くたばれっ!!パイソンズ(その1~)

プロローグ


「こんにちはお昼のニュースです。まず初めに先日より連合王国議会で審議されていた『特定希少生物保護法』についてです。この法律は政府が長年の乱獲により数が激減していた連合王国内のモンスターを保護するのを目的として昨年から議会に提出していたもので、大型種のドラゴンから小型種のスライムまで全てのモンスターが対象となり、連合加盟国全ての地域で適用されます。また違反した場合最高罰金1000万ゴールド。もしくは禁錮10年以下という重い罰則が適用されることになります。この法律制定には一部モンスターハント愛好家などから強い批判がありましたが、昨夜の政府と議会各派党首との話し合いの結果、即時成立が望ましいとの判断から本日の午後の議会本会議で成立する運びとなりました」



……んでもって、それから10年後。


「全国1000万のパチダンファンの皆さん今晩は!今夜は王国首都国立競技場からCリーグ最下位決定戦を実況は私、ウルムチ。解説は皆様お馴染み元Aリーグで活躍された『人間核弾頭』ことアイアン山本さんでお送りしています。山本さんよろしくお願いします!」

「こちらこそよろしくお願いします」

「いや~、それにしてもパイソンズ今年も予想どうり順調に最下位決定戦に出てきましたね。これはもう毎年恒例の風物詩といってもいいんじゃないでしょうか」

「そうですね。今日負ければパイソンズはチーム創設以来999連敗ですからね。ここは是非とも1000連敗の大記録に挑戦してもらいたいですね!」

「今日の対戦相手のビッグタイタンズもかなり酷いチームですが、パイソンズとはレベルが違いますよね」

「格が違いますよ。普通どんなに頑張っても999戦連敗なんて記録作れませんからね。これはもうある種の才能といってもいんじゃないでしょうか。今日はAリーグの優勝決定戦とは違った意味でワクワクさせらますよ。どんだけ酷い試合内容になることか」

「そうですね。この会場で野次と罵声を放ってるお客さんたちもまったく同じ気持ちだと思います。さてテレビの前のファンの皆様はもうルールはご存じかと思いますが、山本さん、簡単にルールの説明をお願いします」

「この『パチダン』は競技場に作られた人工の10階建のダンジョンの一階から二つのチーム各5名が別々の入り口から入り、各階の人造モンスターを倒しながら先に最上階のゴールに到達するのを競い合うスポーツです。制限j時間である2時間内にどちらのチームも最上階まで到達できなかった場合、倒したモンスターのヒットポイントで勝敗を決めますが、ポイントが同点だったときは両チームの直接対決となります。しかし、今夜の試合の場合そこまではいかないでしょう」

「そうですね。試合開始1時間経ってますが、ビックタイタンズは3階でヒットポイントが17、パイソンズにいたってはまだ1階で、ヒットポイント0ですからね。ホント、Cリーグ最下位決定戦の名に恥じない低レベルな試合となっています」

「いや、もう見ていて吐き気がしますよ。これでもこいつら本当にプロかよって。元同業者として絞め殺してやりたくなりますよ」

「さてここで、ダンジョン内の各階に設置したカメラから映像を送ってもらいましょうか。カメラさーん、お願いしまーす!」

「はーい!こちら3階でーす!ビックタイタンズは現在生き残った3名で、壁の隅っこに張り付いて防御に徹しています。どうやらこのまま逃げ切る作戦のようですね」

「せこいですね~。山本さんどう思われます?」

「初っぱなでキャプテンの『剣士ホーガン』を失ったのが痛かったですね。まさか『拾い食いトラップ』にひかっかるとは。今時小学生だって落ちてるチョコなんか食いやしませんよ」

「下剤入りチョコを食べたホーガンはそのままトイレに直行でリタイアとなり、続いて『槍兵シモンズ』が階段でコケて足を捻挫。やはりリタイア。残った三名の『衛兵ジル』、『弓兵アーネット』、『白魔術師レイ』だけではこれ以上上の階に行くのは無理でしょうね」

「まあ、Aリーグの選手なら余裕でしょうが、この面子じゃちょっと無理なんじゃないですか」

「私たちの会話の間にもジリジリと隅に追いやられる三人。あっ、『衛兵ジル』足の先を八目トカゲにかじられて悲鳴を上げています!無様です!本当に無様です!果たしてこのまま時間まで逃げ切れるのでしょうか。さて、ここで皆様お待ちかねのパイソンズのほうにカメラを切り替えてみましょうか。1階のカメラさーん!」

「はーい!こちら1階です。試合を開始して一時間になりますが、は未だにヒットポイント0と、流石に『万年最下位の帝王』と呼ばれるパイソンズに相応しい試合内容になっています」

「山本さん、今日のパイソンズのメンバーですが、まずはキャプテンの『剣士ブレンダ』の調子はどうご覧になられますか?」

「いやー、全然ダメですねー、あの脳筋女。なに壁とか天井とか攻撃してるんだっつーの!モンスター狙えよ、モンスター!」

「何か叫んでるようですね。ちょっと集音マイクで音を拾ってみましょうか。カメラさーん、お願いしまーす」

「はーい!『ザ、ザ、ザ~……くそっ、くそっ!くそっ!ふざけやがって!あの週刊誌の記者の野郎、アタイとまー君の素敵な思い出を台無しにしやがって!今度見かけたら絶対ぶっ殺してやる!』ウルムチさーん!聞こえましたかー?」

「山本さん、これは?」

「う~ん、どうやらブレンダ選手、先日写真週刊誌に年下のファンの男の子とラブホテルから出てくるところの写真を掲載された件で腹を立ててるようですね」

「ああ~、なるほど。それで壁や天井に怒りをぶつけてるわけですね。でも確かこれで10回目ですよね。いいかげん飽きましたよ」

「まあ、性格とは反対に外見はなかなかの美人でスタイルもいいですからね。一応ファンクラブもあるみたいですし。この手のスキャンダルはダメージがあるんでしょう。それにしてもあの肉食系女。少しは慎みってものを覚えたほうがいんじゃないでしょうか。あれでも戦闘能力だけは無駄にAクラスですからね。真面目にやればいい成績出せるんでしょうが、あの性格が災いして、しょっちゅう暴力沙汰を起こして試合出場停止処分は断トツ一位。まあ自業自得ってやつですよ」

「まったく同感です。それではパイソンズの他の選手の様子も見てみましょうか。カメラさーん、お願いしまーす!」

「分かりました。あっ!天井に一人張り付いています。どうやら、『斥候アンナ』のようです。カメラをズームしてみます。どうです、見えますか?」

「確認しました。解説の山本さん、アンナ選手はモンスターたちに追い詰められて、天井に避難しているとみてよろしいんですか?」

「いえ、違いますね!」

「えっ?それではアンナ選手は一体あそこで何を?」

「それは…」

「『キターーー!神キターーー!!』こちら一階のカメラです。ウルムチさん今のアンナ選手の絶叫お聞きになりましたか?!」

「聞こえました。山本さん、今の絶叫は?」

「……間違いありません。彼女は、アンナ選手はあそこで、いま漫画のネームを切ってるんですよ!」

「ええーー?!それではアンナ選手は副業で同人作家をやってるという噂は本当だったんですね」

「ええ、私も最初話を聞いたときは半信半疑でしたが確信しました。ほら、彼女の背中のリュックを見て下さい。一見斥候の任務に必要な道具が入っているかと思ってしまいますが、よく見ると」

「ああーー!本当だ。リュックの中から漫画の原稿用紙が見えますね。他にもペンに筆に定規など漫画の道具一式確認できます。あっ、アンナ選手がまた何か叫んでいますね。カメラさんお願いします」

「『すげーー!!アタシって超天才!うわっ、これなんか国宝級のネームだわ!やば、やばすぎだって!うわーー!!今のアタシには漫画の神様が憑依してるってか!うほっ、鼻血止まんないよ!こりゃ、次のイベントじゃ、間違いなく瞬殺完売だわ!待ってなさいよ、オタクども!あんたたちのXXXXを一滴残らず搾り出して、XXXから赤玉出させて……ブツ!』すみませーん!これ以上は放送コードに引っかかりそうなのでマイクを切りました」

「山本さん。今のって……」

「……アンナ選手のサークルって三日目でした。若い娘が何やってんだよ!親が泣くぞ、こらっ!」

「人間の屑ですね……えー、それでは気を取り直して両チームのベンチの方も見て見ましょうか。パイソンズベンチにカメラを切り替えて下さい。うわっ!何ですかこりゃ?」

「監督のモントゴメリーですね。どうやら酒飲んでベンチで泥酔してるようですね」

「これが元AリーグMVP選手で、『モンティ』の呼び名でファンに愛されたスター選手の成れの果てですか。ジャージ姿で酒瓶抱えたままでへそ出してベンチで居眠りって、なんだかもう悲しすぎますよね、山本さん」

「しかもまだ27歳の女性ですからね。よけい人生の悲哀を感じさせますよ」

「そうですね……ん?おーーーっと!ここでパイソンズチームに何か動きがあったようです。1階のカメラさーん!」

「こちら1階です!パイソンズのディフェンス『衛兵ダニエル』が腰痛のためリタイアのようです。今、担架で運ばれていきます」

「ああ~、また持病が再発したみたいですね。それにしても山本さん、普通は腰痛持ちの選手を『衛兵』にしませんよね?なに考えてんですかね。あの連中」

「そうですね。『衛兵』は仲間を守るため、巨大な鋼鉄製の盾と数十キロにもおよぶ鎧を装備して試合にのぞむワケですから、常識的に考えたら腰痛持ちに勤まるはずないんですがね。まあそこはパイソンズですから」

「しかもダニエル選手は元AV男優ですから、ガタイはいいですけど、腰には相当ガタがきてるとみていいんじゃないですか?」

「現役時代は『イケメン人間削岩機』の異名を誇ってたようですが、哀れですね~。今じゃ夜の生活は騎乗位専門とのことですから、年はとりたくないもんですよ」

「本当に他人事じゃないですね。さて、これでパイソンズで現在まともに試合に参加してるのは『黒魔術師イングリット』と『白魔術師ミユキ』の二名になるわけですが。山本さん、もうほとんど試合は絶望的といっていいんじゃないですか?」

「そもそも今日の試合に『魔術師』は二名もいらないですよ。ヒーリング担当の『白魔術師』だけで十分ですよ。そんなに強力なモンスターなんか出てこないですし。あと『斥候』もいりません。それよりも『槍兵』や『弓兵』をスタメンすべきでしたね。」

「えー。ちなみにパイソンズの『槍兵キャロライン』はネットゲームにハマッて自室に引きこもり中。『弓兵リック』はファンの女性三人と婚約し、結婚詐欺容疑で逃亡。現在全国指名手配中とのことです。まあ単純に数合わせですね。あそこ選手層が薄いですから。山本さん?」

「…………くそー、二股ならず、三股とは、羨ましすぎるだろーが!一人くらい俺に回せよ!」

「山本さん、本番中ですから」

「…………失礼しました」

「えー、それでは1階のカメラさーーん、パイソンズのイングリット選手とミユキ選手にカメラを向けてもらえますか」

「分かりました!ウルムチさーーん、見えますか?」

「う~~~ん、どうやら、うずくまって攻撃魔法の詠唱を行ってるイングリット選手をミユキ選手が防御魔法で援護してるみたいですね。セオリーどうりといったところでしょうか」

「いや、違いますね!!」

「えっ?!またですか?」

「ほら、うずくまってるイングリット選手が持ってるものをよく見て下さい!」

「持ってるもの?…………あーっ!山本さん、これって!」

「お分かりになりましたか?」

「なんということでしょう!自分で自分の目を疑ってしまいます!視聴者の皆さん!イングリット選手、うずくまって魔導書を詠唱してると思いきや、右手には競馬新聞、左手には競輪新聞を握りしめて食い入るように見入っています!試合中になにやってんですか!しかも山本さん、両耳にイヤホーンをしてるということは」

「そうですね。右耳でラジオの競馬中継。左耳で競輪中継を聞いてるに違いありません。おい、こら、未成年のお子様のくせにギャンブルなんて、100万年早えーよ!」

「いえ、山本さん、イングリット選手あれでも二十歳ですから」

「あっ、そーでした。どう見ても小学5年生のうちの娘と同い歳にしかみえないもんで」

「まあそうですけど。カメラさーん!また声を拾ってもらえますか!」

「OKでーす!『ザ、ザ、ザ~………いいわよ~。こいこいこいこい!今月の生活費全部あんたらにぶっこんでんだからね!いいぞ~、いけいけいけいけ!ああ~!何抜かされてんのよ!おら、さっさとケツを上げて巻き返しなさいよ!って、なに自転車ごとコケてんのよ!テメー、それでもプロかよ!いっぺん死ね!ああ~。これでサクラ大王、あんたが最後の希望よ。そうよ~いいわよ~。そのまま一気に逃げ切りなさ……って、こら!今度は落馬かよ!ゴール目の前でふざけんな!チクショー!これで来月の給料日までまたパンの耳と水道水かよ!ああー!なんなのこのスライム。煩いったらありゃしないわね!アタシはいま超ムカついてんだからね!これでもくらえクソスライム!!………バキ!』」

「おーっと!イングリット選手の蹴りがクリティカルヒット!スライムを一体撃破。パイソンズようやく得点しました!」

「魔術師が蹴りで得点して、どーすんだよ!魔術使えよ、魔術!」

「なんだかもう、これ以上、こいつらの試合を実況するのがアホらしくなってきました。それにしても山本さん、こうなるとパイソンズ唯一の常識人のミユキ選手が気の毒で見てられませんね」

「ホントですよ。彼女が頑張れば頑張るほど痛々しさが増すばかりです。まだ18歳だっていうのに。宴会やコンパで酒が飲めなくて一人だけシラフなもんで、酔った友達を家まで送るハメになっちゃって、ところがそいつが道端でゲロを吐きはじめやがって、タクシーに乗せてもらえず、結局終電も逃してそのまま駅で夜明かししちゃったという典型的な貧乏くじ引きパターンですね」

「なんだか妙にリアルな例えですね。それって山本さんの実体験ですか?」

「まさか!知り合いの話ですよ、知り合いの!」

「………まあ~そういうことにしておきます」

「こほん!え~、それにしてもアル中の監督にヤリマンのキャプテン。他のメンバーもギャンブル狂に引きこもりにエロ同人作家。さらには腰抜けマッチョマンに結婚詐欺ともうこのチームそのものが人間のクズの見本市会場といって過言はありませんよ」

「いえ、まあ~、一概にそうとはいえないのもありますけど……えー、試合の方はどうなっているでしょうか。カメラさーーん!ミユキ選手をアップでお願いします」

「了解でーーす!」

「必死に円形防衛魔法でモンスターを食い止めるミユキ選手。山本さん、彼女の能力もかなり高いんじゃないですか?」

「そうですね。ブレンダ選手と同じでAクラスレベルです。ただ彼女の場合、周りに足を引っぱられちゃって実力の半分も出せてませんが…………本当に何でこんなにいい子がパイソンズなんかにいるんですかね。可愛いくて性格も良くて…………それに何よりもあの芸術品としかいいようのない見事な巨乳!親の借金のカタに売っぱらわれたとしか考えられませんよ!ミユキちゃん、困ったことがあったらオジサンが相談に乗ってあげるからね!遠慮せんでいつでもいらっしゃい!はあ、はあ、はあ、はあ」

「山本さん!未成年の視聴者も大勢いますので、誤解されるような発言はちょっと!」

「ち、違うんだ!幸子!直美!信じてくれ!お父さんは純粋にこの子のことが心配で!本当だ!本当だからな!」

「ん?只今連絡が入りました。どうやらパイソンズベンチに何か動きがあったようです。パイソンズベンチのカメラさーーんお願いします!」

「こちらパイソンズのベンチです。さきほどまで泥酔していたモントゴメリー監督が起き上がって、ベンチの中をしきりに歩き回っています」

「山本さん、モントゴメリー監督の動き、どうご覧になりますか?タイムをとるつもりでしょうか」

「う~~~ん。ここまで絶望的な状況ですと、今さらタイムをとって作戦の練り直しをしても無駄ですし。かといって代えの選手もいませんし。う~~~ん」

「おーーーっと、モントゴメリー監督ハンドスピーカを手に取りました。これはやはりレフリーにタイムの要請でしょうか?カメラさーーん、集音マイクお願いしまーーーす!」

『おぐえぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~!!』

「…………山本さん」

「ハンドスピーカーをバケツ代わりに使うんじゃねぇぇぇーーーーー!!いま、お茶の間の皆さんはお食事中の時間だぞぉぉぉーーーーー!!このクソアマァァァーーーー!!」




「今晩は夜のエルドラドスポーツニュースの時間です。まず初めに今夜王国首都国立競技場で行われたパイソンズ対ビッグタイタンズのパチダンCリーグ最下位決定戦ですが、試合の終盤、テレビ解説者のアイアン山本容疑者がパイソンズのベンチに殴りこみ、乱闘の末、暴行傷害の現行犯で逮捕されるというアクシデントがありました。警察の取り調べに対し、山本容疑者は『テレビ中継中にカメラに向かって嘔吐したモントゴメリー監督に腹を立ててやった。大変なことをしてしまった』と涙ながらに謝罪しているとのことです。なお試合は時間切れでビッグタイタンズが逃げ切り、パイソンズはまたも最下位の座をキープ。これでパイソンズは連敗記録を999に更新。この結果に対し、専門家の中からはパチダンリーグコミッショナー連盟がパイソンズに対し近いうちにリーグ離脱勧告を行うのではとの声も囁かれ、しばらくは予断の許さない状況が続く見通しです」




第一話・ルーキーが来た!


scene01[パイソンズ選手寮・聖杯寮玄関]


「もう我慢の限界です!今日かぎりで退団させてもらいます!」

「まあまあ、ミユキ~、そんなこと言わないでさ~。ほら一緒に残念会の酒盛りやろ~ぜ~」

「酒くさっ!ブレンダさん、酔っぱらってるんですか?!うわ!もう一升瓶一本空けてる。まだ昼前ですよ!」

「別にいいだろ~。失恋のヤケ酒は飲酒に入りませ~ん。ひっく!」

「なに意味不明なこといってんですか!もう、残念会の酒盛りじゃなかったんですか?!」

「ん~~?別に試合なんかいいんだよ~。それより聞いてくれよ~。昨日の試合の後、マー君から、もう会えないって、メールがきてさ~。アタイ、アタイ……うわあああああああ~~~ん!」

「ちょ、ちょっと!泣きながら抱きつかないで下さい!うわ、服に鼻水つくじゃないですか!」

「おや~~?お二人さん、寮の玄関で何大声出して……。ちょ、ちょっと!なんで抱き合ってんのよ?!はっ、まさか二人はいつの間にかそーゆー関係になってたのか。う~ん、ユリもなかなかいいかも。よっしゃ!次の同人誌はそっち系でいくか」

「バカいってないで!アンナさん、ブレンダさんを引き離すの手伝って下さい!わたし、今日でうちのチーム辞めて、ここから出て行くんですから!」

「え!マジ?!何でよミユミユ?」

「そんなの決まってるじゃないですか。皆さんみたいな、不真面目でやる気のない人たちとこれ以上一秒たりとも一緒にいたくないんです!」

「昨日の試合のことかよ?いいじゃん。今さらジタバタしたって始まらないし。むしろ勝ったビッグタイタンズより、ニュースじゃ、アタイたちの扱いの方が大きいくらいだし。やっぱプロは目立ってなんぼだろ」

「999連敗して目立ったてもしょうがないじゃないですか!選手として恥ずかしくないんですか?こんなにテレビや新聞にボロクソ言われて」

「そんなこと言われてもね~。別にうちのチームが弱いのは今に始まったことじゃないし。アタシらが入団する前からでしょ。万年最下位伝説が始まったのは」

「そうそう。アンナの言うとうりだぜ。それにオマエ、退団してどうするんだよ?」

「……ヤーパンの実家に戻って、家の仕事手伝います」

「オメーの家って農家で牛飼ってたんだろ?」

「そうですけど……それが何か?」

「いやさ、牛の乳なんか搾るよりもどうせならオメーのその巨乳でオッサンたちのXXXをしごいたほうが金になるんじゃないかとか思ったりして。なんなら知り合いの店紹介してやるぜ。うひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「な、な、な、なにイヤラしいこと言ってるんですか!!ブレンダさんのバカ!スケベ!変態!ユ〇マ〇!」

「コラァァァーー!ドサクサまぎれに何いってやがんだよ!泣かすぞテメー!」



「ったく、うっさいわねー。あんたらなに騒いでんのよ?オチオチ寝てもいられないじゃん」

「あ、イングリット先輩」

「ちゃーっす!グリ先輩!」

「よー、グリ。今頃お目覚めか?」

「むかぁぁぁーっ!アンナ!ブレンダ!グリって、呼ぶなってんだろーが!こちとらイングリットって親からもらったちゃんとした名前があんだよ!」

「えーっ?可愛いらしいあだ名じゃないっすか」

「そうそう。オメーの外見に相応しいあだ名じゃねーか。なぁ、グリちゃん」

「ブレンダ!もう一回グリっていったら、あんたの両方の目ん玉抉り出して、アタシのケータイのストラップにしてやっからね!」

「アハハハハ!まぁ、そう怒るなって。魔法陣グリグリ」

「殺す!ゼッテーぶっ殺す!この腐れ売女があぁぁぁ!!」

「ちょっと二人ともいい加減にして下さい!イングリット先輩に失礼じゃないですか!」

「ミユキ!ああー!やっぱアタシの気持ちを分かってくれるのはアンタだけよ!アンタだけがちゃんとアタシを先輩扱いしてくれる」

「え?いや~、そんな~、大げさですよ。照れるじゃないですか」

「いいえ…ミユキ…アンタは…アンタはアタシにとってかけがえのない大切な後輩よ!」

「はい!私も同じ気持ちです。例えこの先1ミリも身長が伸びず、万年ブラいらずで、エターナルツルペタボディだったとしても、イングリットさんは私にとってかけがえのない先輩です!」

「………(ミユミユ)」

「………(ある意味スゲーやつだよな)」

「………アレ?私、何か変なこと言いました?」

「ふ、ふ、ふ、ふざけんなあぁぁぁー!このヤーパン生まれの牛チチ女があぁぁぁー!誰がエターナルツルペタボディだあぁぁぁー!アンタの皮を剥いで乳房のついた皮のジャケット作るわよおォォォー!!」


「ちょ、ちょっと!イングリット先輩!痛いじゃないですか!そんなにお尻ポカポカ叩かない出ください!」

「うっさい!こんな超優良安産体型のデカケツじゃ、バズーカ砲で撃ったって、キズ一つつきゃーしないわよ!」

「ひ、ひどい!気にしてるのに!」

「アハハハ!ミユミユのお尻はVIP用のリムジンってっか」

「もう!アンナさん、ヘンな例えしないで下さい!」

「いや~、ヒップとVIPをかけてみたんだけど」

「なんなんですか!中年オヤジのセクハラみたいなこといって。そんなんだからアンナさんは、高校生の時バレンタインの手作りチョコを作ったはいいけど、あげる相手が見つからず、結局『頑張った自分へのご褒美だ!』とか婚期を逃したOLみたいなこといって、家に帰ってから一人寂しく自分の部屋で食べるハメになっちゃうんですよ!」

「……ミユキ、オメ~」

「うわぁぁぁぁぁー!死ぬー!死んでやるぅぅぅぅー!」

がん!がん!がん!がん!がん!がん!がん!

「え?アレ、アンナさんなにしてるんですか?!ちょっと!そんなに壁に頭を連打したら死んじゃいますよ!ブレンダさんも見てないで止めてください!」

「しょがね~な。ほら、アンナ、いいから落ち着けって」

「うわぁぁぁぁーん!封印した黒歴史があぁぁぁぁー!!」

「お~、よしよしよし……ミユキ~、世の中にはいっていいことと悪いことってもんがあるんだぜ」

「す、すみませんでした……反省してます」


がらがらがら~。

「あいかわらずここの戸は開けづらいな~。ん?おいおい、おまえら玄関でなに騒いんでんだよ~?」

「あっ、監督!」

「あら、モンティじゃない。どうしたの今日は珍しくシラフじゃない」

「あのな~。オレだって年がら年中酔っ払ってるわけじゃね~よ。それにイングリット、オレのことはちゃんと監督って呼べよなあ~」

「あ~、はいはい分かりましたよ。それで監督今日は私たちになんか用?」

「まぁな~。ところでアンナのやつどうしたんだ~?今にも死にそうな顔してるじゃないか~」

「いや~、それがさぁ、ミユキのやつが、例のごとくあの毒舌パワーを発揮してアンナをいじめて泣かせちゃったんだよな」

「うぐっ、うぐっ、うぐっ、うぐっ」

「そ、そんな違います!いじめてなんかいません!ブレンダさん適当なこと言わないで下さい!」

「しょうがないな~。ミユキ~、オマエの口は凶器なんだからちゃんと管理しておけよ~。じゃないといずれ死人が出るぞ~」

「もう!そこまで言うことないじゃないですか……そりゃちょっと自分でも言い過ぎることはあるかもしれないとは思いますけど」

「ちょっとじゃないだろ~。この間だって朝、寮の前で会った時、『おはようございます監督。アレ?今朝は晴れ晴れとした顔してますけど、ウイスキーで浣腸でもしたんですか?』って言われて、マジ、オレ気が遠くなったわ~」

「……」

「……」

「……」

「し、し、失礼いたしましたあぁぁぁぁぁぁーー!!」


scene02・聖杯寮食堂



「え~と、そんじゃ、みんな揃ったみたいだから~、話はじめっぞ~」

「あっ!監督、まだダニエルさんとキャロラインちゃんが来てませんけど?」

「いいんだよミユキ。ダニエルの奴はぎっくり腰でベッドから動けねーし、キャロラインはどうせネットゲー中だろ?呼んだって無駄だぜ。モンテイ、さっさと始めろよ」

「ブレンダのいうとうりね。今朝あのコの部屋の前通ったら、ペットボトルが二本出てたから、あと予備が一本はあるはずよ。ということはあと二~三日は部屋から出てこないわね」

「ええーー?!イングリット先輩ホントですか?キャロラインちゃん、またトイレに行かないで、ペットボトルで用たしてるんですか!!あれほど部屋で用をたすのやめてっていったのに!!」

「しょうがないわよ。あのコ一度ゲーム始めたら全クリするまで絶対やめないんだから」

「もう、あと片づけするのワタシなんですから!それにしても入団以来試合に一度も出てない選手なんてありえませんよ。よくクビになりませんね」

「まあ、キャロちゃんはオーナーの孫娘だからね」

「えっ?本当ですかアンナさん」

「ミユミユ知らなかったんだ」

「初耳です」

「オーナーにとっちゃ、キャロラインちゃんは目に入れても痛くないくらいカワイイ孫娘だからね。もうほとんど引きこもりの療養感覚でここに置いてるんじゃない」

「ここはサナトリウムじゃないんですよ!あとペットボトルだけは何とかしてください!もうイヤですからね。生温かいペットボトルをトイレまで運ぶのは!アレ拷問ですよ、ほとんど!」

「文句言うなっつーの!あの仕事は新人がやるのがここの伝統なんだよ!トイレで兄弟子のケツふくのに比べたら全然マシじゃねーか」

「そんなことさせられるくらいなら命綱なしで断崖絶壁からバンジージャンプするほうがマシですよ!だいたいワタシだって入団して二年経つんですから。もう新人じゃないです」

「しょうがないでしょ。ミユキあんた以来誰もうちに入団してこないんだからさ」

「そ、そうかもしれませんけど。でも!」

「ああ~、そのことなんだけどな~、オレの話ってーのはだな~。今度うちのチームに新人が入ることになったんだよ~」

「「「「はあ?」」」」



「それも~若い男のコだぞ~。どうだ~びっくりしたか~?」



「「「「ええエェェェェーーーー!!ウソォォォーーー!!」」」」



「童貞だよな?!」

「え!?いきなりなに言ってんだ~ブレンダ~」

「童貞かどうかって聞いてんだよ!」

「いや~、どうかな~。そんなこと~、普通入団テストの面接の時きかないからな~」

「バカヤロー!男の子ってんなら、童貞にきまってんだろーが!」

「いや~、性体験があるかどうかは人それぞれだし~」

「じゃあ、童貞だったらアタイが食っていーよな!」

「えっ!いや~、一応うちの寮内は規則で不純異性交遊は禁止だから~」

「じゃあ、外でヤルんならOKだよな!」

「だからな~、ブレンダ~、少しはオレの話聞けよな~」

「ホテルで初もの頂くのもいいけど、カーセックスってーのも捨てがたいし。いやいや、それよりいっそ公園の茂みかなんかで押し倒して頂くほうが、エキサイトでき……(バキっ!!)うげ!!」

「大丈夫か~?イングリット、そんなに強くスパナで頭を殴ったら~、いくらそいつが頑丈でも死ぬぞ~」

「大丈夫大丈夫。この馬鹿、童貞の男の子って聞くと理性の堤防が簡単に決壊するんだから。それよりモンティ、話の続き」

「そっか~、そんじゃ話の続きだけど~」

「……そうだ!やっぱ学ラン着せて『後輩君を優しくリードする学園のアイドルの先輩プレイ』で……(バキ!!)うが!!」

「誰が学園のアイドルだっつーの!どこにいるんだよ!アンタの『マネージャーさん』になるやつが!」



「え~、今度わがチームに「槍兵」として入団することになったショー・ヤリスギ君です~。はーい、みんな~、拍手、拍手~」

パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!

「おおー、凄いホントに若い男じゃないの!」

「奇跡です!自分メガネが……メガネが涙で曇って何も見えません!」

「え、やだ~、(ボソリ)ちょっとカッコいいかも」

「あの~……監督」

「ほら、ヤリスギ君も自己紹介して~」

「いえ、その前に一つ質問していいですか?」

「ん?なにかな~」

「あそこにある棺桶みたいな……」

「ああ~アレは「鉄の処女」っていって中世の拷問道具で~、あん中に人を押し込んで~」

「いや、なんでそんなもんが寮の食堂にあるのかがそもそも問題なんですけど……なんであの中から人の声がするんですか!!それにガタガタ動いてるし!!」

「ああ~、あれはね君の身を守るためでね~」

「え、僕の身を守る?」

「正確には君の貞操を守るためなんだけど~」

「ナンすか!何が入ってるんですかあの中?!」

「ん~、まあ~、一言でいうなら……淫獣?」

「……」

ガン!ガン!ガン!ガン!

「おおー!若い男の…童貞の臭いがするー!出せー!こっから出せってんだよーー!」

くたばれっ!!パイソンズ(その1~)

くたばれっ!!パイソンズ(その1~)

エルドラド連合王国では長年の乱獲により、モンスターの数が激減。全てのモンスターは絶滅危惧種に指定され、モンスターハントは全面禁止。そしてその代わりに魔法で作られた偽物のモンスターを人工のダンジョンの中で狩るのを競い合うスポーツ、パチモンダンジョン攻略、通称「パチダン」が人気爆発。プロのチームも作られ、今やリーグトーナメント戦も行われる国民的人気スポーツと化していた。 この物語はパチダンリーグ万年最下位チーム「パイソンズ」の選手たちの汗と涙とそして熱き友情……とは程遠い物語である

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-05-02

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著作権法内での利用のみを許可します。

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