奇妙な悪魔物語

奇妙な悪魔物語

第八話 ライフル④

奇妙な悪魔物語 第八話 ライフル④



ライフル。それが彼の名前だ。620歳。彼は人間界育ちの悪魔。物心ついた時からずっと一人だった。親の姿を見たことは無いし、その存在もしらない。彼の親はライフルを生んですぐに捨てたのだ。

彼の一番古い記憶は赤かった。そこは狭い路地。辺りの壁に血が散っている。ライフルの目の前に数人の男の死体が転がっている。これが、ライフルの一番古い記憶。なんとも思わなかった。当然だ。"死"など知らないのだ。それを教えてくれる人など誰もいない。どうやってここまで一人で生きてきたかはライフル自信にもわからない。
だが、転がる死体を見ればわかる。きっとそれまでは本能のまま生きていたのだ。だが、親から教はずの"全て"を知らない彼に、一つだけわかる事があった。それは自分の名が"ライフル"であることだけだ。もちろん"名"の意味もわからない。
そんな彼が15歳になる頃には言葉を覚えていた。毎日スリや万引きをして食いぶちを稼いでいた。
身体能力は高かった。そのため、スリや万引などの、人の目を盗む事は、彼にとってぞうさもなかった。失敗は無かった。そしていつしか回りの人間を見下し始める。自分より弱いやつとは絡まない。そして、どうしてか回りを全く信用できなかったのだ。彼は"自分"のみを信じていた。そんなある日だ。ある男に出会う。そいつをムーロロと言った。彼と目が合ったとたんにこいつには何かある。"俺と似た"何かが。そう感じた。それはムーロロも同じだった。彼もライフル同様、ずっと一人だった。
二人はたちまち中が良くなる。まるで兄弟のように。いや、それ以上に互いを信じあっていた。こんな感覚は二人ともはじめてだ。それがますます二人の仲を良くした。
そしてますます悪さもやるようになった。人間離れした身体能力となぜかできる不思議な"力"で。
警察に見つかったこともあったし追いかけられたこともあった。だが、二人は何度も逃げぬいた。その日々がさらに二人の仲を良くさせた。そんなある日だ。ある男が二人の前に現れた。二人はすぐに感じた。こいつも俺達と"同じだ"と。そして二人は自分の正体をしる。悪魔だと。二人はそれをすぐに信じた。だからと言っても何もしない。何も変わらない。その男とは10年に2~3回会うか会わないかくらいの付き合いだった。
そんなある日。その男から話を持ちかけられる。
[実はいい話があるんだよ....近々ベルゼブブが悪石島と言う島に現れる。そこにそいつの親父が用意した金がある]

二人には人並みに悪魔に対する知識はあった。だからベルゼブブもすぐにわかった。
[いくらだよ?]
とムーロロが聞く

[さぁな、だが魔王だ。かなりの額には間違いねぇな]

この話に二人はすぐに乗った。男を疑う様子もなく。そして男はまた消えた............


....................................。


ゆっくりとルキフグスに歩み寄るライフル。
ルキフグスは"だらん"と垂れ下がった腕を押さえ、虚ろな目でライフルを見つめる。
この時、明らかに形勢は逆転していた。ライフルは心の中で勝ちを確信していて、ルキフグスは負けを認めていた。だが、あがくことは辞めていなかった。もう一つだけ、気になる事があった。だが、それが通用しなければ本当に負けだった。打つ手が無いのだ。今、ルキフグスはその一つに命を掛ける"覚悟"をしている。
次第にルキフグスの目の色に生気が目覚めるそして、急に"バッ!"と横に飛んだ!そして少し長い木の枝を拾った!
その行為に警戒したライフルが足を止めた。そして"まさか"という顔をする。

そしてルキフグスは木の枝を瞬間的に氷らせた。そして氷の槍を造った。先が物凄く、見事なまでに尖っている。

ルキフグスはこう考えた。奴に攻撃が触れた瞬間があった。それは初めの一発だ。最初に投げた氷の球も確実に当たっていた。そして最初に放ったパンチも当たった。何故?それは奴の能力が"触れた"ものに磁力を与えるからだ。そう、触れた物だ。触れなくては意味が無いのだ。つまり触れた瞬間にのみダメージを与えられるのだ。それが唯一の、そして確実なライフルの能力の弱点であった。それはライフルも知っている。

ルキフグスは叫んだ
[うおおおぉぉぉぉぉぉおおぉぉおーーーーーーーーーッ!]
そして願った。効いてくれ。倒せなくても良い!せめてダメージをッ!そう思うと同時に覚悟した。
ルキフグスは左腕を大きく振りかぶる。
そして全体重を左腕に乗せ、氷の槍を投げたッ!物凄いスピートが出ている。風を切り真っ直ぐにライフル目掛けて一直線に進む!ライフルは"何ッ!"と言っているような表情をする。早すぎてよける暇が無かった。
そして槍はライフルの頭に直撃したッ!ライフルは勢い余って後ろに倒れる。その倒れざま、確かに赤い血が見えた。

おもわず"よしッ!"と小さくガッツポーズを決めるルキフグス。
[やったッ!やっぱり弱点はあった!]とそう言った瞬間だ。

[確かに弱点をつかれたよ........]
と言い、"ムクッ"とライフルが起き上がる。その頭には確かに投げた氷の槍が刺さっている。そこから血が垂れていた。だが、ライフルは起き上がった。

それを見て一瞬にしてルキフグスの顔色が悪くなる。"そんなバカな"そう思った。
そしてライフルは頭に刺さる氷の槍を握ると、すぐに抜いてしまった。そこから血が"たらー"と流れ落ちる。普通ならば血のでる勢いがもっとあるはずなのに、あくまで少ししか垂れてこない。傷は浅かった。
氷の槍を握りつぶす。
そしてライフルは軽く自分の頭を差すって
[あーーいてーなぁ....いてえじゃねぇかよ....頭に刺さっちまったじゃねぇかよ]

[............................]

[少しだけなぁ?]
と言うとすぐに立ち上がった。そして"パンパン"と砂を落とす。
まだまだ余裕の表情だ。

それを見てルキフグスは思った。"不死身だ"と。そしてライフルが一歩足を前に運ぶ。それに敏感に反応をし、逆に一歩後ろに下がってしまった。
それを見てライフルは自分の額の丸い古傷に親指を当てる。
[これは何だと思う?]

[............................?]

[弾丸だよ、弾丸。弾丸が当たったんだよ。ココに。あれはまだ俺が17歳の時だ。俺はあの時、スリや万引きでのみ、生きていた。失敗などしなかった。だが、一度だけ失敗をしてしまった。]

ライフルは坦々と傷の話をし始めた。失敗した過去を悔やむ訳でもなく、楽しい思いでのようでもなく、ただ、懐かしむように語った。

[............]
それをルキフグスは黙って聞いていた。

[数人の拳銃を持った男たちに囲まれたよ。その時の俺は自分が何者かも知らなかったし、能力の存在も知らなかった。本気で終わったと思った。助けを呼んでも誰も来ないだろう。そこはそうゆう場所だった。アメリカのスラム街だからな。一人の男が拳銃を俺に向けた。そして勝ち誇ったように笑っていた。俺は半べそだった。死ぬと思った。体がガタガタ震えていた。そして"バァン"という銃声と共に俺の頭が暑くなった。そして激しい痛みが襲った。撃たれたのだ。頭を。俺は痛さのあまりその場にしゃがみこみ泣き叫んだ。そう、泣き叫んだ。生きていたんだ。頭に銃をくらったはずなのに。]

[....................]

[生きていたんだよ!しかも泣き叫べるほど元気にな。で、ふと俺を撃ったやろーのつらを覗くとよ、こっちを青ざめた表情で見てんだよ。それで何気なく自分の足下を見るとよ、血のついた弾丸が転がってんだよ。その先っちょは変にへこんでんだ。明らかに命中したんだよな、俺の頭に。急所を外したと思ったのか次々と男どもが銃を連謝するわけよ。だが、どうようしてんのか、急所には一度も当たらなかった。体に4~5発当たっ程度だ。全て痛かったよ。今度こそ死んだと思ったよ。けど死ななかった....弾は俺に当たって少し体に入るとすぐに外に弾かれた。全弾な....その時だった。俺がこの能力にきずいたのは]

傷の話をするライフルの話を聞きながら、ルキフグスは坦々と木の枝を拾っている。そして
[なに余裕ぶっこいてんだ?俺はテメーの弱点を見つけたんだぜ?ダメージを与えたんだぜ?]と睨み付けながら言う。既に、左手には数本の氷の槍が出来上がっている。そのルキフグスの問いかけを聞いているのかいないのか、ライフルは話を進める。

[そのあと、どうしたんだっけなぁー?なんせ600年近く前の話だからなぁー?ええっと....?]
[あぁ....そうだ....]
と言い片腕を前につきだした。そして手をコの字に開く。

だが、ルキフグスは話を聞いていなかった。そのライフルに容赦無しに氷の槍を投げつける。

そしてライフルが呟いた
[弱点克服したんだった........]
と、次の瞬間!ルキフグスは驚いた。自分の目を疑った!
その顔は"バカな"と言っているようだ。
[なん....だと........!?こいつ....無敵か....?]と呟やいた。

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次回!
その強さはチート級。まだ、ライフルには奥の手があった。

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そのライフルの強さに予想以上の苦戦をしいられるルキフグス。形勢は確実にひっくり返った。更なる逆転はあるのかッ!?

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • アクション
  • コメディ
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-05-06

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