【ちいさな物語3】じゅもん

【ちいさな物語3】じゅもん

ちいさな魔法使いの、淡い恋のお話。じゅもんを唱えてごらん・・・

 

それは
寒い寒い冬の朝
おっちょこちょいの小さな魔法使いが
乗っていたホウキから落ちてしまいました

偶然それを受け止めたのは
やさしい瞳をした女の子
魔法使いは 一目で恋に落ちました
彼女を喜ばせたくて
いろんな魔法を使います
そうやってそばにいるうちに
彼女の瞳の先にいる誰かの存在に
気づいてしまいました

「いいこと教えてあげる。
僕と同じように唱えてごらん・・・」

彼女の指先にそっと自分の指を重ね
魔法の呪文を唱えます

彼女の前には
彼女を愛しそうに見つめる彼の姿
そう・・・彼女の想いは届いたのでした

そして 
人間に自分の魔法を使われた魔法使いは
掟としてその命を奪われることに・・・

魔法使いはそれでよかった
彼女を喜ばせたかった
彼女に笑ってほしかった
彼女が幸せなら
それだけでよかったのです

指先に残るほのかな温もりを抱きしめて
小さな魔法使いは無数の光とともに消えていったのでした

【ちいさな物語3】じゅもん

【ちいさな物語3】じゅもん

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-23

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