Anata

目覚めていきなりすぐそこにきていてつかまえなくちゃとおもって身を起こそうとしただけでみるみる逃げてゆくのがAnata、かたちのないAnataをかたちにしようとするとさいしょからずっこけてしまって、目の前の道はすでにとざされてしまっていてどこにもいけないのに道だけはどれだけでもあるようなきもして、どうにかしたいのだけれどまるでAnataのみがわりみたいにいつもの日常があらわれてやることがたくさんありすぎてAnataはたちまち忘れ去られるの、あるいは音楽をきくでもなくきいているとふらっと横切ったりするから、あっあっあっ網もってこいっ、などとひとりさわいでいるうちに旋律ごとすぎさってしまっているのがAnata、むこうに玉があってこっちに玉が落ちそうな瞬間、ちょうどそのてっぺんの瞬間をAnataは遊んでいて、落ちるときをとらえようと滑り込む用意などして待っているというのにずっと落ちないのでもういやになってしまうくらい落ちない、うっかり眠ってしまったりするとすでに落ちてしまったあとでなに一つのこされていなかったりする、塵一つすら、べつにね、夜があけたからとか、夏になったからとか、そういうわけではなくて、もともと時など関係ないらしくて、というかずっとあるのにあまりにもきづかないっていうか、ほんとは現れるんじゃなくて最初からみちみちているのに、ふつうきづかなくて空は青いなあとかいってるふつう、だってAnataは言葉もなければ、感情もない、みえているのかきこえているのか、生きているのか生きていないのか、実をいえばなにもわからないAnata、でもAnataだってAnataをしらない、AnataをしらないままAnataは宇宙ぜんぶにやどってしまうようで、魚や動物たちに、パックからだして安置してやるといっせいに息を吐き出すあさりたちにもなったりする、ぶくぶくぶく、Anataは呼吸、Anataは葉っぱで、Anataは野原で、Anataは朝、Anataは水でAnataは老人、Anataは若者、Anataは赤ちゃん、Anataは母親、Anataは集団、Anataは孤独、Anataは闇、Anataは死体、Anataはうねり、Anataは歴史、Anataは明日、Anataは炎、Anataは海、Anataは一瞬、Anataは永遠Anataはetc・・・ かなえるものではない、かなってゆくものでもない、はげましもしなければ、愛してくれるわけでもない、なのに、Anata、わたしはAnataをAnataどおりにひとつのこさずしるしたい、Anataをえがこうとする、するとまるでそのことにきづいたように、どうしてものがれてゆくの、まって、まって、まってください、Anataをえがこうとする、するとそれは葉っぱや野原や森や川や鐘の音であってAnataではないとわかるの、Anataをえがこうとする、するとそれは老人や若者や赤ちゃんや集団や闇や未来や単なるわたしの気分やetcであってAnataはえがいたりできないのだとわかるの、それなのに、わたしは、Anataを、Anataだけを、Anataのすべてを、しるしたいの

Anata

Anata

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-11

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