血潮

波打ち際を歩く彼女
歩調は緩やかに
脱いだ靴から離れていく
熱を持つ彼女の欠片が
一定の間隔で波に流され
また跡を付ける
かつてここには
誰の欠片があったろう
彼女は彼女の今を見ているので
知る由もない

記憶が飛沫のように
泡のように
寄せては退き
音を立てては静まる

彼女はいつここを歩いたろう
今かもしれない
明日かもしれない
ここには誰の跡があったろう
僕の命はいつ生きていた?
波打ち際を歩く彼女の
白い足と
作り物のような笑顔が
寄せては退いて
音を立てては静まる
彼女の命と共に

血潮

ありがとうございました。

血潮

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-05

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