†Mirna†

プロローグ

鬱蒼と生い茂る木々によって形作られた広大な森。
その中腹で彼は体に絡み付くツタと戦っていた。
「っくそ、誰だよ。こんな森作ったの。マジ、意味分かんねーし。」
彼は苛立った様に腰に手を当てる。
そして、一気に何かを取り出した。
銀色の刃が一瞬太陽に反射する。
__それは剣だった。
柄の部分には見事な彫刻が彫られている。
おまけに細かく色が塗られていた。
彼はその剣を勢いよく降り下ろす。
__バサバサッ
大きな音と共に、視界が拓けた。
と、同時に彼は頭叩かれる。
「イテッ、何すんだよエルシニル!!」
彼は目の前にいる青年を咎める様に睨む。
と、エニシエルと呼ばれた青年は再び彼の頭を叩いた。
「この馬鹿っ!!入り口のツタには魔法をかけていると何回言えば分かるんだ!?っつたく、マークは……」
ぐちぐち言うエニシエルを無視し、彼__マークは歩みを進めた。
「此処、随分変わったね。もうそろそろ彼女を呼んでも良いんじゃない?」
すると奥でなにやら作業していた女性が振り向いた。
「そうね。……マーク、呼んできてよ。」
その言葉にマークは目を剥く。
「何で俺なんだよ!?」
エニシエルもマークの味方をする。
「マークに行かせない方が良い。魔法がまた破られるぞ、リーフィン」
リーフィンは二人の言葉に頷いた。
「そうね。じゃあ、私が行くわ。エニシエル、此処を宜しく」
かくして、この一味と平凡な女子が出会う事になるのだ。

第一章

「ふわぁ」
ミィナは大きなアクビをする。
晴れた夏の金曜日の昼休み。
お昼を食べ終えたミィナとその友達のプライナは学校の芝生に横になっていた。
「ミィナ、眠いの?」
プライナが笑う。
ふわりとした長い茶髪がその動きに合わせて揺れた。
プライナは美人だ。
肌は白いし、顔立ちも端整でモデルのような体型をしている。
しかも頭も良い。
だから当然異性からも好かれ、何人もプライナに告白している。
しかし、本人は優しいし何よりそれを自慢しない。
告白されたことも仲の良いミィナくらいにしか教えないのだ。
その時プライナは決まってこう言う。
「あの人から告白されたの。でも、私みたいな人と付き合ったら将来馬鹿にされるって言ってあげたわ。」
その度にミィナは思う。
そんなことないのに、と。
むしろプライナと付き合えたら自慢出来るだろう。
もちろん恥ずかしいから口には出さないが。
そしていつもミィナは不安を覚える。
プライナと自分は釣り合ってるだろうか。
醜い自分といて、プライナは馬鹿にされないだろうか。
だからプライナが笑った瞬間も、ミィナは激しい劣等感を感じた。
「う…うん、眠いよ」
かろうじてそう言ったものの、心の中では複雑な気持ちでいっぱいだった。
しかしプライナはそんなことは露知らず、再び笑みを浮かべる。
「それもそうよね。午前の授業、歴史だったもの。ラーティン先生、つまらないわ。」
ミィナはその言葉に首を傾げる。
ミィナは歴史が好きだし、ラーティン先生も好きだった。
プライナが先を続ける。
「ほら、歴史は教科書を見たら勉強出来るでしょう。ラーティン先生は教科書に載ってる事しか教えてくれないからつまらなくて。」
ああ、とミィナは思う。
プライナは教科書を丸暗記してるんだった。
その上で授業に臨み、新たな知識を頭に入れるのだ。
普通の人はそうじゃないよ。
ミィナがそう返事をしようとしたとき、二人の上に陰が落ちた。
驚いて体を起こすと、目の前に綺麗な女性が立っていた。
綺麗、といってもプライナとは違う美しさがある。
ひとつに結ばれたストレートの腰まである金髪。
何でも見透かされそうな青い瞳。
スラリとした体。
プライナが犬なら彼女はまるで猫だった。
「あなたがメイテリア=ミィナちゃんかしら?」
彼女が目を細めてミィナを見る。
ミィナは呆然として答える。
「どうして分かったの……?」
プライナも警戒心を丸出しにして聞く。
「どなたでしょうか。」
すると、女性は微笑んだ。
「私はラベンダー=リーフィンよ。ミィナちゃんの隣に居るのは誰なの?」
プライナは、女性を睨みながら答えた。
「パスカリア=プライナです。」

†Mirna†

†Mirna†

意思を持つ石__魔石。 この世に五つある魔石を全て集めれば最強になれると言う。 これはそんな魔石に翻弄されるある一味の話。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-02

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  1. プロローグ
  2. 第一章