瑠衣の怪談物語

序章

この世の怪奇現象は多数存在することが判明することが確認されている。 

心霊現象、都市伝説、身の毛もよだつような体験などがその一つだと思われる。

妖怪またもののけ類などもおおかれすくなかれ、心霊、都市伝説の裏でも見え隠れしていたのもあるのかもしれない。

もし、そんな妖怪達を自由に操る本が存在する本が存在するとしたら

そのありもしない、まやかしだと思われた1冊の本は古本屋の片隅に今も存在するとしたら……



『あなたならどうしますか?』


もちろん、私ならその1冊の本を手にするでしょう。 その少女、美佐瑠衣も例外なくその一人であったのかもしれない。

しかし、彼女は違っていたのだった。

第1夜 天零

詰らなさそうに本のページをめくる。現在に多種多様な形のUFOは存在する。ここ日本にも多く確認されてるからだ……

ペラペラとページをめくる。でかでかと大きな写真、見覚えのあるような山。 

瑠衣は『はっ』と驚く「これ、家から遠くない場所、今度行ってみよう」 次のページをめくることもなくそのまま雑誌を閉じた。

片羽をもがれた天使のような姿をするそれは、鋭い爪を尖らし、横たわる少女の頬をなぞる。 

ひんやりと冷たさを感じさせる。冷たい爪の感触は少女の目覚めをゆっくりと覚まさせる。 「……瑠衣……瑠衣、起きて。」

瑠衣の眼に片羽を失った天使の姿が飛び込む「綺麗な……天使……」 再び、眠気に誘われるように、瑠衣は目を閉じるのだった。  

慌ただしく、鳴り響くベルの音は聞きなれたベルの音である。手に届きそうで届かない目覚ましは指の先に当たるなり、床に倒れ込み、『ブゥブゥ』と激しい音を鳴らし続ける。

無造作に落ちた目覚ましを探すものの手に当たる感覚もなく、重くなった身体を起こす。 

鳴り響く、目覚ましはタイマーの時間が過ぎたために、手が届きそうになった手前で目覚ましのベルの音が鳴りやむのだった。 

ぼさぼさの髪に瞼の上がらない目を擦り、パジャマの第一ボタンは掛け外れ、自分の身なりを鏡に映す。蛇口を捻りに、水道から出てくる冷たい水で顔を洗う。 

「瑠衣、御飯よ」 どこからともなく綺麗な声で瑠衣を呼びつける。「はーい」返事だけすると『パシャ、パシャ』と冷たく流れる水で慌てて顔を洗う。 

鏡は琉衣の顔についた雫がもちろん映るはず、目を疑うようかのように片羽の天使の姿が代わりに映り込む。 瑠衣は目を擦る、今度は、見なれた鏡の前で目を擦る自分の姿だった。

テーブルの上にはおいしそうな朝食、ふわっふわっの卵焼き、卵焼きを彩るようにレタスとプチトマト、大きな厚揚げが印象的な味噌汁、ふっくらとあつあつのご飯、何気ない朝食であっても腹ぺこの瑠衣にとっては朝の御馳走である。

尋常じゃない箸の早さで、卵焼き、ご飯、サラダ、味噌汁と箸は決められた順に動く、お皿、お椀がやがて奇麗に片付く。ご飯の最後の一口を口に放り込むと瑠衣の箸は止まる。 箸を置くと合唱のポーズ。

時間を気にするかのように時計に目をやると時刻を7時15分を指していた。まだ時間に余裕のある瑠衣は学校に行く準備を整える。

余裕を持って家をでるのは、今日が入学以来に、久しぶりに思える瑠衣だった。普段は駆け足で、通る通学路も余裕を持って通ることで、一風ちがった通学路にも見える。 少しばかり歩くと、警報器の音が瑠衣の耳に飛び込んでくる。

いつもなら警報器が鳴る前に線路の向こう側を走ってることが多かった。

今日の瑠衣は線路の前で止まる。踏切の向こう側には古ぼけた看板を目印の『昭和堂』と書かれた古本が目に飛び込む。 通学路で古本屋があったことは瑠衣の記憶の中では存在しなかったはずだ。 そうこうしているうちに、遮断器は下がっており、渡り損ねた瑠衣は茫然と歩くのだった。電車が通り過ぎる中、瑠衣は魅かれるように昭和堂のことだけが頭になかった。

気がつくと昭和堂のドアの前に立っており、瑠衣の手は扉に手をかけていたのであった。

『カラン、カラン』とドアのベルが店内の中を鳴り響く、「いらっしゃい」ゆっくりとして低い声ながらも透通る老人はカウンター越しに珍しいものを見るように少女の姿を見つめる。瑠衣は老人に軽く会釈をする。 店の外の古ぼけたような外見とは違い、中は中世期を連想させるようなアンティークな作りになっている。奇麗に並べた本は、古本とは感じさせないぐらいに新品どうようなに

手入れされており、本を扱う者として本を愛することがうかがえるようだった。瑠衣の心を踊らせるように奥へ、奥へ、と足を進めていた。まるで本の世界に迷い込むように、瑠衣もそこまで無類の本好きでもなかったものの輝いて見える本に心を奪われているかのようだった。

その中でも輝いて見えた一冊の本は妖怪大全集とか書かれた。妖怪の辞典のような一冊だった。なぜこれに惹かれたのかも瑠衣、自身にとっても不思議だった。 『ボーン、ボーン』と大きな古時計は音を立てる。何かに気がつくように、古時計に目をやると時計の針は八時を指していた。

瑠衣は焦って、古本屋を後にしようとする。「お嬢さん」老人の声で瑠衣は足を止める。 老人はすこし困った表情をする。手に握りしめていた。分厚めの本に気が付くと、瑠衣は頬を赤くさせ、本で顔を隠すような形を取るようだった。

「その本が気に入ったのかい?」 老人は、にっこりとして訪ねる。瑠衣も申し訳なさそうに切り返す「ごめんなさい、急いでたもので、本のお代は払います。」 瑠衣は、鞄の中から可愛らしい猫のマークのお財布を取り出す。老人はお財布を開けようとする瑠衣の手を止める。

「これは君にプレゼント。その代り、また来てくれるかい?」

「お爺さん、ありがとう、また、寄らせてもらいます。」

鞄に本をしまうと、瑠衣は丁寧に、頭を下げる。店の中では『カランカラン』と音だけが残る。  瑠衣はHRには間に合わなかったものの、1減目にだけは間に合うことができため、担任には遅刻扱いとされるだけでなんとか欠席扱いにされずに済んだのだった。

疲れ果て瑠衣は珍しく、机の上に顔をうずくまらせて、睡眠を取る予定が安眠を妨げるように瑠衣の肩を叩かれる。茶髪で髪を後ろで束ねて、すこし化粧をしており、制服のボタンは第一ボタンを外して、だらしなさが印象的で逆に可愛いさもアピールしてるの彼女は琉衣のクラスメート亜由絵である。

「あっ、亜由ちゃん、どうしたの?」 

亜由絵は瑠衣の前の席に、胡座をかいて座る。「どうしたの?じゃなくて、瑠衣が遅刻したほんとの理由を聞こうと思ってね」 

「ちょっとね、面白そうな本を手に入れたから」  

「まさか、またオカルトの本だったりして……」

「えへへ、実はそうなんだ。」

鞄の中に手を突っ込む。瑠衣であったが、確かに、入れたはずのあるものが手に当たらないのだった。 

「瑠衣たら、勿体つけずに見せてよ」 

「え?、うん、そうしたのだけど、おかしい……」

今度は鞄の中身を机の上にひっくり返す。「ちょっと、瑠衣、どうしたのよ。」 

瑠衣は焦ったように「どこにもない、分厚めの本が……」  

「でも、どうして……」 思い詰めるように必死になって、鞄の中身を、机の上にばらまき、鞄の中にはないか残ってないか。確かめるために逆さまにした状態で上下に振る。

瑠衣の行動に不審に思うようにとなりからは『ヒソヒソ』と噂声が鳴り響く、瑠衣の手を亜由絵はそっと握る。「瑠衣がうそつきなんて思ってないからね。昨日、買ったとかで家に忘れてきたとかもあると思うよ。」 亜由絵は事態を収拾するために瑠衣を説得する。気分を落ち着いた瑠衣も、分厚めの本は出てこなく本は家に忘れてきたのだと思うことにするであった。

クラスが別々だった、髪の色がブラウンでセミロングのウェーブのかかった髪、制服は意外に乱れもなく、普通に着こなす、少女、千絵深、逆に黒髪でショートボブ、黒ぶちの眼鏡、清楚な制服の少女、佳苗、二人を加えて、瑠衣と亜由絵は楽しく下校することになった。 何気なく歩く道も朝方と夕方では見る景色は違って見えるようだった。 その中でも瑠衣はみんなの会話には参加せず、一人浮いた存在になっていた。 

警報器が鳴りだすと、亜由絵、佳苗、千絵深は走り出した。遮断器が下りる前に線路の向こう側に辿りつく亜由絵たち、息を切らせながら瑠衣だけが追いかけてきてないことに気がつく、

「瑠衣、急いで電車来ちゃうよ」  瑠衣が渡り切る前に案の定、遮断機は下りて『カンカン』と電車も通過する。長い電車の車両を見ているうちに朝の『昭和堂』と書かれた看板を探そうとする。 すぐに目に付きそうな場所に『ぽっーん』と一件だけ存在してるはずなのに、見間違えたかのように何もなく、あるのはちょっとした。田園風景だけ広がるだけだった。

それは、まるで、狐につままれた、朝から白昼夢でも見ていたそのような言葉で片付けられてもおかしくないと思ったのである。亜由絵達、と別れたあと部屋の机の鞄を置くとそのままベットに身体を投げ入れた。 疲れてたのか身体が言うことがきかないまま、時間は過ぎて行くのであった。『がさ』っと言う音ともに目を覚ますとほんの十分の睡眠のつもりが一時間近く寝ていたのだろう。

短時間でも疲れたの取れた瑠衣は机に置いた鞄に目にやった。

鞄の中から一冊の分厚めの本が覗かせていたのである。瑠衣はなかったはずの本を見るなり、すべてが、頭の中で、フラッシュバックされるように思い出したのだった。 妖怪大全集の本の表紙に載せられた絵は初めて見る絵ではなかった。 片羽の天使のような姿ローブの服をまとい、鋭い爪、すべてを思い出すようかのように悟った。 本のページは独りでにめくれる。それと同時に天井に向かってなにかが舞い上がっていく。

本に描かれた絵とかだろうか。ページが、めくれると、絵も消えるように『ぺらぺら』とめくれるようだった。唖然と見てる瑠衣も、本などで、見たことのある妖怪も少なくもなかった。 すべてのページが、めくれ終わると裏表紙が閉じて、今度は逆再生されるように、白紙のページが、ペラペラめくれ始める。やがて表紙に、戻ると、本は、強い輝きを放つ、一瞬の強い閃光で瑠衣も目を開けているのままならない状態になる。


本の上を浮かぶように、片羽の天使のような姿の青年は、琉衣を見つめる。「あなたは誰?」 瑠衣の第一声だった。 

「瑠衣は僕のことを知ってるはず、わからないのは思い出せないだけ」 すでに答えが出てる? 瑠衣の中ではその物の正体を知っている。再び、記憶を遡るように、瑠衣の頭の中にそのもの名前が浮かぶ「……天零、……」 

満足そうに天零は「ほら、僕のことを思い出せた。」 

瑠衣の記憶の中で、存在する天零はまったく別人であった。「どういうこと、私が知っている天零は今のあなたとは別人……」 

「僕が瑠衣の記憶の中の僕と違うのは別世界の僕だからだと思う。詳しいことは僕自身もわからない。一つだけ言えるとすれば、瑠衣は僕のことを知っていること」

不思議な記憶の感覚に、戸惑いながらも瑠衣はパンク寸前であった。

天零は、琉衣の状況を、お構いなしに、淡々と語り始める。「これだけは覚えててほしい、この本は琉衣にしか扱えない、本を所持するものは必ず試練を受けなければならない。」

「僕のことは心中で呼べば現れる」

わけがわからなくなった。瑠衣は頭がショートして気絶するのであった。

瑠衣の怪談物語

瑠衣の怪談物語

4人の話からスピンオフ作品 主人公、美佐瑠衣(みさるい)は学校から帰り道に古本屋によることになる。 そこで見つけた。1冊の本には妖怪のことが記されてる本であった。 その本は琉衣の知られざる力により、本に描かれた妖怪たちは真白で白紙のように姿を消す。 表紙に描かれた妖怪天零は 本に司る妖怪、天零とともに妖怪達を本の中に戻すことになってしまう。

  • 小説
  • 短編
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-19

Copyrighted
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  1. 序章
  2. 第1夜 天零