の心の声》

『ハッ!! 今のってもしかしたら告白!???』

『ヤダっ!! これってもしかして赤い……』



(なんか誤解されているような………まぁいいか。)



「よし、そろそろ始まりの時間だから行こう。」

9話 特能生(スペシャル)

海波との会話が終了し、
席に戻った。

あとHR(ホームルーム)まで五分。
まだ乱雑があったクラスルームだった。



(さて、MPCでもいじるか…)


◯◯
MPCとはマイスタディ パラソナル コンピュータの略。
最近の有力な高校が使用している所謂(いわゆる)自分専用のパソコンである。
様々な機能がついているが、主に使うのは授業であり、学校のほうから支給されている。

この学校の特徴である授業には教師ではなく、監視官しかついていない。全てMPCの中のプログラムで行われてしまうからだ。
教師がつくのは能力技術のカリキュラムだけである。
◯◯


パソコンをしばらくいじっていると、
前の金髪の男子生徒が椅子を後ろにクルッと回転させた。


『なぁ、ちょっと聞きたいんだけどサ、 お前選択科目決めた?』

そう男子生徒は親しげに聞いてきた。


ー見た目は金髪のちょいワルの男ー


そんな感じだった。
でも、いきなり「お前」とは……とんだ主義をしている…
でもその表情には裏も無く、悪気は全くないようだった。



「ああ、決めてるよ。 ほぼ能力科目で行こうと思っているから。」


そう冷たくあっさりと返した。


『そーか! 奇遇だな! 俺もほとんど能力科目だよ。』

安い声、あっさりとした返答に喜んで便乗した。


奇遇と言えるが、Aクラスは能力が弱い奴には到底入れない。このクラスの半分くらいは多く能力科目を選ぶだろう。
でも確かに、「ほとんど」能力科目にいくやつはあまりいない。


『あ、俺は夏季(なつき)蓮(れん)。 とりあえずよろしくな。』


「美咲 広翔だよ。 ひろと呼んでくれ。」


軽く手を突き出した。
蓮も便乗し手を突き出し、手強く握手する。


握手した瞬間に広翔は、

(AA(ダブルエー)クラスくらいの能力者…か …………特能生か…?)


『おう。じゃ、俺も名前でな。』


あまり頭は良くなさそうだ。能力成績だけで入ったのだろう。


◯◯
特能生はAクラスに入り、そのクラスの中で3〜4人くらいしかいない特殊な人材。
そして入学費・学費などのお金は全くもって要らない。その代わりに特能生とは必ずしも国家秘密の国兵飛燕部隊(こくへいひえんぶたい) 「スプラウト」に入らなければならない。
つまり良くも悪くも将来が決まってしまっているのだ。
それが本当の実力主義と言えるだろう。
◯◯


『でさ、さっきひろとが連れてった隣のでかパイ女の名前は?』


隣の海波は他の女の子と話していたが、
その言葉を聞いた瞬間幽霊のごとく止まった。


広翔は、
「ああ このでかパイ女ね。 名前は桐生..」

と言った瞬間、途中で隣席からの殺気が感じた。広翔の話は一瞬で止まった。


『誰がでかパイ女ですって…………………』


聞いていたようだ。


殺気どころか、同時に周りのパソコンなどまで持ち上がっている。能力が無意識に行使されている。
まるで魔女のようだった。
さっきの雰囲気と全く違う。


「おいおい、能力が暴走してるぞ。 落ち着け。」


能力の暴走は止まったが怒りは止まっていなかった。


「ジョーダンだよ、ジョーダン。 てか、最初に言ったのはこいつだし。」


広翔は冷たく蓮に振った。


『え!? ここで俺!? いやいや、ここは広翔が…』


逆に上手く蓮に振られた。


「……いや、でかパイはただの見た目だから。中身には関係しないと思うよ。」

先輩風にいってみた。


海波は赤面になって、能力行使した。

「れん!! 避けろ!!」

『え?』


ドシャン!!! ガッシャーン!

パソコンが二台飛んできた。


(俺のMPCが…………)

10話 MPC(マイパソコン)

◇◆◇



凛凛とした商店街の中、HR(ホームルーム)が終わった一年生たちは清々しくまっすぐ道を下校している。
生徒達の声でにぎあう中、広翔と蓮はとあるヤボ用を済ませようとしていた。
後悔というヤブ用を。


「なあ、この用事が済んだらゲーセンでもいかねえか?」
蓮が軽い表情で提案してきた。



そう言う蓮だが、最近はゲームセンターは少し珍しく、昔よりは減少し、商店街にはあまり設置されていない。現代の端末の機能や技術ならそのようなゲーム要素をカバーできるほどに進化しているからである。
蓮の発想には広翔には正直、高校生になってゲームセンターは幼稚すぎるような気がした。


「ああ…そうだな。用事が済んだら、な。」


まだ11時。
広翔は姉達との約束にはまだ時間があったので暇つぶしとして、蓮には頷くことにした。



「いやー、それにしてもついてないよな俺達。
初日からMPCをぶっ壊されるなんて。」


頭をかきながら、冗談目かしく、笑い事(?)のように済ませようとする蓮。
そんなことを言っても蓮のテンションは全く落ち込んでない様子だった。


(この男は気楽だな…)



久しぶりに会った桐生 海波に、HRの前、「でかパイ」とかチャカした挙げ句、MPCを投げ飛ばされ、壊されたのだ。海波は広翔の能力で直せるんだろうと思ったらしいが、外部損傷までは直せない……

3年前はもっと穏やかで逆に「人見知り」のような性格をしていた彼女だが、人は3年間でこんなに変わってしまうらしい。



「誰の所為で壊れたんだか…」

広翔は冗談っぽく、且つ躊躇い交じりに言った。



「っはっは どっちかと言うと激怒させたのはお前のほうやろ。」

と、そう笑いながら、顔に合わず正確な事を振り付けた。
別に反論はしなかった。完全に広翔が起こらせた事態だったからだ。


彼女は明日から危険リストに入れておくこう。


「さて、駅前にあるPCショップに行くか。」
広翔は決定したように言った。


「詳しいな。駅前にあるのか?」


「…まあな。」

広翔はそう単純な応答で受け流し、歩いていく。


◇◆◇


「ヘェー こんな所にPCショップがあるなんて。ひろとはよく知ってんな。」



蓮は広翔ん二人称を変え、驚いた表情で建物を見上げた。
駅前の十字路を過ぎた所らへんに小さなビルが建っている。



そこのビルの看板はいろいろあったが、「PCショップ 竹原」と書いてあるのを確認した。
少し見た目は古くさく感じたが中身は全くそうではない。
確かに普通の人では見つからない所にあるが、広翔は知っていた。


階段を登り、
店の中に入った瞬間、女の子の声がかかった。



『お!! ひろと やないか』

と少し遠くのレジの方から少女の変わってない声がした。
先に気づいたのはあっちのほうだったらしい。



その少女は〔可愛らしい〕と表現したら丁度いい表情と体型、赤髪。



「やぁ、少し、久しぶりだね。」
と抑え気味に、挨拶がわりに手を軽く出した。



蓮は会話に気になっているようだが、「まってて」と言うように手のひらを突き出し、広翔はそのままカウンターに行った。


「久しぶりだね、こうやって会うのは1年ぶりくらいかな?」


ーーなにやら、カウンターの前で話を始める。ーー


ー 『多分1年半程度だよ。 どう?仕事は上手くいってる?』 ー


ー 「まぁまぁだね。 最近の動きは少ないよ。」ー


ー『そうなんだ。 私はこの店の後継が無いからもう辞めちゃったんだ。 少し前くらい に。』ー


「そうか… お前も色々と大変だな。
ってそんなことよりも、要件は聞かないでほしい。科学技術高校用のMPCはないか?」



『うん、もちろんバッチリあるよ。』

と直ぐにぐっとピースを突き上げ、涼しい笑顔を見せた。


彼女は棚の中から新品のMPCを出した。
とても品揃えがいい店だ。


・・・・・・



『まいどあり〜 じゃあね〜』


表情を見ずに店を出た。
彼女と会う機会は少なくなってしまった。


階段をおり、予定通りゲームセンターに向かう。


「知り合いか?」

不思議そうな顔をして蓮は聞いてきた。



「まあね…」

と広翔は単純に返すしかなかった。
あまり聞かれたくない事情だ…

超能力高校の電撃使い(エレクトローター)

閲覧ありがとうございました。

初めて小説を書いたものなのでアドバイスや感想お願いします。

超能力高校の電撃使い(エレクトローター)

2025年、超能力という力が科学的に証明され、強力な能力者 や有能な研究者が国の強差となってきていた。 日本の各地では超能力者の育成や有能な研究者の排出が盛んになり、 どこの学校にも「能力」という成績がつけられるようになった。 2036年、高校一年生になった能力者・美咲広翔は姉(美咲加奈) と同校の科学技術国立高等学校に入学する。 そこは超能力者・研究者・指導者を育成する学校。 学校には学力ではなく能力で優劣が決められてしまう傾向が多々あ 2 る中で、美咲広翔は入学する。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • アクション
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-26

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 1話 科学の世界
  2. 2話 無人機車(モノレール)
  3. 3話 怪盗者(ぼったくり)
  4. 4話 天然女(ガール)
  5. 5話 差別(ディワァレンス)
  6. 6話 能力(エレクトロスキル)
  7. 7話 出会い(インカウンター)
  8. 8話 彼女(ガールフレンド)
  9. 9話 特能生(スペシャル)
  10. 10話 MPC(マイパソコン)