生命の果て

人は何者だ。自分は何者だ。人とは、何だ。神は我々に何を望む。

はじまり

此処は、何処だ。俺は何処にいる。俺?俺は誰だ。何があったんだ。まるで感覚が無い。辺りも暗くて良くわからない。多分、見えない訳じゃない。余りに周りが暗くて状況がわからないのだ。何処かの部位の痛みが脳を刺激して意識が遠くなった。俺は意識を失った。

「侵害受容器に異常あり。センサー部移行。意識レベル低下。、、、。」
「まだ、駄目か?何が足りないのだ、、、、。」男は肩を落として落胆した。
「博士、一瞬ですが脳幹にノイズが発生しました。一瞬ですが生きていました。」
別の人間が言葉を制した。
「いえ、まだ生きています。血漿の比率に問題はありますが、まだ、生きています。ただ、このままでは何れ腐敗は間逃れません。ここは、あの手法を取り入れては。、、、」
「あれか、、、。息子を助けるには、、、。まだ実用段階では無いが仕方がない。今は生きた血液を注入して腐敗は食い止めよう。しかし、これから先の大量の血液をどう調達するかが、問題だ。」
「博士、心配には及びません。司法省に配下の者を潜り込ませ罪人を地下施設に収容しております。今、血液を抽出しています。あとは、骸だけでも形にしましょう。そして、ホーエンハイム様の脳を骸に収めましょう。」
「そうか、、、。君の意見を取り入れてみるか、、、。」
「ありがとうございます。では早速。、、、」
「博士も、お疲れのようなので、こちらで、お休みください。」博士は部下の言葉に促されるように隣の部屋の扉を開けた。
部屋にはソファーがあり、博士は腰をおろした。疲れていたせいか、博士の意識が遠くなった。

「フロスト博士は、ホーエンハイム様を気にしてなさるが、御自分の体調も良くないのでしょう?」オペレーターを確認していた、もうひとりの部下が口を開いた。
「そうだ、博士も生かさなくてはならない。我々に知を与えてくださる彼にも死なれては困るのだ。ホムンクルスとて、未知なる領域だ。が、、、我々には、アレがあるのだ。大丈夫だ、、、。博士は、、、眠られたか?」男は、博士の飲んでいた飲み物のカップを見た。

どのくらい時間がたったのだろう。なにやら嗅いだことの無い匂いで目が覚めたが身体の感覚が無い。
「ラミレス、ラミレスは何処にいる?」博士は部下の名前を呼んだ。
「博士、どうなさいましたか?」
「ラミレスか、身体が思うように動かん。どうなっておる。」博士は声のする方を見るが何も見えない。
「身体ですか?博士の身体はホムンクルスを精製するために頂きました。」
「なにっ!。ラミレス、冗談はよせ。何をいっておるんだ。」
「冗談ではありませんよ。今、博士は産まれたばかりの赤ん坊なんですから。まぁ、赤ん坊と言ってもまだ無機質のような状態ですが、、、。」ラミレスは、水槽の中に浮かぶ得体の知れない塊に話しかけていた。
「ばっ、馬鹿な。、、、冗談は本当によせ。私は、こうやって話してるではないか。」
「実際に会話はしていませんよ、フロスト博士。直接、脳にパルス信号を送ってるんですよ。でも心配しないでください。40週くらいで骸が形になりますから。立てるようになると思います。」ラミレスは、薄ら笑った。

「ラミレス、貴様。血迷ったか?わしを、こんな目に合わせて何をするかぁ、、、。ホ、ホーエンハイムは、どうした。」フロストは、自分の事もわからない状態なのに息子の事を心配した。
「ホーエンハイム様も安心してください。脳のダメージは改善致しました。ただ、脳だけでは生きていけない為、ホーエンハイム様の身体と博士の身体を使わせて頂きました。ホーエンハイム様も40週前後には、形になると思います。」
ラミレスは電子顕微鏡を覗きながら、微笑んだ。
「ラミレス、失敗は、許さんぞ。ホーエンハイムは、絶対にホムンクルスに、、、。」フロストのパルス信号が途絶した。

暗い地下室の一室で、ぼんやりと赤く光る2つの光をラミレスは見ていた。

「賢者の石、、、。」

生命の果て

生命の果て

  • 小説
  • 掌編
  • 成人向け
更新日
登録日
2014-05-25

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