ピエロの涙

ピエロの涙

ネット社会…それは現実なのか仮想なのか…
ひとりの少女がなにかを叫ぶ…

第1章 はじまり ~プロローグ

カーテンの隙間から 朝日が容赦なく差し込む

けだるい 暑い日がまた始まったのだ…

いつものように 寝ぼけた顔がパソコンの画面に映る。

「変な顔・・・」彼女の朝はこの一言から始まる。

面倒くさそうに パソコンに電源を入れる。

なにかの儀式が始まるようなノイズがなぜか今日は 心地よい。



この少女の名前は、月乃(つきの)見た目はどこにでもいるような普通の中学生。

しかし何かに飢えてるいるような 自分の居場所を探してる…そんな印象だ。

4人姉妹の長女、のわりには姉らしくなく 妹と遊ぶこともない

少し家族から離れた存在と言っていいだろう。

友達はそれなりにいるようだが 親友と呼べるほどの友はいないようだ。

成績はトップクラス 学校の教師陣からの評判はいい。

が、それがいじめの原因にもなっていた。

所属クラブはバスケット部 副キャプテンだ。

本人は 背が高いだけで キャプテンとなんとなく仲がいい

それだけの理由だと思っているらしい。

そんな月乃の唯一の楽しみがパソコンで遊ぶことだった。

いつものようにパソコンを立ち上げ まずはお気に入りの曲を流す

今日の 月乃のお気に入りは B'zのようだ

朝からノリノリの月乃

なんか今日はいいことあるかな~ 今朝は不思議とそんな予感がしたのだ…

第1章 はじまり ~ ソーシャルネットワーク

学校から帰宅した月乃は速攻自分の部屋に向かった。

かばんを放り投げ 次の瞬間にはパソコンの電源を押していた。

「早く、早く」なぜが気が急ぐ…

というのも 今日 学校でおもしろい情報を耳にして

どうしてもそれがやってみたかったのだ。

グーグルを立ち上げ 速攻検索

「あった!」

登録も簡単そう~ これなら私にもいけそうだ…

なにも深くは考えず かわいいアバターにも惹かれ

なんの戸惑いもなく 月乃のソーシャルネットの時間が始まったのだ。

それがどんなことを巻き起こすかなんて… 

思いもせずに…

第1章 はじまり ~初めの一歩

まずはチュートリアルをこなせば たいがいのことは理解できる。

「おもしろいじゃん」

「ハンドルネーム何にしようかな~」

問題もなく 段階を追って チュートリアルをこなしていった。

そして 最後のクエストをみて…

月乃の手が止まった…

 ー ゲームのフィールドに出て 誰かに話しかけてみましょう
 
月乃の一番苦手なことだった…

知らない人に話しかけるの?

「いやだな…」

自分から行動を起こすのがあまり好きじゃない月乃。

いじめが原因で少し人間不信にもなっていたからだ。

でもだれもあたしのこと知らないよね…

ってことはあんまり心配しなくってもいいのかな?

せっかく楽しめそうな時間だもん…

とりあえず行くだけ行ってみるかな。と…思った次の瞬間 

月乃のアバター HN ”乃の” がネットワークの中へ飛び込んでいたのだ…

月乃の未知の世界への最初の一歩だった。

第1章 はじまり ~パラレルワールド

ドキドキしながも ワクワクしてる自分。

始めてだ こんな感覚。

でもどうしたらいのかな…

とりあえず 歩いてみるか。

「これが パラレルワールドってやつなんだ~」

なぜか自分がすっごい広い世界を旅してる気分になってきた。

それでも まだ誰かに声をかけることは無理だよな…

と思いながら 少し隠れた所に自分のアバターを置き

他の人たちのプロフを読んでみることにした。

「へ~ この人おもしろ~」

「なに~この人 ばっかみたい」

不思議と時間が経つのも忘れて プロフを読みあさった。

「いろんな人がいるんだな~」

「ブログも読んでみたいかも…」

だんだん興味が湧いてくると もっと知りたいな…この人のこと

なんて思い始めだしていたのだ。

でもどうすればいいのかな…

第1章 はじまり ~疑心暗鬼

まずはとりあえず挨拶からだよね…

現実の世界だって普通はそうだしな…

始めての人には、はじめましてって言わなくっちゃだよね…

でもそれだけで終わっちゃわない?

今まで自分をアピールすることなんてなかった

ていうか…したくなかった…

基本自分って目立ちたがり屋だと思うけど、

それを実行したいと思わないんだよね…

どうして? 心の声が聞こえる。

したところで…

またいじめられるもん…

月乃は、過去に何度もいじめにあっていたのだ。

でも…考えてみれば あなたのこと誰も知らないんじゃない?

うそをつく必要もないし 自分の素直なとこ書いてもいいんじゃない?

でもな…やっぱこわいかも…

うそついてる人もいるよ…絶対…

月乃の疑心暗鬼はかなりの強者らしい…

挨拶だけ…とりあえずそこからだよね。

「おはようございます。」

すべての物語がそこから始まるということを月乃はまだ知らない。

第1章 はじまり ~ちっちゃな楽しみ

顔も知らない どんな人かもまだよくわからないのに

なぜか 月乃にとっての毎朝がちっちゃな楽しみになっていった。

登校前の30分 見も知らぬ人たちと 挨拶を交わす。

「おはよう」と言えば 即 「おはよう」

この絶妙なタイミングが月乃には心地よい時間だったのだ。

学校で 「おはよう」っていってもシカトされることの方が多いのに

ここのほうが楽しいや…

リア友よりこっちのほうがもしかしたら…

「信じられる?」

この時の月乃にはそれがまだよくわからなかった…

すっかり乃のになりきっている自分にも気づかないまま…

第2章 見えない糸 ~バレンタインディ

話は6ヶ月程前にさかのぼる。

まだ月乃がソーシャルネットなど知らなかった頃。

ひとりの青年がこの世界に足を踏み入れていた。

青年の名は ひかる 某有名大学の2年生。

半年前に彼女にフラれ寂しいバレンタインディを予定もなく

ひとりパソコンに向かっていた。

「つまんね…」

暇つぶしに丁度いいか。

そんな軽い気持ちではじめたソーシャルネット 

「なんかマジハマるじゃねー」

誰とでもすぐ仲良くなるひかるにとってここはいい刺激の場だった。

彼女いなくてもいいかも(笑)

外寒いし 金ねぇーし 家で時間潰せるしな。

そう思いながらも…

ひかるもなにかを探し求めていたことに薄々気づき始めていたのだ。

簡単に手軽に友達も作れる反面 簡単に手軽に友達も破棄できる

「お手軽だな~」

そうやって出会いと別れを繰り返しているうちに

もっとココロをつなぎたい…だれかと…

そんな出会いはやっぱ無理なんか…所詮ネットはネットか…

半年も続けているとそんなことを思うようにもなっていた…

それでも暇つぶしにはもってこいだしな…

ズルズルとそんな日々が半年続いていたのだ。

第2章 見えない糸 ~偶然

それでも日々不思議と偶然は重なるもんだよな~

マジで偶然なのか?

ネットでこういう出会いを人は偶然と呼ぶのだろうか。

たまたまフィールドですれ違って声をかけたら気が合った。

たまたまブログが目にとまり、読んでみて興味がでて友達になった。

現実の世界ではどうだろう?

電車でたまたま隣り合わせた人と友達になった。

大好きな歌手とお友達の人とラーメン屋のカウンターで隣り合わせになった。

なかなか起こりそうもないことだろうな…

そう考えるとネット社会で誰かと友達になることは

そう難しいことではないのかも知れない。

同じ趣味をもつ者同士なら 

きっと引き合う確率は現実社会よりも高いだろう。

それでも本当に気が合う仲間になれるかどうか 

それはそこからのつながり如何ということだろう。

偶然を装う必然

これがかけがえのない人とのつながりとなっていくのだろう。

ひかるはこの半年の間、こんなことを考えていた。

見えない糸がこのネット社会には張り巡らされているのだと。

そんな時に ひかるは 月乃と出逢うのだ…

これは、偶然なのか…

それとも必然なのか…

第2章 見えない糸 ~転落

めっきり朝晩が過ごしやすくなり夜は少し窓をあけて 

心地よい秋風を感じながら

だいぶ仮想の世界に慣れ始めていた月乃。

日に日にパソコンの前にいる時間が長くなっていた。

「攻略?」

「裏技?」

「なんだろう?」

表面上の遊びのコツはつかんだつもりだった。

そうなるとだんだん欲が出てくる。

「へ~ こんなこともできるのか~」

「やってみよ」

これといって気になることもなかった月乃は

どんどんこの世界にのめり込んでいったのだ。

そんなある日…

普段と変わらずいつものようにフィールドにでた。

「さてと 練習 練習」

「あんな風に さくっとできるようになるんだ!!」

負けず嫌いの月乃はどうしても他のアバターのようにかっこよく動いてみたかった。

それまではだれも人のいないフィールドを選んで練習をしていたのだ。

「今日は ここでするかな」

いつものように練習に励んでいた月乃。

そこに知らないアバターがやってきた。 

「やばっ」

「どうしようかな…」

しばらく様子をみてもいいか… 

最近は少し気分的にも楽だったので… ついついそう思ってしまった月乃

と思った瞬間 その見知らぬアバターが 乃ののそばに寄ってきて…

「邪魔‼」…吹き出しから吐き出されたこの2文字に…

「え?」マウスを操作する月乃の手が止まった… そして次の瞬間 

月乃はログアウトのボタンを押していた…

第2章 見えない糸 ~空白の時間

あの日から1週間

月乃はINする気になれなかった…

それでも毎日パソコンの前でBGMを聴きながら 

開いているのはログインのページなのだ…

いじめられることにもひとりになることにも慣れてる

そう思いながらも今日もログインのページを眺めていた。

「あの人来てるかな…」

月乃には気になる人がいたのだ。

一日に1回 あいさつだけ。

それでも月乃の楽しみだった。

それを1週間してない…

もう来てくれてないかもな…

なんで私ってこんなんなんだろう?

つくづく嫌になる…

だれが悪いわけじゃない…

「ばっかみたい…」

乃のは新しい自分…そんな風に錯覚していただけなのだ。

私が乃のを操作してるだけ 乃の=月乃だってこと…

どんなに自分を変えようとしても所詮私はこういう人間。

それでも乃のになりたい自分がいた…

「賭けてみようかな…」

「もし…」

そう思った時、乃のは自分の部屋にINしていた。

月乃の賭けたこと…

第2章 見えない糸 ~友達申請

この1週間ひかるには少し気になっていたことがあった。

いつも来ていたアバターが

「もう 1週間か~」

「どうしたのかな?」

いつも元気いっぱいの挨拶を残してくれるのに…

「なんかあったんか?」

毎日来てくれてる人が来ないと妙に気になるひかるだった。

「オレの書き込みになんかあったか?」

「…」

あいさつだけだしな…

それでも気になるのはなぜ?

ひかるには100人を超える友達というステイタスのアバターがいる。

それでも毎日挨拶を交わすのは10%未満だ。

ステイタスだけの友達なんて意味ないけど多い方がいいに決まってる。

あいさつも交わさないで友達申請してくるやつの方が多いしな…

オレは断らない主義。

それでも彼女だけは友達申請してこない?

なぜだろう?

毎日なぜ挨拶しに来てくれるのか?

気になる…

このオレがなぜ? こんなこと考えるんだ?

「まっ めんどくさいから オレから友申しとくか」

第2章 見えない糸 ~期待

なにかを期待して なにかを予測して 人は行動できるのか?

月乃はいつもそれを考えてしまう。

期待していたわけじゃないでも期待どおりになっている

だけど周りの人はそうは思ってくれない。

いじめられる原因はいつもそうだ。

人に取り入るのが上手なのよ

いい人ぶってるだけよ。 腹ん中わかったもんじゃない。

そんなココロの声が聞こえてくるのだ。

第3者的な物の味方がくせになってしまってる月乃なのだ。

期待してたわけじゃない。

賭けてみただけ…

あるわけないけど…

もし…

「うそ… マジで…」

友達申請が1件あります。

赤字のメッセージがすぐに目に止まった。

「だれ?」

第2章 見えない糸 ~一喜一憂

「1週間ぶりだ…」

フィールドには出たくないけど

ここに戻るとなぜかほっとしていた月乃だった。

訪問者の数は1週間前と比べて激減はしていた。

それでも来てくれていた人たちは 

乃ののことを心配してくれてる書き込みがほとんどだ。

「うれしい…」

私を心配してくれる人がこの幻想の世界にいた…

しばらくはフィールドには出たくないけど

とりあえずご挨拶周りしよ…

「ご心配おかけしました。元気です。またよろしくね。」

戻ってきたことをよろこんでくれる人

なにも返事はないけどいつものように来てくれる人

それでも月乃にとっては空白の時間が一気に埋められた気分だった。

友達申請してくれたあの人のとこにもお礼にいかなくっちゃ。

「友申ありがとう。これからもよろしくね。」

そんな月乃の喜びの裏で…

なに?またこの子戻って来たの? 

そんな声も月乃には届いてはいなかったが

ささやかれていたことも事実だった。

見えないネットラインが蜘蛛の巣のように張り巡らされてる。

そして今から月乃はその事実を少しずつ目の当たりにしていくのだ…

ここまではほんの序曲

ここからが本当の棘の路になることを…

第3章 棘の路 ~誤解

未だにフィールドにはでれないままの月乃だったが

それでもINすることはいやじゃなかった。

INすることでなにかにつながってる…

安心する? 変なの? でもINしたい。

そんな感情が月乃の心の中を往き来していたのは紛れもない事実だった。

月乃は小さい時から人に誤解されるタイプ。

勘ぐられたり うわさだけが一人歩きして 

本当の自分を見失うことすらあった。

自然に自分を表現することがだんだん出来なくなっていた。

でも乃のの時はなんかちょっと違うのだ。

言いたいことを言えてる自分がいる?そんな気がしていたのだ。

それでも基本他を気にして言葉を選んだり

当たり障りのない言葉を選んでいた。

特にお友達がたくさんいる所では気をつけていたつもりだった。

これは小さい時からの月乃のくせ。

父親が転勤族だったせいもあり小学校を3度転校している。

新しい所に移る度にすでにある仲良しグループに入ることの難しさは

身にしみて体験済みだったからだ。

「おとなしく おとなしく」

「目立たないで 目立たないで」

これが月乃の心の中で呪縛になっていた。

それでもブログにコメントをつける時 

ついつい書きたいこと書いちゃってる自分に気づかないでいた…

それが少しづつ 少しづつ…

波紋をもたらし始めていたことに月乃はまだ気づいていない…

「うっとうしいのよ 乃のってこ」

「なんか馴れ馴れしくない? あとから来たくせに」

「またやってやる?」

「作戦B 決行」

文化祭の準備で少し忙しくなっていた月乃。

INできる時間が少し短くなっていた。

そんな時 乃のの周りに少し変化が起こっていたことを

月乃は見落としていた…

第3章 棘の路 ~疑惑

体育祭 文化祭 秋のメインイベントが終わり 

あとは期末テストが終われば冬休み

ひさしぶりに今日はいっぱい遊べるかな~

そんな淡い期待をしながらINした。

「??」何か変?

なんだろう?

一見 なにも変わらない? いつもと同じ乃のの部屋。

でもなんだ? この違和感…

月乃は いろいろ確認してみた。

「あっ」 あることに気づいた。

訪問者の数が以上な増え方をしてることだった…

「なんでだろう?」

見たことない名前の足跡もある…

でもそれだけじゃないな…

うちへ訪問してから 足跡を消した?

それしか考えられない。

でも なぜ???

それから月乃は訪問数を毎日確認するようになった。

日に日に増える訪問者の数。

それでもあいさつを残してくれる人はいつもと同じ。

そんなある日INしてすぐ見たことない名前が足跡にあるのを発見。

そして10分後… その名前は足跡から消えていたのだ…

第3章 棘の路 ~一方通行

ひかるはひとつの出会いと別れを同じ時期にしていた。

彼女は自称シンガー・ソングライター。

自分のオリジナル曲を発表する媒体として 

このソーシャルネットワークを使っていた。

彼女の作った曲に惹かれ、なんとなくコミュニケーションを交わすうちに

ひかるは彼女の大ファンになっていた。

彼女を取り巻く友達グループとの交際がひかるの楽しみになり

また乃のが自分の所に来る機会が少なくなっていたことに気づくのが遅れたのだ…

12月24日 今年はきっとホワイトクリスマス… 

それぐらい寒さを感じるクリスマスイブの夜。

月乃は完全にパソコンの電源をOFFしたまま…

ひかるはシンガー・ソングライターのクリスマスLIVEを興奮しながら観ていた…

そして…

年があける…

第4章 過去との再会 バレンタインディ ~少女の叫び 

2月14日 チョコなんてあげる人もいない…

あれから3ヶ月 月乃は詩を書くようになっていた。

思ったこと 感じたこと 言えなかったこと…


ピエロ ~smile on you

私はピエロ、おどけた道化師

でもね 私にも気持ちもココロもあるよ

傷つくこともあるし

涙ながすこともある

ただ仮面で見えないだけ…

見えてないから…

誰かを傷つけていいの?

自分が満足なら…

誰かなんてどうでもいいの?

私はピエロ、おどけた道化師

ただあなたの笑顔が見たいだけ

いつもあなたに微笑んでいたいだけ

ただそれだけの

私はピエロ 本物の涙のあとを見せない

ただのおどけた道化師よ


これは 月乃の精一杯の叫びだった。

第4章 過去との再会 決心 ~私はピエロ

今日も大好きなB'z を聴く月乃。

ピエロ…

♪Getaway getaway 俺はピエロ
ひたむきで滑稽な逃亡者
涙は流さないでおくれ
悲しいけど美しいのがLIFE
暗い未来は もう描かない
夢のスピードは もうゆるめない♪

きっと自分にも悪いとこはある。

いや 絶対ある。

それを誰かのせいにしてないか?

偽善者じゃない

でも醜いあひるの子でもない

自分をどれだけ鈍感にさせることができるのか…

すっかり人との関わりを断っていた月乃が再びINを決めた…

もう泣かない。

月乃は決めた。

「私 ピエロになる!」

なにもかもをリセットしよう。

月乃はすべてを削除した。

第4章 過去との再会 絆 ~深まる絆と薄れていく絆

3ヶ月ぶりに乃のはひかるの部屋を訪れた。

「ただいま」その一言を残してきた…

「おかえり」

その一言がどれだけ月乃を勇気づけただろう…

待ってくれてた人がいた

それだけで充分だった。

その瞬間、乃のは生き返った…

「私は ここにいるじゃない 生きてる」

月乃も乃のも生きている。

生きているから 誰かと出逢う

生きているから 誰かと別れる

一期一会…

それが生きてる証

どれもがかけがえのない出逢いのはず…

なにかを学び なにかを失う

マイナスだから 不幸じゃない

プラスだから 幸せなんじゃない

薄れていく絆も深まる絆もあって当然

それがなんで?って考えてもしょうがないのだ・・・

第5章 過去との別れ 涙 ~その意味

3日前、月乃は風の噂で耳にしたことがあったのだ… 

不慮の事故でバレンタインディの日

ひとりの仲間がこの世を去ったこと…

それは月乃をいじめていた友人だった。

大嫌いだった…

それなのに

どうしても涙が止まらない

止めようとしても止められないのだ

後悔…

言えなかった。

次に逢ったら言おうと決めていたあの言葉。

「ありがとう あなたに逢えてよかった。」

嫌味でもなく心底そう言うつもりでいた。

「…」もう言えない言葉に 心が泣いたのかもしれない…

窓の外の桜の木に小さな蕾が付き始めていた。

第5章 過去との別れ 信頼 ~勇気

人を信じることができなかった月乃が 

はじめて人を本当に信じるいうことがどういうことか分り始めていた。

難しいと決め込んで

また裏切られるだけど疑って

ネットを通じてそれを学ぶことになるとも

思っていなかった。

なにも言わなくても

なにも言われなくても

不思議となにかに繋がる

探ることなどする必要もない

自然と感じる心

いや月乃は最初から分かっていた 

それでもそれを否定し続けていただけだったということを

ひかるというアバターに出逢うことで学んだのだ。

言い訳も作りごともなにもいらない

そのままでいればいいのだ

結局のところいじめもいやがらせもなにもなくなったわけではない。

なにも変わったわけではなく

時間が経ち人が変わり環境が変わり

それだけのことで実際の自分はといえば

なにも変わっていないことに気づくのだ。

立ち止まっているだけならまだしも

後退してしまっている自分に気づく…

死ですべてを忘れてしまえるなら…

そんなことすら頭に浮かぶ ただのエゴイストだ…

命を重く感じることが 生きている証であり

人を思いやることが 生かされていることへの責任だということ。

それがピエロとしての勇気なのだと…

第5章 過去との別れ ピエロ ~変化

以前に書いたピエロの詩に少し月乃の中で変化がでた

涙の跡を見せない…

「そうじゃない…」

泣かないと決めても どうしても溢れ出す涙に

月乃は思った…

涙の跡は何かに変わる?

「きっとそうだ…」

 -虹色の橋 ~夢にむかって-

虹色って7色じゃないんだよ

黒も白もないけれど

そこには無限の色がある

みんなそれぞれに色があって

誰として同じ色のものはいない

ちょっと大人ぶった ローズカラーの てんとう虫

おちゃめな子リスの フサフサしっぽは 薄茶色

羽を羽ばたかせてることすら気づけない 空色の 小鳥

あのたんぽぽ このたんぽぽ 全然違う イエローカラー

それがあのレインボーカラー

みんなで架けよう幸せの橋

みんなで渡ろう希望の橋

はっきりとは見えない だけどそこにはあるよ 

レインボーカラーの光の糸が

わたしとあなたを繋いでる

それが 虹色の架け橋なのだから…


月乃の夢 それはみんなが笑顔になること

それはみんなが繋がること…

ピエロの涙は きっと虹色なのかもしれない。

やっと前を向くことのできた月乃

過去との別れ 未来への始まり 今この瞬間がいつもそうなのだと…

ピエロの涙

過去との別れ 未来への始まり 今この瞬間がいつもそうなのだと…

ピエロの涙

今のネット社会でのごく普通の出来事。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-05-02

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 第1章 はじまり ~プロローグ
  2. 第1章 はじまり ~ ソーシャルネットワーク
  3. 第1章 はじまり ~初めの一歩
  4. 第1章 はじまり ~パラレルワールド
  5. 第1章 はじまり ~疑心暗鬼
  6. 第1章 はじまり ~ちっちゃな楽しみ
  7. 第2章 見えない糸 ~バレンタインディ
  8. 第2章 見えない糸 ~偶然
  9. 第2章 見えない糸 ~転落
  10. 第2章 見えない糸 ~空白の時間
  11. 第2章 見えない糸 ~友達申請
  12. 第2章 見えない糸 ~期待
  13. 第2章 見えない糸 ~一喜一憂
  14. 第3章 棘の路 ~誤解
  15. 第3章 棘の路 ~疑惑
  16. 第3章 棘の路 ~一方通行
  17. 第4章 過去との再会 バレンタインディ ~少女の叫び 
  18. 第4章 過去との再会 決心 ~私はピエロ
  19. 第4章 過去との再会 絆 ~深まる絆と薄れていく絆
  20. 第5章 過去との別れ 涙 ~その意味
  21. 第5章 過去との別れ 信頼 ~勇気
  22. 第5章 過去との別れ ピエロ ~変化