血潮
波打ち際を歩く彼女
歩調は緩やかに
脱いだ靴から離れていく
熱を持つ彼女の欠片が
一定の間隔で波に流され
また跡を付ける
かつてここには
誰の欠片があったろう
彼女は彼女の今を見ているので
知る由もない
記憶が飛沫のように
泡のように
寄せては退き
音を立てては静まる
彼女はいつここを歩いたろう
今かもしれない
明日かもしれない
ここには誰の跡があったろう
僕の命はいつ生きていた?
波打ち際を歩く彼女の
白い足と
作り物のような笑顔が
寄せては退いて
音を立てては静まる
彼女の命と共に
血潮
ありがとうございました。