ダブルクロスお試し企画5

ダブルクロスお試し企画5

・これは過去に別場所で公開したF.E.A.R.出版のダブルクロスthe 3rd editionの疑似リプレイを小説として書き起こしたものです。何卒。
・鬱、流血表現なども含みます。閲覧のほどは自己責任でお願いします。

ダブルクロスお試し企画:『汝は人狼なりや?』

ダブルクロス、お試し企画その5



・ミドルフェイズ6 「咲かない花」


 暗い部屋。朽ち果てた家具が山をなし壁に天井に空いた穴から微かに風が吹き入れ穴の空いた床板をカタカタと鳴らす。ここは廃墟だ。
 廃墟の中、彼女は息を殺して佇んでいた。だが隠れているわけではない。ただ。
 酷く引きつった笑みを浮かべ、声を押し殺して笑っているだけで。

「見つけた……安藤ほのか……これで、やっと……」

 押し殺し損ねた笑みは言葉となって漏れて行く。
 失踪した時と何も変わらない、彼女らしい小綺麗な服と腰まで伸びた髪が肩の震えに合わせて揺れる。肩を震わせて笑いを堪えながら虚ろに床を見つめていた。

「待ってて……みんな、救ってあげる……ふふ、ふふふふ……」

 彼女の笑みは正気とも狂気とも取れない。
 ただ、彼女は虚ろに何処かへと向かって歩き出した。



GM:さて、今回はマスターシーンから始まったなw次はクライマックスフェイズだぞw

ルカ:なんだ、意外と終わるの早かったんだな。

夕月:うん、他の卓よりかは短いね。

羽月:いや、でもこの卓は情報収集をシーン切らずに出来るからシーン数少ないんだよな。

凛:これまでのシーン数が……オープニング3つにミドル6つだからシーン9個か。

夕月: ルールブックに載ってるサンプルシナリオのシーン数18個だからねw

ルカ:うわ。

GM:これ以上シーン増やされたいのか?

ルカ:それはやめてくださいしんでしまいます。

夕月:確かに死んじゃうねwww

羽月:それはそうと前回ぶち抜いたのはおそらく東雲恵美の居場所だな。多分次かこの次でボス戦だ。

GM:まぁ当たりだな。4人は東雲恵美と遭遇できる。だがこのシーンの演出はこっちが総括させてもらうぜ。

凛:あ、処刑される予感。

ルカ:だな。

羽月:じゃあ……俺はやる事はない。

夕月:僕もだね。クライマックスに向かうだけだと思うよ。

凛:……シナリオの結末ってどうなんだ?

羽月:『境界線』が何か危険かもしれないと知って東雲恵美が暴走。そして爆死。こんな所か?

夕月:引っかかる点は多少あるけど大体そんな感じかな?

ルカ:とりあえず侵食率に余裕がある内に終わらせたい……。

GM:とりあえず全員持ち物と装備、ロイスの最終確認だ。ロイスの新規取得は事後報告で頼む。

四人:了解。


・伊月空也
侵食率:88%  HP:35
防具:アームドスーツ
>ロイス(残り一枠)
Dロイス:羅刹(タイラント)
シナリオロイス(安藤ほのか):○P[尽力]/N[不安]
両親:○P[幸福感]/N[食傷]
椎堂臨:○P[友情]/N[不快感]
神原純:○P[友情]/N[悔悟]
那智:○P[同情]/N[隔意]

・椎堂臨
侵食率:76%  HP:26
防具:UGNボディアーマー
>ロイス(残り一枠)
Dロイス:戦闘用人格(デュアルフェイズ)
シナリオロイス(東雲恵美):○P[尊敬]/N[不信感]
仇:P[執着]/○N[憎悪]
四方坂:○P[連帯感]/N[嫉妬]
伊月空也:○P[友情]/N[敵愾心]
那智:○P[有為]/N[不信感]


・四方坂都
侵食率:72%  HP:28
防具:UGNボディアーマー
>ロイス(残り一枠)
Dロイス:亜純血(デミブリード)
シナリオロイス(湯川誠):○P[誠意]/N[無関心]
双子の妹:○P[憧憬]/N[嫉妬]
那智:○P[親近感]/N[憐憫]
椎堂臨:○P[慈愛]/N[憐憫]
伊月空也:○P[誠意]/N[不安]

・那智
侵食率:77%  HP:27
武器:ボルトアクションライフル、大型拳銃
防具:アンチレネゲイドスーツ
>ロイス(残り一枠)
Dロイス:起源種(オリジナルレネゲイド)
シナリオロイス(神原純):○P[同情]/N[憐憫]
記憶の中の誰か:○P[懐旧]/N[無関心]
伊月:○P[感服]/N[厭気]
四方坂都○P[信頼]/N[隔意]
椎堂臨○P[連帯感]/N[嫌気]


GM:なんか全員一枠ずつ余ってるって言う。

羽月:なんかあんまりロールプレイで神原純と絡みなかったからロイス取るかはもう少しして決めるさw

ルカ:とりあえずこれまで出来る事はやりきったつもりだ。

凛:ああ。じゃあ後は東雲恵美をぶん殴りに行くだけだな。

夕月:そうだね。それじゃ、シーン始めていいよ。

GM:了解した。……覚悟は決まったか?
  クライマックスフェイズ1、「落花の舞」。登場は全員。宣言と侵食率上昇お願いします。

四人:シーンイン。


>侵食率上昇

伊月 1D10 → 10
椎堂 1D10 → 8
四方坂 1D10 → 7
那智 1D10 → 9

伊月空也の侵食率 88% → 98%
椎堂臨の侵食率 76% →84%
四方坂都の侵食率 72% → 79%
那智の侵食率 77% → 86%
*椎堂臨のダイスボーナスが+2されました
*那智のエフェクトレベルが+1されました


ルカ:もう分かってたw

羽月:ダイスの女神様が最終決戦を前にあらぶっておられる!

凛:平均値8.5wwwwww

夕月:本来10面ダイスの期待値って5.5なんだけどねwww

GM:さぁ、ダイスの女神様にお祈りはすんだ? 始めようか!



・クライマックスフェイズ1「落花の舞」


 山道をずっと登った先にある古い公民館。そこに向かって、4人は日も落ちてすっかり暗くなった道を走っていた。4人の周囲を照らすのは椎堂の<スポットライト>によって生み出された光球のみである。

「クソったれが! なんでお前ら誰もバイクとか持ってねえんだよ!!」
「走りで間に合うといいよね! ホントにもう!」
「伊月、道あってんだよな!?」
「間違ってねえよ!」

 オーヴァードである三人に坂道を怒鳴りあいながら全速力で駆け上がる事はたやすい事だ。だが雨のせいもあって視界が悪く、足を滑らせてもおかしくはない。そう考えるとバイクも乗らなくて正解だっただろう。スリップして崖下に落下してもオーヴァードは死にはしないだろうが大幅なタイムロスは免れられない。
 その時、雨音に紛れて怒鳴り声が響き渡る。

「今の……!?」
「間違いない、純だ!」

 そして、怒鳴り声の発信源には想像より早くたどり着く事ができた。
 古びた公民館の玄関先は赤いランプで照らされていた。水たまりに雨に乱反射する赤い光の中、3人は二手に別れて立っている。一方は神原純と安藤ほのかだ。雨除けのためか安藤は神原の物と思われる上着を頭から被り、神原がそんな安藤を守る様に立ちはだかっている。
 そしてもう一方は、雑貨店に売っているような白い傘をさして微笑む東雲恵美だった。四人はすかさずその間に割って入る。それを見た東雲は突然の乱入者に驚いて目を丸くし、

「あら、伊月君に椎堂さん。こんばんわ」

 そして、にっこりと微笑んだ。

「純、ほのかを逃がしてくれ」

 その笑みを前に伊月は苦虫を噛み潰した表情で神原に告げる。神原は少し心苦しげな表情を浮かべ、安藤の手を引いて走り去る。

「空也くん!?」

 雨音と足音に紛れながら、安藤が伊月を呼ぶ声が聞こえた気がした。
 2人が完全に視界から消えたのを確認し、四方坂はすっと他3人の前に立ち周囲にワーディングを張る。四方坂の姿を見とめて東雲はほんの少しだけ驚いた様な表情を浮かべる。

「あら、四方坂さん。就任式以来ですね。お久しぶりです」
「こっちだってこんな形で会いたくなかったさ。東雲恵美。UGNは今日を持ってお前をジャームと認定し、この場で始末させてもらう。悪く思うな」

 その瞬間、ぞわりという肌を撫でる感触と共に空気が変質する。雨音が段階的に遠ざかり揺らめく赤いランプの光がゆっくりと滲んで溶けた。東雲恵美がワーディングを張ったのだ。空気が殺意と何かを孕み、圧倒的な狂気が渦巻く。
 東雲恵美は微笑みを浮かべて佇んだまま動かない。フランス人形を彷彿とさせる無機質な笑み。顔の筋肉がその形のまま硬直した様なピクリとも動かない、それでいて酷く穏やかな笑み。
 それは、彼女が明らかに狂っている証拠だった。
 背骨に氷を入れられるような怖気と共にの中のレネゲイドが暴走を始める。



GM:さあお待ちかね、衝動判定のお時間だ! 難易度8の<意志>判定! 成否を問わず2D10%の侵食率上昇だ!

ルカ:ふははは、上がりまくる未来が目に見えるぜー(棒)

凛:壊れたwwww

夕月:ダイスの女神様の遊び心で40%も上昇してたら壊れるでしょw

羽月:とりあえず祈るかw


>衝動判定 <意志>難易度8

伊月  →8(成功。判定値7+<意志>1)
椎堂  →9(成功。判定値9)
四方坂  →8(成功。判定値7+<意志>1)
那智  →14(成功。判定値13+<意志1>)


GM:お前ら全員運いいなw1人くらいは暴走させれると思ったのにw
  だが侵食率上昇がまだ残ってるぞ!


>侵食率上昇

伊月 2D10 →15
椎堂 2D10 →14
四方坂 2D10 →12
那智 2D10 →18

伊月空也の侵食率 98% → 114%
椎堂臨の侵食率 84% → 98%
四方坂都の侵食率 79% → 91%
那智の侵食率 86% → 104%

*伊月空也のダイスボーナスが+3されました
*伊月空也のエフェクトレベルが+1されました
*四方坂都のダイスボーナスが+2されました
*那智のエフェクトレベルが+2されました


ルカ:うん……もうな……なんかなwwwwwこうなったらヤケだよなwwwダイスボーナスにエフェクトレベルボーナスはありがたいwww

夕月:エフェクトレベルが+2されたよwwwやったねたえちゃんwww

羽月:おいやめろwwwとかいいつつ俺もやばいw

凛:さーてロイスが何枚残るかなーwww

GM:さて、楽しい楽しい戦闘の幕開けだ!
  エンゲージだが東雲恵美のエンゲージと4人のエンゲージは5メートルほど離れているぞ。

(東雲恵美)―――5m―――(PL4人)

  勝利条件は東雲恵美の戦闘不能のみだ。


セットアッププロセス


凛:じゃあ<光の銃>を発動だ。侵食率が100%になったがもう知るか。

>椎堂臨の侵食率 98% → 100%
*椎堂臨のダイスボーナスが+3されました
*椎堂臨のエフェクトレベルが+1されました


GM:ふむ……じゃあ最初から本気でいかせてもらおう。<女王の降臨>Lv5発動! そしてその効果により<狂戦士>Lv5を発動させる!
  Eロイスはまだ使う時間じゃない!


>使用エフェクト、<女王の降臨>。取得している「タイミング:メジャーアクション」かつ難易度自動成功のソラリスのエフェクトを1つ使用できる。
>使用エフェクト、<狂戦士>。対象が次に行うメジャーアクションの判定のクリティカル値を-1、更にダイスを[Lv]×2


羽月:ちょっと待った!! やっぱりそれ取得してたのか!?

GM:まぁソラリスピュアなら当然のことだw

ルカ:ソラリスピュアってそんなにヤバいのか?

夕月:ラスボスがソラリスピュアだと脱落者出る可能性が一気に上がるね。

凛:……で、ちょっと聞いていいか? Eロイスって?

夕月:Dロイスのジャーム版。言っとくけど超強い。ダイス増やしまくったり相手のロイスを消し飛ばしたりできるよ。でも悪い事ばっかりじゃない。Eロイスを持ってる敵を撃破するとバックトラックの時のダイスが増えるんだよ。

ルカ:そりゃまたどうして?

GM:「あいつキメェ! あんなんなりたくねぇ!」ってオーヴァードは反射的にEロイス取得者を見て思っちまうわけさw

凛:なるほどわかりやすいw

羽月:って言うか全員もっと重要な事に気づけ! セットアップでダイスが10個増えたぞ!

ルカ:もうな、これデスシナリオじゃね?w

GM:予定では2人ジャーム化のつもりです。

夕月:予定で2人ジャーム化って!

GM:じゃ、セットアッププロセスを終了するぞ。


イニシアチブプロセス


GM:それじゃあ行動順はご覧の通りだ。


  1,椎堂臨(行動値18)
  2,四方坂都(行動値12)
  3,那智(行動値8)
  4,東雲恵美(行動値7)
  5,伊月空也(行動値3)


凛:えっと……じゃあまず私か。

GM:……させると思ったか?

夕月:うわ、最ッ高に嫌な笑顔だ。

GM:<加速する時Ⅱ>Lv2発動! 椎堂のイニシアチブプロセスに割り込み発生! 東雲恵美のメインプロセスだ!
  なお、この行動は行動済みにならない!


>使用エフェクト、<加速する時Ⅱ>。他人のイニシアチブプロセスにメインプロセスを行う事が出来る。ただしこの行動は行動済みにならない。


羽月:出た! ボス用のチートエフェクト!

GM:さて……マイナー消費無し。メジャーでEロイス発動。

ルカ:…………Eロイスの内容は?



 その時、いつものように生み出した光り輝く弓矢の様な武器を椎堂が構え東雲恵美を射抜こうとした時。
 パキン、と何かが壊れる音が聞こえた気がした。それと同時に何かものすごく嫌な違和感が身体中を駆け巡る。心臓が大きく脈打つ毎に全身の血管を違和感が駆け抜けて行く。まるで血液が別種の物に変化してしまった様な感覚。
 あ、と小さく声を漏らし硬直したまま椎堂は動けない。見開いた目に映る東雲恵美は、穏やかに微笑んでいた。

「ねぇ、椎堂さん」

 甘い甘い、シロップに飽和するほど砂糖を溶かして煮詰めたような甘い声。極上のケーキを前に悦ぶ、子供そのものの声。そんな声がどろりと耳から脳髄に流れ込んでじわりと理性を溶かす。

「貴方が死ねばそばにいる仲間も道連れにしてしまう……そんな時限爆弾を抱えたとしたら、貴方はどんな顔をするの?」

 構えた弓矢を持つ腕が震える。引き攣り呼吸を忘れてしまった肺が奇妙な痙攣を断続的に繰り返し頭が真っ白に染まる。驚愕と絶望、そして何よりも強い恐怖に彩られた表情のまま凍りつく椎堂に東雲恵美頬を紅潮させて言った。

「ええ、凄く嬉しいの。貴方のその表情を見ていると背筋が震えるほど気持ちがいいの。ねぇ椎堂さん、君が原因で仲間が死んだら生き残った子はどんな顔をするかな? その子はどれだけ絶望するのかな? ああ、もっと絶望の顔が見たいの。ねぇ椎堂さん?」
「狂ってる……」

 呆然とした伊月の言葉に椎堂は辛うじて呼吸を思い出し、自身を落ち着かせる意味を込めて出来るだけ深い呼吸を繰り返す。



羽月:Eロイス……「加虐の宴」……。

ルカ:どう言うEロイスなんだ?

夕月:……対象を生きた人間の爆弾に変えるEロイス。爆発条件は対象の戦闘不能。戦闘不能と同時に起爆し同じエンゲージ内の人間に5D10のダメージ。
  ……そして、対象は死亡。ゲームオーバーになるよ。

凛:やべえよ……やべえよ……。

ルカ:椎堂が戦闘不能になる前に決着をつけろって事か……。

羽月:ああ。だが確実に蘇生技能くらいは持ってる。……一応俺に策がある。そっちは心配するな。

GM:さぁ、彼女の時間はこれでおしまい。椎堂、行動だ。


椎堂臨のターン


凛:やる事なんて決まってる。フルコンボだ。……ああ、そっか。100%、越えちまったから。あいつが出るんだな。


 ようやく身体の震えの収まった椎堂は武器を持ち直し東雲恵美を見据える。
 その目は、既に椎堂の物ではなかった。真紅に染まり殺意に愉悦を織り交ぜた、東雲恵美と同じくらいに狂った笑み。

「ふざけた事してくれるな。ブッ殺してやるよ!」
「うふふ、ようやく逢えた」

 豹変した椎堂を前に彼女は微笑ましげに笑う。ずっと椎堂の面倒を見てきた東雲の目に今の彼はどの様に映っているのだろう。
 裏切りと、覚醒。そして、理性でもう1人の自分を押さえつけ孤独な戦いを続ける彼女が始めて配属された支部が今の支部だった。東雲は、ずっと昔から彼を知っている。

「……いいわ。絆を持っている相手を傷つけるのは貴方にとって辛い事。だから貴方の、痛みを頂戴?」


GM:<命の盾>使用。これで彼女の回避判定は【精神】で行なわれる。


>椎堂臨:命中判定 <射撃>
  →47(判定値43+<射撃>4)
>東雲恵美:回避判定 <RC>
  →11(判定値9+<RC>2)

  命中!

>ダメージ判定
5D10+15 = 41!


「ああ、大した事のない攻撃で悪かったな!」

 次の瞬間、椎堂の両手に目を焼くほどの眩い光が集まる。
 破壊するためだけに生まれ、戦うためだけに生き、すべて無意味と知っても戦うしかない。彼女は『戦闘用人格(デュアルフェイズ)』。戦いをやめれば存在意義は消えてしまう。

 そして光の奔流は、凄まじい速度で東雲恵美を貫いた。光は熱を生み降り注ぐ雨を蒸発させて行く。ワーディングさえなければそれは夜闇を全てうち払った見せただろう。光に貫かれた衝撃で東雲の傘が宙を舞い、雨の中にはらりと落ちる。奇しくも4人にはそれが散りゆく白い花弁の様に見えた。そして光は虚空へと吸い込まれて消える。

「全て終わらせる。その為に、俺が来たんだ」

 裏切り者、と呟く椎堂に東雲恵美は惚けたような笑顔で答えた。

>椎堂臨の侵食率上昇 100% → 108%



四方坂都のターン


羽月:メジャーで<コンセントレイト>、<解放の雷>、<雷の槍>、使用。
  ……ギリギリ過ぎる。侵食率はこれ以上上げられない。



 椎堂の攻撃が終わるとすぐさま四方坂は右の拳を東雲に向かって突き出す。ふわり、と風もないのに彼女の髪が逆立ち辺りに鋭く火花が爆ぜた。息をつめて獲物を狙うように、四方坂は纏う電流を収斂させる。

「……四方坂さん。私と貴女は、よく似ているわ」

 そんな言葉が、聞こえた気がした。

GM:<命の盾>発動。ダイス5個で勝機はあるのか?

羽月:勝機がなくてもやるしかないだろ……<リザレクト>出来るの、俺だけなんだから。


>四方坂都:命中判定 <射撃>
  →46(判定値42+<射撃>4)
>東雲恵美:回避判定 <RC>
  →11(判定値9+<RC>2)

  命中!

>ダメージ判定
5D10+16 → 48!


 その言葉をかき消す様に凄まじい電流の弾幕が張られる。普通の人間なら木っ端微塵になって跡形も残らない程の威力の雷が一斉に放たれた。
 四方坂は無表情に延々と放ち続ける。考えるな。何も思い出すな。その方が幸せだ。だってそうやって生きて来たのだから。
 不意に自分と全く同じ顔をした妹を思い出す。唯一覚えている、最初で最後の家族での海外旅行。机に並んだ見知らぬ異国の料理。嬉々として食べる自分を見つめる妹の目が何だか物欲しげだったので、

『食べる?』
『いらない。ともりトマトきらい』

 そんな一言。妹のたった一言が、彼女たち双子の命運を分けた。
 そんな妹が羨ましくて、日常を謳歌し現実を何も知らない妹が妬ましくて。それでもこっちの日常も案外捨てた物じゃなくて。どうしようもなくて。居場所を守る為に戦う事を決めて。
 最初は番犬を名乗った。縄張りを守る存在になりたかった。気付いたら獲物を追う猟犬になっていた。どこで間違えたのかは分からない。でも、ここまで来てしまえばもう戦い続けるしか無かった。

 落雷のような轟音と爆撃による煙が晴れ、蒸発した雨から発生した霧がかき消えていく。あれほどの攻撃を浴びせたのに、東雲恵美は依然として微笑んだまま佇んでいる。

>四方坂都の侵食率上昇 91% → 99%



那智のターン


夕月:結局、<要の陣形>は使ってないね。まぁいいや。<アドヴァイス>、<導きの華>、同時発動。伊月に支援をかけるよ。これで達成値に+6、ダイスを3個追加でクリティカル値が-1だ

GM:描写、必要か?

夕月:要らない、進めてよ。次は東雲恵美が動くから。

>那智の侵食率上昇 104% → 110%


東雲恵美のターン


GM:東雲恵美は<コンセントレイト>Lv3+<苦痛の矢>+<絶対の恐怖>を宣言。<交渉>判定の射撃攻撃だ。対象は椎堂、エンゲージする全員を吹き飛ばしてしまえ!

夕月:させない! <ジャミング>を宣言! その判定、ダイスを3つ減らしてもらうよ!

凛:<神の眼>宣言! 全力で避ける!


>東雲恵美:命中判定 <交渉>
  →67(判定値63+<交渉>4)
>椎堂臨:回避判定 <知覚>
  →30(判定値29+<知覚>1)

>椎堂臨の侵食率上昇 108% → 110%
>那智の侵食率上昇 110% → 114%


ルカ:冗談……だろ……?

夕月:…………ゲームオーバー。


>ダメージ判定
7D10+5 → 48



 次の瞬間、東雲の手元に紫の矢が生まれ、硝煙を切り裂きながら椎堂向けて放たれる。

「しまっ……!」

 だが、もう遅い。鈍い音が1つ響き渡り、ばしゃんと言う水音を1つ残してその場に崩れ落ちる。


 が、何かがおかしい。

「……え、ぁ……」

 椎堂は、無傷で佇んでいた。では誰が?

「み、都!?」

 那智の悲鳴の様な声が雨音を切り裂く。
 倒れたのは、四方坂だった。椎堂を庇って撃たれた、ただそれだけだった。


>四方坂:使用エフェクト、<砂の結界>。メインプロセスを消費せずにカバーリングを行える。
>四方坂都の侵食率 99% → 101%

>四方坂都の残りHP
48ー8(装甲値)=40
28ー40=-12



GM:……やだなぁ、<砂の結界>かぁ。諮られた。

羽月:とりあえず今回は復活無しだ。伊月の火力で落ちるかどうかを見て決める。

凛:それがベストだろうな。一人だけロイスが2枚持って行かれるのは痛い。

夕月:それ僕に庇えって言ってる!?

GM:じゃあ次は伊月のターンだ。


伊月空也のターン


ルカ:勿論フルコンボ行くさ。ダイスもずいずん増えたな……。

GM:いつものように回避。


>伊月空也:命中判定 <白兵>
  →51(判定値45+<白兵>4+支援効果により+2)
>東雲恵美:回避判定 <RC>
  →14(判定値12+<RC>2)

  命中!

>ダメージ判定
6D10+23 → 52



 次の瞬間、伊月は疾走を開始する。5メートルがゼロになるまでコンマ5秒。そしてその勢いそのままに獣のそれに変化した豪腕をただ微笑む東雲に叩きつけた。鍛え抜かれ鋼鉄のごとく変化した拳が70キロオーバーのウェイト(体重)を乗せて放たれる。無論、オーヴァードと言えどもそんな攻撃を受けて無事でいられるわけがない。
 拳が東雲の腹部に吸い込まれると同時、何かが折れてはぜ砕ける音が響き渡る。そして細身の彼女の身体は枯葉のように舞い上がるとその勢いのまま2メートル程吹き飛んでゴロゴロと転がった。綺麗なワンピースが泥に汚れ、もつれた髪が地面に広がる。そしてその場にじわりと血が広がりしばしの沈黙が訪れた。が。

「ふふ……うふふふふ」

 壊れた笑みと共に東雲はゆっくりと起き上がり再び四人の前に立ちはだかる。

>東雲恵美→使用エフェクト、<蘇生復活>。<リザレクト>の敵版と考えてくれていい。HP1で復活する。

>伊月空也の侵食率上昇 114% → 129%



GM:さて、1ラウンド目はこれで終了だ。

ルカ:と、言うか東雲恵美って今HP1なんだろ?
 一発殴ったら死ぬんじゃないか?

GM:ああ。HPを回復する技能持たせてないからな。

夕月:でも<加速する時Ⅱ>がLv2って事はもう一回来るよね?

凛:うわぁ……。

夕月:まぁ仕方ない、次はメジャー放棄で庇うよw

ルカ:よし任せたwww

凛:一番余裕無いの伊月だもんなw

羽月:と言うか全員ちゃんと生還範囲内だから安心しろwww


セットアッププロセス


GM:さて、こちらの行動はさっきと同じだ。<女王の降臨>Lv5に<狂戦士>Lv5発動。全員、出来る事は無いな?

ルカ:そうだな。

凛:ああ。と言うか今あいつが出てるんだよな……。

夕月:危なすぎるってw

GM:戦闘終わったら演出で引っ込めていいぞw
ああ、それと死んでる奴は戦闘終わったらHP1で自動復活していいぞ。

羽月:そうじゃなきゃ困るw


イニシアチブプロセス


GM:ではお望み通り<加速する時Ⅱ>Lv2発動! 椎堂のイニシアチブプロセスに割り込みだ!

凛:望んで無いんですけどー。

GM:<コンセントレイト>+<苦痛の矢>+<絶対の恐怖>を宣言! さぁくたばれ!

夕月:メジャー放棄でカバーリング!


>東雲恵美:命中判定 <交渉>
  →42(判定値38+<交渉>4)

>ダメージ判定
5D10+5 → 25


GM:うわ、しょっぱいな。とりあえず確定死だから処理なしで死んでくれ。

夕月:言い方酷くない?wまぁ僕も復活無しでw


椎堂のターン


凛:やる事は簡単だ。フルコンボ行くぞ。

GM:<命の盾>で回避。


>椎堂臨:命中判定 <射撃>
  →22(判定値18+<射撃>4)
>東雲恵美:命中判定 <RC>
  →9(判定値7+<RC>2)


凛:うわ、今回出目酷いな。

ルカ:当たったんだからいいだろw

GM:ああ。戦闘終了だ。どんな風に終わるかは好きに演出してくれていいよ。



 そして。今にも崩れ落ちそうな東雲恵美の身体を再び光の矢が貫き、穏やかな沈黙のあとゆっくりと崩れ落ちた。再び起き上がる気配も、傷が癒える気配も無い。ただ終幕を告げるかの様に雨音がワーディングと共に周囲を包んでいた。
 空気から毒気が抜ける。殺意と、狂気が雨に押し流されて消えて行く。その中で伊月は真っ先に武器を下ろして、微かに笑って言った。

「……終わったんだ。何もかも」

 数秒の、長い沈黙。数分とも数時間とも取れる沈黙だけが辺りを満たす。
 やがて目を覚ましたように地面に倒れていた四方坂と那智も立ち上がる。負った傷痕こそ生々しいが、一見して状況を理解したようで小さくため息を吐きながら辺りを見渡している。
 そして、沈黙を崩す様に椎堂はその場に崩れ落ち手から転がった弓矢が光の粒子となって消えた。

「椎堂!?」

 あまりにも突然の出来事に伊月は思わず叫ぶと彼女の元へと駆け寄る。四方坂と那智も1つ目配せをしてそれに倣い、四方坂は手早く脈を確認する。

「安心しろ、気絶してるだけだ。後片付けとこいつの面倒は俺が見る。二人は神原と安藤を保護してくれ」
「ああ、分かった」
「了解」

 ああそれと、と言いながら四方坂は紺色の傘を三本とタオルを二枚作り出すとそれらを二人に渡す。

「何かあったら俺に連絡しろ。特に那智。無茶だけはするなよ?」



GM:さて、伊月に那智。キャラクターシートの「衝動」はどうなってる?

ルカ:俺は「加虐」だな。

夕月:僕は「自傷」。

凛:盛大に逆ベクトルだなwww

羽月:こっちも闘争&殺戮コンビだがなw

GM:では、那智。もうちょっとシーン引っ張ろうか。

夕月:うわ、嫌な予感。



 雨の中駆けずり回る事二十分。那智は電灯1つ点いていない夜の学校の窓辺に佇み窓の外を見ている安藤を見つけ出した。看板を見る限りではここは伊月や神原の通う高校の様だ。那智は頭から爪先まですでに雨でびしょ濡れで夏の夜のはずなのに嫌に肌寒く感じる。

「ええっと……電話電話……無事かなぁ」

 那智は適当なひさしの下に移動するとポケットからスマホを取り出し、服の袖で軽く画面を拭ってから画面を点ける。が、

「……あれ?」

 スマホには無機質な文字で「圏外」とだけ表示されていた。その文字に那智は一瞬壊れたのかと不安げに首を傾げるが、わざわざ防水のものを選んでいるのでそれはありえない。
(普通の街中で、圏外……?)
 だが、ここにずっといるわけにもいくまい。そう思うと那智は昇降口へと向かう。
 予想通りと言うかなんと言うべきか、昇降口の鍵は開いていた。那智はそっと校内へと入り、辺りを見渡す。
 非常口の緑色の光だけが整然と窓の並ぶ廊下を照らしていて、煩い程に鳴り響いていた雨音が酷く遠いものに感じた。

「えっと……確か三階だったよね……」

 そう意図的に口に出した言葉も学校の暗闇に吸い込まれて消える。なるほど、学校の怪談話の数がやけに多いのもよくわかる。この雰囲気はどうにも慣れそうにない。とりあえず階段を見つけて三階まで登り、手当たり次第に教室の中を覗き込んで行く。

 そして、案外簡単に彼女は見つかった。相変わらず窓の外を眺めている安藤の後ろ姿を視認すると那智は教室の扉を開けて中に入る。すると彼女は音に反応したのか那智の方を振り返った。

「安藤さん……でいいんだよね?」
「あ、うん……えっと、お昼の」
「うん。ちょっと待ってね」

 そう言って那智はスマホをもう一度取り出し画面を見る。すると圏外の表示は消えていた。これ幸いとばかりに四方坂の電話番号を選び電話をしようとして、

「…………え?」

 ガシャン、と音を立ててスマホが床に落ち、転がる。
 じわりじわりと白い布をインクが侵食する様に、思考が何かに染め上げられる。今、彼女はなんと言った?
 『お昼の』と言った。だってそれはありえない。だって、普通の人間は那智の顔を覚えられないのだから。
 ならどうして? 答えは単純だ。分かり切っている。

『―――? おい、…………!』

 電話越しの彼女の声すらも嫌に遠い。那智はスマホを拾うことも彼女から目を逸らすこともできないまま立ちすくむ。
 驚愕に表情を歪ませ後ずさる那智を見て、安藤の子供っぽさの残る微かな笑みが不安に曇る。そして、不安は紛れもない恐怖へ。
 彼女の黒いどんぐり眼を覗き込んだ瞬間、ザクン、と言う音と共に脳にナイフが刺さる様な強烈な痛みが走る。無論比喩だ。脳に痛みを感じる神経など無い。だがその傷口は熱を持って脈打ち生命の証である血液を溢れさせる。それと対照的に身体の中のレネゲイドがざわつく悪寒に膝が笑った。甲高い耳鳴りと天地のわからなくなる様な強烈な目眩に立っている事すら難しくなる。



羽月:まさか<衝動侵食>……!?

GM:その通り! さぁ那智、<意志>で衝動判定だ!

夕月:で、でも衝動判定の難易度は大抵9だ! まだ問題は無い!

GM:20だよ。

凛:え?

ルカ:は?

GM:この衝動判定の難易度は20なんだよ! さあ狂え、そして堕ちろ!! 失敗したら衝動二つを同時発症だ!


>衝動判定 <意志>難易度20
  →17(失敗。判定値16+<意志>1)



 そして次の瞬間、理性が圧壊した。

「う、ぁ、ああぁあぁああああぁっ!!」

 思考が真っ白に焼き潰され視界が真紅に染まって行く。平衡感覚の崩れた世界の中、恐怖に顔を歪ませて佇む彼女から目がそらせない。ぽっかりと開いた穴を連想させる黒い瞳から昏々と溢れ出る絶望が那智の虚飾をボロボロに腐敗させ崩して行く。

 噂。迷信。友達の友達。曖昧な語り噺の離合集散によって生み出された那智には、ただ自分がそこに立っている実感と言うものが欠落していた。
 僕は本当にここにいるのか。本当は存在しないんじゃ無いか。今、この瞬間にも消えてしまうんじゃ無いか。不安と恐怖をいくら虚飾で覆い隠しても、自分の心だけは偽れない。それでも、偽り続けて。騙し続けて。笑って。だが、限界があった。
 そして、一番辿り着いてはいけない場所へと着いてしまう。

 自分を傷つけたい。
 傷つけて欲しい。
 痛みだけが、繋ぎ止めてくれるのだから。

 那智はよろめく足で立ち上がると彼女から逃げる様に走り去る。天才的な頭脳もオーヴァードとしての力も絶対的な恐怖の前では無に等しい。ただ錯乱した思考が恐怖からの逃避と、存在を訴える痛みだけを求めて身体を走らせていた。
 点々とある赤い消火栓の光と緑の非常口の毒々しいコントラストが薄暗い廊下の光景をさらにねじ曲げる。荒くなった呼吸を整えもせずひたすら逃げる様に階段を駆け上がり、拳銃で鍵を破壊して屋上へと駆け込んだ。
 ザァッ、と雨の音が帰ってくる。レネゲイドがズタズタに理性を蝕み恐怖と衝動に火照った頭に雨は心地よく感じた。誘われるかの様に、フラフラとフェンスに歩み寄る。
 雨に濡れて霧に曇った街はガラクタの寄せ集めの様で。ふわふわと不安定な足場は現実感が無くて。ただ、恐怖にガチガチと震える奥歯と背後から迫る足音はすべて現実で。逃げなくては。そんな強迫観念に背中を押される様にフェンスを乗り越えて。
 そして、何の迷いも無く落ちることを選んだ。

 雨音に1つ、音が混じった。


>衝動侵食による侵食率上昇
1D20 → 9

>那智の侵食率上昇 114% → 123%


おまけ。楽しいレネゲイド教室


GM:さーて楽しい展開になってきましたwどうも、ゲームマスターですw
  まさかこれで終わりだと思ったのか?w


・次の卓の予定

GM:次回はネクロニカかサタスぺでもやりますかね
  正直アリアンロッドやアルシャードも興味あるんですけど半分幻想郷入りしてるようなお方にファンタジー系のゲームやらせても……ねぇ?


・他に何書くか

GM:今後はぼちぼち彼らがテーブルゲームなんぞに勤しむことになったきっかけや馴れ初めなんかも書こうと思います。
  ついでに小ネタも書いて行きたいです。余談ですが私はスポーツ苦手です。どうでもいいね。

  ではでは。待て次回!

ダブルクロスお試し企画5

「ダブルクロス the 3rd edition」は有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。一切の著作権はF.E.A.R.に帰属します。

※サムネイル画像はCROSSRED MATERIAL(http://cross.x0.com/red/)様よりお借りいたしました。

ダブルクロスお試し企画5

特待生たちはダブルクロスをプレイするようです。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • ホラー
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-05-13

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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