おまえはなにものだ

おまえはなにものだ
あるときは心を決め
そのはしから
自分への約束を反古にする

おまえはなにものだ
だれにでも愛想をふりまいておきながら
角を曲がれば
唾を吐き
世界の売春婦になる

おまえはなにものだ
かわいらしい赤子のやわらかな手に
やさしく触れておきながら
行く手を阻む
都会の群衆に
いらだって舌を鳴らす

おまえはなにものだ
いじらしい花の蕾に
たっぷりの水と
愛を注いでおきながら
群がる虫の羽音に
顔を歪める

おまえはなにものだ
自由を知りながら
不自由を生きて
気持ちの悪い笑顔で
空気を吸ったり吐いたりしている

おまえはなにものだ
スプーンひとさじの幸せで
それで十分と知りながら
よくばって 太って
鏡の前
立ち尽くす

おまえはなにものだ
おまえが笑えば
100人だって
笑うのに
むずかしい顔をして
肩をいからせて
この 弱虫

おまえはなにものだ
いちばん身近なあたたかさから
背を向けて
顔を背けて
いったい
なにから逃げているのか

おまえはなにものだ
正しいことはわかっている
大切なこともわかっている
人の声で安心する
それでも
こわい
こわい
見るな
聞くな
そっと そっとして

おまえはなにものだ
友はいる
かけがえのない人もいる
まだ見ぬだれかを
愛する自信もある
だけどボロボロだ
みにくくって、きたない
おまけに
空洞だ
空洞だ

おまえはなにものだ
わからない
だれなんだ
おしえてくれ

人間だ
人間だ
人間だ
人間だ
人間だ
人間だ

おまえは人間だ
それでいい

おまえはなにものだ

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
さらに感想などいただけたら、今後のためにありがたいです。
貴重なお時間いただきまして、本当にありがとうございました。

おまえはなにものだ

茨木のり子展に行って触発されたので詩を書いてみました。 初めて書いたので果たして詩になっているのか。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted