明日。

明日なんて来ない。


 これからも君の成長を見届けるのだとそう 思っていたんだ。
大きくたくましく 優しく 暖かく そんなことを思いながら 君を抱きしめた

なんて小さなからだなんだ
なんて小さな手なんだ
甲高い声で鳴く君。
心から愛おしく思えた。

写真はいっぱい撮ろう
成長するのは とても 夢のように早いから
しっかりとカメラにおさめておくことにしよう

だから 君が僕のそばからいなくなるなんて考えてもみなくて
明日を 簡単に考えていたんだ

痛かっただろ?
苦しかっただろ?
叫びたいのに出ない声で
必死に「助けて」を叫んでいたんだろ?

僕に 君の声が聞こえてたら
君に 僕の声が届くのなら…

心から 謝りたい。

きっと君も 自分の明日を
楽しみにしていたことだろう

その明日を奪ってしまったのも僕で
君の涙ですらぬぐってやれなかった。

君が僕の手の中で 逝ってしまう姿が
頭から離れない 震える君を
赤く染まる君を 苦しいとかすかに聞こえる
小さな声と…
何も 何もしてやれなかった
君は僕を憎くおもってるかな
恨んでいるかな?

君を忘れたくはない
だから いっぱい憎んでくれ


本当にごめんなさい。

名も無き君
せめて名前だけでも 呼んであげたかった

そんな君に 名前を…
やんちゃで 小さい体でも生きようとする君へ
かわいくて 愛おしい君へ

大好きな大好きな君へ

天国で、君の明日が訪れますように



「   ツボミ   」

そう 名づけよう


2014/06/06(日)

明日。

明日。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-04

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted