この者達に神の裁きを 第壱話

はじまりました。
私の拙い文章でよければ、どうぞご覧ください^^
そろそろ始まるようですよ。
防弾用具の準備はよろしいですか?

いる。いるよ。

・・・なにが?

くすくす。ほら、そこに。

だからなにが?

んー?それはね・・・

『――――――』



ジリリリリリリリ!!!
今日もうるさい目覚まし時計が鳴り響く。

「・・・んぅ」

パタパタと何回か空中で手を振ってからようやく目覚ましを止める。
目が半分開いた状態でムクリと布団から起き上がる。

「ふぁぁぁ・・・んむぅ」

女子とは思えないほど大きなあくびをして着替え始める。
いつもの光景。



ジュージューという音といい匂い。
ふらふらと釣られるように匂いの元に行く。

「あぁ、起きたんだ。おはよう千鶴」
「おはよー・・・」

にっこりと効果音が付きそうなほど穏やかな笑みを浮かべる男性。
少し色素の薄い髪に整った顔立ち。
普段着にエプロンをつけて目玉焼きを焼いてる。

千鶴と呼ばれた彼女は眠そうな声で自分の兄に返事をする。
千鶴の兄―――茅原千歳は自分の妹に苦笑しながら目玉焼きを皿に移す。

「ほら、学校遅刻するよ。早く食べて行きな。」
「うん。いただきます。」

これもまた、いつもの光景。



ガラガラガラ
建付けの悪い扉を開いて教室に入る。
おはよーというクラスメートに返事をして自分の席に着く。

「おっはよー!!!」
「ブホェ!!!」

いきなり後ろからタックルするように抱きつかれおっさんのような声がでる。
ゲホゲホと噎せながら後ろを向く。

「何すんの由里・・・」
「あはは・・・ごめんごめん」

笑いながら謝る千鶴の親友。
綾瀬由里は、千鶴の背中をさすりながら「ごめんってばー」とまた笑う。

その時、ちょうどチャイムが鳴り先生が入ってくる。

「はーい席ついて。出席とるわよー」

教師らしからぬ胸元の大きく開いた服にミニスカート。
ハイヒールに濃い化粧をした千鶴たちの担任。
漣杏は一人一人丁寧に名前を呼んでいった。

いつもの、光景。




「ただいまー」
ガラガラと家の扉を開き、はぁとため息をつく。
そして気づいた。
家の様子がなにかおかしい。
いつも出迎えてくれる兄がでてこない。
まさかと思い急いで家の中央に向かう。
バッと家の障子を開いて中にはいる。
そこには、いつもの兄の姿。
違うのは、その端整な顔に笑顔がない。

千歳がこちらに目を向ける。
千鶴はグッと表情を引き締める。

「まさか・・・」
「うん。そのまさかだよ」

「でたよ。『なりそこない』が」




夜の街に一つの足音が聞こえる。
かなりの速度でその足音は目的の場所に向かう。

「・・・っ」

はやく、もっとはやく。
千鶴はまたスピードを上げる。

足音はとある公園で止まった。
少し乱れた息を整えて周りを見渡す。

「ヴア・・・・ア゛ア゛ァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

紫色の化け物。
牛のような姿形に苦しそうな叫び声。

「っ・・・」

叫びに気圧されながらも眼前を見据える。
その化け物はこちらに向かって突進してきた。

千鶴はとっさに横に避け、すぐにホルダーから拳銃を取り出す。

ドンッドンドン!!!

弾を『なりそこない』の頭に撃つ。
『なりそこない』は少し苦しそうに呻いてまた攻撃してくる。

千鶴は避けようとしない。
拳銃を構えて敵を睨みつける。
『なりそこない』の手が届くまであと5メートル―――

そこでようやく千鶴は引き金を引いた。
拳銃から放たれた弾は『なりそこない』の目に直撃する。

「グ・・・」

殺った。
千鶴は瞬間的にそう思った。
しかし―――

「グァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!!」
「っえ!!!」

『なりそこない』は力を振り絞って千鶴に突進する。
防ぐ暇も無かった千鶴はもろに攻撃を受ける。

「カハッ・・・!」

ドンッ!とそのまま木にぶつかる。
ゲホゲホと血を吐き座り込んでしまう。
『なりそこない』もよほど痛いのか目を押さえてのたうちまわっている。

「ハァッハァッ」

ズキンと痛む体をなんとかして立ち上がらせる。
フゥと息を吐き目を閉じる。
すると、千鶴の下に神々しく光る円が現れる。

「・・・神よ迷いし者に救いの手を哀れな者に裁きを・・・
                  私は希う。そして下す。
                          この者達に制裁を!!!」

言い終わると同時に『なりそこない』はまた千鶴に突進してくる。
千鶴はすっと手を翳した。

「去ね」

一言。
言った瞬間『なりそこない』の動きがぴたりと止まる。
そして大量に血を噴出しながらドサリと地響きを鳴らしながら倒れた。
その血を浴びながらゆっくりと手を下ろす。
ふぅと息を吐き歩き始める。
歩くたびにピチャリピチャリと音をたてる血だまりに嫌気がさす。
顔を歪ませながら帰路につく。



「おかえり」
千歳が笑顔で迎えてくれた。
千鶴も血まみれの顔で「ただいま」と愛らしく笑った。

「お疲れ様。お風呂に入ってもう寝よう。」

千鶴の頭を撫でて家に入る。
千鶴も千歳に着いて家に入った。

これも、いつもの光景。

この者達に神の裁きを 第壱話

長文乱文失礼しました;;
楽しんでいただけたでしょうか。
どうぞ次をお楽しみに^^

この者達に神の裁きを 第壱話

起きて、登校して、そして――― いつもの光景。 兄、友達、先生、『なりそこない』。 いつもの、光景。

  • 小説
  • 掌編
  • アクション
  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日
2011-12-05

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