鑑賞記録-映画「クロッシング・ガード」より


1995年、ショーン・ペン監督。ジャック・ニコルソン主演。
物語の中軸へすえられた2人の男。“娘を事故で殺された父親”と“殺してしまった罪に苛まれる加害者”。ありがちな状況設定ながら、その内面的葛藤と変遷が丁寧にあらわされている。後半はスリリングで蛇足なく、彼らの挙動・無言の駆け引きにグッと引き込まれていった。それだけに、冒頭からなる“ゼロ地点の構築”にはいささか引っ掛かりを覚えてしまう。
大まかなあらすじを承知した上で鑑賞したからいいものの、開始20分間、事故後2人の生活ぶりをただ指し示すのみでは情報不足でなかろうか。想像の幅は広い。しかし、断片的に漠然と列挙されても、「では具体的に何をたどって観るべきか」物語に対して観客が置いてきぼりをくらう可能性は高い。
ならば、改善策は如何なものか。例えば冒頭にまず結論を提示してしまう。(ここでいう結論とは、開始20分後の父親の告白。「奴(加害者)が出所した。奴を殺そうと思う。」この告白でやっと真意が明かされ、ドラマが動きだす。)そうして観るべき道標が築かれたあとで、男どもの葛藤なり悶々なりを存分に表す。
観客は先に示された結論を支えにして、2人の人間性を気兼ねなく追うことができるだろう。

鑑賞記録-映画「クロッシング・ガード」より

鑑賞記録-映画「クロッシング・ガード」より

「1995年、ショーン・ペン監督。ジャック・ニコルソン主演。物語の中軸へすえられた2人の男。 ……」

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-22

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