ドラゴンレースの夢

ドラゴンが好きです。

○車工場(夜)
   寂れた車工場に作業服を着て妻と話しているケイ。
妻「みて、この写真。ここの所、ほら、うちの社名。お兄さん、忘れて無かったのね、お父さんのこと」
   写真をじっと見るケイ、深いため息を吐き、顔をあげる。
ケイ「俺、酷いこと言っちゃったな…。明日謝るよ」
妻「明日はレースじゃない。敵同士よ?」
ケイ「敵じゃない、兄ちゃんだ」
妻「(笑って)そうね」
ケイ「でもやるからには」
妻「本気でやる、ふふ」

○ケイの寝室(夜)
   暗い部屋で妻と寝ているケイ。夢を見ている。

○夢 広い道(昼)
   かっけこしているケイと祐二。祐二の背中を追うケイ。
ケイ「兄ちゃん!はやいなあ!カッコいい!」
(F・O)

○別世界 ケイの寝室(朝)
   ケイ、木造の小屋の一室で寝ている。
   ピンク色のドラゴン、マチがケイを顔を鼻っつらでつつく。
マチ「おい、ケイ、おきなよ、朝よ」
ケイ「ん…ここは?」
マチ「アンタの家よ、馬鹿ね、あんなに飲むから記憶失くしてるのよ」
ケイ「そっか…んん(伸びをする)」
マチ「ユザーンさんからの翼の注文、今日までなんでしょ、昼過ぎにはくるってよ」
ケイ「大丈夫だよ、もう土台は出来てるし、2時間そこらで出来るさ」
マチ「ちゃんとやんなさいよ、私、ちょっと外行ってくるわ」
ケイ「あ、木材買って来てくれないか、軽いやつ」
マチ「わかったわ」
   × × ×
   ドアから外に出るマチ、ピンクの翼を広げ、飛び立つ。空からは青い丘の草原に立つ、小屋の数々が見え、日本ではない事がわかる。各々の家にドラゴンが居る。

○上空(朝)
   マチが飛んでいると、一匹のオスドラゴンが話かけてくる。
オス「よお、マチ、どうだい景気は」
マチ「相変わらずね、レースが近いから、パーツも売れるかと思ったけど、全然。修理でなんとか繋いでる感じよ」
オス「最近のパーツは皆ユリウステクから買うからなあ。アンタの所は少々値がはる」
マチ「でもモノは最高よ」
オス「ああ分かってるよ。ところでアンタは今度のレースでないのかい」
マチ「もうおばさんよ、体力が持たないわ」
オス「伝説のマチの飛んでいる所、また見てみたいんだがなあ」
マチ「伝説だなんて、買い被りよ。じゃあ私こっちだから」
オス「なんだい、彼氏かい」
マチ「私来年1600歳よ」
   マチ、飛び去る。

○作業場(昼)
   作業をしているケイ。そこに老人、湯ジーンがやってくる。
ユザーン「やあ、ケイ」
ケイ「あ、ユザーンさん、注文の品、出来てますよ」
   翼を渡すケイ。
ユザーン「うん、ありがとう、流石、腕はいいね、お父さん譲りだ」
ケイ「ありがとうございます」
ユザーン「うちのドラゴンももう年でね、補助翼がないと飛べなくなっちまった」
ケイ「4000歳でしたっけ?」
ユザーン「そのくらいかな、なにせ数えるのやめちまったからな、アイツ」
ケイ「まあ僕らの何百倍も生きてたら、数えるのもめんどくさくなりますよ」
ユザーン「なあ、おまえの所のマチ、もう飛ばんのかね」
ケイ「そうですねえ、彼女ももう1700歳ですから、自分では1600歳って言ってますけど」
ユザーン「はっはっは、年を誤魔化すようじゃまだまだ若いな。いい話があるんだがな」
ケイ「いい話?」
ユザーン「しっとるか、最近古代の遺跡から発掘された、雷の力で動く、ほら、遠くの物が見られると言う箱」
ケイ「ああ、テレビですか?最近話題ですね」
ユザーン「それでな、今度のドラゴンレースがその箱で流されるらしいんだよ」
ケイ「へえー」
ユザーン「興味ないのか!そのレースに、この店のパーツで出て、優勝すれば、この島全体に発表できるんだぞ!言ってみれば規模の大きな回覧板だ!」
ケイ「…なるほど」
ユザーン「いいか、いますぐ準備をはじめるんだ、レースは来週だぞ!これ置いておくからな」
   ユザーン、広告をバンっと置いていく。
   ケイ、その広告の表紙になっている人物とドラゴンを見る。

○作業場(夜)
   外から帰って来るマチ、作業場の明かりを見つけて作業場に入って来る。
   中ではガチャガチャと機材を漁っているケイの姿。
マチ「あんた、何やってんのよ」
   翼に機材を装着するケイ。
ケイ「うん、ぴったり合うな、流石、スタイルは維持してるな」
マチ「だから、何やってんのよ」
   ケイ、ユザーンにもらった広告を指さ   す。
マチ「あ、アンタのお兄さんとハリじゃない、すごいわねえ、こんな大きなレースの広告の表紙なんて」
ケイ「けっ、店も継がずに良い身分だよな」
マチ「なに、どうしたの」
ケイ「テレビでこのレースが流れるらしいんだよ。このレースに出て、良い結果残せば、店も安泰ってわけ」
マチ「なるほどね、いいじゃない。でもドラゴン雇うだけのお金あるの?」
ケイ「在る訳ないじゃん」
マチ「じゃあどうするのよ」
ケイ「伝説のレーサー、マチの復活だよ」
マチ「え、私?無理よ無理ー、私もう年だし」
ケイ「でも100年前は飛んでただろぉ」
マチ「もう100年も前の話よ!」
ケイ「頼むよ!このままじゃ、この店を俺の代で潰しちゃうかもしれない、これはチャンスなんだ!」
マチ「そんなこと言ったって…」
ケイ「ドラゴンの数百分の一しか生きられない人間にとって、チャンスは驚くほど少ない、頼むよ!」
マチ「…」
ケイ「お願い…!」
   マチ、溜息。
マチ「分かったわ」
ケイ「よし!ありがとう!」
マチ「でも、出るからには本気でやるわよ、誰が私に乗るわけ」
ケイ「俺だよ」
マチ「はあ?アンタ素人じゃない、ふざけないでよ、ダメよ!」
ケイ「大丈夫だよ、自分が動かすべき機械の事は理解しているし、それに俺、器用だから」

○ケイの店の扉(朝)
   しばらく休みます、と張り紙。

○上空(朝)
   マチの背中にケイが乗っている。マチ  は猛スピードで空を飛ぶ。
マチ「だから、波を描くように飛ばなきゃいけないのよ!ウイングをしっかりタイミングに合わせてくれないと、逆に抵抗になってスピードがでないわ!」
ケイ「ちょっとこのグリップ、重すぎるよ!爺さんは力持ちだったの?」
マチ「小手先でやろうとしないで、身体全体を使いなさい!」
ケイ「身体全体を…」
   マチ、スピードがあがる。
マチ「いいじゃない!流石、代々の血筋かしらね!」
   ぐーんとスピードを上げ、飛び去る。

○作業場(夜)
   ノートを見ながらマチの身体に機材を合わせるケイ。これじゃない、これじゃない、と機材を投げ捨て、合うのを探す。

○ケイの家 寝室(夜)
   ケイ、ベッドで夢を見ている。

○葬儀場(夜)
  ケイとユウジ、葬儀場で話している。
ケイ「ふざけんなよ!この工場は兄貴が継ぐべきだろ!」
祐二「俺はもっと早く走りたいんだ。工場はお前が継いでくれ、お前なら俺よりずっとうまく出来る」
ケイ「ちょっと待てよ、裏切るのかよ!」
祐二「すまん、俺は走る事しか出来ないんだ」
ケイ「ふざけんな!じゃあ勝手にしろ!出てけ!二度と顔を見せんな!」
   祐二、頭を下げ、立ち去る。
(F・O)

○島の海岸沿い(昼)
   多くの人が詰め寄せ、水晶で出来たカメラも来ている。

○選手控えテント(昼)
   機材チェックを行う、ケイとマチ、そこに祐二と黒いドラゴン、ハリが来る。
祐二「久しぶりだな」
   ケイ、声を聞き振り返る。
ケイ「兄ちゃん…」
ハリ「やあ、マチ」
マチ「あら、ハリじゃない、ふふ」
祐二「どうだ、元気か?」
ケイ「二度と顔見せんなって言ったよな、敵同士だろ、話かけてくるなよ」
祐二「…今日は少し向かい風だから、ウイングのタイミングを気を付けた方がいい」
ケイ「うるせーよ!生まれてこのかた、アンタに負けたものなんて一つも無いんだ、助言なんかいらねーよ」
祐二「…走りだけは負けない」
ケイ「それもこのレースが終わるまでだ、どっかいけ、イライラする」
マチ「あんた、酷い事言うわね、全然居ていいんですよ、お兄さん」
祐二「いや、そうだな…、いこう、ハリ(立ち去る)」
ハリ「居ていいって言ってんだから居ましょうぜ、あらら、行っちゃうのね…、そいじゃあまた、へへ」
マチ「またね」
ケイ「…なんだお前ら、知り合いか」
マチ「ちょっとね」
   ケイ、不満そうな顔。

○島の海岸沿い
   ドラゴン達が海岸に並び、出走の準備をしている。その中にケイの姿も。
実況「さあ!始まりました、ドラゴンレース、ユリウス杯!Aブロックの予選がまもなく開始です!」
   打ち上げられた風船が割れると同時にドラゴン達が一斉にスタート。
   ケイたちは中盤あたり。
マチ「なにやってんのよ!ウイングのタイミングがめちゃくちゃよ!お兄さんが言ってた事、思いだして!」
ケイ「うるっさい!」
   ケイ、ウイングを調節して一気に前に躍り出る。
実況「おおーっと、ピンクのドラゴンが飛び出ました!ええーと、ブリッツテクの、ケイ選手!無名の選手ですが、乗っているのは、もしかして」
   マチ、くるりと一回転する。
ケイ「うわっ、なんだよ!」
マチ「サービスよサービス」
実況「伝説のレーサー、マチです!100年前の優勝を境に、ぱったりと姿を消した、あの伝説のマチです!」
× × ×
   地上でレースを見ているユザーン。
ユザーン「あれな!家の近所に住んでるんだぞ!知り合いなんだ!ワシ!」
ユザーンのドラゴン「いやねえ、見栄張って」
× × ×
   再び空、おおきく他のドラゴンを突き放し、余裕のトップ。
実況「ゴールです!女王、ブランクを感じさせない余裕のゴールです!」
解説「それにしても、ウイングの操作をしているドライバーもなかなかですよ、ブリッツテクと言えば数百年前に名を馳せたブランドですが、再注目ですね」

○海岸沿い(昼)
   ゴールして、地上におり、マチから降りるケイ。カメラや記者が一斉に詰め寄り、質問攻めに。
ケイ「落ち着いて、落ち着いて、おほん。えー、私達、ブリッツテクは伝統的な手法により、ドラゴンの性能を最高に活かせるパーツを数々販売しております。予約はいつでも受け付けておりますので…」
記者「マチさんは!伝説のレーサーということですが!どこでお知り合いになってのですか!」
ケイ「えーはい、マチは代々家の血筋でして、20代前の先祖と血の契約を交わして以来、ずっと守ってもらいました。そして、そのマチについているこの、尾翼、これは我が製造所の最高傑作と言っていいものです、ご予約はいつでも承ってますので」
   ワー!という歓声が湧きあがり、ケイの声が遮られる。記者団、一斉に海岸線を見る。
× × ×
   実況席
実況「伝説のレーサーマチのタイムを大幅に塗り替える好タイム!祐二とハリ!王者の貫録です!」
解説「やはり、素晴らしいですねぇ、ちょっと待って下さい。ハリの尾翼、さきほどのマチの物ととても似ていませんか?」
実況「確かに…」
解説「ブリッツテクはユリウステクの物を使っていたんでしょうかね、ははは」
× × ×
   海岸沿いのケイと記者団。
記者達、実況を聞き、ケイの方を向い  
て質問をする。
記者「今、ブリッツテクのものとユリウステクの物が似ていると言う事だったのですが」
ケイ「え、いや、え?」
記者「答えてください!ブリッツテクはユリウステクの技術を盗んだと言うことですか?」
ケイ「そんなバカな!違います!」
記者「でもユリウステクの新製品と酷似していますよね?これはどういうことですか?」
ケイ「それは、えっと…まさか、兄ちゃん…」
記者「答えてください!これは問題ですよ!」
   記者、ケイに詰め寄る。ケイ呆然。
(F・O)

○選手控えテント(夕)
   勢いよく駆けこんでくるケイ。そのまま祐二を殴る。
マチ「やめなさい!」
   ケイ、祐二の胸倉を掴んで殴る。
ケイ「この野郎!ブリッツテクの技術、ユリウステクに売りやがったな!」
   もう一度殴る。
ケイ「なんとか言え!この裏切り者!」
   もう一度殴ろうとするところを、ハリが尻尾で吹き飛ばす。
   マチ、ハリに向かって吠える。
マチ「手を出さないで!ハリ、いくら貴方でも許さないわよ」
ハリ「し、しかし…」
   ケイ、立ちあがる。
ケイ「上等だ…、ふざけやがって…。明日の決勝、絶対に勝ってやる…」
ハリ「祐二さん、何か言ってください!」
   祐二うつむいたまま。
ケイ「昔からアンタは何も出来なかったけど、卑怯な事はしなかった、そこがアンタの唯一の憧れたところだったのに、アンタ、カッコ悪いよ…」
   ケイ、立ち去る。マチも一度振り返り、悲しそうに立ち去る。
ハリ「いいんですかい…?」
祐二「ああ、アイツに全部押しつけて、勝手やってるんだから、俺が悪いよ」
ハリ「…アンタ、カッコいいですぜ」

○ケイの作業場(夜)
   椅子を蹴り倒すケイ。広告を見つけ、それをくしゃくしゃに丸めて投げる。
ケイ「あの糞野郎!親父が泣いてるぜ!明日のレース、絶対に…。おい、どこ行くんだよ!」
マチ「ちょっとそこら辺とんでくるわ」
ケイ「ったく…明日の事考えてくれよ、疲れ残すなよ!…はあーあの野郎…」
   マチ、作業場からでて飛ぶ。

○森の中(夜)
   ハリが一人、ぶつぶつ一人事を言っている。
ハリ「さっきはあんな事になってごめん…俺も雇い主が殴られているのを黙ってみていられなかったんだ…さっきはあんなことになってごめん…俺も雇い主が…」
   マチが飛んでくる。
マチ「ごめんね、遅くなって」
ハリ「い、いや、その、さっきはあんな事になってごめん…俺も雇い主が殴られているのを黙ってみていられなかったんだ…」
マチ「いいのよ、気にしないで、私も大きな声だしてごめんね、それじゃあ行きましょうか」

○上空(夜)
   満月がでている空を、二人で飛ぶ。
ハリ「そろそろ考えてくれたかい、僕らの事」
マチ「私のどこがいいのよ、こんなおばさん」
ハリ「いいところは沢山あるよ、年だって300歳しか変わらない」
マチ「大きな違いよ」
ハリ「そうかな…」
マチ「ねえ、祐二はなんであんなことを?」
ハリ「あんなこと?」
マチ「ブリッツテクの技術をユリウステクに売ったこと…」
ハリ「彼は売ってなんかいないよ、ちゃんと見てください、付けてきたんです」
   マチ、ハリのしっぽを見る。すると尾翼が付いていて、そこにはブリッツテクと書いてある。
マチ「これ、ブリッツテクのじゃない…」
ハリ「祐二さんはね、もうユリウステクじゃないんですよ。今回のレース、技術者の反対を押し切って、尾翼をブリッツテクの物にしたんです、それで解雇ですよ…」
マチ「なんでそんなこと…」
ハリ「あの人は不器用ですからね、貴方の方がよく知ってるでしょう?」
   マチ、俯いて考える。
マチ「ごめん、私、帰る、今度埋め合わせするね」
ハリ「へい、期待してます」
マチ「あと本当にごめん!この尾翼、借りるね!」
ハリ「そういう所、好きですよ!」
   少し笑って飛び去るマチ。

○ケイの作業場(夜)
   マチ、ケイの家に飛び込む。
ケイ「おい、遅いぞ、もう寝ろよ」
マチ「まだ寝ないわ、これを見て」
ケイ「なんだよ、これ…うちの尾翼…」
マチ「ハリの尻尾についてたのを持ってきたのよ、お兄さん、技術を売ったりなんかしてないわ」
ケイ「どうやって持って来たんだよ」
マチ「それはいいじゃない、とにかく、お兄さんも、アンタと同じ気持ちだったのよ」
ケイ「…そんなわけないよ」
マチ「あんたも知ってるでしょう、お兄さんが不器用なのは」
ケイ「そりゃあ…超がつくほどな…」
マチ「後から生まれてきたアンタに、何もかも負けて、それでもお兄さん、アンタの事大好きだったわ」
ケイ「知るかよ、兄ちゃんは父さんを裏切って出て行っただろ!俺に何もかも押してつけて!」
マチ「ちがう、裏切ったんじゃない、自分の本当にやりたいことをやっただけよ。お父さんがアンタやお兄さんに、店をやれなんて言った?アンタが勝手に思っただけよ」
ケイ「それは…」
マチ「あとね…お兄さん、アンタに一つだけ負けない物があった」
ケイ「かけっこ?」
マチ「そう…あんた、自分の前を走るお兄さんの背中見ながらなんて言ったか覚えてる?」
ケイ「覚えてる訳ないだろ…」
マチ「お兄ちゃん、かっこいい、って言ったのよ」
ケイ「…」
マチ「私、見てたわ、お兄さんの顔。すっごく嬉しそうだったんだから。お兄さんね、アンタにカッコいいとこ見せたくて、まだずっと走ってるの。そのために、ユリウステクまで止めて、ずーっと走ってんの」
ケイ「辞めたのか?ユリウステク…」
マチ「ブリッツテクの尾翼をどうしても付けるって聞かなかったんだって…」
   間。
   ケイ、くしゃくしゃに丸めた広告を開き、それを眺める。
ケイ「…不器用だなぁ…ホント…馬鹿かよ」
マチ「ホントにね…でも変わってない…」
   ケイ、深いため息を吐き、顔をあげる。
ケイ「…俺、酷い事言っちゃったな…明日謝るよ」
マチ「明日はレースじゃない。敵同士よ?」
ケイ「敵じゃない、兄ちゃんだ」
マチ「(笑って)そうね…」
ケイ「でもやるからには」
マチ「本気でやる、ふふ」

○ケイの家 寝室(夜)
   眠るケイ。夢を見ている。

○夢 広い道(昼)
   ケイと祐二、かけっこをしている、ケイ祐二の背中をみながら。
ケイ「兄ちゃん!早いなあ!かっこいい!」
   嬉しそうな祐二の顔。

○現実 ケイの家 寝室(朝)
   現代の一軒家の寝室。エプロンをした妻が、ゆさゆさと身体を揺らし、ケイを起こす。
ケイ「あれ、ここは?」
妻「はあ?自分の家じゃないの。アンタ昨日、嬉しいからって飲み過ぎたの?今日の決勝、大丈夫?」
ケイ「ああ、そうか…夢か…」
妻「夢?」
ケイ「ああ、変な夢だったよ、なんか島みたいなところでな、俺の車がドラゴンになっててさ、兄ちゃんの車も話してたな、不思議な夢だったなあ」
妻「なんでドラゴンになってるのに、アンタの車ってわかるのよ」
ケイ「名前が同じだった」

○レース会場(昼)
   車のレースの会場。大勢の人が詰めかけている。レーサー姿のケイ、車に乗り込んで、準備をしている。
実況「さあ、始まりましたユリウスカップ決  
 勝!やはり注目は、祐二選手でしょうか!」
解説「いや、伝説のスポーツカー、マチにのるケイ選手も見逃せませんよ、どうやら調べたところ、二人は兄弟のようで、祐二選手のリアウイングもブリッツテクの物だったようです」
実況「さて、どんな勝負が繰り広げられるのでしょうか、間もなくスタートです!」
○ケイの車の中
   スタート地点、隣には祐二がつけている。ケイ、祐二の方を見て大声で。
ケイ「兄ちゃん!兄ちゃん!」
   祐二、聞こえない。
ケイ「兄ちゃんってば!ごめん!ごめんよ!」
   祐二、前も向いて集中している。
   スタートのライトが点滅する。
   諦めて急いで前を見るケイ。
実況「スタート!」
   車が轟音をあげて走り出す。
   飛び出る祐二の車、ケイの先をいく。
ケイ「兄ちゃん!かっこいいー!」
   嬉しそうな顔の祐二。
                 終わり

ドラゴンレースの夢

ドラゴンレースの夢

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-10

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